働き方改革推進支援助成金は、労働時間を短くする取り組みの費用を支援する制度です。
賃上げが目的なら業務改善助成金です。こちらの対象は、時間外労働の削減、年休取得の促進、勤務間インターバルの導入です。
現行で5つのコースに分かれています。令和8年度には、物流の「2024年問題」に対応する取引環境改善コースが新設されました。対象経費の3/4(一定条件で4/5)が助成されます。上限額は、成果目標の達成度によって25万円〜250万円超まで幅があります。自社に合うコースはどれか、いくらもらえるのか、順番に見ていきましょう。
働き方改革推進支援助成金の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース/労働時間短縮・年休促進支援コース/勤務間インターバル導入コース/団体推進コース/取引環境改善コース〈令和8年度新設〉の5コース) |
| 対象業種 | 全業種(業種別課題対応コースは建設業・運送業等・病院等・砂糖製造業・情報通信業/宿泊業に限定) |
| 利用目的 | 雇用・職場環境を改善したい |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 中小企業事業主(資本金・従業員数の基準は業種により異なる。目安100人〜300人以下) |
| 支給上限額 | コースにより25万円〜500万円程度(内訳は本文表を参照。加算により上乗せ可) |
| 支給率 | 3/4(従業員30人以下かつ一部条件で4/5)。団体推進コース・取引環境改善コースは対象経費実費相当 |
| 申請受付 | 令和8年度:交付申請期限 令和8年11月30日(月)。予算切れで前倒し終了の可能性あり |
| 公式サイト | 働き方改革推進支援助成金(厚生労働省) |
図: 働き方改革推進支援助成金の全体像。詳しくは本文で解説します
働き方改革推進支援助成金にはどんなコースがある?【現行5コース】
対象事業主・目的別に5つの現行コースを整理しましょう。いずれも中小企業事業主が対象です(中小企業の範囲は業種により資本金・従業員数の基準が異なります)。
業種別課題対応コース(建設業・運送業等・病院等・砂糖製造業・情報通信業/宿泊業)
対象は建設業、運送業等(自動車運転業務従事者を雇用する事業)、病院等(病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院)、砂糖製造業、情報通信業、宿泊業の中小企業事業主です。成果目標は、時間外労働の削減、勤務間インターバルの導入、4週の所定休日を1日以上増やす等から選べます。
労働時間短縮・年休促進支援コース(全業種)
業種を問わず使える「基本形」のコースです。時間外労働の削減や、年次有給休暇の計画的付与制度の導入に取り組む中小企業事業主が対象になります。
勤務間インターバル導入コース(全業種)
「勤務間インターバル」は、勤務終了から次の勤務までに一定の休息時間を空ける仕組みです。これを新たに導入するか、対象範囲・時間数を広げる中小企業事業主が対象です。すでに一部で導入済みでも、適用が労働者の半数以下なら対象になります。
団体推進コース(事業協同組合・商工会議所・商工会等の団体)
対象は、事業協同組合・商工会議所・商工会などの事業主団体、または10以上の事業主で組織される共同事業主です。構成員である中小企業のために、市場調査・新ビジネスモデル開発・セミナー開催などに取り組む場合に支給されます。1社単位では使えません。
取引環境改善コース(令和8年度新設・荷主/倉庫事業者/運送事業者の団体)
令和8年度に新設されたコースです。荷主または倉庫事業者1者以上と運送事業者1者以上を含む3者以上で構成される団体(荷主集団等)が、構成員である運送事業者の荷待ち・荷役時間や労働時間の短縮に取り組む場合に支給されます。物流の「2024年問題」に対応する枠組みです。
図: 対象事業主別の5コース使い分け。まずは自社がどのグループに近いかを確認しましょう
コース選びに迷う場合や、自社の取り組みがどのコースの成果目標に当てはまるかの実体判断が難しい場合は、専門家に相談すると確実です。
いくらもらえる?コース別の上限額
支給額は2つの金額を比べて、低い方に決まります。ひとつは選んだ成果目標の上限額+賃上げ加算・割増賃金率引上げ加算。もうひとつは対象経費の合計×3/4(一定条件で4/5)です。経費を使わなければ上限額は関係ありません。
| コース | 対象事業主 | 助成率 | 代表的な上限額(成果目標ベース) |
|---|---|---|---|
| 業種別課題対応コース | 建設業・運送業等・病院等・砂糖製造業・情報通信業/宿泊業の中小企業事業主 | 3/4(一定条件で4/5) | 25万円〜250万円(成果目標により異なる。賃上げ加算・割増賃金率引上げ加算で上乗せ可) |
| 労働時間短縮・年休促進支援コース | 全業種の中小企業事業主 | 3/4(同上) | 25万円〜150万円(同上、加算で上乗せ可) |
| 勤務間インターバル導入コース | 全業種の中小企業事業主 | 3/4(同上) | 50万円〜150万円(同上、加算で上乗せ可) |
| 団体推進コース | 事業協同組合・商工会議所・商工会等、共同事業主団体 | ー(対象経費実費相当) | 上限500万円 |
| 取引環境改善コース(新設) | 荷主・倉庫事業者・運送事業者3者以上で構成する団体 | ー(対象経費実費相当) | 上限100万円 |
加算は2種類あります。どちらも成果目標の上限額に上乗せされます。
賃金の引上げ加算は、引上げ人数と引上げ率(3%/5%/7%以上)で決まります。常時使用する労働者が30人を超える企業で1社あたり最大360万円。30人以下の企業は、5%・7%以上引上げの加算額が2倍または2.5倍になる特例があります。
割増賃金率の引上げ加算は、月60時間以内の時間外労働の所定割増賃金率を5%以上引き上げた場合に25万円です。5割以上へ引き上げ、かつ時間外労働を実際に減らした場合は75万円になります。
どちらの加算も、業種別課題対応コース・労働時間短縮・年休促進支援コース・勤務間インターバル導入コースで共通です。
業種横断・シミュレーション
同じ「働き方改革推進支援助成金」でも、業種と選ぶコースで支給額の考え方がまったく変わります。3つの業種を例に見てみましょう。
図: 業種別に見る「どのコースで、どれくらい支給されるか」のイメージ
① 建設業(従業員22人・業種別課題対応コース) 積算業務に時間がかかり、月80時間を超える時間外労働が常態化している。土木工事積算システムを導入して、時間外・休日労働を月60時間超・月80時間以下まで削減したい。 → 成果目標①(36協定の時間外・休日労働時間数の削減)を選びます。実施前が月80時間超、実施後が月60時間超80時間以下なら上限150万円。あわせて3%以上の賃上げをすれば、加算も乗ります(例:7〜10人で20万円)。
② 製造業(従業員28人・勤務間インターバル導入コース) 夜勤明けの連続勤務が常態化し、若手の離職が続いている。勤務間インターバルを新規に導入し、休息時間11時間以上を所属労働者の半数超に適用したい。 → 新規導入(労働者の1/2超に適用)・休息時間11時間以上の場合、上限150万円が対象。労務管理用ソフトウェアの導入や外部専門家のコンサルティング費用が対象経費になります。
③ 学習塾等サービス業(従業員8人・労働時間短縮・年休促進支援コース) 年次有給休暇の取得率が低く、繁忙期に希望通り休めない従業員が多い。年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入したい。 → 成果目標②(年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入)を選べば上限25万円。就業規則の整備や外部専門家のコンサルティング費用の3/4が支給されます。従業員30人以下で対象経費⑥⑦が30万円を超える場合は4/5です。
まずは自社の取り組みがどのコースに近いかを確認してみましょう。
コースが多く、自社に合うものが分かりにくいと感じたら、他に使える補助金・助成金がないか探してみるのも有益です。
コースの選び方や、取り組み内容をどう成果目標に位置づけるかで迷ったら、専門家に無料で相談できます。
申請のスケジュール感は?「交付申請の締切」に隠れ期限があります
働き方改革推進支援助成金は、交付申請 → 事業実施 → 支給申請という3段階のスケジュールで進みます。令和8年度は次のとおりです。
- 交付申請期限:令和8年11月30日(月)
