揚水発電の設備投資に、国の補助金は出ます。経済産業省 資源エネルギー庁の「揚水発電の運用高度化及び導入支援補助金」は、対象経費の1/3以内を補助する制度です。対象は発電事業者と地方公共団体で、令和8年度の当初公募は2026年1月13日から2月6日でした。
これは委託事業ではなく、補助事業です。同じ予算の枠には、国が調査を発注する委託事業もありますが、別の事業です。
揚水発電の運用高度化及び導入支援補助金の要点まとめ
正式名:令和8年度 揚水発電の運用高度化及び導入支援補助金
だれが
- 申請者
- 事業者(発電事業者。地方公共団体も可)
- 対象業種
- 発電事業者(電気・ガス・熱供給・水道業)
- 利用目的
- 揚水発電の運用高度化の設備投資、新規開発の可能性調査
- 対象地域
- 全国(日本に拠点があること)
- 従業員数
- 従業員数の制約なし
いくら
- 補助上限額
- 上限の定めなし(1件あたり年間2億円程度が目安)
- 補助率
- 補助対象経費の1/3以内
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年1月13日〜2026年2月6日17時必着(終了)
- 事業の完了
- 令和9年2月28日まで
自分の事業は対象になるか
上の2つと、下の2つのどちらかに当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
下の2つは、どちらか一方で構いません。上は運用高度化の設備投資、下は新規開発の可能性調査のメニューです。
次に当たると、補助を受けられません。
- ✕ 調査専門の会社・民間団体
- ✕ 一般水力(揚水でない水力)
- ✕ 交付停止・指名停止の措置中
調査を専門とする会社など、発電事業者でない民間団体は対象外です。新規開発は事業者が主体になることが大切だからと、募集要領に書かれています。
共通の要件として、事業を進める組織・人員・経営基盤・資金の管理能力があることと、経済産業省のEBPM(政策を証拠にもとづいて立てる取組)に協力することも求められます。
同じ水力でも、既存設備の増出力や中小水力のポテンシャル調査は別の補助事業です。この記事の補助では対象になりません。
いくら補助されるか
補助額は、対象経費の1/3以内です。上限額は決まっていません。募集要領には、1件あたり年間2億円程度(事業額6億円程度)が目安と書かれています。目安なので、これ以上の申請ができないわけではありません。
- 対象経費が3,000万円:3,000万円 × 1/3 = 1,000万円
- 対象経費が6億円:6億円 × 1/3 = 2億円(年間の目安にあたる)
消費税は、課税事業者の場合は原則として対象経費から除いて計算します。免税事業者などは、消費税を含めて計算できます。
当初公募の採択予定は10件程度で、件数は目安です。補助は事業の終了後に額を確定して払う精算払いが基本です。前払いに近い概算払いは財務省の承認が要るので、資金繰りが心配なら早めに担当課へ相談してください。
何に使えるか
対象にならないもの
- 自社のPCB対応や保守期限切れによる、単純な機器の入れ替え
- 机・椅子・書棚などの什器、事務機器
- 事業中の事故・災害の処理にかかる経費
- 事業に関係のない経費
対象になるもの(運用高度化支援事業)
- 構築物:えん堤、取水口、導水路、水槽、水圧管路、放水路などの設置・改修
- 機械装置:水車、発電機、主要変圧器、配電盤開閉装置、自動制御装置、周波数変換装置、計測機器などの設置・改修
- 諸経費:工事に必要な調査、試験、設計、撤去処分、土木工事など
- 委託・外注費:自社で実施できないものを外に出す費用
対象になるもの(新規開発可能性調査支援事業)
- 人件費:事業に直接従事する人の作業時間分
- 旅費、会場費、備品費、借料・賃料、消耗品費、印刷製本費、補助員人件費
- その他諸経費(通信運搬費、光熱水料、設備の修繕・保守費など)と委託・外注費
運用高度化の申請は、工事や契約の単位ではなく、発電所単位で出します。収入機会の拡大や費用削減など、目的を決めたプロジェクトの形にします。
公募から採択までの流れ
令和8年度の当初公募の流れです。
- 募集要領を読み、申請書類を出す(事業者→電力基盤整備課。Jグランツ、メール、郵送のどれか。2026年2月6日17時必着)
- 審査を受ける(資源エネルギー庁→事業者。要件審査のあと、有識者の委員会が採点して採択を決める)
- 交付申請書を出し、交付決定を受ける(事業者→経済産業省。令和8年4月上旬の予定)
- 事業を実施する(事業者。交付決定のあとに発注。令和9年2月28日まで)
- 実績報告書を出し、額の確定と支払いを受ける(事業者→経済産業省。原則として現地調査のあと精算払い)
Jグランツで申請するときは、GビズID(国の電子申請に共通で使うID)が要ります。IDを取れない場合は、メールか郵送で出せます。持参とFAXは受け付けていません。
交付決定の通知より前に、発注まで終えた経費は対象になりません。交付決定の前の着手は避けます。
必要な書類
準備できた 0 / 5
財務諸表は直近1年分です。会社概要がなければ、営む主な事業を提案書に書きます。賃上げ計画の表明書は、出すと加点になる書類で必須ではありません。
運用高度化の提案書には、可能な限り、1千万円あたりのkW当たりの費用削減額と収入増加額を、算定の根拠とともに書きます。
審査では何を見られるか
運用高度化支援事業は、次の項目で採点されます。
- 費用対効果(1千万円あたりのkW当たり費用削減額・収入増加額など):40点〜0点
- 事業の実施内容・方法の妥当性:25点〜0点
- スケジュールの現実性・妥当性:25点〜0点
- 賃上げの実施表明:5点
- パートナーシップ構築宣言:5点
費用対効果の配点がいちばん大きく、全申請の上位25%が高い評価の目安です。パートナーシップ構築宣言は、取引先との共存共栄を代表者名で宣言する内閣府と中小企業庁の取組です。
新規開発可能性調査は申請が限られると見込まれるため、別の予算枠はありません。申請があれば、上位2件程度は運用高度化より優先して採択するのが目安です。
もらえなくなるのはどんなときか
- 応募資格に当たらない:調査専門の会社など、発電事業者でない民間団体は対象になりません。
- 対象が揚水発電でない:一般水力は、この事業の対象外です。
- 交付決定の前に発注した:通知より前に発注まで終えた経費は、交付の対象になりません。
- 目的に合わない入れ替え:PCB対応や保守期限切れによる単純な機器の入れ替えは、対象経費から除かれます。
- 締切に遅れた:2026年2月6日17時を過ぎた提出は受け付けられません。
- 採点で届かなかった:採択は点数の高い順で、予算の範囲内です。採択予定は10件程度でした。
再公募と次の募集
令和8年度は、当初公募のあとに再公募もありました。再公募は2026年3月13日から4月2日17時必着で、採択予定は3件程度でした。応募資格、補助率、上限の目安は、当初公募と同じです。詳しくは再公募の記事で確かめられます。
予算資料によると、この事業の期間は令和4年度から令和9年度までです。令和8年度の募集が終わっても、事業は続きます。次の募集があるかは、資源エネルギー庁の公募ページで確かめるのが確実です。
準備を始めるなら、募集が出る前に、設備の更新計画や候補地の調査計画を整理しておきます。当初公募の期間は約3週間半、再公募は3週間でした。
よくある質問
揚水発電の補助金は、補助金ですか。委託事業ですか?
補助金です。経済産業省の予算資料に「揚水発電の運用高度化及び導入支援事業【補助】」と書かれています。補助率は1/3以内で、国が費用の一部を出し、残りは事業者が負担します。同じ水力エネルギー導入促進事業のなかには、国が調査を発注する委託事業もありますが、これとは別の事業です。
令和8年度の募集は、いつまででしたか?
当初公募は、2026年1月13日から2月6日17時までです。そのあとに再公募があり、2026年3月13日から4月2日17時までの受付でした。どちらも終了しています。説明会は、当初公募が1月20日、再公募が3月17日にオンラインで開かれ、参加には前日15時までに担当課への連絡が必要でした。次の募集があるかは、資源エネルギー庁の公募ページで確かめてください。
補助率と上限額はいくらですか?
補助率は、補助対象経費の1/3以内です。上限額は決まっておらず、1件あたり年間2億円程度(事業額6億円程度)が目安です。目安以上の申請もできます。最終的な内容と交付決定額は、経済産業省と調整して決まります。令和8年度の予算額は、事業全体で7.8億円でした。
対象者は誰ですか?
発電事業者と地方公共団体です。運用高度化は、日本国内に揚水発電所を持ち、継続して運転している事業者が対象です。新規開発の調査は、揚水発電を行うことを目指す事業者が対象です。いずれも、日本に拠点があることが条件です。予算資料の「民間企業等」より、募集要領の応募資格が詳しく決めています。
調査を専門とする会社は申請できますか?
申請できません。新規開発は事業者の主体性が大切なので、調査を専門とする会社など、発電事業者でない民間団体等は対象外です。申請者になれるのは、発電事業者か地方公共団体です。調査の一部を外に出したいときは、対象経費の委託・外注費として、自社で実施できない調査を他の事業者に任せる費用を計上する形になります。
水力発電の補助金とは別の制度ですか?
別の制度です。同じ予算の枠に、水力発電導入促進支援事業(既存設備の増出力や中小水力の調査)が並んでいます。この補助は、揚水発電だけが対象で、一般水力は対象外と募集要領に書かれています。水力発電導入促進支援事業は、補助率が定額・2/3・1/2・1/3・1/4と事業ごとに違い、担当課も分かれています。事業の中身で、どちらの制度に当たるかを先に見分けます。
補助対象の経費には何が含まれますか?
運用高度化は、構築物、機械装置、諸経費、委託・外注費です。新規開発の調査は、人件費、旅費、会場費、備品費、消耗品費、委託・外注費などです。PCB対応や保守期限切れによる単純な機器の入れ替えは、運用高度化の対象から除かれます。見積書を取る前に、募集要領の経費区分と照らしておきます。
交付決定の前に工事を始めてもいいですか?
始めないでください。交付決定の通知より前に発注などを終えた経費は、補助の対象になりません。令和8年度は、交付決定が4月上旬の予定でした。設備投資は金額が大きいので、契約や着工の時期は通知を受けてから決めます。募集要領の文言は「発注等を完成させた経費」で、見積を取る段階の扱いまでは書かれていません。迷うときは、担当課にメールで確かめてください。
どうやって申請しますか?
Jグランツ、メール、郵送のどれかで出します。JグランツにはGビズIDが要り、取得できない場合は、メールか郵送です。持参とFAXは受け付けていません。メールの件名は「揚水発電の運用高度化及び導入支援補助金申請書」にします。書類に不備があると、審査の対象になりません。
審査ではどこが見られますか?
運用高度化は、費用対効果が40点、実施内容の妥当性とスケジュールの現実性が各25点です。賃上げの表明とパートナーシップ構築宣言は、各5点の加点です。基準を満たさない提案は、ほかの評価が高くても採択されません。応募資格と対象経費の要件を満たすことが、先に見られます。
補助金はいつ支払われますか?
事業が終わったあとの、精算払いが基本です。実績報告書を出し、原則として現地調査を受けて、額が確定します。事業の途中に払う概算払いは、財務省の承認を受ければ可能です。希望する場合は、必要な書類を担当課に確かめます。全ての支出に、帳簿類と領収書などの証拠書類が要ります。
どこに問い合わせればいいですか?
資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 電力基盤整備課です。メールはbzl-yousui_kiban@meti.go.jpで、電話での問い合わせは受け付けていません。件名は「揚水発電の運用高度化及び導入支援補助金」にします。対象になる事業か、上限額、対象経費で迷うときは、申請書を作る前に問い合わせてください。
