主KW: 医療費控除 サプリメント
「サプリメントは医療費控除の対象になりますか」。検索すると、正反対の答えが並びます。「治療に必要なサプリメントは対象」と書く記事もあれば、「サプリメントは対象にならない」と書く記事もあります。
結論から言うと、食品として売られているサプリメントは医療費控除の対象外です。 医薬品に該当しないためで、これは医師にすすめられていても変わりません。一方、医薬品として承認されているビタミン剤・漢方薬は、治療・療養に必要な場合に限り対象になります。市販のかぜ薬は医師の処方や指示がなくても対象です。
サプリを買っている方に関係が深いのがセルフメディケーション税制です。対象の市販薬が年1万2,000円を超えた分(上限8万8,000円)を控除できますが、健康診断・予防接種などの「一定の取組」が必要で、通常の医療費控除とは選択適用(両方は受けられず、後から変更もできません)、適用期限は令和8年12月31日までです。この記事では、この判定の仕組みを整理します。
| 論点 | 押さえること |
|---|---|
| 判定の2段 | ①薬機法上の医薬品か → ②治療または療養に必要か |
| サプリメントの扱い | 食品として売られているものは対象外。医薬品に該当しないため |
| 医薬品のビタミン剤・漢方薬 | 治療・療養に必要な場合は対象(予防・健康増進目的は対象外) |
| 市販のかぜ薬 | 対象。医師の処方や指示がなくてもよい |
| セルフメディケーション税制 | 対象の市販薬が年1万2,000円を超えた分(上限8万8,000円) |
| 通常の医療費控除との関係 | 選択適用。両方は受けられず、後から変更もできません |
どちらも半分しか正しくありません。 混乱の原因は、判定を1段でやろうとしているところにあります。
国税庁の考え方は2段構えです。
① そのモノは、薬機法上の「医薬品」に該当するか
↓ 該当する
② その支出は、「治療または療養」に必要か
↓ 必要
医療費控除の対象
①で落ちるものと、②で落ちるものがあります。 一般に「サプリメント」として食品売り場やドラッグストアで売られているものは、そもそも①の医薬品ではないので、治療目的だろうと対象になりません。一方、医薬品として承認されているビタミン剤や漢方薬は①を通るので、②の治療目的かどうかで判断されます。
この記事では、この2段判定に沿って、サプリ・市販薬・漢方薬の線引きを整理します。そのうえで、サプリを買っている多くの読者にとって実際の答えになるセルフメディケーション税制を扱います。
医療費控除の対象範囲全般は医療費控除はいくら?対象になる範囲と10万円の線、還付額の計算は医療費控除はいくら戻る?で扱っています。
第1段:薬機法上の「医薬品」かどうか
国税庁の質疑応答事例「漢方薬やビタミン剤の購入費用」に、判定の第1段が明記されています。
(注)医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第1項《医薬品の定義》に規定する医薬品に該当しない漢方薬等の購入費用は、医療費控除の対象とはなりません(所得税基本通達73-5)。
ここで出てくる「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」は、薬機法(旧薬事法)のことです。その第2条第1項で「医薬品」の定義が置かれており、この定義に当てはまらないものは、どれだけ体によいものでも医療費控除の対象になりません。
日本では、口から摂るものが次のように区分されています。
| 区分 | 例 | 医療費控除の第1段 |
|---|---|---|
| 医療用医薬品 | 医師が処方する薬 | 通る |
| 要指導医薬品・一般用医薬品(OTC医薬品) | 市販のかぜ薬、市販の胃腸薬、医薬品のビタミン剤 | 通る |
| 医薬部外品 | 栄養ドリンクの一部、うがい薬の一部 | 通らない |
| 保健機能食品(特定保健用食品・機能性表示食品・栄養機能食品) | トクホの飲料、機能性表示のサプリ | 通らない |
| 一般食品 | 多くのサプリメント、プロテイン、青汁 | 通らない |
一般に「サプリメント」と呼ばれるものは、ほとんどが下3つ(医薬部外品・保健機能食品・一般食品)に入ります。 そのため第1段で落ちます。「医師にすすめられて飲んでいる」「治療のために必要」という事情があっても、モノ自体が医薬品でなければ対象になりません。
医薬品かどうかの見分け方
商品のパッケージを見れば判断できます。
- 医薬品には「第1類医薬品」「第2類医薬品」「第3類医薬品」「要指導医薬品」のいずれかが表示されています
- 医薬部外品には「医薬部外品」と表示されています
- 食品には、これらの表示がありません。代わりに「栄養機能食品」「機能性表示食品」「特定保健用食品」などの表示があるか、何も表示がありません
ドラッグストアでは医薬品とサプリメントが隣り合った棚に並んでいることが多いので、パッケージの表示で確認するのが確実です。
