大手取引先からサプライチェーン全体の排出量削減を求められる場面が増えています。中小企業にとって、国際基準に沿った目標設定は簡単ではありません。いわき市の「中小企業版SBT認定取得支援補助金」は、この認定取得を後押しします。認定にかかる費用の一部を補助する制度です。
対象になるのは、中小企業版SBT認定を取得した市内事業者です。認定取得にかかった費用の1/2、上限50万円が補助されます。
対象になるのは、令和8年7月1日から令和9年3月16日までに認定を取得した事業者です。予算規模は200万円の先着順です。期間内であっても、早めに動いたほうが安全だといえます。
いわき市中小企業版SBT認定取得支援補助金の概要
まず制度の全体像を押さえておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象経費 | 中小企業版SBT認定の取得に要した費用(資産・備品を除く) |
| 補助率 | 対象経費合計額の1/2 |
| 補助上限額 | 50万円(1,000円未満は切り捨て) |
| 予算規模 | 200万円(先着順) |
| 申請受付期間 | 令和8年7月1日(水)〜令和9年3月16日(火) |
| 申請方法 | WEB申請のみ |
| 問い合わせ先 | いわき市環境企画課(0246-22-7528) |
重要なのは、この期間内に「認定を取得していること」が申請の前提になっている点です。申請だけでなく、認定取得までを令和9年3月16日までに終わらせる必要があります。
中小企業版SBTとは?なぜ今、中小企業がこの認定を取るのか
「SBT(Science Based Targets)」とは、パリ協定が求める水準と整合した、企業自身が設定する温室効果ガス排出削減目標に対する国際認証です。認証は専門の国際認証機関(SBTi)が行い、大企業向けの基準とは別に、中小企業向けに手続きを簡素化した「中小企業版SBT」の枠が用意されています。
なぜ、いわき市内の中小企業がこの認証をわざわざ取りに行くのでしょうか。背景にあるのは、大手取引先からのサプライチェーン対応の要請です。近年、大手メーカーや小売・建設業など多くの大企業が、自社のサプライチェーン全体のCO2排出量削減に取り組むなかで、取引先企業に対しても排出量の開示や削減目標の設定を求める動きを強めています。中小企業版SBT認定を持っていれば、「国際基準レベルの脱炭素対応をしている取引先」であることを対外的に示せるため、大手取引先との取引継続や新規受注の場面で評価されやすくなるというメリットがあります。逆に認定がないことで、環境対応の遅れた企業とみなされ、サプライチェーンの見直し対象になるリスクを避けたい、というのが中小企業側の実務的な動機です。
いわき市はこうした動きを踏まえ、認定取得のハードルになりがちな費用面を補助することで、市内中小企業の脱炭素経営への一歩を後押ししています。
対象になる事業者と、補助対象経費の中身
補助対象になるのは、次の要件をすべて満たす事業者です。
- 令和8年7月1日から令和9年3月16日までの間に中小企業版SBTの認定を取得していること
- 市内に本社または主たる事業所を有すること
- 市内で1年以上事業を継続して行っており、引き続き市内で事業を継続する意思を有すること
- 申請時点で納期の到来した市税を完納していること
- 国・地方公共団体・他団体から同種の給付を受けておらず、今後も受ける予定がないこと
- いわき市暴力団排除条例に規定する暴力団・暴力団員・社会的非難関係者に該当しないこと
法人・個人事業主のどちらも対象で、添付書類として法人は登記事項証明書の写し、個人事業主等の場合は市内で事業を営んでいる事実を証する書類の写しを提出する扱いになっています。
補助対象経費は「中小企業版SBT認定の取得に要した費用(資産・備品を除く)」です。具体的には、次のような費用が想定されます。
- 温室効果ガス排出量の算定・削減目標の設定を依頼するコンサルティング会社への委託費
- SBTi(国際認証機関)への申請にかかる費用
- 削減計画の策定支援にかかる費用
一方、公租公課(税金)や、太陽光パネル・省エネ設備などの資産・備品の購入費用はこの補助金の対象外です(設備投資には、いわき市の別の環境系補助金が使える場合があります)。
補助額のイメージを、対象経費の水準別に試算すると次のようになります。
| 対象経費(税込) | 補助率1/2の額 | 実際の補助額 |
|---|---|---|
| 20万円 | 10万円 | 10万円 |
| 50万円 | 25万円 | 25万円 |
| 100万円 | 50万円 | 50万円(上限) |
| 150万円 | 75万円 | 50万円(上限) |
対象経費が100万円を超えても、補助額は上限の50万円で頭打ちになる点は押さえておきたいポイントです。
申請から交付までの流れと、見落としやすい注意点
補助金は次の順番で進みます。
- 事前相談(補助枠の残数確認): 市の環境企画課に問い合わせ、補助可能件数が残っているか確認する
- 事業着手: コンサルティング会社への委託契約などを結び、認定取得に向けた作業を開始する
- 中小企業版SBT認定の取得: 委託費等を支払い、認定を取得する
- 補助申請(WEB): 添付書類をそろえてオンラインで申請する
- 補助金決定・交付: 市が審査のうえ補助金額を決定し、指定口座へ振り込む
さらに重要なのは、事業着手前の事前相談が実質的な必須ステップになっていることです。いわき市のリーフレットには「補助件数に限りがあるため、必ず事前に相談のうえ事業に着手してください」「事前相談がない場合、申請いただいても補助金を交付できない場合があります(先着順)」と明記されています。予算規模は200万円・上限50万円なので、単純計算では数社分の枠しかありません。認定取得の検討を始めた時点で、まず環境企画課へ連絡するのが安全です。
タイミング別に必要な書類を整理すると、次のとおりです。
- 申請時に共通で必要な書類: 中小企業版SBT認定取得に係る申請書類の写し/認定取得を証する書類の写し/補助対象経費の金額が確認できる書類の写し/市税完納証明書(様式指定)/通帳の写しなど振込先が分かるもの
- 法人の場合のみ: 登記簿謄本、または現在事項(履歴事項)全部証明書等
- 個人事業主等の場合のみ: 市内で事業を営んでいる事実を証する書類の写し
補助金の振込までは、審査状況により1〜2か月程度かかる場合があるとされています。また、補助金交付後は広報用動画や市WEBサイトで脱炭素経営の取組事例として公表される予定があり、インタビューや撮影への協力を求められる点もあわせて把握しておきましょう。
いわき市には販路開拓や設備を支援する制度もあります。あわせてこちらの記事で解説しています。
よくある質問
いわき市中小企業版SBT認定取得支援補助金の対象になるのはどんな事業者ですか?
市内に本社または主たる事業所を有し、市内で1年以上事業を継続していること、申請時点で市税を完納していることなどの要件をすべて満たす事業者が対象です。法人・個人事業主のどちらも対象になり、令和8年7月1日から令和9年3月16日までの間に中小企業版SBT認定を取得している必要があります。
補助金はいつまでに申請すればよいですか?
申請受付期間は令和8年7月1日(水)から令和9年3月16日(火)までです。ただし予算規模は200万円で先着順のため、期間内でも予算に達し次第受付が終了します。事業着手前に必ずいわき市環境企画課へ事前相談し、補助枠の残数を確認しておくことが重要です。
個人事業主でも申請できますか?
対象になります。添付書類として、法人の場合は登記事項証明書の写しが必要な一方、個人事業主等の場合は市内で事業を営んでいる事実を証する書類の写しを提出する扱いが明記されています。
いわき市の制度以外にも、自分の事業が対象になる補助金・助成金が他にないか気になる方は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。
SBT認定取得の進め方や、対象経費として認められる範囲の判断に迷う場合は、専門家に相談するのも一つの手です。
免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。補助額・補助率・対象経費・申請要件・予算の残数は変更される場合があるため、申請前に必ずいわき市の公式ページおよび最新の交付要綱でご確認ください。
出典:
