就業規則を整え、労務管理ソフトを導入する。働き方改革の支援策の多くは、これから使う費用を助成します。福山市の「働き方改革実践応援奨励金」は逆です。すでに達成した実績に対して払われます。
対象は、市内の中小企業者等です(2026年度)。男性育休の取得や年次有給休暇の向上など、働き方改革の取組を実施したことが条件になります。取組数に応じて10万円〜30万円が交付されます。
就業規則を新しく作り直す必要はありません。すでに社内で進んでいる取組の"実績"を報告するだけで、対象になり得ます。
福山市働き方改革実践応援奨励金の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業者(中小企業者等。個人事業主・NPO法人・公益法人・医療法人・社会福祉法人・協同組合等を含む) |
| 制度名 | 福山市働き方改革実践応援奨励金 |
| 対象業種 | 業種指定なし(風俗営業を行っていないこと) |
| 利用目的 | 雇用・職場環境を改善したい(働き方改革の実績に対する奨励金) |
| 対象地域 | 広島県福山市 |
| 従業員数 | 中小企業者等(資本金・従業員数の詳細な基準は公式ページに記載なし) |
| 補助上限額 | 30万円(実施した取組が3つ以上の場合。取組数に応じて10万円〜30万円) |
| 補助率 | 定額(取組数に応じて10万円〜30万円) |
| 申請受付 | 2027年1月4日〜3月31日必着(同一事業主につき単年度1回。予算がなくなり次第終了) |
| 公式サイト | https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/soshiki/sangyou/397993.html |

対象になる事業者の要件
奨励金の対象になるのは、次の要件をすべて満たす福山市内の中小企業者等です。
- 福山市内に本社または事業所を置く中小企業者等(個人事業主、特定非営利活動法人、公益法人、医療法人、社会福祉法人、協同組合等、保育所・幼稚園・認定こども園等運営事業者の一部を含む)
- 雇用保険の適用事業所であること
- 育児休業制度と子の看護等休暇制度を就業規則または労働協約で設置していること
- 代表者・従業員が暴力団員でないこと、風俗営業を行っていないこと
- 申請時点で倒産していないこと
- 福山市の「グリーンな企業チャレンジ宣言」を申請していること
見落としやすいのが、最後の「グリーンな企業チャレンジ宣言」です。福山市の「グリーンな企業プラットフォーム」上で、自社の取組を宣言・公表する仕組みです。宣言する内容は、女性・障がい者・高齢者等の雇用促進、環境への配慮、働きやすい職場環境の整備など。
これが奨励金の前提条件です。まだ宣言していないなら、申請準備と並行して宣言の手続きを進めてください。
中小企業者等の資本金・従業員数の詳細な基準表は公式ページ上に明記されていませんでした。

奨励金額はいくら?対象になる4つの取組
奨励金額は、次の4つの取組のうち実施した取組の数によって決まります。
| 実施した取組数 | 奨励金額 |
|---|---|
| 1つ実施 | 10万円 |
| 2つ実施 | 20万円 |
| 3つ以上実施 | 30万円 |
対象となる4つの取組と、それぞれの達成要件は次のとおりです。
- 男性育休取得: 男性従業員の育児休業の職場復帰率が50%以上であること
- 年次有給休暇の取得向上: 年次有給休暇の取得率が70%以上、かつ前年比20%以上向上していること
- 時間外労働時間の縮減: 時間外労働が月平均30時間未満、かつ前年比20%以上縮減していること
- 子の看護等休暇の取得向上: 子の看護等休暇の取得実績が前年比20%以上向上していること
比較の基準となる期間は、当年期間が2026年1月1日〜12月31日、前年期間が2025年1月1日〜12月31日です。
この数字を現場に置き換えると、こうなります。
- 年次有給休暇の取得率70%:法定どおり年10日付与されている従業員なら、年7日取ってもらう。20日付与なら14日
- 時間外労働 月平均30時間未満:月20日勤務で、1日あたりの残業を1時間30分以内に収める
- 前年比20%以上の縮減:前年が月40時間だった現場を月32時間まで落とす。ただし「月30時間未満」も同時に満たす必要があるので、実際は月30時間を切るまで削ります。1日あたり30分の短縮です
3つの具体例で見てみます。
- 製造業(従業員30名規模): 2026年に男性従業員が育休から100%職場復帰。年次有給休暇の取得率も前年から改善したが70%には届かず→男性育休取得の1つのみ該当で10万円
- 小売業(従業員10名規模): 年次有給休暇の計画的付与制度を導入し取得率72%(前年比25%向上)を達成。あわせて子の看護等休暇の取得実績も前年比30%向上→2つ該当で20万円
- 建設業(従業員50名規模): 現場の勤怠管理を見直し時間外労働を月平均28時間(前年比25%縮減)まで削減。年次有給休暇も71%(前年比22%向上)に到達し、男性育休も復帰率60%を達成→3つ該当で30万円(上限)
3つ以上を同時に満たせるかどうかで、奨励金額が最大3倍変わります。複数の取組が並行している会社は、どれが要件を満たしているかを早めに棚卸ししておきます。
遡って対象になるのか、交付決定後の取組だけが対象なのか。公式ページにこの前後関係の明記がありません。この奨励金は"実績評価型"です。通常の補助金にある「交付決定前は対象外」の原則が、そのまま当てはまるとは限りません。

申請までの重要なタイミングと必要書類
この奨励金は「先に取組を実施し、翌年にまとめて申請する」順番です。実施した年の翌年でないと申請できません。
- 2026年1月〜12月(取組の実施期間): 男性育休の職場復帰、年次有給休暇の取得、時間外労働の縮減、子の看護等休暇の取得を実施・記録しておく
- 2027年1月4日〜3月31日(必着・申請受付期間): 次の書類を提出する
- 交付申請書兼実績報告書(様式第1号)、誓約書兼同意書(様式第2号)
- 常時雇用する従業員の人数が確認できる書類
- 法人は直近3か月以内の商業・法人登記簿謄本、個人事業主は個人事業の開業・廃業等届出書
- 取組ごとの詳細報告書(様式第3〜6号)と、関連する制度書類・実績資料
- 審査後、奨励金の交付
申請できるのは同一事業主につき単年度で1回のみです。締切は3月31日必着。さらに予算がなくなり次第、期間内でも受付を終了するとされています。要件を満たす取組があるなら、早めに準備して出すのが有利です。
各様式(要綱・申請ガイド・Q&A・様式・申請補助チェックシート)は福山市公式ページからダウンロードできます。申請前にチェックシートで要件を確認しておくと、書類の過不足を防げます。
国の「働き方改革推進支援助成金」との違い・併用は?
福山市の働き方改革実践応援奨励金は、あくまで市独自の奨励金です。これとは別に、国にも働き方改革を支援する助成金があります。違いは次のとおりです。
| 福山市 働き方改革実践応援奨励金 | 国 働き方改革推進支援助成金 | |
|---|---|---|
| 対象になる行為 | 取組の実績(すでに達成した成果) | 就業規則整備・労務管理ソフト導入・専門家コンサルティング等の取組にかかった費用 |
| 金額の決まり方 | 実施した取組数に応じて定額(10万・20万・30万円) | 対象経費に助成率を乗じた額(上限は成果目標達成度で変動) |
| 申請のタイミング | 実施した翌年にまとめて申請 | 事業実施計画を立ててから取り組み、実施後に支給申請 |
対象になる行為が違うので、要件を満たせば両方の対象になり得ます。就業規則の整備や労務管理ソフトの導入といった"これから使う費用"があるなら、国の制度もあわせて確認してください。
国の助成金は、こちらの記事で解説しています。
働き方改革以外にも自社が対象になる制度がないか、3分でできる補助金診断で確認してみてください。
よくある質問
就業規則を新しく作らないと対象になりませんか?
前提要件は、育児休業制度と子の看護等休暇制度が就業規則または労働協約にすでにあることです。そのうえで、男性育休取得・年次有給休暇・時間外労働縮減・子の看護等休暇のいずれかで実績要件を満たせば対象になります。就業規則が未整備なら、整備そのものは社会保険労務士に相談してください。
個人事業主でも申請できますか?
対象事業者の種類に個人事業主が明記されています。ただし雇用保険の適用事業所であることなど他の要件もあわせて満たす必要があります。
2026年の実績がなくても、今から申請できますか?
申請受付は2027年1月4日〜3月31日(必着)で、比較対象となる当年期間は2026年1月1日〜12月31日です。2026年中の実績がなければ、2027年1月からの申請には間に合いません。
