効果が出るか分からないまま、IoTやAIに数百万円を使うのは怖いものです。岡山市は、この不安を「試す」と「入れる」の2段階に分けて補助しています。
対象は岡山市内に本社か主要な事業所がある中小企業で、補助率は試す段階が1/2(上限150万円)、入れる段階が1/3(上限750万円)です。令和8年度は6月30日、8月31日、9月30日の3回募集があり、市の募集ページに載っている最後の回は終わっています。次の募集が出たときに動けるよう、本格導入の枠は事前検証か同等の検証を済ませた事業者だけが申請できる点を先に押さえておくと整理しやすくなります。
岡山市 IoT・AI等先端技術導入支援補助金の要点まとめ
正式名:岡山市IoT・AI等先端技術導入支援補助金
だれが
- 申請者
- 事業者(法人・個人事業主)
- 対象業種
- 業種の指定なし(商工業者の中小企業者)
- 利用目的
- 工場・店舗のIoT化、AI導入、ロボット活用
- 対象地域
- 岡山県岡山市
- 従業員数
- 業種別の資本金・従業員数の基準あり
いくら
- 補助上限額
- 最大750万円(本格導入。事前検証は150万円)
- 補助率
- 本格導入1/3(事前検証は1/2)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 令和8年度は3回募集。第3回は2026年9月30日締切
うちの会社は対象になる?
次の項目にすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 大企業が株の半分以上を持つ会社
- ✕ 医療法人・社会福祉法人・学校法人
- ✕ 人員削減が目的の取組
- ✕ 検証なしで本格導入枠に申請する
中小企業の範囲は、業種ごとに資本金と従業員数の上限が決まっていて、どちらか一方を満たせば該当します。製造業・建設業・運輸業などは資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、小売業は5千万円以下または50人以下、サービス業は5千万円以下または100人以下です。ソフトウェア業・情報処理サービス業は3億円以下または300人以下、旅館業は5千万円以下または200人以下とされています。
大企業が発行済株式の2分の1以上を持つ会社、3分の2以上を大企業が持つ会社、役員の2分の1以上を大企業の役員か職員が兼ねる会社は「みなし大企業」にあたり、中小企業の基準を満たしていても対象外です。個人事業主は商工業者であれば対象で、NPO法人は収益事業を行う認定でない法人に限られます。許認可が必要な業種は、許認可を取っていることも条件です。
試す枠と入れる枠、どちらから始める?
2つの枠は目的が違います。迷ったときは、導入する技術の効果をすでに自社で確かめているかどうかで分けると決めやすくなります。
| 区分 | 使える場面 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|---|
| 事前検証事業 | 導入前に効果や実現性を確かめる(実証実験・コンサル) | 1/2 | 150万円 |
| 検証済み先端技術導入事業 | 確かめた技術を本格的に導入する | 1/3 | 750万円 |
本格導入の枠に申請できるのは、次のどちらかの事業者です。
- 前年度に事前検証事業を行い、その結果をもとに導入する事業者
- 独自に検証を済ませていて、1と同等と市が認める事業者
1のルートでは事前検証事業の事業実施報告書(様式E)、2のルートでは実施済みの検証内容が具体的にわかる書類(様式H)を出します。何をどこまで示せば「同等」と認められるかは、公式ページに基準が書かれていません。自社の実証実験の記録が通用するかは、申請の前に産業振興課へ見せて確かめる手があります。
本格導入の枠では、岡山市内の業者から買う経費が対象経費の過半を超えると、審査の点数が加算されます。
事前検証から入る場合、翌年度に本格導入へ進むなら、今年度のうちに事前検証を終えておく必要があります。
岡山市の事前検証の枠だけを詳しく見たい方は、こちらの記事が参考になります。
本格導入の枠だけを詳しく見たい方は、こちらです。
いくら戻ってくる?
補助額は、対象経費(消費税は含みません)に補助率をかけた額です。上限を超える分は自己負担になり、1,000円未満は切り捨てになります。
事前検証の例です。
- 食品工場が目視検品をAI画像センサーに置き換えられるか試す:240万円 × 1/2 = 120万円
- 部品メーカーが工作機械の稼働データを集める実験をする:300万円 × 1/2 = 150万円(上限に届く)
- 小売・卸売業が在庫管理をIoTセンサーで自動化できるか試す:350万円 × 1/2 = 175万円 → 上限の150万円
本格導入の例です。
- 金属加工業が工程間を搬送ロボットでつなぐ:900万円 × 1/3 = 300万円
- 鋳造業が防錆工程にセンサー付きの自動装置を入れ、データを管理する:2,400万円 × 1/3 = 800万円 → 上限の750万円
上限150万円に届くのは対象経費が300万円のとき、上限750万円に届くのは2,250万円のときです。
何に使える?
先に、対象にならないものです。
- 交付決定より前に支払った経費
- 消費税・地方消費税
- パソコン・タブレット・スマートフォンの本体代
- 販売促進のためのホームページ作成料
- 事前検証で使い切らなかった機器や部品(原則として対象外)
- 他の事業と共用するクラウドサービスの利用料
サーバーの購入費やサーバー本体のレンタル費は、クラウドの利用料としては対象になりません。機器購入費や賃借料として対象になる場合があるので、見積の書き方も含めて窓口で確かめられます。
次に、対象になる経費です。
- 外注費・手数料・報酬費(システムの設計・構築の委託費、コンサルティング費。事前検証ではPoC=実証実験の委託費、本格導入では研修費も)
- 機器・システム等購入費(センサー、カメラ、Wi-Fi機器、データ送受信装置、ソフトウェア。ロボット本体と産業機械は本格導入)
- 賃借料・使用料・利用料(機器のリース、クラウドの利用料、ライセンス料、回線使用料。補助の対象期間分だけ)
- 原材料費(センサーなどを自社で作る場合)
- 運搬費
市が示している取組例は、工場の遠隔稼働監視、製造工程の品質検査へのAI導入、図面解析のPoC、RPAによる事務作業の自動化、ロボットによる生産プロセスの改革などです。
ここでいう「IoT」は、単独の機械の自動化にとどまらず、複数の機械をネットワークにつなぎ、集めたデータで監視・保守・制御・分析のいずれかを行うことを指します。補助の目的は労働生産性(営業利益+人件費+減価償却費を、労働者数か総就業時間で割った値)を上げることで、人員削減が目的の取組は対象外です。
申請から入金までの流れ
- 募集ページで募集案内と要綱を読む(事業者→岡山市のページ。迷う点は産業振興課ものづくり振興係へ電話)
- 申請書・計画書・決算書・見積書をそろえ、チェックシートで抜けを確かめる(事業者。各回の締切まで)
- 電子メールで産業振興課に送り、送信後に電話で連絡する(事業者→産業振興課。正本のデータと、事業者名などを塗りつぶした副本のデータ)
- 審査を受け、選ばれたら通知を受ける(市→事業者。満点の6割以上の応募者が対象で、予算を超えると得点の高い順)
- 事業を始める前に、交付申請書を出す(事業者→産業振興課。同意書や市税の滞納無証明書を付ける)
- 交付決定の通知を受け、その日以降に発注・支払いをして事業を進める(市→事業者)
- 実績報告書を出す(事業者→産業振興課。労働生産性への影響がわかる資料を付ける)
- 補助額の確定通知を受け、請求書を出す(市→事業者→市。そのあとに入金)
最初の申請(応募)と、選ばれたあとの交付申請は別の手続きです。採択と交付決定も別のものです。交付決定とは、市が「この内容で補助する」と決めて通知することです。着手届と完了届は、この補助金では出さなくてよいとされています。補助を受けた翌年度から5年間は、事業の実績を市に報告します。
必要な書類
準備できた 0 / 10
申請書から見積書までが最初の申請で出す書類で、チェックシート(市の募集ページ)で抜けを確かめます。見積書は100万円(税込)を超えるものが2社以上で必要です。1社だけにするなら理由書を付けます。許認可が要る業種は許認可証の写しも付けます。
様式Hは、本格導入の枠を「同等の検証」で申請するときの書類です。前年度に事前検証を受けた人は、その事業実施報告書(様式E)を出します。同意書から下は、選ばれたあとの交付申請で出します。同意書は様式Gで、採択後の様式(D〜G)のファイルに入っています。債権者登録申請書は、市に未登録のときだけ要ります。事業開始前の状況写真も、必要な場合に添えます。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に支払った:補助の対象になるのは、交付決定の日以降に支払った経費です。契約や支払いは決定のあとにします。
- 検証の実績が足りない:本格導入の枠は、前年度の事前検証か、それと同等と認められる検証がないと申請の入口で外れます。
- 同じ経費で他の補助を受けた:国や県など他の補助金と同じ経費で重ねて受けることはできません。
- 計画を変えて承認を取っていない:事業ごとの対象経費が20%を超えて増減するときは、変更の承認が要ります。
- 審査で選ばれなかった、または予算がなくなった:審査で満点の6割以上の応募者が対象になり、予算を超えると得点の高い順に選ばれます。審査中の回があると、次の回の予算残額が上限150万円に満たない可能性があると市が案内していました。
来年度に向けて
令和8年度は6月30日(火)、8月31日(月)、9月30日(水)が締切でした。令和9年度の募集時期は、公式ページに記載がありません。
募集案内のチラシには、3回目の締切を「9月以降毎月末」とし、3回目以降は予算が残っている場合のみ実施すると書かれていました。募集ページには第4回の掲載はありません。次の募集に間に合わせるなら、本格導入の枠の前提になる事前検証を、先に済ませておくことが分かれ目になります。機械や器具、ソフトウェアには、事業が終わった会計年度の終了後5年間、財産処分の制限がかかります。売却や転用を考えるときは、先に市へ確かめてください。
よくある質問
事前検証をしていなくても、本格導入の枠に申請できますか?
