就業規則を整え、労務管理ソフトを導入する。働き方改革の支援策の多くは、これから取り組む費用を助成する設計です。福山市の「働き方改革実践応援奨励金」は、これとは逆の発想に立っています。すでに達成した実績を評価の対象にしている点が特徴です。
対象になるのは、市内の中小企業者等です(2026年度)。男性育休の取得や年次有給休暇の向上など、働き方改革の取組を実施したことが条件です。取組数に応じて10万円〜30万円が交付されます。就業規則を新しく作り直す必要はありません。すでに社内で進んでいる取組の"実績"を報告するだけで、対象になり得ます。
男性従業員の育休取得を進めてきた製造業。年次有給休暇の取得率を底上げしてきた小売店。残業削減で時間外労働を大きく減らした建設会社。すでに動いている取組の成果を、市が後押しするのがこの制度の考え方です。
対象になる事業者の要件
奨励金の対象になるのは、次の要件をすべて満たす福山市内の中小企業者等です。
- 福山市内に本社または事業所を置く中小企業者等(個人事業主、特定非営利活動法人、公益法人、医療法人、社会福祉法人、協同組合等、保育所・幼稚園・認定こども園等運営事業者の一部を含む)
- 雇用保険の適用事業所であること
- 育児休業制度と子の看護等休暇制度を就業規則または労働協約で設置していること
- 代表者・従業員が暴力団員でないこと、風俗営業を行っていないこと
- 申請時点で倒産していないこと
- 福山市の「グリーンな企業チャレンジ宣言」を申請していること
重要なのは最後の「グリーンな企業チャレンジ宣言」です。これは福山市が運営する「グリーンな企業プラットフォーム」上で、女性・障がい者・高齢者等の雇用促進、環境への配慮、働きやすい職場環境の整備といった自社の取組を宣言・公表する仕組みで、この奨励金の前提条件になっています。まだ宣言していない場合は、奨励金の申請準備と並行して宣言の手続きを進める必要があります。
中小企業者等の資本金・従業員数の詳細な基準表は公式ページ上に明記されていませんでした。
奨励金額はいくら?対象になる4つの取組
奨励金額は、次の4つの取組のうち実施した取組の数によって決まります。
| 実施した取組数 | 奨励金額 |
|---|---|
| 1つ実施 | 10万円 |
| 2つ実施 | 20万円 |
| 3つ以上実施 | 30万円 |
対象となる4つの取組と、それぞれの達成要件は次のとおりです。
- 男性育休取得: 男性従業員の育児休業の職場復帰率が50%以上であること
- 年次有給休暇の取得向上: 年次有給休暇の取得率が70%以上、かつ前年比20%以上向上していること
- 時間外労働時間の縮減: 時間外労働が月平均30時間未満、かつ前年比20%以上縮減していること
- 子の看護等休暇の取得向上: 子の看護等休暇の取得実績が前年比20%以上向上していること
比較の基準となる期間は、当年期間が2026年1月1日〜12月31日、前年期間が2025年1月1日〜12月31日です。つまり2026年の1年間の実績を、2025年の1年間の実績と比べて要件を満たしているかを判定する仕組みになっています。
3つの具体例で見てみます。
- 製造業(従業員30名規模): 2026年に男性従業員が育休から100%職場復帰。年次有給休暇の取得率も前年から改善したが70%には届かず→男性育休取得の1つのみ該当で10万円
- 小売業(従業員10名規模): 年次有給休暇の計画的付与制度を導入し取得率72%(前年比25%向上)を達成。あわせて子の看護等休暇の取得実績も前年比30%向上→2つ該当で20万円
- 建設業(従業員50名規模): 現場の勤怠管理を見直し時間外労働を月平均28時間(前年比25%縮減)まで削減。年次有給休暇も71%(前年比22%向上)に到達し、男性育休も復帰率60%を達成→3つ該当で30万円(上限)
3つ以上の取組を同時に満たせるかどうかで、奨励金額が最大3倍変わります。すでに複数の取組が同時並行で進んでいる会社は、どの取組が要件を満たしているかを早めに棚卸ししておくと、申請時に慌てずに済みます。
申請までの重要なタイミングと必要書類
この奨励金は「先に取組を実施し、翌年にまとめて申請する」という時系列で動きます。申請できるのは取組を実施した年の翌年からだけという点をまず押さえておく必要があります。
