育休に入る社員が決まってから就業規則を直しても、間に合うのか。ほとんどのコースで間に合いません。規定の整備、社内への周知、本人との面談は、休業や制度の利用が始まる前に終えている必要があります。
両立支援等助成金は、育児・介護・不妊治療などと仕事の両立に取り組む事業主向けの助成金で、コースは6つです。支給額は数万円から、育休中等業務代替支援コースの最大260万円まで開きます。
両立支援等助成金の要点まとめ
正式名:両立支援等助成金(6コース)
だれが
- 申請者
- 事業者(雇用保険適用事業所の事業主)
- 対象業種
- 全業種
- 利用目的
- 育児・介護・不妊治療などと仕事の両立支援
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- コースで異なる(4コースは中小企業事業主のみ)
いくら
- 補助上限額
- コースで異なる。最大260万円(育休中等業務代替支援)
- 補助率
- 定額が中心。業務代替手当は手当額の3/4
いつ・どこへ
- 申請受付
- 通年(休業等の区切りから2か月以内などの期限あり)
- 公式サイト
- 厚生労働省「両立支援等助成金のご案内」
うちの会社は対象になる?
次の5つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 休業の開始後に規定を整えた
- ✕ 規定が「法に準拠」のみ
- ✕ 中小企業でない(4コースは対象外)
雇用保険の適用事業所とは、支給の申請日と決定日の時点で雇用保険の被保険者がいる事業所のことです。申請の相手は事業所ではなく事業主(法人か個人事業主本人)です。
規定は、育児・介護休業法に準拠すると書くだけでは認められません。育児休業と育児のための所定労働時間の短縮措置を、就業規則などに具体的に定める必要があります。常時雇用する労働者が10人未満で就業規則がない会社は、制度が明文化され、労働者に周知されていれば足ります。
介護離職防止支援、育児休業等支援、柔軟な働き方選択制度等支援、不妊治療及び女性の健康課題対応の4コースは、中小企業事業主だけが対象です。中小企業事業主は、次のどちらか一方を満たす事業主を指します。
- 小売業(飲食店を含む)は、資本金5,000万円以下か、常時雇用する労働者50人以下
- サービス業は、資本金5,000万円以下か、100人以下
- 卸売業は、資本金1億円以下か、100人以下
- その他の業種は、資本金3億円以下か、300人以下
出生時両立支援コースは、男性の育休取得が中小企業事業主、取得率の上昇が「特定事業主」です。特定事業主は労働者数の上限が全業種で300人以下に広がります。育休中等業務代替支援コースの手当支給は、企業規模を問いません。新規雇用だけが特定事業主です。
どのコースを使う?
やりたいことで、使うコースが決まります。
| やりたいこと | コース | 主な支給額 |
|---|---|---|
| 男性社員に、子の出生後8週間以内の育休を取らせる | 出生時両立支援 | 1人目20万円(環境整備を4つ以上で30万円)、2・3人目10万円 |
| 男性の育休取得率を大きく上げる | 出生時両立支援 | 60万円(1事業主1回) |
| 介護休業の取得と復帰、介護のための制度の利用 | 介護離職防止支援 | 休業40万円、制度20万円か25万円 |
| 介護の業務を代わる人に手当を出す | 介護離職防止支援 | 新規雇用20万円、手当5万円か3万円 |
| 育休の取得と職場復帰を支える | 育児休業等支援 | 取得時30万円、復帰時30万円 |
| 育休中の同僚に手当を出す、代替要員を入れる | 育休中等業務代替支援 | 最大260万円、新規雇用は9万円から81万円 |
| 子育て向けの柔軟な働き方の制度を整える | 柔軟な働き方選択制度等支援 | 20万円か25万円、子の看護等休暇の有給化は30万円 |
| 不妊治療や月経、更年期への対応 | 不妊治療及び女性の健康課題対応 | 各30万円(各1事業主1回) |
支給額は、休業を取った人や制度を使った人1人あたりの金額が基本です。人数や回数の上限が、コースごとにあります。
いくら支給される?
金額は、制度を使う人数と、手当をいくら出すかで変わります。業種の違う4つの例で見ます。金額は例です。
- 製造業(従業員60人)で、育休7か月の社員の仕事を同僚が分ける:手当 月6万円 × 7か月 = 42万円。42万円 × 3/4 = 31.5万円。体制整備経費6万円を足して、37.5万円
- 小売業(従業員40人)が、柔軟な働き方の制度を4つ入れ、3人が使う:25万円 × 3人 = 75万円
- 介護施設(従業員35人)で、1人が介護休業を取り、別の1人が時差出勤と短時間勤務を使う:40万円 + 25万円 = 65万円
- IT企業(従業員18人)で、男性社員が出生後8週間以内に5日以上の育休を取る:1人目は20万円。環境整備を4つ以上していれば30万円
育休中等業務代替支援コースの「最大260万円」は、手当が月13.4万円以上で、24か月分を受ける場合です。手当の3/4が月10万円を超えても助成は月10万円までで、24か月で240万円になります。これに労務の相談を外部の専門事業者へ委託したときの体制整備経費20万円を足して260万円です。育休が数か月で終わる会社は、この金額には届きません。
どんな取り組みが支給される?
対象にならないもの
- 休業や制度の利用が始まったあとに整えた規定、周知、面談
- 育児・介護休業法に準拠すると書くだけの規定
- 同じ育休について、出生時両立支援と育児休業等支援の両方(併給できません)
- 加算だけの申請(加算は、本体の支給と一緒でないと受けられません)
- 事業所内保育施設コース(新規の認定申請の受付は、平成28年4月から止まっています)
対象になるもの
- 規定と周知と面談を、休業の開始日の前日までに終えたうえで取った育休や介護休業
- 計画した制度を、実際に社員が一定の基準以上に使った実績
- 復帰後に、コースごとの期間(育休中等業務代替は3か月、育児休業等支援の職場復帰時は6か月など)、雇用保険の被保険者として雇い続けた実績
制度を入れただけでは出ません。休業や制度利用が実際にあり、決められた期間を満たして、はじめて申請できます。
申請の流れ
- コースを決める(事業主。やりたいことから選ぶ)
- 規定、周知、面談、プランをそろえる(事業主。休業や制度利用の開始前まで)
- 休業や制度の利用を実施する(社員。コースごとの日数や期間を満たす)
- 復帰後に雇い続ける(事業主。コースごとの期間、雇用保険の被保険者として)
- 支給申請を出す(事業主→本社等の所在地の都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)。区切りの翌日から2か月以内など)
申請期限は、コースごとに数え始める日が違います。
| 取り組み | 申請期限 |
|---|---|
| 男性の育休(出生時両立支援) | 育休の終了日の翌日から2か月以内 |
| 育休の取得時(育児休業等支援) | 育休の開始日から3か月たった日の翌日から2か月以内(産後休業から続けて取るときは産後休業の開始日から数える) |
| 育休からの復帰時(育児休業等支援) | 育休の終了日の翌日から6か月たった日の翌日から2か月以内 |
| 介護休業(介護離職防止支援) | 介護休業の終了日の翌日から3か月たった日の翌日から2か月以内 |
| 男性の育休取得率の上昇(出生時両立支援) | 上昇した事業年度の翌事業年度の開始日から6か月以内 |
| 業務を代わる手当・新規雇用(育休中等業務代替支援) | 育休などの期間の長さで変わる(手引きの該当コースで確認) |
| 柔軟な働き方の制度(柔軟な働き方選択制度等支援) | 6か月の制度利用期間の翌日から2か月以内 |
| 不妊治療・月経・更年期(不妊治療及び女性の健康課題対応) | 制度の利用が合計5日(回)に達した日の翌日から2か月以内 |
申請できる期間は、数え始める日の翌日から2か月間です。育休の途中で期限が来るコースもあります。休業が終わるのを待っていると、期限を過ぎます。
申請は、雇用関係助成金ポータルで電子申請ができます。郵送は簡易書留など配達の記録が残る方法にします。消印が期限内でも、労働局への到着が期限を過ぎていれば受け付けられません。
必要な書類
準備できた 0 / 7
支給要件確認申立書は、申請のたびに出します。コースごとに添付する書類は変わります。支給申請書の様式は、厚生労働省のページにコース別に載っています。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 休業が始まってから整えた:規定、周知、面談、プランの作成は、休業や制度利用の開始日の前日までが原則です。開始後に整えたものは認められません。育休中等業務代替支援コースの業務の見直しと手当の規定だけは業務を代わる期間の開始日までです。
- 規定が「法に準拠する」だけだった:育児休業と短時間勤務の制度を、就業規則などに具体的に定める必要があります。
- 雇用保険の被保険者でなくなった:対象の社員を、制度の利用から支給申請日まで、雇用保険の被保険者として雇い続けている必要があります。途中で退職した場合は対象外です。
- 申請期限を過ぎた:期限は2か月間です。郵送は、消印ではなく到着日で見られます。
- 労働保険料が未納だった:申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの年度の保険料が未納だと、受給できません。申請日の翌日から2か月以内に納めた場合は除かれます。
- 事実と違う書類を出した:支給の取り消しと返還のほか、5年間の支給停止や、事業主名の公表があります。
よくある質問
中小企業でなくても使えますか?
コースによって違います。介護離職防止支援、育児休業等支援、柔軟な働き方選択制度等支援、不妊治療及び女性の健康課題対応の4コースは、中小企業事業主だけが対象です。育休中等業務代替支援コースの手当支給は、企業規模を問いません。出生時両立支援コースは、取得率の上昇が特定事業主、男性の育休取得が中小企業事業主です。
休業が始まってから規定を整えても申請できますか?
申請できません。規定の整備、方針の周知、本人との面談、プランの作成は休業や制度の利用が始まる前に終える必要があります。出生時両立支援と育児休業等支援は育休の開始日の前日まで、柔軟な働き方選択制度は制度利用開始日の前日までです。休業の話が出る前から、規定とひな形を用意しておくと間に合います。
最大260万円は、どの会社ももらえますか?
もらえません。260万円は育休中等業務代替支援コースで、業務を代わる同僚に月13.4万円以上の手当を出し、24か月分を受ける場合の上限です。手当の3/4が助成され、助成は月10万円までです。体制整備経費20万円は、労務の相談を外部の専門事業者へ委託したときの額です。育休が短い会社の支給額は、この金額よりかなり小さくなります。
複数のコースを同時に使えますか?
組み合わせによります。同じ男性社員の同じ育休について、出生時両立支援と育児休業等支援の育休取得時・職場復帰時を両方受けることはできません。育休中等業務代替支援の手当支給と新規雇用も、同じ社員の同じ子の育休ではどちらか一方です。同じ取り組みを対象にした複数の助成金は、一方しか出ないことがあります。
申請の期限はいつですか?
公募の締切はなく、通年で受け付けます。ただし支給申請にはコースごとの期限があります。多くは休業や制度利用の区切りの翌日から2か月以内です。育休の取得時は開始日から3か月たった日の翌日から、介護休業は終了日の翌日から3か月たった日の翌日からの2か月間です。数え始める日が違うので、コースの表で確認してください。
申請はどこへ出しますか?
本社等の所在地にある都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。本社等とは人事労務管理の機能を持つ部署がある事業所のことで、登記上の本店と違う場合があります。雇用関係助成金ポータルでの電子申請もできます。郵送は簡易書留など配達の記録が残る方法にして期限内に到着させてください。
男性社員が5日だけ育休を取った場合も対象ですか?
1人目なら対象です。出生時両立支援コースは、子の出生後8週間以内に始まる連続5日以上の育休が条件です。この期間に所定労働日が4日以上入っている必要があります。2人目は連続10日以上、3人目は連続14日以上です。そのほか、環境整備の措置を必要な数だけ実施し、育休の前日までに業務見直しの規定を作ります。
従業員が10人未満で、就業規則がありません。使えますか?
使えます。常時雇用する労働者が10人未満で、就業規則の作成と届出をしていない会社は、制度が明文化され、労働者に周知されていれば足ります。ただし「法に準拠する」と書くだけでは認められません。育児休業や短時間勤務の制度の内容と手続きを文書にしておく必要があります。
一般事業主行動計画は必要ですか?
出生時両立支援、育児休業等支援、育休中等業務代替支援の手当支給と新規雇用、柔軟な働き方選択制度等支援の4コースで、要件に入っています。次世代育成支援対策推進法にもとづく計画で、計画期間、目標、対策を定めて労働局へ届け出ます。プラチナくるみん認定を受けている事業主は、策定と届出がなくても対象です。介護離職防止支援と、不妊治療及び女性の健康課題対応の2コースは、手引きの要件に入っていません。
社会保険労務士に頼まないと申請できませんか?
頼まなくても事業主が自分で申請できます。代理人が申請する場合は、社員証など身分を証明するものの提示が求められます。他人の求めに応じて報酬を得て申請の手続きを業として行えるのは、社会保険労務士などに限られます。無資格の人に代行を頼むと、社会保険労務士法に反します。
事実と違う書類を出すとどうなりますか?
支給の取り消しと受け取った分の返還を求められます。ほかの雇用保険二事業の助成金も含め、5年間は支給が止まります。悪質な場合は、事業主名などが公表されます。書類を後から整えたり実際にはない面談を記録したりすると、不正受給にあたります。休業の前に実際に行った記録だけを出してください。
事業所内保育施設コースは使えますか?
使えません。事業所内保育施設コースは、平成28年4月から新規の計画の認定申請の受付を停止しています。手引きに載る6コースは、出生時両立支援、介護離職防止支援、育児休業等支援、育休中等業務代替支援、柔軟な働き方選択制度等支援、不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コースです。
