省エネの補助金は自宅の省エネ工事と会社の設備の更新で制度が分かれます。個人の住まいなら国の「住宅省エネ2026キャンペーン」が中心で、エコキュートへの交換は1台7万円(性能の高い機種は10万円)、窓の断熱改修は1戸100万円までの補助があります。中小企業や個人事業主の設備なら、環境共創イニシアチブ(SII)が受け付ける「省エネ・非化石転換補助金」と、都道府県・市区町村の制度を探します。
申請の仕組みも逆です。住宅省エネ2026キャンペーンは工事をする登録事業者が申請して、受け取った補助金を施主に還元します。一方で事業者向けの制度は自社で申請し、交付の決定を受けてから設備を発注するのが原則です。エアコンは、個人だと単体の買い替えに国の補助は無く、窓などの断熱改修とあわせたときに対象になります。
この記事では個人と事業者のどちらの制度を見ればよいか、それぞれの仕組みと額の決まり方を先に整理しました。そのあとに代表的な補助金の金額と締切の暦、多くの制度に共通する注意点、都道府県ごとの一覧を載せています。
省エネ補助金の概要
省エネ補助金という1つの制度があるわけではありません。国・都道府県・市区町村が省エネにつながる工事や設備の費用の一部を補助する制度の呼び名です。国の制度は住宅向けが国土交通省(国交省)・経済産業省・環境省の3省、事業者向けが経済産業省(資源エネルギー庁)と環境省の事業です。
個人の住まいか、事業者の設備かで見る制度が分かれる
最初に決めるのは、誰がどの建物にお金を出すかです。自宅の窓・給湯器・断熱の工事なら住宅向け、会社や店の設備なら事業者向けの制度を見ます。
| 立場 | よくある工事・設備 | 国の主な制度 | 誰が申請するか |
|---|---|---|---|
| 個人(持ち家) | 窓・ドアの断熱、エコキュートなど給湯器、壁・床・天井の断熱、節水型トイレ | 住宅省エネ2026キャンペーン(先進的窓リノベ・給湯省エネ・みらいエコ住宅) | 工事をする登録事業者 |
| 個人(新築) | GX志向型住宅・長期優良住宅・ZEH水準住宅の新築や購入 | みらいエコ住宅2026事業(新築) | 建築・販売する登録事業者 |
| 賃貸のオーナー | 賃貸集合住宅の給湯器の交換 | 賃貸集合給湯省エネ2026事業 | 登録事業者 |
| 中小企業・個人事業主 | 業務用エアコン、LED照明、ボイラー、冷凍冷蔵設備、変圧器、コンプレッサー | 省エネ・非化石転換補助金(SII) | 自社 |
| 事業用ビルの改修 | 建物の断熱の強化と空調などの高効率化 | 脱炭素ビルリノベ事業(環境省) | 自社(対象者は公募要領で確認) |
個人事業主の自宅兼店舗は、住宅の部分と事業の部分で分けて考えます。給湯省エネ2026事業は、店舗併用住宅でも専ら店舗で使う機器を補助の対象外にしています。反対に店で使う業務用の設備は、個人事業主でもSIIの補助金の対象に入ります(青色申告をしている人に限ります)。
都道府県と市区町村の制度は国とは別に募集されます。住宅向けは窓や断熱の改修・省エネ家電の買い替え、事業者向けは空調やLED照明の更新を補助するものが多く、額や条件は自治体ごとに違います。住宅省エネ2026キャンペーンの公式サイトからは、住宅リフォーム推進協議会が案内する「地方公共団体が行う住宅リフォームに係わる支援制度」の検索に進めます。事業者向けは、都道府県や市の環境・産業振興の担当課のページに載っています。この記事の下の全国一覧でも、県ごとに制度を並べています。
個人の住まい:住宅省エネ2026キャンペーンの4つの事業
住宅省エネ2026キャンペーンは新築とリフォームを対象にした4つの事業の総称です。公式サイトは「一部の新築住宅を除き、子育て世帯に限らずすべての世帯が対象」としています。リフォームで使う3つの事業の額は次のとおりです。
| 事業 | 対象の工事 | 補助の額 |
|---|---|---|
| 先進的窓リノベ2026事業(環境省) | ガラス交換(今のサッシを生かす)・内窓の設置・外窓の交換・ドアの交換 | 窓の性能と大きさごとの定額の合計。上限は住宅1戸100万円 |
| 給湯省エネ2026事業(経済産業省) | エコキュート・ハイブリッド給湯機・エネファームの設置 | 1台あたりエコキュート7万円、ハイブリッド給湯機10万円、エネファーム17万円。性能加算でエコキュートは10万円、ハイブリッドは12万円 |
| みらいエコ住宅2026事業(国土交通省) | 窓と躯体の断熱を軸にした省エネ改修。給湯器・エアコン・節水型トイレなども | 工事ごとの定額の合計。上限は住宅の建てた時期と工事の組み合わせで1戸40万〜100万円 |
給湯省エネ2026事業は戸建住宅なら2台まで、マンションなど共同住宅は1台までが対象です。電気蓄熱暖房機の撤去(1台4万円・2台まで)と電気温水器の撤去(1台2万円)には加算があります。エコキュートからエコキュートへの交換では、古いエコキュートの撤去は加算になりません。施主が個人のときは、業者と交わす共同事業実施規約で、J-クレジット制度(省エネ設備で減らした温室効果ガスの量を国が認証し、売買できるようにする制度)に参加する意思を示します。入会の手続きは、事務局が代わりに行う方法を選べます。
先進的窓リノベ2026事業は1回の申請で補助額の合計が5万円以上の工事が対象です。小さな工事だと5万円に届かないことがあるので、見積もりの段階で補助額の合計を業者に計算してもらいます。窓の工事と同じ契約なら、玄関などのドアの交換も対象に入ります。窓の補助額の決まり方は窓リノベ2026の補助額の記事と内窓の補助金の記事にまとめています。
みらいエコ住宅2026事業のリフォームは平成28年(2016年)12月31日以前に建てられた住宅が対象です。外に面した窓がある居室(リビングや寝室など)を1つ選び、その部屋で決められた組み合わせの断熱工事をすることが条件になります。公式はこの部屋を「トリガールーム」と呼び、ここでの工事を「要件化工事」としています。トリガールームでは、外に面した窓をすべて断熱改修し、住宅を建てた時期に応じて壁・屋根や天井・床のうち決められた数の部位に断熱材を入れます。条件を満たすと、家のほかの場所の工事も補助の対象に入ります。1回の申請の補助額の合計は5万円以上が必要です。窓リノベや給湯省エネですでに交付決定を受けているときは、2万円以上で申請できます。
| 住宅を建てた時期 | 窓+躯体の断熱+高効率給湯器かエアコン | 窓+躯体の断熱 |
|---|---|---|
| 平成3年(1991年)まで | 上限100万円 | 上限50万円 |
| 平成4年〜平成28年(1992〜2016年) | 上限80万円 | 上限40万円 |
工事ごとの額は、高効率エアコンが1か所52,000円、節水型トイレが1か所31,500円(掃除しやすい機能のあるものは34,500円)、エコジョーズなど潜熱回収型の給湯器が1戸30,000円などです。太陽光発電設備とエネファームの設置工事は、みらいエコ住宅2026事業のリフォームでは補助の対象外です。トイレや浴室の工事を中心に考えている方はトイレリフォームの補助金の記事、断熱の部位ごとの対象は断熱リフォームの補助金の記事で確かめられます。
新築は、みらいエコ住宅2026事業で家1戸に定額が出ます。GX志向型住宅はすべての世帯が対象で1戸110万円(寒冷地など1〜4地域は125万円)です。長期優良住宅(75万円・80万円)とZEH水準住宅(35万円・40万円)は、子育て世帯か若者夫婦世帯に限られます。詳しくはみらいエコ住宅2026事業の記事にまとめています。
4つの事業は工事の場所ごとに振り分ければ同じ家で一緒に使えます。窓は先進的窓リノベ2026事業、給湯器は給湯省エネ2026事業、残りの断熱や設備はみらいエコ住宅2026事業という分け方です。1つの窓や1台の給湯器に2つの事業の補助を重ねることはできません。
家電の買い替えとエアコンは、国より自治体の制度が中心
冷蔵庫・テレビ・エアコンなどの家電を買い替えるだけの費用に、国の補助はありません。エアコンが国の補助の対象になるのは、みらいエコ住宅2026事業のリフォームでトリガールームの断熱工事をあわせて行い、事務局に登録された型番の高効率エアコンを付けたときです。エアコンの交換だけを登録事業者に頼んでも、この事業の補助は受けられません。
家電の買い替えには都道府県や市区町村が独自の制度を出していることがあります。東京都の「東京ゼロエミポイント」は、自宅で使っているエアコン・冷蔵庫・給湯器・LED照明を省エネ性能の高い新品に買い替えると、登録販売店でその場で値引きを受けられる仕組みです。値引きは最大8万円分(1ポイント1円)で、対象者や製品によって額が変わります。対象の製品と販売店が決まっているので、買う前に特設サイトで確かめます。ほかの自治体でも家電の制度は年度ごとの予算で行われ、購入の前に申請するのか後に申請するのかも制度で違います。
会社や店で使うエアコンは別の扱いです。業務用のパッケージエアコンは、SIIの補助金の対象設備(高効率空調)に入っています。店舗や工場の空調については業務用エアコンの補助金の記事にまとめています。
事業者の設備:SIIの省エネ・非化石転換補助金と自治体の制度
事業者向けの国の代表は、経済産業省の省エネ・非化石転換補助金です。執行するのは一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)で、工場全体の省エネ(Ⅰ)、電化・脱炭素の燃料転換(Ⅱ)、決められた設備への更新(Ⅲ)、エネルギーマネジメントシステムの導入(Ⅳ)の4つの類型があります。SIIの公募要領(令和7年度補正予算)では、中小企業者等の補助率と上限が次のとおりです。
| 類型・枠 | どんな事業か | 補助率 | 上限(1事業) |
|---|---|---|---|
| (Ⅲ)設備単位型[従来枠] | LED照明や空調など、SIIが指定した設備への更新 | 1/3以内 | 1億円(下限30万円) |
| (Ⅲ)GX設備単位型[メーカー強化枠] | GXへの取り組みを表明したメーカーの指定設備への更新 | 1/3以内 | 3億円(下限30万円) |
| (Ⅲ)GX設備単位型[トップ性能枠] | 性能が特に高い設備への更新 | 1/2以内 | 3億円(下限30万円) |
| (Ⅱ)電化・脱炭素燃転型 | ボイラーなどを電化や低炭素の燃料に替える更新 | 1/2以内 | 3億円(電化は5億円。下限30万円) |
| (Ⅰ)工場・事業場型[一般枠・中小企業投資促進枠] | 指定設備などの更新で工場・事業場全体の省エネをする事業 | 1/2以内(投資回収年数が短い事業は1/3以内) | 15億円(非化石転換は20億円。下限100万円) |
| (Ⅰ)工場・事業場型[先進枠] | SIIが認めた先進設備で工場・事業場全体の省エネをする事業 | 2/3以内(指定設備などの部分は1/2以内) | 15億円(非化石転換は20億円。下限100万円) |
| (Ⅳ)エネルギー需要最適化型 | エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入 | 1/2以内 | 1億円(下限30万円) |
大企業の補助率は、同じ枠でも中小企業者等より低くなります。工場・事業場型の先進枠は1/2以内、一般枠は1/3以内です。トップ性能枠の補助率は更新のときの率で、新設は1/5以内です。
設備単位型で選べる指定設備は、高効率空調・産業ヒートポンプ・業務用給湯器・高性能ボイラ・コージェネレーション・低炭素工業炉・変圧器・冷凍冷蔵設備・産業用モータ・制御機能付きLED照明器具と、工作機械・プレス機械などの生産設備です。トップ性能枠には、圧縮した空気の熱を回収する機能付きのコンプレッサー(圧縮機)も入っています。登録された型番はSIIの「指定設備一覧」で検索でき、メーカーのカタログの型番と突き合わせて選びます。
設備単位型の申請には省エネの要件があります。更新で省エネ率10%以上、省エネ量が原油に換算して1kl以上、経費1千万円あたり1kl以上のどれかを満たすことです。省エネ量は、SIIの「補助事業ポータル」に設備の稼働時間などを入れると自動で計算されます。計算の前提がはっきりしないときは、計画の省エネ量に「裕度」(安全率)をかけて控えめに申請できます。完了後の成果報告で計画の省エネ量に届かないことを避けるためです。
「中小企業者等」には、中小企業基本法の中小企業者(業種ごとに資本金か従業員数の上限があり、製造業その他なら資本金3億円以下か従業員300人以下のどちらかを満たす会社)と、個人事業主が入ります。個人事業主は青色申告者に限られ、確定申告書と所得税青色申告決算書の写し(電子申告ならe-Taxの受信通知)を出します。医療法人・社会福祉法人・学校法人・NPO法人などで従業員300人以下の法人も含まれます。
大企業の子会社などの「みなし大企業」は除かれます。公募要領では、資本金5億円以上の法人に100%の株式を持たれている会社と、直近3年の課税所得の年平均が15億円を超える会社が当たります。導入する設備の所有者であること、直近の決算が債務超過でないことも条件です。
設備単位型の従来枠とメーカー強化枠で補助されるのは設備本体の費用(設備費)だけです。据付費・工事費・配線や配管の費用・撤去費・設計費は対象になりません。工事費が対象に入るのは、電化・脱炭素燃転型で中小企業者等が行う事業などに限られます。
公募は1年に数回に分けて行われ、回ごとに締切があります。公募のスケジュールは特設サイトの公募情報に出ます。審査では、中小企業者等の事業、2023年度以降に国の事業で省エネ診断を受けた事業所、パートナー金融機関の支援を受けた事業者、経営力向上計画の認定を受けた事業、パートナーシップ構築宣言をした企業の事業などに追加の評価があります。SIIは公募説明動画と事業概要のパンフレット(チラシ)を公開しているので、申請タイプを決める前に目を通します。国の制度の詳しい中身は省エネ・非化石転換補助金の記事にまとめています。
事業用の建物の窓を替えるときは、先進的窓リノベ2026事業の非住宅の枠が使える場合があります。対象は、第一種・第二種低層住居専用地域に建てることが認められている用途の建物(一部の用途を除く)で、その建物が実際に建つ地域は問われません。延べ床面積240㎡以下は1棟100万円、240㎡を超えると1棟1,000万円が上限です。自分の建物の用途が当たるかは、公式サイトの対象要件で確かめます。ビル全体の断熱や空調の改修は、環境省の脱炭素ビルリノベ事業の記事が参考になります。
自治体の事業者向けの制度は国より上限が小さいかわりに要件がやさしいものが多くあります。神奈川県の中小企業省エネルギー設備導入費等補助金は、空調・LED照明・ボイラー・給湯設備・コンプレッサー・変圧器・冷凍冷蔵設備などの更新に、経費の1/3(上限500万円、県の認証を受けると600万円)を補助する制度です。横浜市の省エネルギー化支援助成金(簡易申請コース)は、市内の中小企業の設備更新に経費の1/2(上限100万円)を出します。神戸市のように市が独自に出している制度もあり、神戸市の省エネ設備更新補助金の記事にまとめています。
申請からお金が入るまで(個人と事業者で順番が違う)
住宅省エネ2026キャンペーンでは、施主は申請の書類を出しません。給湯省エネ2026事業の公式サイトには「補助対象者である一般消費者が直接申請をすることはできません」と書かれています。大まかな順番は次のとおりです。
- 住宅省エネ支援事業者として登録した業者を選び、工事請負契約を結ぶ
- 工事を始める(契約より前に工事を始めると対象外)
- 必要に応じて、業者が工事中に「交付申請の予約」を出す
- 工事が終わったあと、業者が交付申請を出す
- 業者に補助金が交付され、業者が契約代金に充てるか現金で施主に還元する
業者が現金で還元する場合は補助金の交付から遅くとも2か月以内に還元を終えることになっています。補助金を受け取るための登録やアカウントは業者の側で取るもので、施主がログインする画面はありません。
事業者向けのSIIの補助金は、自社で申請します。設備単位型の大まかな流れは次のとおりです。
- 異なる販売事業者3者以上から見積もりを取る(見積もりは交付決定の前に取ってよい)
- SIIの補助事業ポータルにアカウントを登録し、申請書を作って郵送する
- 審査・採択を経て、交付決定の通知を受ける
- 交付決定の日より後に契約・発注し、設備を設置して支払いを終える
- 完了したら期限までに実績報告を出し、SIIの確定検査を受ける
- 補助金が支払われる。そのあと決められた期間の成果報告(省エネの効果)を出す
自治体の制度にも事業者と同じく「申請して交付の決定を受けてから着手」の順番を求めるものが多くあります。神奈川県の住宅向けの既存住宅省エネ改修事業費補助金は、事業の着手の2か月以上前に申請するよう求めています。国の住宅省エネ2026キャンペーンと自治体の制度では順番が逆になることがあるので、両方を使うときは自治体の要綱から先に読みます。
省エネの代表的な補助金の金額
国の制度と、上限の大きい都道府県の制度を上限額で比べた表です(制度名を押すと下の全国一覧のその制度へ移ります)。
