工場の空調や生産設備を省エネ型に入れ替えたいと考えると、見積には設備代だけでなく、借りたお金に付く利息も数年分の負担として乗ってきます。そこで使えるのが、国が金融機関に利子の一部を払い、その分だけ借りる側の利払いが軽くなる仕組みです。
利子補給の率は年1.0%が限度で、補給される期間は融資を始めた日から3年です。申請するのは事業者ではなく、環境省の事業を動かす団体(一般社団法人環境パートナーシップ会議、略してEPC)から指定を受けた金融機関です。事業者は取引先の金融機関が指定を受けているかを確かめるところから始めます。
バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業の要点まとめ
正式名:バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業
だれが
- 申請者
- 指定金融機関(事業者は融資を受ける側)
- 対象業種
- 業種の指定なし(融資を受ける民間の法人)
- 利用目的
- 省エネ・再エネ設備への融資の利子補給
- 対象地域
- 全国(設備を入れる場所は国内)
- 従業員数
- 規定なし
いくら
- 補助上限額
- 利子補給は年1.0%が限度(対象の融資は1案件10億円まで)
- 補助率
- 年1.0%を限度(融資利率−0.1%、最大1.0%)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年4月28日〜2027年1月29日(金融機関の交付申請まで)
- 事業の完了
- 工事の完了は2028年9月30日まで
うちの会社は対象になる?
事業者に応募窓口はありません。使えるかどうかは次の5つで見ます。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
指定を受ける金融機関は2種類あります。
- 企業と連携してその企業のバリューチェーン(継続的な取引で財やサービスをやりとりするつながり)全体の脱炭素を支えた実績がある金融機関
- 地域企業の脱炭素を支える体制を持つ地域金融機関。全国地方銀行協会か第二地方銀行協会に加盟する銀行などが当たります
前者から借りる場合は事業者に条件が1つ加わります。バリューチェーンの取引先から排出量の把握や削減計画づくりを求められていて、その要請に沿った削減計画を自社で作っていることです。後者では、この条件は交付規程に書かれていません。
学校法人や医療法人は国公立なら対象外です。連結財務諸表の作成対象になる関係会社への融資も原則として対象外になります。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 中古の設備を買う
- ✕ 蓄電池だけを入れる
- ✕ 貸す物件に設備を入れる
- ✕ 申請の前に融資を実行した
- ✕ 国の補助金を同じ設備に使う
蓄電池は、再エネ設備と一緒に入れるか、再エネを導入済みの場所に系統用蓄電池を足す場合に限ります。融資の形は証書貸付で、私募債は利子補給の対象になりません。リース会社がリース用に入れる設備や貸している物件の設備は、事業者自身の排出削減につながらないため対象外です。
いくら軽くなる?
補給される額は、貸付残高 × 日数÷365 × 利子補給の率で決まります。率は借りたときの融資利率で変わります。
| 融資の利率 | 利子補給の率 |
|---|---|
| 1.1%以上 | 年1.0% |
| 0.1%超〜1.1%未満 | 融資利率−0.1% |
| 0.1%以下 | 0% |
1億円を1年間借りたままだった場合の例です。
- 利率1.5%:1億円 × 1.0% = 100万円(上限の率に当たる例)
- 利率0.8%:1億円 × 0.7% = 70万円
- 利率0.1%:1億円 × 0% = 0円
実際は元金を均等に返していくので残高が減り、補給額は年々小さくなります。補給は融資開始から3年分までで、対象になる融資額は1案件10億円までです。ここに載せた表は令和7年度以降に交付決定した融資のもので、令和6年度に交付決定した融資は別の表が使われます。
金融機関は受け取った利子補給金を、その融資の利子に充てなければなりません。EPCの様式でも、事業者が払う利子は「融資の利子から利子補給金を引いた額」として計算します。利子補給があることを理由に、通常より高い金利にすることはできません。実際の契約条件は、借りる前に金融機関ごとに確かめます。
何に使える?
対象にならないものから挙げます。
- 中古で買った設備
- 土地の取得・賃借料と造成費
- 調査費と設計費と輸送費と試験調整費と旅費と人件費
- 既設設備の撤去費と仮設費と予備品費と燃料費
- 外構工事と駐車場の整備と系統接続費用・系統負担金
- 車両のオプションと税金と保険
- 信用保証料に充てる分
対象になるものは設備本体と、本体に欠かせない附帯設備です。
- 太陽光発電設備:太陽電池はペロブスカイト型に限る。地域共生への配慮も要件
- 蓄電池:JC-STAR認証(IoT機器のセキュリティ認証)の取得が必須
- バイオマス発電と水力発電の設備
- 省エネ性能の高い機器への更新(製造設備・LED照明・空調設備など)
- 事務所の省エネ改修(断熱材・サッシ・断熱ガラスなど)
- 次世代自動車か低排出ガス認定自動車の車両本体
- 制御盤・モニター装置・計測器・配管配線・据付工事費・電気工事費
売電を前提にした再生可能エネルギー設備も対象です。次世代自動車は、ハイブリッドと電気とプラグインハイブリッドと燃料電池とクリーンディーゼルとCNGの各自動車を指します。
申請の流れ
- 取引先の金融機関に指定の有無を聞く(事業者→金融機関。借入の相談の最初に)
- 排出量の算定と削減計画をそろえる(事業者。取引先から要請を受けているならその文書も)
- 金融機関が交付申請書を出す(金融機関→EPC。2027年1月29日まで)
- 審査を経て交付決定が通知される(EPC→金融機関。融資の開始は原則2027年2月10日までに設定)
- 融資を受けて設備を入れる(事業者。工事は2028年9月30日までに完了)
- 3年間、排出量を報告する(事業者→金融機関→EPC。利子補給を受ける年度から)
順番でつまずきやすいのは3と5の前後です。交付申請書の提出より前に、融資の実行や設備の納品をしてはいけません。着工と融資の実行は、申請書の正本を出した日以降なら可能です。交付決定の通知が出る前に動くと、審査の結果によっては不交付になる可能性が残ります。
必要な書類
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書類は金融機関がEPCへ出します。事業者は会社の資料や見積を金融機関に渡す側です。取引先の要請文書と削減計画は、前者の型の金融機関から借りるときに要ります。要請が文書でないときは、融資先事業者の表明書で確かめることもできます。EPCの様式は金融機関が公募ページから入手します。CO2削減量は、環境省の算定ファイル(ハード対策事業計算ファイル)で計算し、そのファイルを添えるのが原則です。このほかEPCから、工事費のチェックシートや試算表などを求められることがあります。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 申請より前に融資を実行した:交付申請書の正本を出した日より前の融資実行や納品は認められません。つなぎ融資もその日より前に払った分は対象外です。
- 対象外の設備を選んだ:ペロブスカイト型以外の太陽電池や認証のない蓄電池や中古設備は対象になりません。
- 国の補助金を同じ設備に使った:同じ設備投資に国の他の補助金は併用できません。
- 期限に間に合わなかった:融資の開始は原則2027年2月10日まで、工事の完了は2028年9月30日までです。
- 予算が尽きた:補給額の合計が予算を超えると見込まれると、申請の期日より前でも受付が終わります。
- 記載に虚偽があった:交付申請書などに虚偽の記載があると交付決定が取り消されることがあります。
令和8年度の変更点と、併用の考え方
令和8年度の公募で対象設備の要件が変わりました。太陽電池はペロブスカイト型に限られ、蓄電池はJC-STAR認証の取得が必須になっています。融資計画書の受付はなくなり、交付申請書だけを出します。前年度に交付決定を受けた継続案件は、決定を受けた初年度の交付規程の要件が適用されます。
併用は、同じ設備への国の他の補助金が不可です。都道府県や市町村の補助金は併用できる場合がありますが、原資が国の補助金なら不可です。グリーン投資減税などの税制は、この事業のほうでは併用を排除していません。税制側の条件は所管の省庁に確かめます。
よくある質問
事業者が直接申請できますか?
できません。申請するのは、環境パートナーシップ会議(EPC)から指定を受けた金融機関です。事業者はその金融機関から融資を受けて設備を入れる側になります。中小企業庁のガイドブックも、交付申請は指定金融機関が行い、指定金融機関の採択情報は執行団体のホームページで確かめると案内しています。事業者向けの直接の応募窓口は公開資料に見当たりませんでした。
取引先の銀行が指定金融機関かどうかは、どこで調べますか?
EPCのホームページに、採択された指定金融機関が順次掲載されます。環境省の発表も、融資を希望する事業者は指定金融機関へ連絡するよう案内しています。掲載を待つより、取引先の担当者に「バリューチェーン脱炭素促進利子補給事業の指定を受けていますか」と聞くのが早い方法です。指定の有無は借入の相談の最初に確かめます。
取引先の銀行が指定を受けていないときは、どうなりますか?
指定金融機関でないと、この制度の利子補給は受けられません。ただし金融機関が指定を受ける道はあり、2026年12月25日正午までの公募に応募できます。審査は書類で行われ、必要に応じてヒアリングもあります。事業者は取引先の金融機関に応募を相談する手があります。予算の進み具合で公募が早く締め切られることもあります。
利子補給でいくら軽くなりますか?
融資の利率が1.1%以上なら年1.0%です。0.1%を超えて1.1%未満なら融資利率から0.1%を引いた率で、0.1%以下ならゼロです。利率0.5%で2億円を1年間借りたままなら、2億円 × 0.4% = 80万円になります。実際は元金を均等に返すので残高が減り、補給額は年々小さくなります。これは令和7年度以降に交付決定した融資の表です。
何年間、いくらまでの融資が対象ですか?
利子補給の期間は、融資の開始の日から3年を経過するまでです。融資の償還期限が先に来るときはその日までになります。1案件の対象融資額は10億円までです。シンジケートローンは30億円までで、指定金融機関ごとの上限は10億円です。翌年度以降の利子補給は予算の成立が前提で、確約されたものではありません。
太陽光発電は対象ですか?
対象ですが、太陽電池はペロブスカイト型に限られます。あわせて自然環境の保護や安全性や景観に配慮することが要件で、大規模な森林の伐採を伴うものは対象になりません。売電を前提にした再生可能エネルギー設備も要件を満たせば対象です。ペロブスカイト型以外の太陽電池を使う計画は、この制度の対象から外れます。
蓄電池だけを入れる場合も対象ですか?
蓄電池のみの導入は対象外です。JC-STAR認証を取得した蓄電池が対象で、再エネ設備と一緒に入れる場合と、再エネを導入済みの場所に系統用蓄電池だけを足す場合は、蓄電池の二酸化炭素排出抑制量を算出することが要件になります。自社の計画がどちらに当たるかは設備の構成で変わります。計画の段階で金融機関を通じてEPCに相談します。
中古の設備やリースは対象ですか?
どちらも対象外です。中古で買った設備は元々動いていた設備の持ち主が変わるだけで、新たな二酸化炭素の削減につながらないと考えられるためです。設備の貸出やリース、貸している物件に入れる設備の更新・増設も、事業者自身が使って排出を減らす設備ではないので対象外です。
他の補助金や税制とは併用できますか?
同じ設備投資への国の他の補助金は併用できません。都道府県や市町村の補助金は、併用できる場合があります。原資が国の補助金なら不可です。グリーン投資減税や生産性向上設備投資促進税制などの税制は、この事業では併用を排除していませんが、各税制の条件は所管の省庁に確かめます。併用を考えるなら事前にEPCへ相談します。
排出量の算定と報告では、何をしますか?
融資先の事業者は、利子補給を受ける年度から3年間、年間の二酸化炭素排出量を算定し、指定金融機関を通じてEPCに報告します。算定状況をEPCのホームページで公表することへの同意も必須の条件です。算定は、省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)の利用が原則です。エコアクション21の報告書や日本商工会議所や民間のツールで代えることもできます。
「取引先からの要請」とは、どんな書類ですか?
バリューチェーンを構成する取引先から融資先の事業者に出された、二酸化炭素排出量の算定や脱炭素に関する依頼・要請の文書です。文書での依頼でない場合は、融資先事業者の表明書で確かめることもできます。あわせて、その要請に基づく排出抑制の方法と数値計画が具体的に書かれた削減計画も要ります。前者の型の金融機関から借りるときの書類です。
信用保証協会の保証付き融資でも使えますか?
保証付き融資も対象です。ただし返済が難しくなって信用保証協会から代位弁済を受けるときなどは、交付決定の取消事由に当たり、利子補給金の返還を命じられる可能性があります。融資金の使い道は脱炭素の設備投資に限られ、信用保証料に充てることはできません。保証付きで借りるなら返済計画を先に固めておきます。
変動金利でも対象になりますか?
利子補給の期間中は原則として固定金利です。条件を満たす場合に限り変動金利も認められます。条件には、概算払の請求書を出す時点で金利が確定していることや、6か月の単位期間で金利が固定されていることがあります。変動金利で借りたいときは交付申請の前に金融機関からEPCへ相談します。
問い合わせ先はどこですか?
EPCのバリューチェーン脱炭素促進利子補給事業事務局が、電話03-5468-6753、メールinfo.fund@epc.or.jpで受け付けています。原則としてメールでの問い合わせが求められ、電話の場合も内容をメールで送ります。環境省の窓口は大臣官房 環境経済課 環境金融推進室(03-5521-8240)です。
