岡山市の「IoT・AI等先端技術導入支援補助金」は、「まず試す(事前検証事業・上限150万円)」と「本格的に導入する(検証済み先端技術導入事業・上限750万円)」の2段階に分かれた補助金です。いきなり高額な設備投資に踏み切る前に、小さく検証してから本格導入に進める設計になっています。

この補助金でできること

工場・店舗のIoT化、AI技術の導入、ロボット活用に関わる取り組みが対象です。岡山市が公表している活用イメージには、次のような例があります。

  • IoT: 工作機械をネットワークでつなぎ、一部の生産ラインで稼働データを検証したうえで他ラインへ展開する
  • AI: 目視で行っていた点検工程を、AI画像センサーによる自動検知に置き換えられるか実現性を検証する
  • ロボット: 金属加工の工程間をロボットでつなぎ、加工時間の短縮を図る

「いきなり数百万円のロボットを導入して失敗したら怖い」「AIカメラが本当に自社の工程に使えるか分からない」という悩みに対し、まず低予算の検証事業で"使えるかどうか"を確かめてから、本格導入の補助を申請するという流れが用意されています。

「事前検証事業」と「検証済み先端技術導入事業」の違い

最初に押さえるべきは、この補助金が2つの事業に分かれていることです。

区分目的補助率補助上限額
事前検証事業導入前に効果・実現性を検証する1/2150万円
検証済み先端技術導入事業検証済みの技術を本格導入する1/3750万円
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  • 事前検証事業は、労働生産性向上が見込まれるIoT・AI・ロボットについて、導入効果や実現性を確認するための検証(実証実験・PoC)にかかった経費を補助率1/2・上限150万円で補助します。
  • 検証済み先端技術導入事業は、事前検証事業(前年度実施分、または同等の検証を独自に行った実績)をもとに、労働生産性向上のためにIoT・AI・ロボットを本格導入する取り組みにかかった経費を補助率1/3・上限750万円で補助します。

つまり、いきなり検証済み先端技術導入事業だけを単独で申請できるわけではなく、「前年度に本補助金の事前検証事業を行った」または「それと同等の検証を実施済みである」ことが前提条件になっています。今年度中に本格導入までこぎ着けたい場合は、検証段階を後回しにできない点に注意が必要です。

対象になる事業者

補助対象になるのは、次の条件を満たす中小企業者です。

  • 岡山市内に本社または主要な事業所(工場・オフィス・店舗等)があること
  • その岡山市内の事業所で取り組みを実施すること
  • 市税を滞納していないこと
  • 許認可が必要な業種の場合、許認可を取得済みであること
  • みなし大企業、風俗営業、暴力団関係でないこと

対象経費(共通の5カテゴリー)

事前検証事業・検証済み先端技術導入事業のいずれも、対象経費の考え方は共通です。

  1. 外注費・手数料・報酬費: システム設計・構築の委託費、コンサルティング費、技術指導・研修費など
  2. 機器・システム等購入費: センサー、Wi-Fi機器、ロボット、ソフトウェア等の購入費
  3. 賃借料・使用料・利用料: 機器のリース料、クラウドサービス利用料、ライセンス料など
  4. 原材料費: IoT設備等を自社で製作する場合の材料費
  5. 運搬費: 導入する機器等の運搬料

事前検証事業では「検証にかかった外注費・機器費」、検証済み先端技術導入事業では「本格導入にかかった機器購入費・構築費」という形で、同じカテゴリーの中でも検証段階か本格導入段階かで支出の中身が変わってくるイメージです。

補助額のシミュレーション:検証と本格導入でここまで変わる

具体的な業種・使い道で見てみます。

  • 金属加工業(本格導入フェーズ): 工程間を人手で運んでいた金属加工ラインに搬送ロボットを導入し加工時間を短縮する取り組み。機器購入費・構築費が900万円かかった場合、検証済み先端技術導入事業(補助率1/3・上限750万円)を使うと、対象経費900万円の1/3=300万円が補助され、自己負担は600万円になる
  • 食品製造業(事前検証フェーズ): 目視で行っていた検品工程をAI画像センサーに置き換えられるか、まず小規模な実証実験で確認する取り組み。検証費用が200万円かかった場合、事前検証事業(補助率1/2・上限150万円)では対象経費200万円の1/2=100万円が補助上限内に収まり、実際に100万円が補助される
  • 小売・卸売業(事前検証フェーズ): 店舗の在庫管理をIoTセンサーで自動化できるか、一部の商品カテゴリーで試験導入する取り組み。検証費用が350万円の場合、1/2=175万円は上限150万円を超えるため、補助額は上限の150万円で頭打ちになる

このように、まず事前検証事業で小さく試して感触をつかみ、手応えがあれば翌年度以降に検証済み先端技術導入事業(上限750万円)で本格導入に進むという2段階の使い方が、この補助金の設計に最も合った活用法です。

令和8年度の申請スケジュールと"隠れ期限"

令和8年度は、事前検証事業・検証済み先端技術導入事業ともに複数回の募集が設定されています。

  1. 募集①: 令和8年6月30日(火曜日)締切(受付終了)
  2. 募集②: 令和8年8月31日(月曜日)締切(現在募集中)
  3. 募集③: 募集②終了後、令和8年11月までの毎月末(土日祝の場合は直前の平日)締切。予算残額がある場合のみ実施

ここで重要なのが、検証済み先端技術導入事業を申請するには「前年度(またはそれ以前)に事前検証を済ませている」ことが前提になるという点です。つまり、

  • 来年度に本格導入の補助を使いたい事業者は、今年度のうちに事前検証事業へ申請しておく必要がある
  • 逆に「検証済み先端技術導入事業だけ来年急に申請しよう」とすると、検証実績がない場合は対象外になりかねない

という、通常の締切とは別の"時間差の隠れ期限"が存在します。IoT・AI・ロボット導入を検討している事業者は、まず今年度中に事前検証事業へのエントリーを済ませておくかどうかを早めに判断しておくのが安全です。

必要書類は事業ごとに異なります。

  • 事前検証事業: 申請書、計画書、チェックシート(採択後は様式1・3・4・6、労働生産性向上の目標を示す様式、様式D〜G等の提出が必要)
  • 検証済み先端技術導入事業: 申請書、計画書、様式H(検証作業内容を示す様式)、チェックシート(採択後に追加書類あり)

各様式は岡山市公式ページからダウンロードでき、募集③は予算残額次第で実施されないこともあるため、早い募集回での申請を基本に考えるのが無難です。

国の制度との組み合わせも検討したい

岡山市のこの補助金は市内中小企業者向けの制度ですが、IoT・AIツールの導入にあたっては、国のIT導入補助金など全国型の制度と組み合わせられる可能性もあります。

国のIT・AI関連の補助金もあわせて検討したい方は、こちらの記事で解説しています。

あわせて読みたい【全国】IT導入補助金は何に使える?名称変更後の枠・上限・締切会計ソフトをようやくクラウドに移して、請求書のやり取りを楽にしたい。バラバラだった予約とモバイルオーダーを一本化して、電話対応に追われる時間を減らしたい。生産管理システムと会計クラウドをつない…13分で読めます

岡山市の制度以外にも、自分の事業が対象になる補助金・助成金が他にないか気になる方は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。

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事前検証と本格導入、どちらから申請すべきか迷う場合や、対象経費の分類・様式の書き方に不安がある場合は、専門家に相談するのも一つの手です。

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よくある質問

事前検証事業を経ずに、いきなり検証済み先端技術導入事業だけ申請できますか?

原則として、検証済み先端技術導入事業は前年度に本補助金の事前検証事業を行った事業者、またはそれと同等の検証を実施済みの事業者が対象です。事前検証を行っていない場合は対象外になる可能性があるため、まず事前検証事業から申請するのが基本ルートです。

対象になる業種に制限はありますか?

公式ページでは「工場や店舗等のIoT化、AI技術の導入、ロボット活用」を対象としており、製造業に限らず幅広い業種の中小企業者が対象になり得ます。ただし個別の取り組みが対象経費に該当するかどうかは、申請前に産業振興課へ確認するのが確実です。

令和8年度の募集はいつまでですか?

令和8年度は、募集①(6月30日締切)が受付終了しており、現在は募集②(8月31日締切)が受付中です。募集②終了後は、予算残額がある場合に限り募集③として11月まで毎月末締切で受付が続けられます。締切は変更されうるため、申請前に必ず岡山市公式ページで最新情報を確認してください。


免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。補助率・上限額・対象経費・申請要件・募集スケジュールは変更される場合があるため、申請前に必ず岡山市公式ページおよび最新の公募要領でご確認ください。

出典: