脱炭素の設備投資をしたい事業者は多くいます。ただ、投資額が大きく、金利負担がネックになるケースが少なくありません。この壁を下げるために、環境省は少し変わった方法を取りました。事業者ではなく、事業者に融資する金融機関を支援するという仕組みです。
「バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業」は、脱炭素に資する設備投資への融資について、金融機関が受け取る利子の一部を国が肩代わりする制度です。事業者が直接申請する補助金ではありません。 申請するのは、環境省から「指定金融機関」に選ばれた銀行・信用金庫などです。事業者にとっての意味は「取引先の金融機関がこの指定を受けていれば、脱炭素設備の融資が有利な条件になる可能性がある」という点にあります。
図: バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業の全体像。詳しくは本文で解説します
バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 金融機関(指定金融機関として環境省・執行団体に申請)。事業者は融資を受ける側で、直接の申請者にはなりません |
| 制度名 | バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業 |
| 対象業種 | 指定なし(融資を受ける事業者側の業種は不問。指定金融機関になれるのは銀行・信用金庫等) |
| 利用目的 | 脱炭素設備投資に対する融資の利子補給 |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 規定なし(金融機関が申請する制度のため) |
| 補助上限額 | 公式ページに記載なし(利子補給率・上限額は公募要領・交付規程のPDF原本に記載。環境パートナーシップ会議へお問い合わせください) |
| 補助率 | 公式ページに記載なし(同上) |
| 申請受付 | 令和8年4月28日〜12月25日正午(指定金融機関の公募。継続案件は4月28日〜5月15日正午)。交付申請締切は2027年1月29日 |
| 公式サイト | 一般社団法人環境パートナーシップ会議「令和8年度 バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業 指定金融機関公募」 |
なぜ「金融機関が申請する」という設計なのか
似たような脱炭素の補助金の多くは、設備を入れる事業者本人が申請します。この制度が金融機関を経由する理由は、公式資料からは断定できません。ただ、結果として見えてくる違いはあります。事業者が個別に補助金の審査を受ける必要がなく、普段付き合いのある金融機関の融資審査の中に、有利な条件が組み込まれるという形です。
対象になる金融機関は、次のいずれかに当てはまるところです。
- 企業と連携し、バリューチェーン全体の脱炭素に資する取組を支援した実績を持つ金融機関
- 地域企業の脱炭素の取組を支援する体制を構築している地域金融機関
この2つの類型を見ると、大手だけでなく地方銀行・信用金庫も対象に含まれることが分かります。自社の取引金融機関が指定を受けているかどうかは、事業者自身が確認する価値があります。
令和8年度、対象設備の要件が変わった点
令和8年度の公募では、対象設備の要件に変更がありました。
- 太陽光発電設備は、ペロブスカイト型太陽電池に限定されました。あわせて地域共生への配慮が要件に加わっています
- 蓄電池は、JC-STAR認証の取得が必須になりました
前年度までの制度を調べて計画を立てていた場合、この2点は要件が厳しくなっているため、旧年度の情報のまま設備を選ぶと対象外になる可能性があります。 金融機関に相談する前に、導入予定の機種がこの2つの条件を満たすか確認しておく必要があります。
事業者として、今できること
具体的な利子補給率・上限額は公募要領・交付規程の原本にしか記載がなく、この記事の執筆時点では確認できていません。
金額が分からない段階でも、事業者側にできることはあります。
- 脱炭素設備投資を計画している場合、取引金融機関に「バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業の指定を受けているか」を尋ねる
- 指定を受けていない場合も、金融機関側が今後の公募(令和8年度は12月25日正午締切)に応募する可能性があるため、相談だけでも早めに動く
- 太陽光発電・蓄電池を検討している場合は、ペロブスカイト型・JC-STAR認証という令和8年度の要件を先に確認する
よくある質問
この制度は事業者が直接申請できますか?
いいえ。申請者は環境省から指定を受けた金融機関です。事業者は、その金融機関から融資を受ける形で間接的に関わります。事業者向けの直接の応募窓口はありません。
自社の取引金融機関が対象かどうか、どこで確認できますか?
執行団体(一般社団法人環境パートナーシップ会議)の公式ページに指定金融機関の情報が掲載される見込みです。確実なのは、取引先の金融機関に直接問い合わせることです。
いつまでに動けばよいですか?
令和8年度の指定金融機関の公募は12月25日正午が締切です(継続案件は5月15日正午)。交付申請の締切は2027年1月29日です。金融機関側の準備期間を考えると、早めの相談が安全です。