前年度に事前検証事業を行っているか、独自に検証を済ませて同等と認められることが条件です。どちらも満たさない場合は、先に事前検証事業へ申請する形になります。独自の検証が「同等」に当たるかの基準は、公式ページに詳しく書かれていません。実証実験の記録や結果がわかる資料を用意して、申請の前に産業振興課へ相談しておくと、枠を選び間違えにくくなります。
個人事業主や小さな会社でも申請できますか?
個人事業主は、商工業者であれば対象です。会社は、資本金か従業員数のどちらか一方が業種ごとの基準以内なら中小企業者に当たります。たとえば卸売業なら資本金1億円以下または従業員100人以下です。ただし、大企業が株式の半分以上を持つ会社などの「みなし大企業」は、基準を満たしていても対象になりません。自社の持株比率や役員の兼務を、申請の前に確かめておくと安心です。
工場以外の業種でも使えますか?
業種の指定はありません。市の説明は、工場や店舗などのIoT化、AI技術の導入、ロボット活用です。採択された事例には、RPAによるバックオフィス業務の効率化や、自社ECの顧客データをAIで分析する営業の仕組みづくりもあります。ただし、岡山市内の事業所での取組であることが条件です。製造以外の取組が対象に当たるかは、計画の内容を示して産業振興課に確かめるのが確実です。
発注はいつの時点でしてよいですか?
補助の対象になるのは、交付決定の日以降に支払った経費です。そのため、申請の段階で見積を取るのはよくても、契約や支払いを交付決定より先に済ませると、その経費は対象になりません。事業を始める日程が決まっている場合は、決定の通知がいつ届くかを窓口で聞いて、発注の時期を組み立てます。通知前に納品されてしまう契約は、特に注意が要ります。
人を減らす目的の導入でも補助されますか?
人員削減を目的とした取組は、対象になりません。補助の目的は労働生産性の向上で、業務の改善や製品・サービスの開発による付加価値の向上、または作業にかかる労働投入量の削減などで、数値が上がることを指します。目視点検の手間を減らして付加価値の高い作業に人を回す、といった計画の書き方なら、補助の目的と合います。計画書では、生産性がどう変わるかを数字で示します。
事前検証で買った機器は、あとで本格導入に使えますか?
事前検証の補助では、機器や部品の数量を必要最小限にして、事業が終わるまでに使い切ることが原則です。終了時点で使っていない残りの品は、原則として補助の対象になりません。事前検証で取得した財産を本格導入の枠で使うことは、交付の目的の範囲内であれば認められると要綱にあります。使い方の計画は、事前に産業振興課と詰めておくと迷いません。
国や県の補助金と併用できますか?
同じ経費について、国・岡山県・その他の団体の補助金と重ねて受けることはできません。別々の経費であれば重複にはならないので、どの経費をどの制度に充てるかを分けて整理する形になります。他の補助金を申請中の場合や、採択を受けている場合は、申請書の段階で申告が要るかを産業振興課に確認するのが安全です。
何回申請できますか?
同じ年度に、同じ補助事業については、同一の事業者につき1回までです。事前検証の枠と本格導入の枠は別の補助事業として区分されています。募集は年度内に複数回ありますが、選ばれなかった場合の再申請の扱いなど、細かな点は公式ページに書かれていません。申請の前に窓口で確かめられます。
補助金はいつ入金されますか?
事業を終えて実績報告書を出し、市が補助額を確定して通知したあと、請求書を出して入金されます。交付決定の時点では入金されず、いったん自社で支払う必要があります。つまり、事業の期間中は全額を立て替える資金が要ります。入金の時期は公式ページに日数の記載がないので、資金繰りの計画を立てるときは、産業振興課に目安を聞いておくと安心です。
申請の書類はどこへ出しますか?
申請書などの書類は、電子メールで産業振興課に提出します。宛先は岡山市産業観光局商工部産業振興課ものづくり振興係で、電話は086-803-1329、メールアドレスは kougyoushinkou@city.okayama.jp です。必要な様式は市の募集ページから入手できます。提出前にチェックシートで抜けを確かめ、不明点は電話で聞くと、書類の出し直しを防げます。
令和8年度の募集は終わりましたか?
市の募集ページに載っている最後の回は、第3回の令和8年9月30日締切です。第4回の掲載はありません。募集案内のチラシには、3回目の締切が「9月以降毎月末」とあり、3回目以降は予算が残っている場合だけ実施するとされています。10月以降の追加募集があるかは募集ページから読み取れないので、産業振興課に電話で聞くのが確実です。令和9年度の募集時期は公式ページに記載がありません。次の募集に備えるなら、事前検証の計画づくりや見積の取得など、交付決定前でも進められる準備から始める手があります。
事前検証だけで終わっても構いませんか?
構いません。事前検証事業は、導入の効果や実現性を確かめるための取組を支える枠で、本格導入に進むことは義務ではありません。検証の結果、導入しないと判断するのも、一つの結論です。ただし、本格導入の枠を使いたいときは、検証の内容が申請の前提になります。検証の結果と実績は、あとから使えるように書面で残しておくと役に立ちます。
