空調も、ボイラーも、照明も。古い設備ほど、電気代がじわじわ効いてきます。入れ替えたいのは山々でも、初期費用の壁で止まる。よくある話です。
そこで使えるのが「省エネ・非化石転換補助金」(通称・省エネ補助金)。業種を問わず、法人・個人事業主が対象です。設備の入れ替え費用を、国が1/3〜1/2、条件によっては最大2/3まで補助してくれます。工場の生産設備から店舗のLED照明・冷凍冷蔵設備、宿泊施設の給湯ボイラーまで、対象は幅広いのが特徴です。締切は公募回ごとに変わるため、現在の受付状況は必ず確認しておきましょう。
何が対象で、いくらもらえて、いつ申請すればいいか。順番に見ていきます。
省エネ・非化石転換補助金の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 省エネ・非化石転換補助金(通称:省エネ補助金) |
| 対象業種 | 全業種 |
| 利用目的 | 設備整備・IT導入をしたい |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 中小企業・個人事業主(大企業は追加要件あり) |
| 補助上限額 | 最大3億円(設備単位型・電化脱炭素燃転型)〜最大20億円(単年度)/40億円(複数年度・先進枠・非化石転換時)(工場・事業場型)。区分・枠により変動(内訳は本文表を参照) |
| 補助率 | 1/5〜2/3(区分・枠により変動。設備単位型の従来枠は1/3が目安) |
| 申請受付 | 2次公募は2026年7月9日(木)17:00で終了。3次公募は日程未定(公式サイトで確認) |
| 公式サイト | 省エネ・非化石転換補助金 2026年版特設サイト(SII) |
図: 省エネ補助金の全体像(事業区分ごとの違い)。詳しくは本文で解説します
省エネ補助金とは?【正式名称と対象】
「省エネ補助金」の正式名称は「省エネ・非化石転換補助金」(令和7年度補正予算事業)です。窓口は一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)。申請もSIIのポータルから行います。
以前の「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」は、この制度に統合されました。旧名称で検索して出てくる公募要領や様式は、そのままでは使えません。
対象は、国内で事業活動を営む法人・個人事業主です。高効率な設備への更新、電化や脱炭素燃料への転換。これらでエネルギー消費原単位(エネルギー使用量を売上高や生産量で割った指標)を改善する投資が対象になります。
省エネ補助金は何に使える?【4つの事業区分】
同じ「省エネ補助金」でも、投資の規模・内容によって4つの事業区分に分かれています。まずはどの区分が自社に近いかを確認しましょう。
設備単位型(Ⅲ)— LED照明・空調・ボイラーなど1台単位の入れ替え
もっとも身近なのがこの区分です。指定設備一覧に掲載された15区分の設備を、1台〜複数台単位で入れ替える投資が対象になります。対象設備の例は次のとおりです。
- 業務用エアコン(高効率のものへの更新)
- 制御機能付きLED照明(スケジュール制御・明るさセンサ付調光制御を搭載し、25台以上を制御できるもの。単純なLED交換のみは対象外)
- 変圧器
- 冷凍冷蔵設備
- 業務用給湯器
- ボイラー
- 産業用モータ
- 工作機械 等
「従来枠」「メーカー強化枠」「トップ性能枠」の3つの枠があり、どの枠に該当するかで補助率が変わります(詳しくは次の表)。設備本体の費用が対象で、設置工事費は対象外という点は要注意です(SII公募要領原本で全枠共通の扱いとして確認済み)。
電化・脱炭素燃転型(Ⅱ)— 化石燃料設備を電化・脱炭素燃料対応設備に更新
灯油・重油・都市ガスなどの化石燃料を使うボイラーや加熱設備を、電化設備や脱炭素燃料(水素・アンモニア等)に対応した設備に更新・改造・新設する投資が対象です。燃料転換そのものを伴う点が、設備単位型(Ⅲ)との違いです。
エネルギー需要最適化型(Ⅳ)— EMS等でエネルギー需要をコントロール
エネルギーマネジメントシステム(EMS)機器など、事業場全体のエネルギー需要を最適化するための計測・制御機器の導入が対象です。
工場・事業場型(Ⅰ)— 工場・事業場全体を対象にした大規模な省エネ計画
ボイラー・生産設備・空調・照明など複数の設備を組み合わせ、工場・事業場全体で省エネルギー計画を立てて実施する、より大規模な投資向けの区分です。上限額が数億〜数十億円と大きい一方、事業場単位での包括的な計画策定が必要になります。
図: 4つの事業区分と、対象になりやすい設備・投資規模のイメージ
多くの中小事業者にとって、まず検討しやすいのは「設備単位型(Ⅲ)」です。 1台からの設備更新に対応しており、工場・事業場全体の計画策定までは求められないためです。
いくらもらえる?事業区分別の補助率・上限額
| 事業区分 | 枠 | 補助率(中小企業) | 補助上限額 |
|---|---|---|---|
| 設備単位型(Ⅲ) | 従来枠 | 1/3以内 | 1億円 |
| 設備単位型(Ⅲ) | メーカー強化枠 | 1/3以内 | 3億円 |
| 設備単位型(Ⅲ) | トップ性能枠(更新) | 1/2以内 | 3億円 |
| 設備単位型(Ⅲ) | トップ性能枠(新設) | 1/5以内 | 3億円 |
| 電化・脱炭素燃転型(Ⅱ) | 更新・改造事業 | 1/2以内 | 3億円(電化する場合は5億円) |
| 電化・脱炭素燃転型(Ⅱ) | 新設事業 | 1/5以内 | 3億円 |
| エネルギー需要最適化型(Ⅳ) | ― | 1/2以内 | 1億円(下限30万円) |
| 工場・事業場型(Ⅰ) | 中小企業投資促進枠・一般枠・サプライチェーン連携枠 | 1/2以内(投資回収年数が一定より短い場合は1/3以内) | 単年度15億円(非化石転換は20億円) |
| 工場・事業場型(Ⅰ) | 先進枠 | 2/3以内 | 単年度15億円(非化石転換は20億円) |
上記は令和7年度補正予算・2次公募用のSII公募要領原本で確認した数値です。下限額は、設備単位型(Ⅲ)・電化脱炭素燃転型(Ⅱ)・エネルギー需要最適化型(Ⅳ)が事業全体で30万円。工場・事業場型(Ⅰ)は100万円(複数年度事業は年度ごとに100万円)です。公募回次が変わると数値が改定される場合があります。申請前は最新の公募要領で確認してください。
業種別・シミュレーション
上限額の数字だけでは実感が湧きにくいので、業種別に「いくら投資すると、いくら補助になるか」を見てみましょう。
図: 業種別に見る「いくら投資して、いくら補助されるか」。対応する枠によって補助額が変わる仕組みもあわせて確認できます
① 食品製造工場(老朽化した空調・冷却設備の更新/設備単位型・従来枠) 工場内の空調と冷却設備を、高効率なものへ入れ替える見積もりは3,000万円。 → 3,000万円 × 1/3 = 1,000万円の補助(従来枠・上限1億円の範囲内)。 導入する設備が「トップ性能枠」の要件(より高い省エネ性能基準)を満たす更新なら、補助率は1/2。3,000万円 × 1/2 = 1,500万円の補助です。増えた500万円を、エネルギー使用状況を可視化するEMS機器(エネルギー需要最適化型)に回す手もあります。
② 飲食店・小売店(制御機能付きLED照明+冷凍冷蔵設備の入れ替え/設備単位型・従来枠) 店舗全体の照明を、スケジュール制御・調光機能付きのLED(25台以上)に入れ替え、あわせて老朽化した業務用冷凍冷蔵庫を高効率タイプに更新する見積もりは900万円(設備本体費用のみ。設置工事費は別途自己負担)。 → 900万円 × 1/3 = 300万円の補助。 単純なLED交換だけでは対象にならない点に注意が必要ですが、調光制御機能付きの照明への切り替えであれば対象になり得ます。
③ 宿泊施設(給湯ボイラーの更新/設備単位型・トップ性能枠) 大浴場・客室の給湯に使うボイラーを、高効率なトップ性能クラスの機種に更新する見積もりは5,000万円(更新事業)。 → 5,000万円 × 1/2 = 2,500万円の補助(上限3億円の範囲内)。
同じ「設備を入れ替える」投資でも、枠と省エネ性能で補助率が変わります。まずは自社の投資が「設備単位型」「電化・脱炭素燃転型」「工場・事業場型」のどれに近いか、当てはめてみましょう。
販路開拓や人手不足の解消なら、別の補助金のほうが合っているケースもあります。
締切はいつ?公募スケジュールと現在の募集状況
