酒蔵の海外展開や新商品開発にかかる費用は、補助金で賄えるのか——賄えます。ただし対象は酒税法上の免許を持つ酒類事業者に限られ、免許のない飲食店や酒類卸の周辺業者は単独では対象になりません。
「酒類業振興支援事業費補助金」は国税庁が実施する制度です。酒類の製造免許・販売業免許のいずれかを持つ事業者、またはそうした事業者を1者以上含むグループが対象になります。日本産酒類の輸出拡大や、酒類業の経営改革・構造転換につながる取り組みを支援する制度です。
申請区分は2つ。海外展開に使う「海外展開支援枠」と、国内外の新市場開拓に使う「新市場開拓支援枠」です。海外展開支援枠は単独申請で最大1,000万円、酒類事業者3者以上のグループ申請なら最大1,500万円まで上限が上がります。新市場開拓支援枠は最大500万円です。
酒類業振興支援事業費補助金の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業者(法人・個人事業主)。酒税法(昭和28年法律第6号。酒類の製造・販売について免許制を定める法律)に基づき酒類の製造免許・販売業免許を受けた酒類事業者、または酒類事業者を1者以上含むグループ |
| 制度名 | 酒類業振興支援事業費補助金 |
| 対象業種 | 酒類製造業・酒類卸売業・酒類小売業(酒税法上の免許保有者) |
| 利用目的 | 海外展開(日本産酒類のブランディング・インバウンド需要開拓・酒蔵ツーリズム等)、新市場開拓(商品差別化・販売手法の多様化・ICT活用等) |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 規定なし(ただし新市場開拓支援枠の補助率は、常時使用従業員数20人以下〈卸売業・小売業は5人以下〉の「小規模事業者」に該当するかどうかで変わる) |
| 補助上限額 | 海外展開支援枠=1,000万円以内(下限50万円)。酒類事業者3者以上を含むグループ申請の場合は上限が嵩上げされ、3者で1,200万円、4者以上は1者ごとに100万円加算し最大1,500万円/新市場開拓支援枠=500万円以内(下限50万円) |
| 補助率 | 海外展開支援枠=補助対象経費の2分の1/新市場開拓支援枠=小規模事業者は3分の2、その他の事業者は2分の1 |
| 申請受付 | 令和8年度は複数回に分けて公募(第1期:令和8年1月19日〜2月17日、第2期:令和8年2月18日〜4月13日のほか、第3期:7月27日〜8月17日、第4期:7月27日〜9月9日、第5期:8月18日〜10月7日)。Jグランツ経由で申請 |
| 公式サイト | 補助事業について|国税庁 |
図: 酒類業振興支援事業費補助金の全体像。詳しくは本文で解説します
対象になる取り組み、ならない取り組み
海外展開支援枠と新市場開拓支援枠で、対象になる取り組みは変わります。
海外展開支援枠で対象になる例
- 海外ニーズを踏まえた新商品開発・新規ブランドの立ち上げ
- 酒蔵自体の観光化、酒蔵ツーリズムプランの策定
- 地元酒米農家と連携したストーリー性のある高付加価値商品の海外展開
新市場開拓支援枠で対象になる例
- 食品とのペアリングに特化した商品や、地方産品を生かした商品の開発
- 二次元コード等を活用したブランドストーリーの提供など、販売手法の多様化
- AI・RFID等ICT技術を活用した製造・流通の高度化
対象にならない例
- 設備投資だけで完結する事業(経費が全額「設備等費」のみで、設備導入以外の取り組みを伴わない場合は審査で評価が劣後します。設備を入れるだけでなく、それを使って何をするかまで計画書に書く必要があります)
- 補助事業期間中にテスト販売を除く通常の販売・営業行為を行う事業
- 交付決定日より前に発注・契約した経費
よくある誤解【新市場開拓支援枠には賃上げ要件がある】
海外展開支援枠には申請要件がありませんが、新市場開拓支援枠だけは「3〜5年の事業計画期間で給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる」「売上額または付加価値額を年率平均3%以上増加させる」という2つの事業計画を策定することが申請要件になっています。
この目標が事業計画終了時点で未達の場合、導入した設備等の残存簿価等に補助金額を乗じた分の返還を求められることがあります。ただし、売上額・付加価値額の伸びが目標に届かなかった場合や天災等やむを得ない事情があるときは、一定の条件下で返還が免除されます。「新市場開拓支援枠のほうが補助率が高いから」という理由だけで安易に選ぶと、賃上げの数値目標を背負うことになる点に注意してください。
よくある質問
Q. 酒類製造免許がない飲食店単独でも申請できますか?
A. できません。申請者(代表申請者)またはグループの参画事業者のいずれかに、酒税法上の製造免許・販売業免許を受けた酒類事業者が含まれている必要があります。
Q. 海外展開支援枠と新市場開拓支援枠は同時に申請できますか?
A. 公募要領には申請区分ごとの様式が定められています。両方に該当する取り組みがある場合は、どちらの枠で申請すべきか事前に所轄の国税局(酒類業調整官)へ確認することをおすすめします。
Q. 交付決定前に設備を発注してしまった場合はどうなりますか?
A. 交付決定日より前に発注・購入契約を行った経費は、補助対象になりません。見積りの取得までは交付決定前でも可能ですが、発注・契約は交付決定後に行ってください。