第2段:治療または療養のためかどうか
第1段を通った医薬品でも、それだけでは足りません。国税庁のNo.1122は、対象になる医療費の2番目としてこう書いています。
治療または療養に必要な医薬品の購入の対価(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。)
同じビタミン剤でも、目的が変われば結論が変わります。 質疑応答事例では、この考え方がより丁寧に説明されています。
漢方薬やビタミン剤は、治療又は療養のために効能があるほか、疾病の予防や健康の増進にも効能があり、これらの購入費用について医療費控除を受けるためには、その漢方薬やビタミン剤が医薬品であることに加え、その費用が治療又は療養に必要なものであることが必要となります。
つまり、次のようになります。
| 状況 | 医薬品か | 治療目的か | 医療費控除 |
|---|---|---|---|
| 医師の指示で、貧血の治療のために医薬品の鉄剤を購入 | ○ | ○ | 対象 |
| 疲れが取れないので、医薬品のビタミン剤を購入 | ○ | ×(健康増進) | 対象外 |
| 医師にすすめられて、食品のサプリメントを購入 | × | ○ | 対象外 |
| 健康のために、食品のサプリメントを購入 | × | × | 対象外 |
3行目が、この記事でいちばん伝えたい部分です。医師にすすめられていても、そのモノが医薬品でなければ医療費控除の対象になりません。 「医師の指示があれば対象」と書いている解説がありますが、それは医薬品であることを前提にした話です。
治療目的であることをどう説明するか
医薬品のビタミン剤・漢方薬を治療目的で買った場合、後から説明を求められることがあります。用意しておくとよいのは次のものです。
- 医師の診断書・指示書・処方せんの控え。何の疾患のために、どの薬をどれだけ使うのかが分かるもの
- その疾患で継続して診療を受けている記録(診察券、領収書、お薬手帳)
- 購入した薬のレシート。品名と金額が分かるもの
医師の指示なく自己判断で買った医薬品でも、治療のためであれば対象になります。国税庁は市販のかぜ薬について「医師の処方や指示がなくても医療費控除の対象となる」と明言しています。ただしその場合、なぜ治療のためだったのかを自分で説明できる必要があります。
商品カテゴリ別の判定表
ここまでの2段判定を、身近な商品にあてはめます。
| 商品 | 医薬品か | 医療費控除 | 補足 |
|---|---|---|---|
| サプリメント(食品) | × | 対象外 | 治療目的でも対象になりません |
| プロテイン | × | 対象外 | 同上 |
| 青汁・健康茶 | × | 対象外 | 同上 |
| 特定保健用食品(トクホ) | × | 対象外 | 同上 |
| 機能性表示食品 | × | 対象外 | 同上 |
| 栄養ドリンク(医薬部外品) | ×(医薬部外品) | 対象外 | 医薬品の栄養剤なら第1段は通ります |
| ビタミン剤(医薬品) | ○ | 治療目的なら対象 | 健康増進目的は対象外 |
| 漢方薬(医薬品) | ○ | 治療目的なら対象 | 同上 |
| 漢方薬(食品として売られているもの) | × | 対象外 | 所得税基本通達73-5 |
| 市販のかぜ薬 | ○ | 対象 | 医師の処方・指示は不要 |
| 市販の胃腸薬・鎮痛薬 | ○ | 治療目的なら対象 | — |
| 湿布・目薬(医薬品) | ○ | 治療目的なら対象 | — |
| 絆創膏・マスク・消毒液 | ×(多くは雑貨・医薬部外品) | 対象外 | 予防用品は対象外 |
| 処方された薬 | ○ | 対象 | — |
なお、上の表で「対象」となるものでも、医療費控除全体の原則として「その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分」に限られます(国税庁 No.1122)。同じ薬を極端に大量に買った分まで認められるわけではありません。
サプリを買っているなら、答えはこちらかもしれない
ここまでの結論は「サプリメントは医療費控除の対象外」でした。ですが、ドラッグストアでよく買い物をする方には、別の制度が用意されています。
セルフメディケーション税制(正式には「特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例」)です。医療費控除の特例で、対象の市販薬の購入費が年1万2,000円を超えた分を控除できます。
| 通常の医療費控除 | セルフメディケーション税制 | |
|---|---|---|
| 足切り | 10万円(総所得金額等200万円未満は5%) | 1万2,000円 |
| 上限 | 200万円 | 8万8,000円 |
| 対象 | 治療にかかった医療費全般 | 対象のスイッチOTC医薬品など |
| 追加の要件 | なし | 一定の取組が必要 |
| 適用期限 | 期限なし | 令和8年12月31日まで |
足切りが1万2,000円と低いので、医療費が10万円に届かない年でも使えます。 家族で市販の花粉症の薬や鎮痛剤を買っていれば、年間1万2,000円は十分に超える金額です。
対象になるのは「スイッチOTC医薬品」など
セルフメディケーション税制の対象は、すべての市販薬ではありません。国税庁No.1129はこう説明しています。
特定一般用医薬品等購入費とは、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)から、ドラッグストアで購入できるOTC医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)等の購入費をいいます。
もともと病院で処方されていた成分が、市販薬として買えるようになったもの。それがスイッチOTC医薬品です。令和6年1月15日現在で93成分が指定されています。さらに、スイッチOTC医薬品と同種の効能・効果を持つと認められる一般用医薬品(アスピリン、アセトアミノフェンなど令和3年6月25日現在で42成分)も、外用鎮痛消炎薬・解熱鎮痛薬・鎮咳去痰薬・かぜ薬・鼻炎用点鼻薬・鼻炎用内服薬・抗ヒスタミン薬などの効能を持つ製剤であれば対象になります。
対象かどうかはレシートで分かります。 国税庁は「セルフメディケーション税制の対象となる商品には、購入の際の領収書等にセルフメディケーション税制の対象商品である旨が表示されています」と案内しています。多くのドラッグストアでは、レシートの品目に「★」などの記号が付き、下部に凡例が印字されます。
一部の商品には、パッケージに識別マークが付いています。買う前に確認したい場合はここを見てください。具体的な品目一覧は厚生労働省のホームページに「対象品目一覧」として公開されています。
サプリメントはこの制度でも対象になりません。 スイッチOTC医薬品はあくまで医薬品なので、食品であるサプリメントは入りません。
「一定の取組」が必要
セルフメディケーション税制には、通常の医療費控除にはない要件があります。申告する人が、その年に健康の保持増進および疾病の予防への取組として「一定の取組」を行っていることです。
国税庁が挙げている「一定の取組」は次の6つです。
- 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診等)
- 市区町村が健康増進事業として行う健康診査(生活保護受給者等を対象とする健康診査)
- 予防接種(定期予防接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
- 勤務先で受ける定期健康診断
- 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、特定保健指導
- 市町村が実施するがん検診
会社員の方なら、毎年の定期健康診断がそのまま4番に該当します。特別なことをする必要はありません。
ただし注意点が2つあります。
- 「一定の取組」を行う必要があるのは、申告する人本人です。 家族が健診を受けていても、申告する人が受けていなければ適用を受けられません
- 一定の取組にかかった費用そのものは、この制度の控除対象になりません。 人間ドックの費用を控除額に入れることはできません(国税庁 No.1129)
人間ドックの費用そのものについては人間ドックの費用補助・助成で扱っています。
令和8年12月31日までという期限
セルフメディケーション税制は、平成29年1月1日から令和8年12月31日までの時限措置です。
2026年(令和8年)の現在、この年の購入分が現時点で定められている最後の対象期間です。今後延長されるかどうかは税制改正の内容によります。今年ドラッグストアで対象の医薬品を買っている方は、レシートを保管しておいてください。
なお、令和8年1月1日以降に購入したものについては、対象品目の考え方が一部変わっています。国税庁No.1132は、令和8年1月1日以降に購入したものについて「その使用による医療保険療養給付費の適正化の効果が低いと認められる医薬品を除く」としています。対象品目一覧は厚生労働省のホームページで更新されるので、購入前に確認してください。
どちらを選ぶか — 選んだら変更できません
通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方しか使えません。 そして選択の変更が一切できません。国税庁No.1129は明確に書いています。
セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、通常の医療費控除との選択適用となります。したがって、この特例の適用を受ける場合は、通常の医療費控除を併せて受けることはできません。 また、これらのいずれかの適用を選択した後、更正の請求や修正申告によりこの選択を変更することはできません。
医療費控除には「後から領収書が出てきたら更正の請求で直せる」という救済がありますが、この選択だけは例外です。 申告する前に、両方で計算して大きいほうを選んでください。
判断の目安
| 状況 | 有利になりやすいほう |
|---|---|
| 医療費の合計が10万円を大きく超えている | 通常の医療費控除 |
| 医療費は少ないが、対象の市販薬を年1万2,000円以上買っている | セルフメディケーション税制 |
| 医療費の合計が10万円前後で、市販薬も多い | 両方で計算して比べる |
| 総所得金額等が200万円未満で、医療費が5%を超えている | 通常の医療費控除が有利なことが多い |
| 健康診断・予防接種を受けていない | 通常の医療費控除しか使えません |
計算して比べる例
医療費の内訳が次のような年を考えます。
病院での診療費・薬代 6万円
対象の市販薬(花粉症・鎮痛剤など) 5万円
通院の交通費 1万円
通常の医療費控除で計算した場合(総所得金額等200万円以上)
対象になるのは3つ全部です。6万円+5万円+1万円=12万円。 控除額は 12万円 − 10万円 = 2万円。
セルフメディケーション税制で計算した場合
対象になるのは市販薬の5万円だけです。 控除額は 5万円 − 1万2,000円 = 3万8,000円。
この例では、セルフメディケーション税制のほうが1万8,000円分だけ控除額が大きくなります。所得税率10%の方なら所得税の還付で1,800円、住民税の減額で1,800円、合計3,600円の差です。
逆に、医療費が20万円かかっていれば通常の医療費控除の控除額は10万円になり、こちらのほうが大きくなります。必ず両方で計算してください。
対象外のものを入れて、後で直せなくなる要因
サプリ・市販薬まわりで問題になりやすいのは次のような場合です。
- サプリメントを医療費控除に入れていた。 食品なので対象外です。医師にすすめられていても変わりません
- 医薬部外品の栄養ドリンクを入れていた。 医薬品ではないので対象外です
- 健康増進目的のビタミン剤を入れていた。 医薬品でも、治療のためでなければ対象外です
- セルフメディケーション税制の対象外の市販薬を入れていた。 レシートの表示または厚生労働省の対象品目一覧で確認してください
- 一定の取組をしていないのにセルフメディケーション税制を選んだ。 申告する人本人が健診等を受けている必要があります
- 人間ドックの費用を控除額に入れていた。 一定の取組にかかった費用は控除対象になりません
- 選択を間違えた。 これだけは更正の請求でも修正申告でも直せません
- レシートを捨てていた。 明細書の記載内容を確認するため、確定申告期限から5年を経過する日までの間、領収書の提示または提出を求められることがあります
よくある質問
医師にすすめられたサプリメントなら対象になりますか
なりません。国税庁の判定は「薬機法第2条第1項に規定する医薬品に該当するか」が先で、医薬品でなければ治療目的でも対象になりません。所得税基本通達73-5でも「医薬品に該当しない漢方薬等の購入費用は、医療費控除の対象とはなりません」とされています。パッケージに「第2類医薬品」などの表示があるかどうかで判断してください。
市販のかぜ薬は、処方せんがなくても対象になりますか
なります。国税庁の質疑応答事例「かぜ薬の購入費用」に「医師の処方や指示がなくても医療費控除の対象となる」と明記されています。かぜの治療のために使った一般的な医薬品の購入費用であれば対象です。ただし「その病状に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分」に限られます。
医薬品のビタミン剤なら全部対象になりますか
いいえ。医薬品であることは第1段の条件で、その上で「治療または療養に必要」であることが必要です。国税庁No.1122は「ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません」としています。医師の診断にもとづいて特定の疾患の治療のために使っている場合は対象ですが、疲労回復や健康維持のために飲んでいる場合は対象外です。
セルフメディケーション税制を選んだ後で、やっぱり医療費控除にしたいのですが
変更できません。国税庁No.1129に「これらのいずれかの適用を選択した後、更正の請求や修正申告によりこの選択を変更することはできません」と明記されています。医療費控除には後から直せる救済手続きがありますが、この選択だけは例外です。申告する前に、必ず両方で計算して比べてください。
家族が買った市販薬もまとめられますか
まとめられます。セルフメディケーション税制も、自己または生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った特定一般用医薬品等購入費が対象です。ただし「一定の取組」を行っている必要があるのは申告する人本人です。家族が健診を受けていても、申告する人が受けていなければ適用を受けられません。