省エネ補助金は、年度内に複数回の公募(回次)が設定される仕組みです。令和7年度補正予算による現行の公募スケジュールは次のとおりです。
- 1次公募:2026年3月30日(月)〜4月27日(月)17:00必着(受付終了・交付決定は2026年6月予定)(採択の後に届く正式な通知。これより前の発注・契約は対象外)
- 2次公募:2026年6月1日(月)〜7月9日(木)17:00必着(受付終了)
- 3次公募:日程未定。SII公式サイトで「詳細が決まり次第公表」とされている(本記事作成時点=2026年7月25日)
本記事作成時点では2次公募が終了し、3次公募はまだ始まっていません。
図: 公募は年度内に複数回。現在は2次公募が終了し、3次公募の開始を待っている段階です
承認までの重要なタイミングと必要書類
「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を押さえるほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。
| タイミング | やること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 導入を検討し始めたらすぐ | SII補助事業ポータルでアカウント登録をする | 法人・個人事業主の基本情報 |
| 公募要領の公開後(回次ごとに公開日が異なる) | 「指定設備一覧」から対象機種・要件を確認し、見積りを取得する | 設備の型番・性能を証明する資料、見積書 |
| 各回の公募期間中(例:2次公募は2026年6月1日〜7月9日17:00必着) | 交付申請書類を準備し、ポータルから電子申請する | 事業計画書、見積書、事業者の基本情報を示す書類 |
| 交付決定後 | 設備を発注・契約する(交付決定前の契約・発注は補助対象外) | 契約書・発注書 |
| 交付決定日〜事業完了期限 | 設備の設置・工事を実施する | 契約書・請求書・領収書などを保管 |
| 事業完了日から30日以内、または指定日のいずれか早い日(2次公募の場合は2027年2月5日(金)) | 実績報告書を提出する | 実績報告書、経費の支払いを証明する証憑 |
| 実績報告の審査(完了検査)後 | 補助金が入金される | ― |
| 事業完了の翌年度(4月〜3月) | エネルギー使用状況等のデータを取得する | 使用状況・省エネ効果の実績データ |
| 翌々年度5月末日まで | 省エネルギー実績を成果報告としてSIIへ報告する | 省エネ実績データ |
図: いつ・何が必要になるか。交付決定前に契約・発注してしまうと補助対象外になる点が最大の注意点です
特に注意したいのが、交付決定より前に設備を発注・契約してしまうと、補助対象外になること。「良い設備が見つかったのですぐ発注したい」という場合でも、必ず交付決定の連絡を待ってから契約するようにしましょう。
「うちの会社でも対象?」対象事業者の考え方
対象になるのは、国内で事業活動を営んでいる法人および個人事業主です。加えて、事業を実施できる経営基盤と継続性が求められます。
大企業には追加要件があります。省エネ法の事業者クラス分け評価制度で「Sクラス」(クラス分け結果でSクラスと確認できる事業者)または「Aクラス」(定期報告書の提出等の条件付き)に該当することです(公募要領原本で確認済み)。
中小企業・個人事業主なら、業種を問わず対象になり得ます。最初にやるのは、入れ替えたい設備が指定設備一覧の要件(性能基準・台数条件など)を満たすかの確認です。
よくある質問
省エネ補助金は個人事業主でも使えますか?
使えます。対象事業者は「国内において事業活動を営んでいる法人および個人事業主」と定義されており、法人に限定されていません。
補助対象は設備本体だけですか?設置工事費も含まれますか?
設備単位型(Ⅲ)では、設備本体の費用が対象で、設置工事費は対象外です(公募要領原本で全枠共通の扱いとして確認済み)。投資額全体ではなく、対象経費として認められる部分だけが補助率の計算対象になる点に注意しましょう。
交付決定前に設備を発注してしまったらどうなりますか?
交付決定前に契約・発注してしまった経費は、原則として補助対象外になります。良い条件の見積りが取れても、必ず交付決定の連絡を受けてから契約するようにしてください。
