特許の審査請求料と特許料(第1〜10年分)が、中小企業なら1/2、小規模企業なら1/3に下がります。補助金ではなく、特許庁が料金そのものを軽くする制度です。
審査請求書や特許料納付書に「減免を受ける旨」を書き忘れると、その手続の分は、あとから申請できません。証明書類は要らず、書く一文だけで済みます。
特許料等の軽減制度の要点まとめ
正式名:特許料等の減免制度
だれが
- 申請者
- 事業者(法人・個人事業主)
- 対象業種
- 業種の指定なし(中小企業等)
- 利用目的
- 特許の審査請求料・特許料・PCT手数料の軽減
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 業種ごとに上限あり(製造業等は300人以下)。資本金との片方でも可
いくら
- 補助上限額
- 上限額の定めなし(料金そのものを軽減)
- 補助率
- 1/2に軽減(小規模企業・スタートアップは1/3)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 通年(審査請求・特許料の納付と同時)
- 公式サイト
- 特許庁「特許料等の減免制度」
うちの会社は対象になる?
次の3つにすべて当てはまれば、中小企業の区分で対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 3
次のどれかに当たると、対象外です。
- ✕ 大企業に支配されている
- ✕ 他人の出願を審査請求する
- ✕ 後から減免を申請する
「中小企業」の基準は、業種ごとに従業員数と資本金で決まっています。どちらか一方を満たせば足ります。資本準備金や資本剰余金は資本金に含まれず、従業員数は連結ではなく申請する会社だけで数えます。一般社団法人、医療法人、学校法人などは、この中小企業の区分の対象ではありません。
| 業種 | 従業員数 | 資本金 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業その他 | 300人以下 | 3億円以下 |
| 卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
| サービス業 | 100人以下 | 5,000万円以下 |
| 小売業 | 50人以下 | 5,000万円以下 |
| ゴム製品製造業 | 900人以下 | 3億円以下 |
| ソフトウェア・情報処理サービス業 | 300人以下 | 3億円以下 |
| 旅館業 | 200人以下 | 5,000万円以下 |
「大企業に支配されている」とは、大企業1社が株式の1/2以上を持つ場合、または大企業の複数社で2/3以上を持つ場合です。この場合は、資本金や人数が基準内でも対象になりません。
減免の要件は、申請するときに判断されます。減免を申請できるのは、審査請求書や特許料納付書を出すときだけです。
いくら安くなる?
区分ごとに、軽減後の負担が決まっています。審査請求料と特許料(第1〜10年分)は同じ率です。
| 区分 | 軽減後の負担 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 中小企業(会社・個人事業主・組合・NPO法人) | 1/2 | 上の表の人数か資本金の基準内 |
| 小規模企業 | 1/3 | 従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下) |
| 中小スタートアップ企業 | 1/3 | 設立10年未満で資本金3億円以下 |
| 研究開発型中小企業 | 1/2 | 試験研究費が収入の3%超など |
| 法人税非課税の中小企業 | 1/2 | 法人税が課されていない |
| 福島関連の中小企業 | 1/4 | 認定福島復興再生計画の成果の発明。先に推進機構の証明書が要る |
1/3に軽減した額に端数が出たときは、10円未満を切り捨てて納めます。
審査請求料の元の額は、2019年4月1日以降に出願した特許で「138,000円+請求項の数×4,000円」です。請求項とは、特許を求める範囲を1つずつ書いた項目のことです。
- 中小企業が請求項3つで審査請求する:150,000円 × 1/2 = 75,000円
- 中小スタートアップが請求項3つで審査請求する:150,000円 × 1/3 = 50,000円
- 2社の共同出願で、持分が1/2ずつ。1社だけが中小企業(1/2):150,000円 × 3/4 = 112,500円
3つ目は、軽減がない1社分(1/2)と、軽減がある1社分(1/2×1/2)を足した割合が3/4になるためです。
特許料の元の額は、この記事では扱っていません。今回確認した特許庁のページに金額表がなかったためです。年分ごとの額は、特許庁の料金表で確かめてください。
どの料金が対象?
対象にならないものを先に挙げます。
- 特許の出願料(減免の一覧にありません)
- 第11年分以降の特許料
- 他人が出す審査請求の料金
対象になるものは次のとおりです。
- 審査請求料
- 特許料(第1年分から第10年分)
- 補正で増えた請求項の分の審査請求料
- 日本語のPCT国際出願の手数料(送付・調査・国際出願・予備審査・取扱)
PCTは特許協力条約に基づく国際出願のことです。個人(市町村民税の非課税者など)は、区分と率が別に決まっています。
申請の流れ
- 自社の区分を確かめる(事業者→自社。審査請求の前に)
- 審査請求書の特記事項欄に、減免を受ける旨を書く(事業者→特許庁。審査請求と同時)
- 特許料納付書の特記事項欄に、減免を受ける旨を書く(事業者→特許庁。納付のたびに)
- PCT国際出願は、願書に軽減申請書を付ける(事業者→特許庁。出願と同時)
2と3には、「減免を受ける旨」と「減免申請書の提出を省略する旨」の2つを書きます。特許庁のサイトに記載例があります。
必要な書類
準備できた 0 / 4
特許料減免申請書は、個人が第1〜3年分の全額免除を受けるときだけ使います。証明書類は、2019年4月以降に審査請求した特許では要りません。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 特記事項を書かずに提出した:減免は審査請求書や特許料納付書の提出と同時に申請します。出した書類の分は、あとから申請できません。
- PCTで軽減申請書を付けなかった:出願や予備審査請求のときに付けないと、あとから出しても適用されません。
- 審査請求料の減免が年度で180件を超えた:中小企業や研究開発型中小企業などは、1年度に180件までです。
- 2019年3月31日以前に審査請求をした:旧制度の扱いになり、手続きも旧制度のものです。
今年度の変更点・併用・税金
2024年4月1日から、審査請求料の減免に件数制限が付きました。年度は4月1日から翌年3月31日までです。
小規模企業と中小スタートアップ企業には、この制限がありません。特許料は件数制限の対象外です。
2024年1月以降のPCT出願では、国際出願手数料と取扱手数料も軽減の対象に加わりました。
よくある質問
補助金のように振り込まれますか?
振り込まれません。この制度は、特許庁に納める料金を最初から安くする仕組みです。審査請求書や特許料納付書に、減免を受ける旨を書いて出します。軽減後の額を納めるので、申請が通っても後から現金が戻ることはありません。支払うときに安くなる、と考えると分かりやすい制度です。
個人事業主でも使えますか?
使えます。個人事業主は、従業員数が中小企業の基準内なら1/2の対象です。従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)なら小規模企業として1/3、事業開始から10年を過ぎていなければ中小スタートアップとして1/3になります。事業税が課されていない個人事業主は、特許の審査請求料と特許料(第1〜10年分)が1/2です。
資本金と従業員数は両方満たす必要がありますか?
片方で足ります。特許庁のリーフレットは、従業員数の要件か資本金額の要件のいずれかを満たす会社を中小企業としています。製造業なら従業員300人以下か資本金3億円以下です。ただし、大企業に支配されていないことが別に求められます。この条件は、資本金が基準内でも外れることがあります。
親会社が大企業だと対象外ですか?
大企業の持ち株が一定以上なら対象外です。大企業1社が株式または出資の1/2以上を持つ場合、または複数の大企業で2/3以上を持つ場合に当たります。資本金や従業員数が基準内でも、この支配に当たると中小企業の区分では使えません。大企業が子会社を通して間接的に持つ場合は、支配に数えません。出資比率は、申請の前に確かめておきます。
審査請求のあとに減免を申請できますか?
できません。減免申請は、出願審査請求のとき、請求項が増える補正をするとき、特許料を納付するときに、同時に行う決まりです。審査請求書を出したあとに、その分を直す申請は認められません。審査請求のときに減免を受けなかった場合でも、補正で請求項が増えるときや、特許料を納付するときには、あらためて減免を申請できます。書類を出す前に、特記事項の欄に必要な文言が入っているかを見直しておきます。
証明書類は必要ですか?
2019年4月1日以降に審査請求をした特許では、減免申請書も証明書類も要りません。ただし、特許庁が求めたときは、あとで証明書類を出すことがあります。審査請求書や特許料納付書の特記事項欄に、減免を受ける旨と、減免申請書の提出を省略する旨を書けば足ります。個人の第1〜3年分の全額免除は、特許料減免申請書を出します。福島関連の区分だけは、特許庁へ申請する前に、福島イノベーション・コースト構想推進機構の審査を受けて証明書を受け取ります。
共同出願の場合はどう書きますか?
減免を受ける人の名前と持分を、特記事項欄に書きます。さらに「その他」欄に、正規の金額に対する軽減後の割合を書きます。出願人2人が1/2ずつで、1人だけ1/2に軽減される場合は、割合が3/4です。減免を受ける人が複数なら、人ごとに行を改めて書きます。
件数制限の180件は、誰にかかりますか?
中小企業(会社・個人事業主・組合・NPO法人)、研究開発型中小企業、法人税非課税の中小企業、個人の所得税非課税者と事業税非課税の個人事業主にかかります。小規模企業、中小スタートアップ企業、生活保護を受けている人、市町村民税非課税者には、かかりません。年度は4月1日から翌年3月31日で、同じ人が複数の区分で減免を受けた件数は合算されます。181件目以降は、満額の納付が必要です。減免の可否は通知されず、認められないときは不足分の手数料について補正指令が出ます。
外国の企業も使えますか?
要件を満たせば使えます。会社と個人事業主は、国内の出願人と同じ要件です。組合やNPO法人は、設立根拠法などに目的の定めがあり、法人格を持つことが加わります。ただし、福島復興再生計画に基づく区分は外国の出願人が対象外です。手続きは国内と同じです。
2019年より前に審査請求した特許はどうなりますか?
旧制度の扱いです。2019年3月31日以前に審査請求をした特許は、新制度ではなく施行前からの旧減免制度で判断されます。手続きも旧制度のものです。特許庁のサイトに、旧制度の説明ページがあります。いつの審査請求かを、特許番号や出願番号で確かめてから進めます。
特許料は何年分まで安くなりますか?
第1年分から第10年分までです。第11年分以降は、特許庁の一覧に入っていません。第4年分以降の特許料は、自動納付制度を使っていても、軽減した金額で納められる場合があります。自動納付を使うときは、特許庁の「特許料又は登録料の自動納付制度について」で確かめてください。
問い合わせ先はどこですか?
内容で窓口が分かれています。審査請求料の減免は特許庁の方式審査室(03-3581-1101 内線2616)、特許料の減免は登録室(内線2707)、国際出願の料金は国際出願室(内線2643)です。制度全般は総務課調整班(内線2105)で受け付けています。
