長崎市の「伴走型DX化支援補助金」は、外部の専門家に相談・アドバイスをもらいながらDXを進める費用を、補助率2分の1・上限50万円まで補助する制度です。システムや機器の購入費そのものは対象外で、支援対象は「専門家に伴走してもらう費用」に絞られている点が最大の特徴です。
なぜ「費用の補助」ではなく「伴走支援の補助」なのか
多くのDX関連補助金は、ITツールやシステムの導入費用を補助する設計になっています。しかし長崎市のこの制度は、対象経費からシステム・機器の導入費用を明確に除外し、代わりに「DXに知見を有する外部専門家による相談・アドバイスなどの伴走型支援」にかかる費用を補助する設計です。
具体的には、対象経費は次の9項目です(消費税・地方消費税相当額を除く)。
- 旅費
- 謝礼金
- 受講料
- 会場借上料
- 消耗品費
- 委託料
- 使用料
- 役務費
- その他経費(上記のいずれにも属さない、事業に必要な経費)
つまりこの補助金がカバーするのは「何を導入するか、どう進めるかを一緒に考えてくれる専門家の伴走費用」であり、「導入するツールそのもの」ではありません。自社にDXの知見がある人材がいない状態で、何から手をつければよいか分からない事業者にこそ向いている制度だといえます。
対象になる事業者の要件
補助対象になるのは、次の要件をすべて満たす中小企業者です(中小企業基本法上の中小企業者)。
- 市内に本社を有し、1年以上継続して同一事業を営んでいること
- 補助対象事業について、国・県・市などが行う類似の補助制度の適用を受けていないこと
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する性風俗関連特殊営業、公序良俗に反する事業を営む者を構成員に含まないこと
- 宗教活動・政治活動を主目的とする団体、暴力団・暴力団員の統制下にある団体でないこと
補助対象になる取り組みは、次の3区分のいずれかです。
- DX基本計画の策定支援
- データ・デジタル技術を活用した組織革新支援
- その他DXに向けて必要と認められるもの(研修の受講のみで完結する取り組みは対象外)
補助率・上限額と使い道の具体例(3業種でシミュレーション)
補助金の額は、補助対象経費の合計額に2分の1を乗じた額(1,000円未満切り捨て)で、上限は1事業者あたり50万円です。交付回数は1事業者につき1回限りとなっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 補助対象経費の2分の1 |
| 補助上限額 | 50万円(1事業者・1回限り) |
| 補助対象経費 | 旅費・謝礼金・受講料・会場借上料・消耗品費・委託料・使用料・役務費・その他経費 |
| 対象外経費 | システム・機器の購入費、消費税相当額 |
| 完了期限 | 実施年度の1月末日まで |
実際にどのくらいの規模感になるか、業種別に3パターンで試算してみます。
- 水産加工業者(DX基本計画の策定支援): ITコーディネーターに3か月ほど伴走してもらい、在庫・受注データの整理方法を一緒に整理。謝礼金45万円+旅費9万円+資料代6万円で対象経費60万円→補助額30万円
- 宿泊業(旅館・データ活用による組織革新支援): 予約・顧客管理のデータ活用について半年間専門家の指導を受け、業務フローを見直し。謝礼金80万円+旅費10万円+会場借上料10万円+消耗品費10万円で対象経費110万円→2分の1は55万円だが、上限50万円が適用
- 小売業(土産物店・その他DXに向けて必要と認められるもの): 小規模に専門家へスポットで相談。謝礼金30万円+旅費5万円+消耗品費5万円で対象経費40万円→補助額20万円
対象経費が100万円を超えると、2分の1を計算しても上限の50万円で頭打ちになります。重要なのは、この補助金だけでは実際のシステム導入費用(POSレジ・在庫管理システムなど)まではカバーできない点です。伴走支援を受けて固めた計画をもとに、実際のツール導入を進める段階では、国のIT関連補助金など他の制度と組み合わせる発想が必要になります。
国のIT関連の補助金もあわせて検討したい方は、こちらの記事で解説しています。
申請の流れとタイミング別の必要書類
申請から実績報告までの流れと、書類を提出するタイミングを時系列で整理します。
- 事前相談: 新産業推進課の無料相談窓口「ビズデジコンシェル」(095-829-1273)に相談するのが実務上の入口
- 交付申請(実施年度の9月末日まで): 交付申請書(第1号様式)、収支計画書(第2号様式)に加え、法人は登記事項証明書の写し・役員名簿、個人は直近2期分の事業の収支内訳書または青色申告決算書・貸借対照表の写しを提出
- 交付決定
- 事業実施(実施年度の1月末日までに完了)
- 実績報告(事業完了日から1か月経過した日、または実施年度の2月末日のいずれか早い日まで): 実績報告書(第4号様式)、事業明細書(第5号様式)、領収証の写し等の支出を明らかにする書類、(研修受講の場合は)受講証明書、(外部専門家を招いて指導・研修を実施した場合は)実施状況のわかる書類
さらに重要なのは、令和8年度の申請受付期間は令和8年6月1日から9月30日までとされているものの、予算がなくなり次第、期間内でも受付を終了する運用になっている点です。9月末日という表面上の締切より前に、実質的な「早い者勝ち」の締切が来る可能性があるため、検討している事業者は早めに動き出すのが安全です。
また、事業自体は実施年度の1月末日までに完了させる必要があり、実績報告も完了から1か月以内か2月末日のいずれか早い日までという期限があります。9月に交付決定を受けたとしても、そこから逆算して専門家とのスケジュールを年明けまでに終える計画を組む必要があります。
DXに限らず、自社の事業が対象になる他の補助金・助成金がないか気になる方は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。
伴走支援の対象事業の区分をどう位置づけるか、他制度との重複可否など実務の進め方に迷う場合は、専門家に相談するのも一つの手です。
よくある質問
補助金はシステムやパソコンの購入費にも使えますか?
使えません。補助対象経費は旅費・謝礼金・受講料・会場借上料・消耗品費・委託料・使用料・役務費・その他経費の9項目で、システムや機器の購入費は明確に対象外とされています。実際のツール導入費用は、国のIT関連補助金など別の制度で検討する必要があります。
補助上限額の50万円はどんな計算で決まりますか?
補助対象経費の合計額(消費税を除く)に2分の1を乗じ、1,000円未満を切り捨てた額です。ただし1事業者あたりの上限は50万円で、この金額を超えることはありません。交付回数も1事業者につき1回限りです。
個人事業主でも申請できますか?
中小企業基本法に規定する中小企業者であれば対象になり、法人・個人を問いません。個人の場合は、法人向けの登記事項証明書に代えて、直近2期分の事業の収支内訳書または青色申告決算書・貸借対照表の写しの提出が求められます。
免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。補助率・上限額・対象経費・申請要件・受付状況は変更される場合があるため、申請前に必ず長崎市の公式ページおよび最新の募集要項でご確認ください。
出典:
