残業体質を変えたいけれど、何から手をつければいいか分からない。年次有給休暇を計画的に取らせたいが、就業規則の整備にコストがかかる。ドライバーや建設現場の勤務間インターバルを導入して、若手が定着する職場にしたい――。こうした「時間外労働の削減」「年休取得の促進」「勤務間インターバルの導入」に向けた取り組みにかかる費用の一部を、国が助成してくれるのが働き方改革推進支援助成金です。
この助成金は、現行で5つのコース(業種別課題対応コース、労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コース、団体推進コース、取引環境改善コース〈令和8年度新設〉)に分かれています。労務管理ソフトの導入、外部専門家によるコンサルティング、生産性を高める設備・機器の導入などにかかった費用の3/4(一定条件で4/5)が助成され、上限額は成果目標の達成度や賃上げの実施状況によって25万円〜250万円超まで幅があります。自社に合うコースはどれか、いくらもらえるのか、順番に見ていきましょう。
図: 働き方改革推進支援助成金の全体像。詳しくは本文で解説します
働き方改革推進支援助成金にはどんなコースがある?【現行5コース】
対象事業主・目的別に5つの現行コースを整理しましょう。いずれも中小企業事業主が対象です(中小企業の範囲は業種により資本金・従業員数の基準が異なります)。
業種別課題対応コース(建設業・運送業等・病院等・砂糖製造業・情報通信業/宿泊業)
2024年4月から時間外労働の上限規制が本格適用された業種を重点対象とするコースです。建設業、運送業等(自動車運転業務従事者を雇用する事業)、病院等(病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院)、砂糖製造業、情報通信業、宿泊業の中小企業事業主が対象です。時間外労働の削減、勤務間インターバルの導入、4週の所定休日を1日以上増やす等、業種特有の課題に応じた成果目標を選べます。
労働時間短縮・年休促進支援コース(全業種)
業種を問わず、時間外労働の削減や年次有給休暇の計画的付与制度の導入など、労働時間短縮・年休促進に取り組む中小企業事業主が対象の、いわば「基本形」のコースです。
勤務間インターバル導入コース(全業種)
勤務終了から次の勤務までに一定の休息時間を確保する「勤務間インターバル」を新たに導入する、または対象範囲・時間数を拡大する中小企業事業主が対象です。勤務間インターバルは2019年4月から努力義務化されている制度で、未導入の事業場を持つ企業のほか、すでに一部導入済みでも対象範囲が半数以下の企業も対象になります。
団体推進コース(事業協同組合・商工会議所・商工会等の団体)
事業協同組合、商工会議所、商工会などの事業主団体、または10以上の事業主で組織される共同事業主が、構成員である中小企業の労働時間改善に向けた市場調査・新ビジネスモデル開発・セミナー開催などに取り組む場合に支給されるコースです。個々の企業ではなく団体単位の取り組みが対象になります。
取引環境改善コース(令和8年度新設・荷主/倉庫事業者/運送事業者の団体)
令和8年度に新設されたコースです。荷主または倉庫事業者1者以上と運送事業者1者以上を含む3者以上で構成される団体(荷主集団等)が、構成員である運送事業者の荷待ち・荷役時間や労働時間の短縮に取り組む場合に支給されます。物流の「2024年問題」に対応する枠組みです。
図: 対象事業主別の5コース使い分け。まずは自社がどのグループに近いかを確認しましょう
コース選びに迷う場合や、自社の取り組みがどのコースの成果目標に当てはまるかの実体判断が難しい場合は、専門家に相談すると確実です。どの取り組みをどのコースの計画として位置づけるかという整理のコツは、GRANTOS公式LINEの登録者限定ページでも紹介しています。
いくらもらえる?コース別の上限額
「最大〇〇円」という単純な数字だけでは実態を捉えきれません。上限額は選んだ成果目標+賃上げ加算・割増賃金率引上げ加算の合計額と、**対象経費の合計額×補助率(3/4、一定条件で4/5)**のいずれか低い方が支給される仕組みです。
| コース | 対象事業主 | 助成率 | 代表的な上限額(成果目標ベース) |
|---|---|---|---|
| 業種別課題対応コース | 建設業・運送業等・病院等・砂糖製造業・情報通信業/宿泊業の中小企業事業主 | 3/4(一定条件で4/5) | 25万円〜250万円(成果目標により異なる。賃上げ加算・割増賃金率引上げ加算で上乗せ可) |
| 労働時間短縮・年休促進支援コース | 全業種の中小企業事業主 | 3/4(同上) | 25万円〜150万円(同上、加算で上乗せ可) |
| 勤務間インターバル導入コース | 全業種の中小企業事業主 | 3/4(同上) | 50万円〜150万円(同上、加算で上乗せ可) |
| 団体推進コース | 事業協同組合・商工会議所・商工会等、共同事業主団体 | ー(対象経費実費相当) | 上限500万円 |
| 取引環境改善コース(新設) | 荷主・倉庫事業者・運送事業者3者以上で構成する団体 | ー(対象経費実費相当) | 上限100万円 |
