事業承継の準備というと、後継者探しや税金対策を思い浮かべる方が多いはずです。ですが、承継の前に会社そのものの「値打ち」を上げておく取り組みにお金を使える補助金がある、と聞いてピンとくる経営者は多くありません。
福井県の「事業承継に向けた企業価値向上補助金」は、おおむね10年以内に事業承継を予定する県内中小企業者を対象に、承継前の企業価値向上の取り組みを補助率2/3・上限100万円で支援する制度です。実施の事務局は福井商工会議所が担っています。
事業承継に向けた企業価値向上補助金の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業者(法人・個人事業主) |
| 制度名 | 事業承継に向けた企業価値向上補助金 |
| 対象業種 | 業種指定なし(県内中小企業者) |
| 利用目的 | 事業承継前の企業価値向上の取り組み(謝金・機械装置・システム構築・建物費・広報費など) |
| 対象地域 | 福井県内 |
| 従業員数 | 中小企業基本法上の中小企業者に該当すること(業種ごとに資本金・従業員数のどちらか一方の基準を満たせばよい) |
| 補助上限額 | 100万円 |
| 補助率 | 2分の1以内(対象経費の2/3以内) |
| 申請受付 | 令和8年5月20日〜11月30日(予算上限に達し次第終了) |
| 公式サイト | 福井商工会議所「事業承継に向けた企業価値向上補助金について」 |

自社は対象になるのか——線引きは「経営者の年齢」と「承継の予定時期」
この補助金は、誰でも使えるわけではありません。現経営者が満60歳以上で、法人なら3期以上、個人事業なら5年以上事業を営んでいることが前提です。そのうえで、おおむね10年以内に親族または第三者への承継を予定していることが必要です。
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| 現経営者が満60歳以上 | 現経営者が60歳未満 |
| 法人3期以上/個人5年以上の事業実績 | 創業して間もない企業(要件未達) |
| おおむね10年以内に承継を予定 | 承継の予定が定まっていない、または10年超先 |
| 「パートナーシップ構築宣言」登録済み | 宣言未登録(申請前に登録すれば対象になり得る) |
この線引きの理由ははっきりしています。制度の目的が「承継直前の駆け込み対策」ではなく、承継までに時間をかけて会社の価値を底上げすることにあるためです。承継予定が数年以内に迫っている場合は、この補助金より事業承継・引継ぎ補助金など別の制度が合うこともあります。
対象経費と対象外経費
対象になる経費は、謝金・旅費・機械装置やシステムの構築費・建物費・広報費など、企業価値向上に直接つながる支出です。消費税は補助対象から除かれます。
「パートナーシップ構築宣言」への登録は申請前に済ませておく必要があります。宣言していない状態で申請書だけ先に出しても、要件を満たさず差し戻しになります。
よくある誤解——「事業承継補助金」は1つではない
福井県内には、名前が似た事業承継関連の補助金が複数あります。この記事の補助金は、福井県が実施する「企業価値向上」に特化した制度です。福井市など一部の市町村も、専門家費用の補助を目的にした独自の事業承継補助金を別に設けています。「福井の事業承継補助金」で検索して見つけたページが、実は市町村の制度だった、というケースが起きやすいので、実施主体(福井県か、市町村か)を必ず確認してください。
また、この補助金は事業承継そのものの手続き費用(M&A仲介手数料など)を補うものではありません。あくまで承継前の「企業の価値を上げる取り組み」が対象です。M&Aの仲介費用や専門家相談を探している場合は、県内企業M&A支援奨励金など別の制度を確認する必要があります。
申請の流れ
- 福井県事業承継ネットワーク参加機関(商工会議所・商工会・金融機関など)に相談する
- 事業実施計画書を作成する
- 事前確認依頼書を福井商工会議所に提出する
- 派遣された専門家の確認・助言を受け、計画を必要に応じて修正する
- 正式な交付申請手続きを行う
交付決定より前に発注・契約した経費は対象外になります。専門家の確認を受ける前に機械装置などを発注してしまうと、その分は補助されません。
よくある質問
個人事業主でも申請できますか?
できます。法人は3期以上、個人事業主は5年以上の事業実績があれば対象です。
予算がなくなったら受付は終わりますか?
はい。申請期間は令和8年11月30日までですが、予算上限に達した時点で受付を終了します。早めの相談をおすすめします。
パートナーシップ構築宣言は今から登録しても間に合いますか?
間に合います。宣言はポータルサイトから随時登録できるため、申請前に済ませておけば要件を満たします。