- 2026年1月〜12月(取組の実施期間): 男性育休の職場復帰、年次有給休暇の取得、時間外労働の縮減、子の看護等休暇の取得を実施・記録しておく
- 2027年1月4日〜3月31日(必着・申請受付期間): 交付申請書兼実績報告書(様式第1号)、誓約書兼同意書(様式第2号)、常時雇用する従業員の人数が確認できる書類を提出。法人は直近3か月以内の商業・法人登記簿謄本、個人事業主は個人事業の開業・廃業等届出書が必要。各取組ごとに詳細報告書(様式第3〜6号)と関連する制度書類・実績資料もあわせて提出
- 審査後、奨励金の交付
申請できるのは同一事業主につき単年度で1回のみです。3月31日必着という締切に加えて、予算がなくなり次第、期間内でも受付を終了するとされているため、要件を満たす取組があるなら早めの準備・申請が有利です。
各様式(要綱・申請ガイド・Q&A・様式・申請補助チェックシート)は福山市公式ページからPDF・Word・Excel形式でダウンロードできます。申請前にチェックシートで要件を一通り確認しておくと、書類の過不足を防げます。
国の「働き方改革推進支援助成金」との違い・併用は?
福山市の働き方改革実践応援奨励金は、あくまで市独自の奨励金です。これとは別に、国(厚生労働省)にも働き方改革の取組を支援する助成金があります。両者の違いを整理すると次のとおりです。
| 福山市 働き方改革実践応援奨励金 | 国 働き方改革推進支援助成金 | |
|---|---|---|
| 対象になる行為 | 取組の実績(すでに達成した成果) | 就業規則整備・労務管理ソフト導入・専門家コンサルティング等の取組にかかった費用 |
| 金額の決まり方 | 実施した取組数に応じて定額(10万・20万・30万円) | 対象経費に助成率を乗じた額(上限は成果目標達成度で変動) |
| 申請のタイミング | 実施した翌年にまとめて申請 | 事業実施計画を立ててから取り組み、実施後に支給申請 |
福山市の奨励金は「結果に対する定額の奨励金」、国の助成金は「取組にかかった費用に対する助成」という性質の違いがあるため、要件を満たせば両方の対象になり得ます。就業規則の整備や労務管理ソフトの導入といった"これから取り組む費用"がある場合は、国の制度もあわせて確認しておくと選択肢が広がります。
国にも働き方改革の取組を支援する助成金があります。あわせてこちらの記事で解説しています。
なお、この奨励金の前提となる「グリーンな企業チャレンジ宣言」や就業規則の整備そのものについては、制度の使い方の相談はできても、就業規則の作成・変更は社会保険労務士の専門領域です。自社の制度がどの取組要件に当てはまるか、書類の整え方に迷う場合は専門家に相談するのも一つの手です。
働き方改革以外にも、自分の事業が対象になる補助金・助成金が他にないか気になる方は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。
よくある質問
就業規則を新しく作らないと対象になりませんか?
育児休業制度と子の看護等休暇制度が就業規則または労働協約にすでに設置されていることが前提要件です。そのうえで、男性育休取得・年次有給休暇・時間外労働縮減・子の看護等休暇のいずれかで実績要件を満たせば対象になります。就業規則が未整備の場合の整備そのものは社会保険労務士に相談することをおすすめします。
個人事業主でも申請できますか?
対象事業者の種類に個人事業主が明記されています。ただし雇用保険の適用事業所であることなど他の要件もあわせて満たす必要があります。
2026年の実績がなくても、今から申請できますか?
申請受付は2027年1月4日〜3月31日(必着)で、比較対象となる当年期間は2026年1月1日〜12月31日です。2026年中の実績がなければ、2027年1月からの申請には間に合いません。
免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で福山市公式ページにて確認できた情報にもとづきます。奨励金額・対象要件・申請期間・予算枠は変更される場合があるため、申請前に必ず福山市産業振興課の公式ページおよび最新の要綱でご確認ください。
出典:
