「おむつ 補助」と検索する方の多くが誤解しているのは、介護保険からおむつ代が直接現金で支給されるわけではないという点です。実際に使えるのは、市区町村が独自の予算で行う「紙おむつ支給事業」や「おむつ代助成」で、金額も対象も自治体ごとにばらばらです。毎月の紙おむつ代は、要介護度が重い高齢者がいる家庭では月に1万円を超えることも珍しくなく、家計への影響は決して小さくありません。
もう一つ、同じ「おむつ 補助」で検索する層に、子育て世帯向けの紙おむつ購入費助成を探している方もいます。こちらも介護保険とは無関係で、自治体が出産・子育て支援の一環として行う独自制度です。乳幼児期もおむつ代は月数千円〜1万円程度かかることが多く、育児中の家庭にとって無視できない出費になります。
この記事では、高齢者向けと乳幼児向けの両方について、実際に一次情報で確認できた自治体の制度を金額つきで整理します。 どちらも「介護保険」「出産育児一時金」のような全国一律の制度ではないため、住んでいる自治体で調べ直す必要があることが最大のポイントです。
まず結論を先に言うと、高齢者向けは「要介護度+所得制限」という2つの条件を満たす人だけが対象で、月あたり数千円〜8,000円程度の現物支給か、同程度の上限額の購入費助成のどちらかを選ぶ形が一般的です。乳幼児向けは所得制限を設けない自治体が多く、補助券方式で総額数万円を配布するパターンが目立ちます。どちらも「介護保険が財源」ではなく「市区町村の一般財源による独自事業」という点が共通しています。
なぜ「おむつの補助金」という全国一律の制度が無いのか
厚生労働省が定める介護保険制度には、住宅改修費や福祉用具購入費など現金給付の仕組みがありますが、紙おむつはこの対象品目に含まれていません。消耗品であり、レンタルや一度きりの購入で完結しないためです。
その代わり、多くの市区町村が独自財源で「高齢者紙おむつ支給事業」を実施しています。介護保険とは別の予算・別の申請窓口になるため、介護保険の要介護認定を受けていても、紙おむつ助成は別途申請しないと使えません。 要介護認定の結果は市区町村に記録が残っているため「自動的に案内が来るのでは」と思われがちですが、実際には本人または家族からの申請が必要な自治体がほとんどです。
乳幼児向けも同様です。国の出産育児一時金・出産・子育て応援交付金にはおむつ代という項目はなく、紙おむつの支給や補助券は、あくまで各市区町村が子育て支援策として上乗せしているものです。
高齢者向け紙おむつ助成の実例(一次情報)
自治体によって「現物支給(おむつそのものを届ける)」と「購入費助成(買った分の費用を助成する)」の2方式があり、金額も上限も違います。
| 自治体 | 対象要件 | 助成の内容 | 自己負担 |
|---|---|---|---|
| 横浜市 | 在宅の要介護4・5、または要介護1〜3で区が必要性を認めた人。住民税非課税世帯等 | 月額上限8,000円(要介護4・5)/6,000円(要介護1〜3)相当の現物支給 | 支給額の1割(生活保護受給者は無料) |
| 世田谷区(現物支給) | 65歳以上または40〜64歳の要介護2号被保険者。要介護3〜5、または65歳以上で入院中。2か月以上継続して失禁があること | 月40点分の紙おむつを配達 | 月500円(40点超過分は1点100円) |
| 世田谷区(おむつ代助成) | 上記と同様の要介護状態にある人 | 月額5,000円を上限に、購入した領収書分を助成 | なし(上限内は実費助成) |
| 練馬区 | 要介護1以上で常時失禁があり、介護保険料段階が8段階以下(目安として年収320万円以下)。生活保護受給者・施設入所者は対象外 | 指定の紙おむつ製品を毎月1回配達 | 月6,000円までは1割負担、超過分は総額から5,400円を差し引いた額を負担 |
| 江東区 | 65歳以上で要介護3〜5、または医師が常時おむつ使用が必要と診断。介護保険料段階が第1〜8段階。施設入所者・生活保護受給者は対象外 | 現物支給(支給限度75点まで無料、超過分は1点100円)または現金助成(月額上限7,500円) | 支給限度内は無料。現金助成は上限内で実費 |
「現物支給」と「購入費助成」のどちらか一方しか選べない自治体が多いため、申請前にどちらの方式かを確認しておくと二度手間になりません。世田谷区・江東区のように両方を用意している自治体でも、同じ月に両方を受けることはできません。
このほか、中央区・台東区・葛飾区・神戸市・さいたま市など、ほとんどの市区町村で何らかの紙おむつ支援制度があります。共通しているのは「在宅で要介護度が一定以上」「住民税非課税等の所得制限がある場合が多い」という条件で、施設に入所している人や病院に長期入院している人は対象外になるのが一般的です。
自治体によって「要介護度の下限」も異なります。練馬区は要介護1から対象になりますが、江東区は原則要介護3以上(医師の診断があれば軽度でも可)というように、同じ「要介護認定を受けている」状態でも、住んでいる自治体によって対象になるかどうかが変わります。 要介護1〜2で「うちの自治体は対象外かもしれない」と決めつけず、まずは窓口に確認することが重要です。
高齢者向け助成の申請で見落としやすい点
- 要介護認定を受けているだけでは対象になりません。 別途、市区町村の高齢福祉担当課やあんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)への申請が必要です
- 医師の意見書や、失禁の継続期間(2か月以上等)を求める自治体が多いため、申請前にかかりつけ医に相談しておくとスムーズです
- 所得制限(住民税非課税世帯等)がある自治体が大半で、課税世帯は対象外、または自己負担が重くなる設計になっています
- 施設入所者・長期入院者は対象外になるケースが多く、在宅介護であることが前提です
「年間定額」タイプの自治体もある(神戸市の例)
これまで見た自治体は「月額いくらまで」という設計でしたが、神戸市のように年間の支給総額をあらかじめ決めておき、申請時期によって金額が変わる方式を採る自治体もあります。
- 対象: 要介護4以上、世帯全員が市民税非課税、在宅で介護を受けている(入院・施設入所者は対象外)
- 支給額(申請時期による年間の紙おむつ・尿とりパッド支給額):
- 4月1日〜6月15日の申請: 10万円分
- 6月30日〜9月15日の申請: 7万5,000円分
- 9月30日〜12月15日の申請: 5万円分
- 1月5日〜3月12日の申請: 2万5,000円分
申請時期が遅くなるほど、その年度に受け取れる金額が段階的に減っていく点が特徴です。これは年度途中からの利用開始でも公平になるよう、残りの期間に応じて按分しているためです。「年度の途中で気づいたから今年はもう申請できない」と考える必要はありませんが、早く申請するほど受け取れる総額は大きくなります。
自治体によって「月額上限型」(横浜市・練馬区・江東区等)と「年間定額型」(神戸市等)のどちらを採っているかが異なるため、金額を単純比較する際は「月あたりなのか年あたりなのか」を確認する必要があります。
「要介護度に応じたポイント制」の自治体もある(葛飾区の例)
葛飾区は、要介護度が重いほど支給されるおむつの量(ポイント)が多くなる仕組みを採っています。
- 要介護4以上: 70ポイント
- 要介護3: 47ポイント
- 要介護2: 35ポイント
- 対象年齢: 65歳以上に加え、身体障害者手帳1・2級、愛の手帳1・2度、脳性まひ・進行性筋萎縮症の方も対象
入院時にはおむつを持ち込めないため、現物支給の代わりに使用料助成があります(令和7年4月以降: 要介護4以上は月額1万円、要介護3は月額7,000円、要介護2は月額5,000円が上限)。
要介護度が重い人ほど手厚くなる設計は、江東区・練馬区の「要介護度による対象の有無」とは違う考え方で、葛飾区は要介護2から対象になる代わりに支給量に差をつけています。同じ「要介護◯以上」という条件でも、自治体によって「対象になるかならないか」のライン(練馬区・江東区)と「支給量が変わるライン」(葛飾区)という2つの設計思想があることになります。
「介護保険料段階」という所得の見方に注意する
多くの自治体が所得要件を「住民税非課税世帯」ではなく、「介護保険料段階が第◯段階以下」という形で示しています。介護保険料段階は、住民税の課税状況と本人の合計所得金額・年金収入等を組み合わせて、市区町村が9段階前後に区分するものです。
- 練馬区: 介護保険料段階が第8段階以下(目安として年収320万円以下)
- 江東区: 介護保険料段階が第1〜8段階
「うちは住民税を払っているから対象外」と自己判断するのは早計です。 介護保険料段階は住民税非課税世帯より広い範囲をカバーすることが多く、一定の課税世帯も対象に含まれます。正確な段階は、毎年送られてくる「介護保険料額決定通知書」で確認できます。
入院中はおむつ助成がどう扱われるか
在宅の要介護者を対象にした制度が中心ですが、入院中の扱いは自治体によって差があります。
- 練馬区: 入院中でおむつを持ち込めない場合、月額上限5,400円(実費がそれ未満なら実費分)を支給する「入院時のおむつ代助成」がある
- 江東区: 1か月以上継続して入院している場合も、現物支給・現金助成のいずれかの対象になる
- 世田谷区: 65歳以上で入院中であることが対象要件の一つに含まれている
一方で、「退院後の申請」や「亡くなった後の申請」は受け付けないという運用が一般的です(江東区が明記)。入院が長引きそうな場合は、入院中であっても早めに申請しておくことが重要です。
乳幼児向け紙おむつ補助の実例(一次情報)
乳幼児向けは、現金給付ではなく「補助券」の形式を取る自治体が目立ちます。
- 神奈川県中井町「子育て応援紙オムツ補助事業」: 1歳6か月未満の子どもが対象。3,000円×18回(最大54,000円)分の補助券を、新生児訪問や健診のタイミングで概ね3か月ごとに交付。指定店舗でのみ使用可能
- 自治体によっては、紙おむつそのものを定期的に配送する現物支給型もあります
乳幼児向けは高齢者向けと違い、所得制限を設けず全世帯を対象にしている自治体が多い傾向があります。子育て世帯全体への支援という位置づけが強いためです。ただし金額・方式・対象年齢は自治体ごとに大きく異なるため、「近隣の市区町村にあるから自分の市にもあるはず」とは限りません。
高齢者向けが「介護保険の対象外を市区町村が補う」という発想であるのに対し、乳幼児向けは「出産・子育て応援交付金だけではカバーしきれない消耗品費を独自に上乗せする」という発想に近く、制度としての位置づけがそもそも異なります。 出産・子育て応援交付金など国の給付制度の全体像は出産の補助金・給付金まとめで解説しているので、あわせて確認すると、乳幼児期にもらえるお金の全体像がつかみやすくなります。
おむつ代と医療費控除の関係
高齢者向けの紙おむつ代は、一定の条件を満たせば医療費控除の対象になります。 ただし、単におむつを買っただけでは対象にならず、次の条件が必要です。
- 寝たきり等の状態で、6か月以上にわたり治療を受けている人であること
- 医師が発行する「おむつ使用証明書」があること(2年目以降は、市区町村・介護保険の「主治医意見書」で代替できる場合もある)
自治体の紙おむつ助成制度を利用していても、自己負担分(自治体助成でカバーしきれなかった分)は医療費控除の対象にできます。 逆に、自治体の助成を受けずに全額自己負担でおむつを購入している場合も、おむつ使用証明書があれば医療費控除の対象になります。
自治体の助成制度と医療費控除は「どちらか一方」ではなく併用できるため、両方の窓口を確認しておくと自己負担をより軽くできます。医療費控除の具体的な申告手順は医療費控除はいくら戻るかで解説しています。
おむつ使用証明書は、毎年発行してもらう必要はありません。 2年目以降は、確定申告書に「おむつ使用証明書は前年に提出済みで、要介護認定の主治医意見書の写しをもって代える」旨を記載すれば、証明書の再発行を省略できる運用が一般的です(自治体・税務署によって細部の運用が異なる場合があるため、事前確認をおすすめします)。
具体的な金額のイメージとして、月1万5,000円の紙おむつ代を1年間(12か月)自己負担した場合、年間の紙おむつ代は18万円になります。他に医療費が無くても、18万円 − 10万円 = 8万円が医療費控除の対象額になり、所得税率10%の人であれば約8,000円の還付、住民税もあわせて軽減される計算です。自治体の助成を受けて自己負担が月5,000円に減れば、年間6万円となり10万円のラインに届かないため、他の医療費(通院費・介護サービス利用料の一部等)と合算して申告する必要があります。
介護保険の他の給付制度との違い
紙おむつ以外にも、介護保険では住宅改修費(上限20万円)や福祉用具購入費(年度ごとに上限10万円)といった現金給付があります。これらは紙おむつとは別の枠組みで、要介護認定を受けていれば申請できます。介護保険全体の給付制度は介護の補助金まとめで整理していますので、住宅改修や福祉用具もあわせて検討している方はそちらもご確認ください。
申請の流れ(高齢者向けの一般的なパターン)
- お住まいの市区町村の高齢福祉担当課、またはあんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)に相談する
- 対象要件(要介護度・所得・失禁の継続期間等)を確認する
- 必要に応じて医師の意見書を取得する
- 申請書を提出する(申請月の翌月から支給対象になる自治体が多い)
- 現物支給か購入費助成かを選択し、以降は定期的に利用・請求する
- 要介護度が更新(区分変更)されたら、支給内容が変わっていないか改めて確認する
申請した月からではなく、翌月から支給対象になる自治体が多いため、必要になったら早めに相談しておくことが実質的な負担軽減につながります。また、要介護度の更新(区分変更)で支給量やポイント数が変わる自治体(葛飾区等)もあるため、要介護度が変わったタイミングで再度確認しておくと、もらい忘れ・受け取りすぎの両方を防げます。
よくある質問
介護保険でおむつ代は出ますか?
出ません。介護保険の給付対象品目に紙おむつは含まれていないため、現金給付という形では支給されません。 使えるのは市区町村が独自に行う紙おむつ支給事業やおむつ代助成です。
施設に入所していてもおむつの助成は受けられますか?
多くの自治体で在宅の要介護者であることが条件になっており、特別養護老人ホーム等の介護保険施設に入所している場合は対象外です。施設側の介護報酬におむつ代相当が含まれていることが理由の一つとされています。入院中の扱いは自治体によって異なるため、個別に確認が必要です。
乳幼児向けのおむつ補助はどこで調べればよいですか?
出産時に配布される案内や、母子健康手帳交付時の説明で案内されることが多いですが、自治体によっては窓口で聞かないと分からない場合もあります。「(お住まいの市区町村名) 紙おむつ 補助」で検索し、子育て支援課に確認するのが確実です。
高齢者向けと乳幼児向け、両方の対象になる世帯はどうすればよいですか?
それぞれ別の制度・別の申請窓口です。同じ世帯に高齢者と乳幼児がいる場合でも、両方の制度を別々に申請する必要があります。 どちらか一方を申請したからといって、もう一方が自動的に案内されるわけではありません。
要介護度が低い(要支援1・2)場合は対象になりませんか?
自治体によります。練馬区のように要介護1から対象になる自治体がある一方、江東区のように原則要介護3以上を対象とする自治体もあります。要支援1・2の段階では対象外になる自治体が多い傾向がありますが、常時失禁の状態で医師が必要性を認めれば対象になる場合もあるため、個別に確認してください。
紙おむつ助成の金額はいつから変わりますか?
助成額・所得要件は自治体の予算編成にあわせて年度ごとに見直されることがあります。葛飾区が令和7年4月に使用料助成の金額を改定した例のように、前年度に確認した金額のまま申請すると、実際の上限額と食い違う場合があるため、申請の都度、最新の要綱を確認することをおすすめします。
免責事項: 本記事の内容は2026年9月時点で確認できた情報にもとづきます。助成額・対象要件・所得制限は自治体によって異なり、予算状況や年度により変更される場合があるため、申請前に必ずお住まいの市区町村の公式ページで最新の内容をご確認ください。
