ジョブコーチ(職場適応援助者)の費用に、助成金は出ますか。出ます。ただし事業主が申請できるのは、自社の社員を職場適応援助者に配置して支援する「企業在籍型」です。外部の支援機関に頼む「訪問型」は、支援する法人が助成金を受け取る仕組みで、頼んだ会社は申請できません。
職場適応援助者は、障害のある社員が職場に慣れるまで、仕事の進め方や人間関係や出勤の安定を支える人です。企業在籍型の助成額は障害者1人につき月1万5千円から月12万円で、支給は最長6か月です。額は障害の種類と働く時間と会社の規模で決まり、1事業主の年度合計は300万円までです。
職場適応援助者助成金の要点まとめ
正式名:職場適応援助者助成金(企業在籍型・訪問型)
だれが
- 申請者
- 障害者を雇う事業主(訪問型は認定を受けた社会福祉法人等)
- 対象業種
- 業種の指定なし(国・地方公共団体は対象外)
- 利用目的
- 職場適応援助者(ジョブコーチ)による障害者の職場適応支援
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 規模の指定なし(中小企業は月額が高い)
いくら
- 補助上限額
- 年度300万円まで(企業在籍型。月額は1人最大12万円)
- 補助率
- 定額(企業在籍型は月額、訪問型は1回9千円か1万8千円)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 通年(認定申請は支援の開始日から3か月以内)
うちの会社は対象になる?
事業主が申請できるのは企業在籍型
どちらの助成金になるかは、支援する人の所属で決まります。35歳以上の障害者が加齢で職場に適応しにくくなった場合は、同じ仕組みの「中高年齢等措置」の助成金になります。金額の表は変わりません。
| 企業在籍型 | 訪問型 | |
|---|---|---|
| 申請する人 | 障害者を雇う事業主 | 認定を受けた社会福祉法人等 |
| 支援する人 | 自社の社員(養成研修を修了した人) | 法人の職員(事業主に無償で支援) |
| 支援の相手 | 自社で雇う障害者 | 依頼してきた事業主が雇う障害者 |
| 助成の出方 | 1人あたり月額×最長6か月 | 1回の支援につき9千円か1万8千円 |
自社の障害者を外部の法人に支援してもらう場合は、会社が助成金を申請する形になりません。法人は支援を無償で行う決まりで、依頼した事業主に費用を請求しません。
対象になる条件
次のすべてに当てはまれば対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 8
支援する障害者は、正規雇用か無期雇用が基本です。有期雇用なら、本人が望む限り更新でき、65歳まで雇われる見込みが雇用契約書等で分かる必要があります。援助者は、養成研修(企業在籍型)を修了した自社の社員です。支援計画は、地域障害者職業センターか上級職場適応援助者が策定・承認したものを使います。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 障害者が役員・同居の親族・昼間学生
- ✕ 障害者がA型事業所の利用者
- ✕ 援助者がほかの支援担当を兼ねている
- ✕ 援助者1人の同時支援が3人を超える
昼間学生は昼間に授業を受ける学生のことで、雇用保険の被保険者は除きます。A型事業所は就労継続支援A型事業所です。援助者が兼ねられないのは、職場介助者・手話通訳担当者・職業生活相談支援専門員などです。同時に支援する人数には、中高年齢等措置の助成金と職場支援員の助成金の分も含みます。
特定短時間労働者(月の所定労働時間が40時間以上80時間未満)は、障害者が重度の身体障害者、重度の知的障害者、精神障害者のいずれかの場合に限り対象です。有期雇用の障害者は、更新を前提に65歳まで働く見込みがなければ対象になりません。
いくらもらえる?
助成額は障害者1人につき月額で決まり、月数を掛けた額が支払われます。支援期間は連続6か月までです。
| 働く時間(月の所定労働時間) | 精神障害者以外:中小企業 | 精神障害者以外:中小企業以外 | 精神障害者:中小企業 | 精神障害者:中小企業以外 |
|---|---|---|---|---|
| 一般労働者(120時間以上) | 月8万円 | 月6万円 | 月12万円 | 月9万円 |
| 短時間労働者(80〜120時間) | 月4万円 | 月3万円 | 月6万円 | 月5万円 |
| 特定短時間労働者(40〜80時間) | 月2万円 | 月1万5千円 | 月3万円 | 月2万円 |
中小企業にあたるのは、小売業(飲食店を含む)が資本金5,000万円以下または従業員50人以下、サービス業が5,000万円以下または100人以下、卸売業が1億円以下または100人以下、それ以外の製造業などが3億円以下または300人以下の会社です。どちらか一方を満たせば該当します。医療法人や社会福祉法人のように資本金のない法人は、常時雇用する労働者の数だけで判定します。
- 従業員150人の製造業が、精神障害のある社員(フルタイム)を支援する:12万円 × 6か月 = 72万円
- 従業員30人の小売店が、身体障害のある社員(月の所定労働時間100時間)を支援する:4万円 × 6か月 = 24万円
- 大企業が、知的障害のある社員(フルタイム)を支援する:6万円 × 6か月 = 36万円
- 中小企業が、精神障害のある社員5人(フルタイム)を支援する:12万円 × 6か月 × 5人 = 360万円 → 上限の300万円
上限の300万円は、1事業主あたり1会計年度(4月から翌年3月まで)の合計です。中高年齢等措置の助成金と合わせて数え、数える日は支給請求書の受付日です。
月数には数えない月があります。出勤した日が所定労働日の6割に満たない月と、援助者の支援がなかった月です。年次有給休暇や育児休業などの日は出勤した日として扱われますが、これらの理由で月の全部を休んだ場合は6割に満たないものとして扱われます。
援助者の養成研修の受講料は、事業主が全額負担し、研修修了から6か月以内に初めての支援を始めれば、その2分の1が助成金に上乗せされます。この上乗せは300万円の上限に含まれません。
どこまでが対象の支援?
助成されるのは、援助者が支援計画に沿って行う支援です。対象にならないものを先に挙げます。
対象にならないもの
- 支援計画に書かれていない支援
- 全部をオンラインで済ませた支援(集中的に支援する期間は対面が条件)
- 職場介助者や手話通訳担当者など、ほかの助成金の担当業務を兼ねた援助者の分
- 国や自治体の委託費・補助金で人件費の全部が支払われている人が兼ねる援助
- 同じ障害者の同じ期間に、職場支援員の配置助成金などをすでに受けている分
対象になるもの
- 障害者本人への支援(あいさつや報告などの職場でのやりとり、出勤の安定、作業の進め方、通勤)
- 家族への助言
- 同僚や上司への、障害への対応方法の助言
- 通院先や地域の支援機関との連絡と調整
- 援助者の養成研修の受講料の2分の1
申請の流れ
- 援助者にする社員に養成研修を受けさせる(事業主→社員。修了後6か月以内に初めての支援を始めると、受講料の2分の1が出ます)
- 支援計画書を作り、承認をもらう(事業主→地域障害者職業センターか上級職場適応援助者。様式第5号(企)を使います)
- 計画に沿って支援を始める(援助者→障害者。初めての支援は、経験のある援助者や上級職場適応援助者とのペア支援が原則です)
- 認定申請書を出す(事業主→事業所を管轄するJEEDの都道府県支部。支援開始日から3か月を経過する日までに様式第6号(企)を出します)
- 支援が終わったら支給請求書を出す(事業主→同じ窓口。支給対象期間の末日の翌日から2か月以内に様式第8号(企)を出します。期間の末日までに認定が出ていなければ、認定日の翌日から2か月以内です)
- 審査を受けて振り込みを待つ(JEED本部→事業主。支給決定通知書が届き、指定した口座に振り込まれます)
書類は持参か郵送で出すか、e-Gov電子申請サービスで送ります。持参・郵送の場合は、様式が3部、それ以外の書類が2部です。認定申請は、JEED本部が受け取ってから審査結果が出るまでに概ね2〜3か月かかります。
養成研修の受講料と日程は、今回確認した資料に載っていませんでした。研修を実施する機関に問い合わせて、支援を始める日から逆算して申し込むのが確実です。
必要な書類
準備できた 0 / 19
様式はJEEDの様式ダウンロードページにあります。支援計画書の承認は、地域センターか上級職場適応援助者が行います。様式番号は、支給要件確認申立書が第540号、支給請求書が第8号(企)・第8-2号(企)、支援記録票(企業在籍型職場適応援助者支援記録票)が第12号(企)です。支援記録票は支援した日ごとに書きます。
認定申請書チェックリストの正式名は「受給資格認定(変更)申請書チェックリスト」で、支給請求のときは支給請求書チェックリストを出します。上級援助者のチェックリスト(上級職場適応援助者による支援計画の作成及び承認に係るチェックリスト)と上級研修の修了証は、上級職場適応援助者が計画を策定・承認したときだけ出します。地域センターが策定・承認するときは要りません。
障害者手帳がない場合は、医師や産業医に診断書・判定書を依頼します。資格取得等確認通知書は、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)の写しです。養成研修の修了を示す書類は、企業在籍型の養成研修のものです。援助者の賃金台帳は支給対象期間の最終月分を出します。受講料の資料・領収書と修了を証明する書類は、研修費の2分の1を請求するときだけ出します。雇用保険被保険者資格喪失確認通知書の写しは、障害者か援助者が支給対象期間中に離職したときだけ出します。理由書は、援助者の離職や異動などで支給対象期間を変えるときだけ出します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 支援計画が承認されていない:企業在籍型は、地域センターか上級職場適応援助者が策定・承認した計画に沿った支援だけが対象です。計画のない支援は数えられません。
- 認定申請の期限を過ぎた:認定申請は支援開始日から3か月を経過する日までです。様式の注記は、期限を待たず準備ができたら出すよう案内しています。
- 支給請求の期限を過ぎた:支給請求書は支給対象期間の末日の翌日から2か月以内です。様式には、期限を過ぎると受理できず支給もできないと書かれています。
- 事業主の都合で障害者か援助者が辞めた:本人の都合や本人の責任による解雇などは辞めた日の前日までの分が支給され、それ以外の離職は不支給です。
- 契約期間が満了して更新されなかった:更新を希望していたのに期間満了で退職したときは不支給です。
- 偽りの記載があった:不正受給と判断されると、返還に加えて年率3%の延滞金と返還額の2割が請求され、5年間は新たな申請が認められません。
よく誤解されるポイント
外部のジョブコーチに頼むと、会社に助成金が出ますか
出ません。訪問型の助成金は、支援する法人(社会福祉法人等)に支給されます。会社が受け取れるのは、自社の社員を援助者にして支援する企業在籍型だけです。
「第1号」「第2号」の助成金と同じ制度ですか
名前が変わっています。令和8年度4月版のJEED資料では「訪問型」と「企業在籍型」で、「第1号」「第2号」という呼び方や助成率3/4という数字は出てきません。以前の解説を見て計算すると、いまの金額とずれます。
6か月で終わると、二度と使えませんか
使える場合があります。支援期間が終わったあとに再び支援する場合は、支援計画の開始日前3年間の支給対象期間が1回(精神障害者は2回)までなら対象です。
支援を始めたあとでも申請できますか
できます。認定申請の期限は、支援の開始日から3か月を経過する日までだからです。ただし支援計画の策定と承認は、支援を始める前に済ませておく流れです。計画のない支援は助成の対象にならないので、支援を始める前に地域障害者職業センターか上級職場適応援助者へ相談しておくのが確実です。
今年度の変更点・併用
令和8年度から、上級研修を修了した上級職場適応援助者が策定・承認した支援計画も助成の対象です。これまでは地域障害者職業センターが策定・承認した計画だけでした。企業在籍型では、自社の企業在籍型上級職場適応援助者が策定・承認した計画も対象です。他社の企業在籍型上級職場適応援助者が策定・承認した計画は対象になりません。
申請の様式は新様式に変わっています。JEEDの様式ページでは、新様式に対応した記入上の注意が準備中で、記入例は旧様式のものが載っています(2026年10月時点)。
助成金はJEEDの予算の範囲内で支給されます。公式資料に、予算の終了時期や受付の締切日は書かれていません。
同じ障害者に、同じ期間で併給できない助成金があります。企業在籍型は、訪問型、中高年齢等措置の助成金、職場介助者の配置助成金、職場支援員の配置助成金、職業生活相談支援専門員の配置助成金などと併用できません。
よくある質問
自社の社員をジョブコーチにするには何が必要ですか?
自社に雇われている社員で、企業在籍型の養成研修を修了し、障害者の就労支援に相当程度の経験があると機構が認めた人です。研修を修了したあとの初めての支援は、地域センターが指定する援助者か上級職場適応援助者とのペア支援が原則です。経験が十分にあると認められれば必須ではありませんが、その場合も訪問などによる助言を受けている必要があります。
外部の支援機関にジョブコーチを頼んだ費用は助成されますか?