- 事業実施期限:令和9年1月31日(日)まで(交付決定後、計画に沿って改善事業を実施)(採択の後に届く正式な通知。これより前の発注・契約は対象外)
- 支給申請期限:事業実施予定期間が終了した日から起算して30日後の日、または令和9年2月5日(金)のいずれか早い日
注意したいのは、「11月30日以前に、予告なく受付を締め切る場合がある」点です。申請が集中すると、予算が尽きて期限前に終わります。「まだ11月だから大丈夫」は通用しません。取り組む内容が固まったら、すぐ交付申請の準備に入ってください。
図: 交付申請から支給までのスケジュール。「予算切れで早めに締め切られることがある」点が最初の注意点です
承認までの重要なタイミングと必要書類
「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を押さえるほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。
| タイミング | やること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 取り組みを始めたいと決めたらすぐ | どのコース・成果目標が自社に合うか整理する | 現状の時間外労働の実態把握、就業規則・年休管理簿の整備状況の確認 |
| 令和8年11月30日まで(予算切れで早期終了の可能性あり) | 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)に交付申請書(様式第1号)を提出 | 交付申請書、事業実施計画、対象経費の見積書等 |
| 交付決定後〜令和9年1月31日まで(採択の後に届く正式な通知。これより前の発注・契約は対象外) | 提出した計画に沿って改善事業(研修・コンサル・機器導入等)を実施 | 発注書・契約書・領収書等の証憑 |
| 事業実施予定期間終了後30日以内、または令和9年2月5日のいずれか早い日まで | 支給申請書(様式第10号)を提出 | 支給申請書、成果目標の達成を証明する書類(就業規則、賃金台帳等) |
図: いつ・何が必要になるか。交付申請の提出が最初の分かれ目です
改善事業の途中で計画を変えるなら「事業実施計画変更申請書(様式第4号)」を出します。中止・廃止のときは「事業中止・廃止承認申請書(様式第7号)」です。計画どおりに進まなくなったら、この様式で先に届け出ます。
「うちの会社でも対象?」対象事業者の考え方
対象となる中小企業事業主の範囲は、資本金または従業員数のいずれかが業種別の基準以下であることが条件です(例:卸売業は資本金1億円以下または常時使用労働者100人以下など、業種により基準が異なります)。加えて、いずれのコースも次の条件が共通のベースになります。
- 労働者災害補償保険(労災保険)の適用を受ける事業主であること
- 年5日の年次有給休暇の取得に向けて、年休管理簿や就業規則等を整備していること
- 常時使用する労働者が10人以上の事業場では「年休時季指定に関する就業規則」を労働基準監督署に届け出ていること
例:従業員18人の運送業(正社員15人+パート3人・ドライバー中心) → 業種別課題対応コース(運送業等)の対象です。デジタル式運行記録計の導入と、時間外・休日労働時間数の削減を組み合わせれば、成果目標①の上限額に加えて、労務管理用機器の導入費用も対象経費に含められます。
自社がどのコースの、どの成果目標に該当するかの最終判断に迷う場合は、専門家に相談すると確実です。
よくある質問
交付申請の締切はいつですか?
令和8年度は令和8年11月30日(月)です。ただし、国の予算額に制約されるため、締切日より前に予告なく受付が終了する場合があります。取り組み内容が固まったら早めに準備を始めることをおすすめします。
建設業・運送業以外でも使えるコースはありますか?
はい。業種別課題対応コースの対象は建設業・運送業等・病院等・砂糖製造業・情報通信業/宿泊業に限られますが、労働時間短縮・年休促進支援コースと勤務間インターバル導入コースは業種を問わず全業種の中小企業事業主が対象です。
複数のコースを同時に申請できますか?
コースごとに個別に交付申請を行う仕組みです。自社の取り組みが複数のコースの要件に当てはまる場合の組み合わせ方は、要件が細かく個別事情によって変わるため、専門家に相談して整理することをおすすめします。