賃金の引上げ加算(対象経費に応じた成果目標の上限額に上乗せ)は、常時使用する労働者が30人を超える企業で、引上げ人数と引上げ率(3%/5%/7%以上)に応じて1社あたり最大360万円(従業員30人以下の企業はこの表の5%・7%以上引上げの加算額が2倍または2.5倍になる特例あり)。割増賃金率の引上げ加算は、月60時間以内の時間外労働にかかる所定割増賃金率を5%以上引き上げた場合に25万円、より高い要件(5割以上への引上げ+時間外労働の実削減)を満たした場合に75万円が、それぞれ成果目標の上限額に加算されます(業種別課題対応コース・労働時間短縮・年休促進支援コース・勤務間インターバル導入コースで共通の加算制度)。
業種横断・シミュレーション
同じ「働き方改革推進支援助成金」でも、業種と選ぶコースで支給額の考え方がまったく変わります。3つの業種を例に見てみましょう。
図: 業種別に見る「どのコースで、どれくらい支給されるか」のイメージ
① 建設業(従業員22人・業種別課題対応コース) 積算業務に時間がかかり、月80時間を超える時間外労働が常態化している。土木工事積算システムを導入して、時間外・休日労働を月60時間超・月80時間以下まで削減したい。 → 成果目標①(36協定の時間外・休日労働時間数の削減)を選択し、事業実施前が月80時間超・実施後が月60時間超80時間以下の設定であれば上限150万円が対象。あわせて従業員の賃上げ(3%以上)を実施すれば、引上げ人数に応じた加算(例:7〜10人で20万円)も上乗せできます。まずは自社が対象5業種のいずれかに該当するかを確認し、成果目標を1つ以上選ぶところから始めます。
② 製造業(従業員28人・勤務間インターバル導入コース) 夜勤明けの連続勤務が常態化し、若手の離職が続いている。勤務間インターバルを新規に導入し、休息時間11時間以上を所属労働者の半数超に適用したい。 → 新規導入(労働者の1/2超に適用)・休息時間11時間以上の場合、上限150万円が対象。労務管理用ソフトウェアの導入や外部専門家のコンサルティング費用が対象経費になります。
③ 学習塾等サービス業(従業員8人・労働時間短縮・年休促進支援コース) 年次有給休暇の取得率が低く、繁忙期に希望通り休めない従業員が多い。年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入したい。 → 成果目標②(年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入)を選択すれば、上限25万円が対象。就業規則の整備や外部専門家によるコンサルティング費用にかかった経費の3/4(従業員30人以下で対象経費⑥⑦が30万円を超える場合は4/5)が支給対象です。
このように、同じ「働き方改革推進支援助成金」でも、業種・目的によって使うコースも上限額の計算も大きく変わります。まずは自社の取り組みがどのコースに近いかを確認してみましょう。
コースが多く、自社に合うものが分かりにくいと感じたら、他に使える補助金・助成金がないか探してみるのも有益です。
あなたの会社で使える補助金・助成金は、これだけではないかもしれません。 → 他に使える補助金を無料で診断する
コースの選び方や、取り組み内容をどう成果目標に位置づけるかで迷ったら、専門家に無料で相談できます。
コースが多く、自社に合うものが分かりにくい場合は、専門家に直接聞くのが近道です。 → 専門家に無料相談する
申請のスケジュール感は?「交付申請の締切」に隠れ期限があります
働き方改革推進支援助成金は、交付申請 → 事業実施 → 支給申請という3段階のスケジュールで進みます。令和8年度は次のとおりです。
- 交付申請期限:令和8年11月30日(月)
- 事業実施期限:令和9年1月31日(日)まで(交付決定後、計画に沿って改善事業を実施)
- 支給申請期限:事業実施予定期間が終了した日から起算して30日後の日、または令和9年2月5日(金)のいずれか早い日
ここで注意したいのが、**「11月30日以前に、予告なく受付を締め切る場合がある」**という点です。本助成金は国の予算額に制約されるため、申請が集中すると期限より前に受付終了となることがあります。「まだ11月だから大丈夫」と後回しにせず、取り組みたい内容が固まった時点で早めに交付申請の準備に着手するのが、この助成金特有の隠れ期限への対処法です。
図: 交付申請から支給までのスケジュール。「予算切れで早めに締め切られることがある」点が最初の注意点です
承認までの重要なタイミングと必要書類
「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を押さえるほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。
| タイミング | やること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 取り組みを始めたいと決めたらすぐ | どのコース・成果目標が自社に合うか整理する | 現状の時間外労働の実態把握、就業規則・年休管理簿の整備状況の確認 |
| 令和8年11月30日まで(予算切れで早期終了の可能性あり) | 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)に交付申請書(様式第1号)を提出 | 交付申請書、事業実施計画、対象経費の見積書等 |
| 交付決定後〜令和9年1月31日まで | 提出した計画に沿って改善事業(研修・コンサル・機器導入等)を実施 | 発注書・契約書・領収書等の証憑 |
| 事業実施予定期間終了後30日以内、または令和9年2月5日のいずれか早い日まで | 支給申請書(様式第10号)を提出 | 支給申請書、成果目標の達成を証明する書類(就業規則、賃金台帳等) |
図: いつ・何が必要になるか。交付申請の提出が最初の分かれ目です
改善事業の実施中に計画を変更する場合は「事業実施計画変更申請書(様式第4号)」、中止・廃止する場合は「事業中止・廃止承認申請書(様式第7号)」など、状況に応じた様式が用意されています。自社の取り組みがどのコースの、どの成果目標に当てはまるかを早い段階で確認しておくと、慌てずに済みます。
「うちの会社でも対象?」対象事業者の考え方
対象となる中小企業事業主の範囲は、資本金または従業員数のいずれかが業種別の基準以下であることが条件です(例:卸売業は資本金1億円以下または常時使用労働者100人以下など、業種により基準が異なります)。加えて、いずれのコースも次の条件が共通のベースになります。
- 労働者災害補償保険(労災保険)の適用を受ける事業主であること
- 年5日の年次有給休暇の取得に向けて、年休管理簿や就業規則等を整備していること
- 常時使用する労働者が10人以上の事業場では「年休時季指定に関する就業規則」を労働基準監督署に届け出ていること
例:従業員18人の運送業(正社員15人+パート3人・ドライバー中心) → 業種別課題対応コース(運送業等)の対象です。デジタル式運行記録計の導入と、時間外・休日労働時間数の削減を組み合わせれば、成果目標①の上限額に加えて、労務管理用機器の導入費用も対象経費に含められます。
自社がどのコースの、どの成果目標に該当するかの最終判断に迷う場合は、専門家に相談すると確実です。
よくある質問
交付申請の締切はいつですか?
令和8年度は令和8年11月30日(月)です。ただし、国の予算額に制約されるため、締切日より前に予告なく受付が終了する場合があります。取り組み内容が固まったら早めに準備を始めることをおすすめします。
建設業・運送業以外でも使えるコースはありますか?
はい。業種別課題対応コースの対象は建設業・運送業等・病院等・砂糖製造業・情報通信業/宿泊業に限られますが、労働時間短縮・年休促進支援コースと勤務間インターバル導入コースは業種を問わず全業種の中小企業事業主が対象です。
複数のコースを同時に申請できますか?
コースごとに個別に交付申請を行う仕組みです。自社の取り組みが複数のコースの要件に当てはまる場合の組み合わせ方は、要件が細かく個別事情によって変わるため、専門家に相談して整理することをおすすめします。
※支給額・要件・申請スケジュールなどの制度内容は、年度ごとの交付要綱・支給要領の改定により変更される場合があります。申請前に必ず厚生労働省の公式サイトまたは都道府県労働局でも最新情報をご確認ください。
出典(一次情報): 働き方改革推進支援助成金(厚生労働省)/業種別課題対応コース/労働時間短縮・年休促進支援コース/勤務間インターバル導入コース/団体推進コース/取引環境改善コース
成果目標の選び方には"通しやすい型"があります
同じ取り組みでも、どの成果目標を選び、どう改善事業に落とし込むかで、支給までのスムーズさは変わります。どの組み合わせが自社に合うかは、一般には出回っていません。
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この助成金の概要(早見表)
| 検索項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース/労働時間短縮・年休促進支援コース/勤務間インターバル導入コース/団体推進コース/取引環境改善コース〈令和8年度新設〉の5コース) |
| 対象業種 | 全業種(業種別課題対応コースは建設業・運送業等・病院等・砂糖製造業・情報通信業/宿泊業に限定) |
| 利用目的 | 雇用・職場環境を改善したい |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 中小企業事業主(資本金・従業員数の基準は業種により異なる。目安100人〜300人以下) |
| 支給上限額 | コースにより25万円〜500万円程度(内訳は本文表を参照。加算により上乗せ可) |
| 支給率 | 3/4(従業員30人以下かつ一部条件で4/5)。団体推進コース・取引環境改善コースは対象経費実費相当 |
| 申請受付 | 令和8年度:交付申請期限 令和8年11月30日(月)。予算切れで前倒し終了の可能性あり |
| 公式サイト | 働き方改革推進支援助成金(厚生労働省) |
※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。

