水素・アンモニア・メタノール・バッテリーで動く船を発注する船主などが、エンジンや燃料タンクなどの導入費の1/2または1/3以内を受け取れる補助金です。補助上限額は決まっていません。ただし船が完成するまでに特定船舶導入計画の認定を受けられないと、交付決定が取り消されて補助金を返すことになります。
受付は2026年12月3日(木)正午までです。予算は総額151億円(初年度は12億円)で、受け付けた補助額の累計が一定額に達すると、この日より前に締め切られることがあります。
ゼロエミッション船等の導入支援事業の要点まとめ
正式名:令和8年度ゼロエミッション船等の導入支援事業
だれが
- 申請者
- 船舶の導入を決める事業者(民間企業・地方公共団体・一般社団法人など)
- 対象業種
- 船主など、船舶や給電設備を取得する事業者
- 利用目的
- 水素・アンモニア・メタノール・バッテリー船の関連舶用機器の導入
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 規定なし(企業規模の制限は公募要領に記載なし)
いくら
- 補助上限額
- 上限額の定めなし
- 補助率
- 1/2以内(メタノール・ハイブリッド船は1/3以内)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年8月24日〜2026年12月3日(正午まで)
- 事業の完了
- 遅くとも2031年1月31日まで
補助金は環境省の事業で、日本船舶技術研究協会(事務局)が受け付けます。国が事務局を通して事業者に出すこの形を、公募要領は「間接補助事業」と呼びます。
自分の船は対象になる?
次の5つに当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
「船の導入を決める立場」とは、事業を実施するかを最終的に決め、予算・人員・契約を実質的に支配し、不正があったときの責任を負う者のことです。船か給電設備を自分のものにする者でもあります。船を取得する別の事業者がいる場合は、共同事業者として契約書(様式は自由)を結びます。
「認定」は海上運送法第39条の20に基づく特定船舶導入計画の認定です。
CO2削減の取組は様式第5、人材確保の取組(賃上げなど)は様式第6で表明します。地方公共団体や一般社団法人などは、CO2削減の取組が免除されます。
次に当たると対象外です。
- ✕ 外航船で燃料がメタノールやバッテリー
- ✕ 設備を導入せずに船体だけを造る
- ✕ 環境省から指名停止を受けている
- ✕ 導入の投資を交付決定前に公表した
- ✕ 補助金の不正受給などの前歴がある
投資の公表は、原則として交付決定日より前に対外発表した事業が対象外になります。プレスリリースや決算発表で具体的な案件を表明した場合が当たり、中長期計画に「GXに向けた投資を行う」とだけ書く程度は当たりません。事前着手届が受理されていれば、この限りではありません。公表するときは、先に事務局へ相談します。外航船が対象にできる燃料は、水素とアンモニアだけです。内航船なら、メタノールとバッテリー(ハイブリッド含む)も対象です。
何が対象になる?対象外になる?
対象になる設備とならない設備の線は、公募要領の表2で引かれています。
設備の対象と対象外
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| エンジン、電気推進システム | 船体の造船費用(グリーン鉄を除く) |
| 燃料タンク、燃料供給システム | 既存設備の撤去費・移設費 |
| 配管・ポンプ(これらの接続に限る) | パソコンなど汎用品の購入費 |
| 給電設備、上記の付帯装置 | 価格の妥当性が示せない中古品 |
エンジンか電気推進システムの導入は必須です。水素燃料電池は対象外です。補助機関(主機関以外のエンジン)だけの導入も対象外で、同じ燃料の主機関を入れるときに対象になります。給電設備を入れるときは電気推進システムも必要になります。電気推進システムの対象は、バッテリー、マネジメントシステム、配電盤、モーターに限られます。
経費の対象外
次の経費は、補助の対象になりません。
- 交付決定日より前の発注・購入・契約(交付申請に要る基本設計費も含む)
- 申請者と共同申請者の人件費(設備費に関連する労務費を除く)
- 申請者以外が発注したもの
- 事務所の家賃、通信費、消耗品代、振込手数料、消費税
- 自社製品の購入や共同申請者への発注(利益排除の対象)
発注先に「発注するつもり」と伝える内示も、発注とみなされます。
燃料別の追加条件
- アンモニア燃料船のType-Cタンクは、国土交通省海事局の「Type-C燃料タンク(アンモニア)標準」に準拠した直径8.4m・11m・15.5m・20mのいずれかにします
- アンモニア燃料船の燃料供給システムは、アンモニア燃料エンジンにつないだ安全な運転実績が必要です
- バッテリー船のバッテリーは、日本海事協会の使用承認証書を受けているか、導入までに受けます
- メタノール燃料船とハイブリッド船は、重油と比べて航行中のCO2を30%以上減らす見込みが必要です
いくら補助される?
