再就職手当は、失業手当(基本手当)の支給日数を残した状態で早期に再就職したときに支給される手当です。ただし「早く再就職すればもらえる」という単純な話ではなく、8つの条件をすべて満たして初めて支給対象になります。 1つでも満たさない条件があると、どれだけ早く再就職しても支給されません。この記事では、ハローワークの公式資料にもとづいて8つの条件を1つずつ確認します。
そもそも再就職手当とは何を目的にした制度か
失業手当(基本手当)は、離職後の生活を支えるための給付です。しかし、支給期間いっぱいまで求職活動を引き延ばしてしまうと、かえって早期の再就職を妨げることにもなりかねません。再就職手当は、基本手当の支給日数を残した状態で早期に再就職した人に「お祝い金」のような形で追加給付を行うことで、早期の再就職を後押しする目的で設けられている制度です。この目的があるからこそ、単に「早く再就職した」だけでなく、その再就職が安定した継続的なものであることを確認するための8つの条件が設けられています。
再就職手当の8つの条件(一覧表)
| No. | 条件 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| ① | 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること | 残り日数が少ないタイミングでの再就職は対象外になる |
| ② | 1年を超えて勤務することが確実であると認められること | 1年以下の有期契約で更新に条件がある場合や、具体的な派遣予定のない登録型派遣は対象外 |
| ③ | 待期満了日(受給資格決定日から7日経過後)以降の就職であること | 待期期間中に就職が決まると対象外 |
| ④ | 離職理由による給付制限を受けた場合、待期満了後1か月間はハローワーク等または許可・届出のある職業紹介事業者の紹介による就職であること | 求人サイトを見て自分で応募した場合や、紹介状なしで直接応募した場合は対象外 |
| ⑤ | 離職前の事業主やその関連事業主への再就職ではないこと | 同じ派遣会社の別の派遣先も対象外。年間取引額が50%以上の関連会社も対象外になりうる |
| ⑥ | 就職日前3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受けていないこと | 過去に再就職手当をもらってから3年以内の再就職は対象外 |
| ⑦ | 受給資格決定(求職申し込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものではないこと | 内定先に不満で就職活動をしたが結局同じ会社に就職した場合は対象外 |
| ⑧ | 原則として雇用保険の被保険者資格要件を満たす条件での雇用であること | 週の所定労働時間20時間未満などの働き方は対象外になりうる |
条件①: 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上
再就職手当は、失業手当をどれだけ早く切り上げて再就職したかに応じて支給率が変わります。支給残日数が所定給付日数の3分の2以上残っていれば支給率70%、3分の1以上残っていれば支給率60%です。3分の1未満まで日数を消化してしまうと、そもそも支給対象になりません。
| 所定給付日数 | 支給率60%となる残日数 | 支給率70%となる残日数 |
|---|---|---|
| 90日 | 30日以上 | 60日以上 |
| 120日 | 40日以上 | 80日以上 |
| 150日 | 50日以上 | 100日以上 |
| 180日 | 60日以上 | 120日以上 |
| 210日 | 70日以上 | 140日以上 |
| 240日 | 80日以上 | 160日以上 |
| 270日 | 90日以上 | 180日以上 |
| 300日 | 100日以上 | 200日以上 |
| 330日 | 110日以上 | 220日以上 |
| 360日 | 120日以上 | 240日以上 |
支給額は「基本手当日額×支給残日数×60%(または70%)」で計算されます(1円未満切り捨て)。ここで使う基本手当日額には上限があり、離職時の年齢が60歳未満なら6,570円、60歳以上65歳未満なら5,310円が上限です(基本手当の上限額は毎年8月1日に見直される場合があります)。実際の賃金から計算した基本手当日額がこの上限を超えていても、再就職手当の計算ではこの上限額で計算される点に注意してください。
条件②: 1年を超えて勤務することが確実であること
「1年を超えて勤務することが確実」とは、雇用契約の形式だけでなく実態も見られます。次のようなケースは②の条件を満たさない、あるいは満たさない場合があるとされています。
- 1年以下の雇用期間が定められ、契約更新に一定の目標達成が条件付けられている場合
- 登録型派遣で、具体的な派遣予定(就業先が決まっていない)がない場合
- 1年以内に会社都合による転籍・出向等の予定がある場合
「正社員だから自動的に条件を満たす」わけではなく、有期契約やフリーランス的な働き方の場合は個別に判断されます。 迷う場合はハローワークの窓口で確認してから就職を決めるのが確実です。
条件③④: 待期満了日以降・給付制限中は紹介ルートに縛りがある
離職票を提出して求職の申し込みをした日(受給資格決定日)から、失業状態にあった日が通算7日経過するまでは「待期」期間です。この待期期間中に就職が決まると、再就職手当の対象にはなりません。
自己都合退職などで給付制限(現行は原則1か月)を受けている場合は、待期満了後の1か月間、ハローワークまたは許可・届出のある民間職業紹介事業者の紹介で就職したことが条件になります。求人サイトを見て自分で応募した場合や、ハローワークの求人でも紹介状をもらわずに直接連絡して就職した場合は、この期間内であれば対象外です。給付制限期間の詳しい仕組みは、別記事「失業保険は自己都合だといつから?振込開始の日付を計算」で解説しています。
給付制限が明けてから1か月を過ぎれば、知人の紹介や新聞広告への応募など、ハローワークを介さない就職でも対象になります。
条件⑤: 離職前の事業主・関連事業主への再就職ではないこと
退職した会社に出戻りする場合は対象外です。派遣で働いていた場合は、派遣先が違っても派遣元の会社が同じであれば「同じ事業主」とみなされ対象外になります。
「関連事業主」の判定では、前職と再就職先の間で人的な交流があったり、年間売上の50%以上を両者の取引が占めていたりする場合が対象外の目安とされています。再就職手当の申請時には、再就職先に「前職の会社との関連がない」ことの証明を求められる場合があります。
条件⑥⑦: 過去の受給歴・内定のタイミング
就職日の前3年以内に再就職手当または常用就職支度手当を受けている場合は、再度の受給はできません。3年の起算点は「就職日」です。たとえば前回令和3年10月1日に就職して再就職手当を受け取った場合、令和6年10月1日より前の就職は対象外になります。
また、求職の申し込みをする前からすでに採用が内定していた会社に結局就職する場合も対象外です。ただし、内定先の労働条件に納得できず、より良い条件を求めて実際に就職活動をした結果、就職活動を諦めて元の内定先に就職した場合は対象外になりますが、求職の申し込み後に新たに応募して内定を得た別の会社であれば問題ありません。
条件⑧: 雇用保険の被保険者資格を満たす働き方であること
再就職先での働き方が、原則として週の所定労働時間20時間以上・31日以上の雇用が見込まれるなど、雇用保険に加入できる条件を満たしている必要があります。短時間のパート・アルバイトとして再就職する場合は、この条件を満たすか事前に確認しておく必要があります。
個人事業主として開業した場合も対象になりうる
再就職手当は「就職」だけでなく「事業を開始した場合」も対象になります。開業して自分の事業を営む場合も、上記の条件(特に②の「1年を超えて事業を続けることが確実であること」に相当する判断)を満たせば支給対象です。開業を検討している場合は、開業日や事業の実態についてハローワークに事前相談しておくと手続きがスムーズです。
8つの条件をすべて満たしているかのセルフチェック
自分が対象になるかどうかを判断するには、次の順番で確認していくのが分かりやすい方法です。
- 雇用保険受給資格者証を見る: 「基本手当日額」と「残日数」の欄を確認する
- 就職日の前日時点の残日数が、所定給付日数の3分の1以上あるか計算する(条件①)
- 雇用契約の内容を確認する: 契約期間、更新の条件、派遣なら派遣先が決まっているか(条件②)
- 求職の申し込みをした日から7日(待期)を過ぎているか(条件③)
- 給付制限を受けている場合、就職の経路(ハローワーク・許可のある紹介事業者経由か)を確認する(条件④)
- 再就職先が離職前の会社やその関連会社ではないか確認する(条件⑤)
- 過去3年以内に再就職手当・常用就職支度手当を受けていないか確認する(条件⑥)
- 内定のタイミングが求職申し込み前だったかどうかを振り返る(条件⑦)
- 再就職先での労働時間・雇用見込み期間が雇用保険の加入条件を満たすか確認する(条件⑧)
一つでも「いいえ」があれば、その時点で支給対象外になる可能性が高いため、就職を決める前にハローワークの窓口で確認しておくと安心です。
具体的な支給額のシミュレーション
条件を満たした場合の支給額のイメージをつかむため、2つのケースで試算します。
ケース1: 所定給付日数150日、支給残日数110日(3分の2以上)で再就職
- 支給率は70%が適用される
- 基本手当日額を6,000円と仮定すると、支給額は6,000円×110日×70%=462,000円
ケース2: 所定給付日数240日、支給残日数85日(3分の1以上、3分の2未満)で再就職
- 支給率は60%が適用される
- 基本手当日額を7,000円と仮定すると、支給額は7,000円×85日×60%=357,000円
支給残日数が多いタイミングで再就職するほど、支給率・支給額の両方が有利になります。 一方で、条件に合う再就職先を焦って選ぶと、労働条件のミスマッチにつながることもあるため、支給額だけを基準に転職時期を決めるのは避けた方がよいでしょう。
給付制限が2025年4月から1か月に短縮されたことの影響
自己都合退職の場合の給付制限期間は、2025年4月の改正で原則2か月から1か月に短縮されました。この改正により、給付制限が明けるタイミングが早まった分、条件④(給付制限中の紹介ルートの縛り)が適用される期間も短くなっています。 給付制限期間そのものの詳しい仕組みは、別記事「失業保険は自己都合だといつから?振込開始の日付を計算」で解説しています。
65歳以上で退職した場合は対象が変わる
再就職手当は、64歳以下の基本手当を受給している人を対象にした制度です。65歳以上で離職した場合は基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」という一時金が支給されるため、再就職手当の対象にはなりません。 65歳以上の給付の仕組みは、別記事「高年齢求職者給付金とは?65歳以降は一時金でもらえる」で解説しています。
転職エージェント・人材紹介サービスを使った場合の扱い
民間の転職エージェントや人材紹介サービスを利用して再就職する場合も、そのサービスが「許可・届出のある職業紹介事業者」であれば、条件④(給付制限中の紹介ルート)を満たします。ほとんどの大手転職エージェントは有料職業紹介事業の許可を得て運営しているため、通常は問題になりませんが、心配な場合は利用するサービスに許可番号の有無を確認しておくと安心です。なお、条件④は給付制限を受けている場合の待期満了後1か月間だけに適用される条件であり、給付制限を受けない会社都合退職の場合や、給付制限明けから1か月以降の就職では、この縛りはありません。就職先が決まった段階で、雇用契約書の写しなどを持参してハローワークに相談すれば、条件を満たしているかその場で確認してもらえます。
再就職手当をもらった後、給料が下がっていたら
再就職手当の条件をすべて満たして再就職できても、再就職先の給料が前職より下がっていた場合には、その差額の一部を補う「就業促進定着手当」という別の給付があります。 こちらは再就職手当を受け取っていることが前提の追加給付で、支給要件・計算方法は別記事「就業促進定着手当とは?計算方法と上限額」で解説しています。
派遣・契約社員・パートで再就職する場合の注意点
正社員以外の雇用形態で再就職する場合、条件②(1年を超えて勤務することが確実であること)の判定がとくに重要になります。契約社員として就職する場合、契約期間が1年以下でも、更新の実績や更新の見込みが高いと判断されれば条件を満たすことがあります。一方で、更新に一定の業績目標の達成などの条件が付いている場合は、②を満たさないと判断される場合があります。
パートタイムで再就職する場合は、条件⑧(雇用保険の被保険者資格要件)も重要です。週の所定労働時間が20時間未満の場合は、そもそも雇用保険に加入できないため、再就職手当の対象にもなりません。再就職先を選ぶ際は、労働時間や契約期間の見込みを事前に確認しておくことをおすすめします。
給付制限中に再就職先が決まった場合の実務的な流れ
自己都合退職などで給付制限がかかっている場合、条件④により、待期満了後1か月間はハローワークまたは許可・届出のある職業紹介事業者の紹介による就職であることが必要です。実務上は、次のような流れで進めることになります。
- ハローワークで求職の申し込みを行う(受給資格決定日)
- 待期期間(7日間)が経過する
- 給付制限期間(原則1か月)中は、ハローワークの窓口で職業相談・職業紹介を受けながら求人に応募する
- ハローワークまたは許可・届出のある民間紹介事業者からの紹介で内定を得て、入社日を決める
- 給付制限が明けた後の期間は、紹介ルートの縛りがなくなるため、知人の紹介や自己応募での就職でも対象になる
求人サイトを見て自分で直接応募した場合、たとえ実質的にハローワークの求人だったとしても、紹介状なしでは条件④を満たさない扱いになることがあるため、給付制限期間中に応募する際は、必ずハローワークの紹介状を発行してもらってから応募することが重要です。
よくある質問
支給残日数が3分の1をわずかに下回っていました。あきらめるしかありませんか?
条件①を満たさない場合、再就職手当自体は支給されません。ただし、この場合でも受け取れる可能性がある他の給付(常用就職支度手当など、就職困難者向けの制度)が別途あるため、ハローワークの窓口で個別に確認することをおすすめします。
派遣社員として就職する場合、条件②の「1年を超えて勤務することが確実」はどう判断されますか?
登録型派遣の場合、単に「派遣会社に登録した」だけでは条件を満たしません。具体的な派遣先が決まっており、そこで1年を超えて就業する見込みがあることが必要です。派遣会社との雇用契約の内容や、派遣先での就業見込み期間を確認しておく必要があります。
離職前の会社の子会社に再就職する場合、条件⑤の「関連事業主」に該当しますか?
人的な交流の有無や取引額の割合で個別に判断されます。資本関係がある子会社は関連事業主に該当する可能性が高いため、再就職手当の申請前にハローワークで確認しておくことをおすすめします。
自己都合退職の給付制限中に、内定していた会社への就職が決まりました。条件④に違反しますか?
条件④は「離職理由による給付制限を受けた場合、待期満了後1か月間はハローワーク等または許可・届出のある職業紹介事業者の紹介による就職であること」という要件です。内定を得た経緯がこの条件を満たしているか(ハローワークや許可のある紹介事業者を通じた応募だったか)によって判断されます。求人サイトで見つけて直接応募した場合は、この1か月の間は対象外になる可能性が高いため、応募のルートを事前に確認しておくことをおすすめします。
8つの条件をすべて満たしているか自分では判断がつきません。誰に相談すればよいですか?
再就職手当の条件は複雑で、とくに条件②(1年を超えて勤務することが確実であること)や条件⑤(関連事業主に該当しないか)は、雇用契約の内容や会社同士の関係性によって個別に判断が分かれます。就職先が決まった段階で、早めにハローワークの窓口に雇用契約書などの資料を持参して相談することをおすすめします。事前に確認しておくことで、後になって「対象外だった」と分かる事態を避けられます。
再就職手当の申請はいつまでにすればよいですか?
再就職手当の申請には、就職日の翌日から1か月以内という期限が設けられています。この期限を過ぎると申請を受け付けてもらえない場合があるため、再就職先が決まったら、できるだけ早くハローワークで手続きの案内を受けることをおすすめします。申請には、雇用保険受給資格者証や、再就職先の採用証明書などの書類が必要です。
再就職手当を受け取った後、条件を満たしていなかったことが後から発覚した場合はどうなりますか?
条件を満たしていないにもかかわらず再就職手当を受け取っていたことが後から判明した場合、受け取った手当の返還を求められる可能性があります。とくに条件⑤(離職前の事業主や関連事業主への再就職ではないこと)は、再就職先との関係性を偽って申請してしまうケースが見られるため注意が必要です。条件に不安がある場合は、申請前に正直にハローワークへ相談することが、後のトラブルを避ける最も確実な方法です。