会社に助成されません。訪問型の助成金は、支援する法人が受け取ります。この法人は支援の活動を無償で行う決まりなので、依頼した会社が費用を払う形にもなりません。会社が助成金を受け取るのは、自社の社員を援助者にして支援する企業在籍型です。外部の法人に頼むか自社で育てるかは、支援の期間と社内の体制で決めます。
パートで働く障害者も対象ですか?
週の所定労働時間が10時間以上なら対象になりえます。月の所定労働時間が120時間以上なら一般労働者、80時間以上120時間未満なら短時間労働者、40時間以上80時間未満なら特定短時間労働者として額が決まります。特定短時間労働者は重度の身体障害者、重度の知的障害者、精神障害者に限ります。雇用期間の条件もあわせて確認してください。
有期契約の障害者でも使えますか?
使えます。ただし本人が望む限り更新でき、65歳に達するまで継続して雇用されることが見込まれる契約でなければなりません。雇用契約書などで確認できる必要があります。更新を前提としない短期の契約は対象外です。支援の途中で、更新を希望していたのに契約期間の満了で退職した場合は、その支給請求が不支給になります。
申請はいつまでに出せばよいですか?
認定申請は、支援計画の開始日から3か月を経過する日までです。支援が終わったら、支給対象期間の末日の翌日から2か月以内に支給請求書を出します。どちらも期限を過ぎると進みません。認定の審査に2〜3か月かかるため、支援が始まる前から書類をそろえておくと、請求までの間があきません。
助成金はどのくらいの期間もらえますか?
企業在籍型は、障害者1人の支援1回につき連続6か月までです。支援が終わったあとに再び支援する場合は、計画の開始日前3年間の支給対象期間が1回(精神障害者は2回)までなら対象です。出勤した日が所定労働日の6割に満たない月や、支援がなかった月は月数に入らないため、6か月分が丸ごと出るとは限りません。
35歳以上の障害者の場合は別の助成金になりますか?
加齢で職場への適応が難しくなった障害者の支援は、「中高年齢等措置に係る助成金」になります。対象は35歳以上で、雇い入れから6か月を超えて雇用されている人です。金額は通常の企業在籍型と同じ表で、年度の上限300万円も合算で数えます。障害者雇用調整金の減額調整を受けている事業主も、中小企業と同じ額の欄になります。通常の助成金と同じ期間に両方は受けられません。
養成研修の受講料も助成されますか?
事業主が受講料を全額負担していて、研修修了から6か月以内に初めての支援を始めた場合に、受講料の2分の1が上乗せされます。支給は、初めての支援を実施した日を含む支給対象期間の支給にあわせて行われます。この上乗せは年度の上限300万円に含まれません。受講料の額は、今回確認した資料に載っていませんでした。
実際にかかった賃金が助成されるのですか?
実費の精算ではなく、決まった月額が支払われます。額は障害の種類と働く時間と会社の規模で決まるため、援助者の賃金が高くても助成額は変わりません。ただし賃金の支払状況は賃金台帳で確認されるので、障害者と援助者の賃金台帳を請求時に出します。請求書には、支給対象期間内に賃金の未払いがあったかを書く欄があります。
どこに申請しますか?
事業所を管轄するJEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の都道府県支部に出します。窓口は高齢・障害者業務課で、東京と大阪は高齢・障害者窓口サービス課です。持参か郵送のほか、e-Gov電子申請サービスでも送れます。電話番号と所在地は、JEEDの都道府県支部の一覧で確認できます。
国や自治体など公的な機関も申請できますか?
申請できません。この助成金の事業主には、国、地方公共団体、障害者雇用促進法施行令に定める特殊法人等は含まれません。その別表には、国立研究開発法人、独立行政法人、国立大学法人、地方独立行政法人などが載っています。自社が対象に入るか迷う場合は、管轄の支部に問い合わせてください。
支援計画は誰が作りますか?
地域障害者職業センターか上級職場適応援助者が策定するか、事業主が策定して地域センターか上級職場適応援助者が承認します。事業主が自分で作る場合は、様式第5号(企)に書き、承認を受けます。令和8年度から、上級職場適応援助者が策定・承認した計画も対象になりました。ただし企業在籍型で認められる企業在籍型上級職場適応援助者は、自社に雇われている人だけです。