補助率は燃料で変わります。メタノールとハイブリッド船は1/3以内で、水素・アンモニア・バッテリー専用船より低いので、資金計画に響きます。
| 導入する船 | 補助率 |
|---|---|
| 水素・アンモニア・電気(ハイブリッドを除く) | 1/2以内 |
| メタノール・電気(ハイブリッドに限る) | 1/3以内 |
| グリーン鉄の導入 | 使用量1tあたり6万円に1/2以内(GX率先実行宣言をした者は2/3以内)を掛けた額 |
計算例です。金額は説明用に置いた数字で、実際の対象経費は見積書で決まります。
- 水素燃料船のエンジンと燃料タンクに10億円かかる:10億円 × 1/2 = 5億円
- メタノール燃料船の設備に10億円かかる:10億円 × 1/3 = 約3.3億円
- グリーン鉄を100t使う(宣言なし):100t × 6万円 × 1/2 = 300万円
- グリーン鉄を100t使う(GX率先実行宣言あり):100t × 6万円 × 2/3 = 400万円
補助上限額は設けられていません。ただし審査の結果、希望額より少なくなることがあります。申請額がそのまま交付決定額になるわけでもありません。
グリーン鉄は、日本鉄鋼連盟の「GXスチールガイドライン」に準じて第三者認証を受け、証明書を出せる鋼材だけです。船体に使えるのは、関連舶用機器を導入する事業に限ります。
よく誤解されるポイント
- 船体の建造費が補助されるわけではありません。補助対象は、エンジン・燃料タンク・燃料供給システムなどの関連舶用機器と、グリーン鉄です。
- 受付締切までに申請を出しても、交付決定の前に発注すれば対象外です。事前着手届が受理されれば、通知に書かれた開始日以降の経費は対象になることがあります。ただし採択を約束するものではありません。
- 審査は申し込み順に進みます。受け付けた補助額の累計が一定額に達すると、締切が切り上げられます。
申請の流れ
- gBizIDプライムを取る(事業者→デジタル庁のgBizID。取得に2〜3週間かかる)
- 申請者登録をする(事業者→事務局のサイト。2営業日以内に、申請者ID番号・申請用メールアドレス・ファイルアップロード用のURLがメールで届く)
- 事前着手届を出す(必要な事業者だけ。様式第10を申請用メールアドレスへメールで。12月3日正午まで)
- 申請書類をそろえる(事業者。様式は事務局サイトかjGrantsで手に入る)
- jGrantsで申請する(事業者→事務局。12月3日(木)正午まで)
- 採択通知のあとに交付申請をする(事業者→事務局。交付決定を受けるまで発注しない)
- 発注して設備を導入し、支払いまで終える(事業者。事業は2026年度内に始め、遅くとも2031年1月31日まで)
jGrantsは補助金の電子申請システムで、gBizIDプライムは国の電子申請に共通で使うIDです。郵送・持参・FAXでの提出は受け付けません。
必要な書類
準備できた 0 / 7
別紙9はメタノール燃料船、別紙10はハイブリッド船で必要です。様式第4(自社の成長につながる今後の方針)は自由様式ですが、必須です。様式第7(内航海運の取組計画)は、内航で貨物や旅客を運ばない船のときに出します。様式第8(グリーン電力の使用計画)も同じ条件で、中小企業は除きます。
登記簿や財務諸表は写しで足り、原本の提出は要りません。ファイル名は「申請者ID番号_資料名_提出日」にそろえ、PDFで出します。様式第1と別紙は、Excelも1ファイルで一緒に出します。1ファイルが16MBを超えるときは、事務局に相談します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 認定が間に合わない:竣工日までに特定船舶導入計画の認定を受けないと、交付決定が取り消されて補助金を返還します。受け取った日からの日数に応じて、年10.95%の加算金を求められることがあります。
- 交付決定前に発注した:内示も発注に含まれます。事前着手届が受理されていなければ、その経費は対象外です。
- 競争なしで発注した:複数者の見積を同じ仕様で取り、比べる必要があります。合理的な理由なく競争しないと原則対象外です。
- 財産を勝手に処分した:船や設備は処分制限期間中、補助金の目的に反する使用・譲渡・貸付・担保が禁止です。必要なときは事前に承認を受けます。取得する設備に抵当権を付けるときも事前の承認が要り、今回の事業のための融資の普通抵当権に限られます。
- 竣工時売船や傭船を伝えていない:計画変更の承認が要ります。竣工時売船先は共同事業者にします。
今年度の併用・税金
国が助成する別の制度と重複した交付申請は、原則として認められません。併願・併用は申請前に事務局へ相談します。
補助対象経費は、消費税を除いて申請します。免税事業者や簡易課税事業者などは、消費税を含めて計算することもできます。この場合、あとで仕入控除税額が出たときに報告と返還が要ります。
この事業は、収益が出ても収益納付を求められません。
よくある質問
船主ではなく造船所でも申請できますか?
この事業の対象は船主などで、造船所は想定されていません。事務局のよくある質問は、造船・舶用事業者が対象なのは別の「ゼロエミッション船等の建造促進事業」で、この導入支援事業の対象は船主等だと説明しています。申請者になるのは、事業を実施する意思決定を実質的に行い、船や給電設備を取得する事業者です。船を取得する別の事業者がいる場合は、取得者を共同事業者にして、両者の取り決めを契約書で出します。迷うときは、申請者登録の前に事務局へ確認すると安全です。
中小企業でも申請できますか?
申請できます。公募要領に資本金や従業員数の上限は書かれていません。CO2排出削減の取組の要件には、緩和があります。中小企業基本法の中小企業に当たる民間企業と、令和4年度のCO2排出量が20万t以上と公表されていない民間企業は、削減目標の公表に代えて、その他の取組を示せます。取組の水準や内容に決まりはありません。グリーン電力の使用計画も、内航で貨物や旅客を運ばない船の中小企業申請者では出さなくて構いません。
外航船でも使えますか?
使えますが、燃料は水素とアンモニアに限られます。メタノール燃料船とバッテリー船は、内航船だけが対象です。内航船ならバッテリー(ハイブリッド含む)も入ります。バッテリー船は、化石燃料を使わずバッテリーの電力だけを動力源とする設計の船です。ハイブリッド船の補助率は1/3以内です。
補助上限額はいくらですか?
公募要領の補助上限額の欄は「なし」です。上限なしでも、希望額が全額認められるとは限りません。審査の結果、申請した額を下回ることがあり、申請額がそのまま交付決定額になるわけでもありません。交付決定額は、事務局が交付申請の内容を審査したうえで通知します。
締切はいつですか?
2026年12月3日(木)正午です。ただし、受け付けた申請の補助額の累計が一定額を超えると、日付を切り上げて締め切ります。切り上げ日から締切までの申請は、まとめて審査されます。gBizIDプライムの取得に2〜3週間かかるので、締切の1か月前には申請者登録まで済ませておくのが安全です。
事前着手届とは何ですか?
交付決定の前に発注や契約をしたい事業者が、事務局に出す届出です。受理されると、通知に書かれた「事前着手開始日として認める日」以降の経費が、補助対象になることがあります。公募開始日の前に発注した経費は対象になりません。受理されても採択は約束されず、採択されなければ補助金は受け取れません。
複数の業者から見積を取る必要がありますか?
あります。同じ仕様で複数者から見積を取り、価格競争で発注先を選ぶのが原則です。造船所との建造契約が対象で、船に載せる個別の設備ごとの複数見積は要りません。ただし、バッテリー船やハイブリッド船で陸上電力供給設備を建造契約とは別に設置するときは、その設置に別の複数見積が要ります。船の商習慣に従い、補助対象設備を個別に発注せず、船価総額に含めて発注するときは、船価総額の最低価格を出した者を選べます。その場合は、補助対象経費の内訳を明記した明細書が要ります。競争しない理由があるときは、選定理由書を出します。
補助金はいつ支払われますか?
事業が終わったあとの精算払が基本です。複数年度の事業は、各年度末に、その年度分の交付決定額を上限として支払われます。特に必要と認められる場合は、年度の途中に概算払がされることもあります。ただし、概算払を前提にした投資計画は認められません。最終的な確定額は、交付決定額に届かないこともあります。
補助を受けたあとの義務はありますか?
あります。年度ごとの実績報告書は翌年度の4月10日までに出します。事業終了後も5年間、毎会計年度の終了から30日以内に、燃料使用量やCO2排出削減実績を報告します。交付規程には、CO2削減効果の事業報告書を完了年度の翌年度から5年間、毎年4月30日までに出すとも定められています。取得した船や設備は、処分制限期間中に処分できません。温室効果ガスの排出削減効果を、カーボン・クレジットとして登録することも禁止です。
審査では何を見られますか?
まず全申請に要件審査があり、事業・申請者・設備の要件、価格の妥当性、資金計画、安全、保守管理、実施体制、スケジュールを確認します。ひとつでも満たさないと不採択です。電力を推進エネルギー源とする船の申請には、採点審査もあります。バッテリーの寿命、情報セキュリティ対策(JC-STAR★1の適合ラベル)、レジリエンス対策が評価され、一定の点数を下回ると不採択です。
問い合わせ先はどこですか?
公募の内容は、日本船舶技術研究協会のゼロエミッション船等の導入支援事業事務局(電話 03-5114-8943)に聞きます。受付は平日の9時〜12時と13時〜16時30分です。メールでの問い合わせが勧められていて、申請者ID番号があれば件名の先頭に付けます。事業の趣旨は環境省の脱炭素モビリティ事業室(電話 03-5521-8301)が窓口です。
公募の資料はどこにありますか?
事務局のサイトに、公募要領、交付規程、補助金等に係る事務処理手引、よくある質問があります。申請様式はjGrantsか事務局サイトからダウンロードできます。電子申請の操作は、事務局が出している「事業者マニュアル」で確認できます。公募要領の説明動画も、事務局のサイトにあります。
