海水温の上昇で、養殖環境が読めなくなってきました。海の外に養殖の場を作る。それが陸上養殖です。
石巻市は、陸上養殖システムを導入する事業者に、機器導入費の1/2以内、上限300万円を補助しています。対象は水槽やポンプなど、システムを構成する機器です。なぜ石巻市がここに力を入れるのか。理由は、海洋環境の変化に左右されにくい生産基盤を、地元に増やしたいからです。
対象になるシステムと、対象になる事業者
対象になるのは、次の3方式のいずれかで陸上養殖に取り組む市内事業者です。
- 閉鎖循環式陸上養殖システム
- 半循環式型陸上養殖システム
- 地下海水等を用いたかけ流し型陸上養殖システム
方式が違えば、水の使い方も設備構成も変わります。方式を問わず対象になるのは、石巻市が「どの方式かではなく、陸上に養殖の場を作ること自体」を支援対象に据えているからです。
対象経費は「機器」。運転にかかるお金は対象外
対象経費は、大きく2つに分かれます。
- システムを構成する機器の導入費(水槽、海水汲み上げポンプなど)
- 運営費削減につながる機器の導入費(ソーラーシステム機器、蓄電池など。ただし1の導入とあわせて行う場合に限る)
一方、次の経費は対象外です。
- 建物・用地の賃借および取得の経費
- 種苗代・餌代など、養殖生産に直接かかる経費
- 人件費・電気代などの運転経費
なぜ運転経費が外れるのか。 この補助金は「養殖を始めるための設備投資」を後押しする制度であり、始めたあとに毎年かかり続けるコストまでは対象にしていないからです。初期投資の壁は補助するが、経営そのものは自力で回してもらう、という設計だと理解すると、対象・対象外の線引きが腹落ちします。
補助率1/2、上限300万円。3か年度まで使える
補助率は対象経費の1/2以内です。上限は1事業者につき1年度あたり300万円。1年度あたり原則3件までの採択で、同じ事業を最大3か年度まで継続できます。
たとえば、初年度に水槽とポンプで500万円を投じたケースを考えます。1/2なら250万円の補助です。上限300万円にはまだ余裕があるため、同じ年度にソーラーシステムを追加すれば、その分も対象に積み増せます。
3か年度という期間設定には理由があります。陸上養殖システムは、水槽の増設や設備の更新が段階的に進むことが多いため、単年度で完結させず、数年がかりの投資計画を後押しする作りになっているとみられます。
宮城県の類似制度との違い
似た名前の制度が、宮城県にもあります。閉鎖循環式陸上養殖システムの導入を対象に、補助率1/2以内・1事業者あたり上限1億円という制度です。
金額のケタが違います。理由は、対象にする事業規模の違いです。石巻市の制度は市内の中小規模の事業者が機器を段階的に増やしていく投資を想定し、県の制度は閉鎖循環式に絞ったより大規模な参入・設備投資を想定していると考えられます。
方式が「閉鎖循環式」に限定されているか(県)、3方式まで対象か(市)という違いもあります。自社の設備がどちらの方式に該当するか、投資規模がどちらに近いかで、使う制度を見極める必要があります。両制度は別の窓口・別の予算のため、要件を満たせば両方の活用を検討する余地がありますが、対象経費が重複する部分は併用できない可能性が高く、事前確認が欠かせません。
申請の流れと受付期間
石巻市の公式ページには、具体的な申請受付期間の記載がありません。「申請をされる場合は、期間に余裕をもって手続きをお願いします」という案内にとどまっています。
多くの単価・件数上限型の補助金と同様、予算の範囲内で順次対応する運用とみられます。導入を検討し始めた段階で、早めに窓口へ相談しておくのが安全です。
- 導入したい陸上養殖システムの方式・機器を検討する
- 石巻市 水産課 水産資源環境係へ事前に相談する
- 交付申請書・見積書等を提出する
- 交付決定後に機器を発注・導入する
- 実績報告を行う
窓口は石巻市 産業部 水産課 水産資源環境係(電話:0225-95-1111)です。
農林水産業向けの補助金は、認定農業者・担い手といった資格要件や、国と市の二階建て構造など、他分野にはない独自の線引きが多いジャンルです。石巻市と宮城県の制度の違いのように、似た名前でも対象・金額が大きく異なる実例は、GRANTOS公式LINEの登録者限定ページで他の農林水産業向け補助金とあわせて紹介しています。
よくある質問
かけ流し型でも対象になりますか?
対象になります。閉鎖循環式・半循環式・かけ流し型の3方式のいずれかであれば、この制度の対象です。方式による優先順位の記載はありません。
種苗代・餌代は補助してもらえますか?
対象外です。この補助金が対象にするのは、水槽やポンプなど「機器の導入費」に限られます。種苗代・餌代・人件費・電気代といった運転経費は、公式ページで明確に対象外とされています。
石巻市の制度と宮城県の制度は、両方申請できますか?
制度の窓口・予算は別ですが、同一経費の重複受給は認められない可能性が高いです。閉鎖循環式かつ規模の大きい投資であれば県の制度、それ以外の方式や段階的な投資であれば市の制度、というように、自社の計画に合う方を事前に石巻市・宮城県それぞれの窓口に確認してから検討することをおすすめします。
免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。補助率・上限額・対象経費・申請要件・受付状況は変更される場合があるため、申請前に必ず石巻市の公式ページおよび最新の案内で内容をご確認ください。
この補助金の概要(早見表)
| 検索項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業者(法人・個人事業主) |
| 制度名 | 石巻市陸上養殖システム導入支援事業費補助金 |
| 対象業種 | 水産業(陸上養殖に取り組む事業者) |
| 利用目的 | 陸上養殖システムの機器導入(水槽・ポンプ等) |
| 対象地域 | 宮城県石巻市 |
| 従業員数 | 規定なし(陸上養殖に取り組む市内事業者) |
| 補助上限額 | 300万円(1事業者・1年度あたり。3か年度が上限) |
| 補助率 | 対象経費の1/2以内 |
| 申請受付 | 公式ページに時期の記載なし(水産課水産資源環境係へお問い合わせください) |
| 公式サイト | https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10453000/100/20230221191523.html |
※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。
陸上養殖以外にも、自分の事業が対象になる補助金・助成金が他にないか気になる方は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。
宮城県制度との使い分けや対象経費の線引きに迷う場合は専門家に相談するのも一つの手です。
出典:
