保険金は下りたけれど、被災した機械の入れ替えや建物の修繕にはまだ足りない。令和7年8月豪雨で被害を受けた熊本県内の事業者に向けて、県は復旧費の3/4を1事業者あたり上限3億円まで補助しています。保険金や共済金を受け取っていても使えますが、受取額は復旧費から差し引かれます。
差し引いたあとの金額が補助の計算のもとになります。申請は事業者ごとに1回だけなので、被災した事業所が複数ある場合も、まとめて出す必要があります。
被災中小企業者再建支援補助金の要点まとめ
正式名:被災中小企業者再建支援補助金(令和7年8月豪雨)
だれが
- 申請者
- 事業者(法人・個人事業主)
- 対象業種
- 業種の指定なし(一次産業・性風俗関連営業は対象外)
- 利用目的
- 豪雨で被災した事業用の施設・設備の復旧
- 対象地域
- 熊本県内
- 従業員数
- 業種ごとの上限あり(資本金か従業員数の一方を満たす)
いくら
- 補助上限額
- 1事業者につき上限3億円
- 補助率
- 補助対象経費×3/4(千円未満切り捨て)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年1月26日〜2026年11月30日17時(必着)
- 事業の完了
- 2027年2月12日まで
うちの会社は対象になる?
次の項目にすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
BCPと保険は、申請時ではなく実績報告の審査で確認されます。保険は、補助の対象にする施設・設備の再調達価額(同じものを新しく建てる、買うのに必要な額)に対して、保険金額が30%以上のものが条件です。時価型ではなく、新価(再調達価額)型の保険に入る必要があります。
対象は、中小企業者のほか、事業協同組合などの中小企業団体と、商工会・商工会議所です。次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 農林水産業(一次産業)の施設・設備
- ✕ 医療法人・NPO法人・社会福祉法人
- ✕ みなし大企業に当たる会社
- ✕ 性風俗関連特殊営業を営む者
一次産業の事業者でも、加工業や販売業に使う施設・設備の復旧費は対象になります。みなし大企業とは、大企業が株式や出資の2分の1以上を持つ、複数の大企業が3分の2以上を持つ、役員の半数以上を大企業の役員か社員が兼ねている、のどれかに当たる会社のことです。法人格のない任意団体、学校法人、一般社団法人なども対象外です。
中小企業の範囲は中小企業支援法で決まっており、資本金か従業員数のどちらか一方が上限以内なら該当します。主な業種の上限は次のとおりです。
| 業種 | 資本金(出資総額) | 常時使用する従業員 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
ゴム製品製造業やソフトウェア業には別の基準があります。判定は発災時、交付申請時、補助事業の完了時のすべてで行われ、どの時点でも上限を超えていないことが必要です。
小規模事業者は、製造業・建設業・運輸業その他と宿泊業・娯楽業が従業者20人以下、卸売業・小売業・サービス業が5人以下です。小規模事業者は保険への加入が義務ではなく推奨にとどまります。
いくら戻ってくる?
計算の順番は「復旧にかかった費用(消費税を除く)から保険金などを引く、その金額に3/4をかける」です。千円未満は切り捨てになります。
- 製造業が被災した機械の修理に1,200万円かかり、保険金を200万円受け取った:(1,200万円 − 200万円) × 3/4 = 750万円
- 小売店が店舗の修繕に400万円かかり、保険金はなかった:400万円 × 3/4 = 300万円
- 大きな工場の建替で補助対象経費が5億円になった:5億円 × 3/4 = 3.75億円 → 上限の3億円
上限の3億円に届くのは、補助対象経費が4億円以上のときです。
規模を広げた建替や、高性能な設備への入れ替えも認められます。ただし補助の計算に使えるのは、元に戻すのに必要な額(同じ機能の設備や建物にした場合の費用)までです。たとえば同等の機械なら800万円で入れ替えられるところに1,100万円の高性能機を入れると、補助は800万円 × 3/4 = 600万円で、差額の300万円は自己負担になります。
補助金は、実績報告のあとに額が確定してから支払われる精算払いが原則です。施設は建屋単位、設備は機械や車両の単位で復旧と支払いが終わっていれば、1回だけ概算払を請求できる仕組みもあります。使いたい場合は事前に受付センターへ相談します。
何が対象で、何が対象外?
まず対象にならないものです。
- 住宅用建物(賃貸アパート・マンションを含む)と社員寮・休憩所などの福利厚生施設
- 土地の測量・造成・地盤改良、土地の購入、土地の嵩上げ
- 賃貸目的の設備(レンタカーなど)
- 汎用品の備品(テーブル・イス、食器・調理器具、書類棚・食器棚・陳列棚などの什器)
- 商品、在庫、仕掛品、原材料、消耗品、ソフトウェアなどの無形資産
- 発災前から使っていなかったもの(空き店舗など)
- 租税公課、保険料、保守費用、水害に伴う清掃・消毒費
- 官公庁への手続き費用、自社で復旧する場合の人件費
- 仮設店舗や応急処置など仮復旧の費用、見積のための事前調査費、振込手数料
- 消費税
次に対象になるものです。
- 事業用の施設(店舗・事務所・工場・倉庫など)の修繕費、建替費(建築または購入)
- 事業用の設備(機械装置・工具・車両など)の修理費、入替費(購入)
- 復旧に付随する処分費、撤去費、据付費、運搬費(単独で行うものは対象外)
施設は登記されているもの、設備は資産に計上されているものが原則です。登記や資産計上がなくても、固定資産課税台帳証明書や売買契約書などで、被災前に所有し事業に使っていたことを示せる場合は対象になることがあります。
修理が原則で、入替や建替ができるのは限られた場合です。設備は修理不能と認められるとき、施設は全壊か大規模半壊と判定されたときです。どちらも、見積を比べて入替や建替のほうが安いと認められれば選べます。
店舗兼住宅は、事業用の部分だけが面積按分で対象になります。車両は、申請者が所有して事業用だけに使っていたものが対象で、レンタカーは対象外です。
申請から入金までの順番
申請の前に、被災(罹災)証明書の準備から始めます。流れは次のとおりです。
- 被災(罹災)証明書を取る(事業者→被災した場所の市町村。出せないときは理由書と専門家の証明書で代える)
- 復旧の見積を取る(事業者→施工・納品業者。1件100万円以上は2者以上)
- 申請書類を出す(事業者→被災中小企業者補助金受付センター。2026年11月30日17時までに必着。郵送か持参)
- 交付決定を受ける(県→事業者。決定は支払いの約束ではなく、一度決まった額は増やせない)
- 復旧して、支払いまで終える(事業者→業者。2027年2月12日までに施工・納品・支払いを完了)
- 実績報告を出す(事業者→受付センター。完了と支払いの終了から15日以内か、2027年2月26日のいずれか早い日まで)
- 額の確定を受けて請求する(県→事業者。報告の審査が終わってから2か月程度)
交付決定の前に復旧した費用も、発災日(2025年8月10日)以降のものなら対象になります。ただし写真や書類で被害の状況を確認できることが条件です。決定を待たずに工事を始めた事業者も、あきらめなくて済みます。交付決定前にすでに復旧と支払いが終わっている場合は、交付決定の日から15日以内に実績報告を出します。
必要な書類
準備できた 0 / 16
履歴事項全部証明書、住民票、納税証明書は、3か月以内に取得したものを出します。決算書は直近1期分です。
上の表は基本的なケースです。個人事業主は貸借対照表の代わりに確定申告書を出します。施設なら図面、設備なら配置図、入替ならカタログや仕様書、車両なら車検証なども必要です。提出前に、県の案内ページにあるチェックリストで確認します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 請求できる保険金を請求していない:請求できるのに請求しない物件は、補助の対象外です。受け取った保険金を申告しないと不正受給として扱われ、交付決定の取消しと返還(加算金つき)になります。
- 期限と工期に間に合わない:申請書は2026年11月30日17時までに受付センターへ着く必要があります。復旧も2027年2月12日までに支払いまで終えないと対象外です。
- 支払いの証拠がない:申請者自身が支払ったことが、原則として口座振込の記録で分かる必要があります。所有者以外が払っていた場合は、所有者が払った事実を示せなければなりません。
- 所有者でない人が申請する:賃貸物件やリース品は、原則として所有する大家やリース会社が申請者です。店子が申請できるのは、事情があって個別に相談したときだけです。
- 虚偽の申告や過大な請求:不正が分かると交付が取り消され、補助金の返還が命じられます。
受け取ったあとに守ること
補助金で復旧した施設・設備は資産に計上します。取得価格または効用の増加額が50万円以上の設備は処分制限財産になり、決められた期間は転用、譲渡、貸付、取壊しなどに県の承認が要ります。施設は、手引きが50万円の線を設備にだけ付けているため、扱いを受付センターに確認します。期間は、たとえば木造店舗が22年、食料品製造業用の設備が10年、貨物自動車が5年です。
収支の帳簿と証拠書類は、補助事業を終えた年度の終了後10年間保存します。交付決定を受けた事業者の名称と所在地は、県のホームページで公表されます。
熊本地震のグループ補助金や、令和2年7月豪雨のなりわい再建支援補助金で直した設備でも、今回の豪雨で被災していれば申請できます。
よくある質問
保険金をもらっていても申請できますか?
申請できます。保険金を受け取ったことだけで対象外にはなりません。復旧にかかった費用から保険金や共済金の受取額を引いた金額が、補助対象経費になります。保険金の額が確定していない場合は、実績報告のときに合わせて出します。請求できる保険金を請求していない物件は対象外です。
店舗兼住宅も対象になりますか?
事業用の部分だけが対象です。住居部分は対象外になります。復旧費を「事業用だけの費用」「住居用だけの費用」「全体にかかる費用(基礎・屋根・外壁など)」に分け、事業用の面積の割合をかけて補助対象経費を出します。利用状況表と図面で、事業用の部分を示します。
修理ではなく建て替えや入れ替えにできるのは、どんなときですか?
修理が原則です。設備は修理不能と認められたとき、施設は全壊か大規模半壊と判定されたときに、入替や建替ができます。見積を比べて、入替や建替のほうが修理より安いと認められる場合も選べます。入替には修理不能申告書とカタログ・仕様書が要ります。建替は、見積書や平面図・立面図も合わせて出します。
交付決定の前に復旧してしまいました。対象になりますか?
発災日の2025年8月10日以降の復旧なら、対象になります。写真や書類で被害の状況が確認できることが条件で、確認できないと認められません。すでに復旧と支払いが終わっている場合は、交付決定の日から15日以内に実績報告を出します。見積が1者分しかないときは、理由書を添えます。
見積書は何社分必要ですか?
1件あたりの工事費が税込100万円以上なら、2者以上から取ります。すでに復旧が終わっている、すでに発注している、特殊な設備で他に対応できる業者がいない、複数の業者に頼んだが断られた、のどれかなら1者でも構いません。その場合は「見積書が不足している理由書」を出します。
被災(罹災)証明書が出せないときはどうなりますか?
まず被害にあった場所の市町村に、証明書を出せるかどうか確認します。市町村の受付が終わっているなどで出せない場合は、「被災(罹災)証明書が提出できない理由書」を出します。施設は建築士による建物被災状況報告書、設備は専門の業者による被災の証明書も合わせて出します。
従業員数にパートは含めますか?
役員やパートなど一部を除き、常時雇っている従業員は数えます。会社役員、個人事業主本人と同居の親族、育児・介護・傷病で休業中の人は含めません。日々雇い入れる人や、2か月以内の期間で雇う人も含めません。所定労働時間が通常の従業員より短い人も、数えない扱いです。
車両は対象になりますか?
被災時に申請者が所有し、事業用だけに使っていた車両は対象です。車検証で所有者を、車体の屋号表示、運行日誌、保管場所、任意保険の使用目的などで事業用だけであることを確認します。入替にするなら被災車両を永久抹消し、その証明書を出す必要があります(修理より入替が安いことを理由にする場合は不要です)。レンタカーと、個人事業主で事業専用割合が100%でない車両は対象外です。
借りている店舗やリースの機械は対象ですか?
原則は対象外です。ただし、貸している相手も中小企業者で、借りている事業者が復旧後も事業を続けるために不可欠な場合は、例外的に対象になります。この場合も申請者は、原則として所有者の大家やリース会社です。賃貸借契約書やリース契約書も出します。事情があるときは個別に受付センターへ相談します。
補助金はいつ入金されますか?
精算払いが原則です。実績報告を出して審査を受け、補助金の額が確定したあとに請求書を出します。報告の審査が終わってから、おおむね2か月程度かかります。年度の終わりや初めは、さらに時間がかかることがあります。一部の要件を満たせば、概算払を1回だけ請求できる場合もあります。
申請書類づくりを手伝ってくれる窓口はありますか?
県内の商工会議所と商工会が、申請書の作成などを支援しています。熊本商工会議所は096-354-6688です。ほかの地域の窓口は、手引きの20ページに一覧があります。制度そのものの問い合わせ先は、被災中小企業者補助金受付センター(096-237-7680、平日9時から17時)です。
過去のグループ補助金などで直した設備も、もう一度申請できますか?
今回の令和7年8月豪雨で被災していれば申請できます。熊本地震のグループ補助金や、令和2年7月豪雨のなりわい再建支援補助金で復旧した施設・設備も同じです。ただし、過去の補助金で直した施設を取り壊す、設備を廃棄するといった場合は、財産処分の手続きが要ることがあります。事前に相談します。
復旧費が増えたら補助も増えますか?
増えません。交付決定の額が上限になり、最終的な事業費が増えても、どんな理由でも交付決定額の増額は認められません。施工業者を変えた場合や、予定と違う設備にした場合も同じです。反対に、対象経費が減ったときは、補助金の額が再計算されて減額されます。対象経費が30%を超えて減る場合は変更申請も要ります。
