男性社員に「気兼ねなく育休を取ってほしい」と伝えても、抜けた穴を誰が埋めるのかが決まっていないと、本人も周りも身構えてしまう。親の介護が始まった社員に、辞めずに働き続けてもらいたい。育休を取る社員のフォローに回るメンバーにも、きちんと報いたい――。こうした「仕事と育児・介護等を両立できる職場づくり」にかかる取り組みを、国が資金面で後押しするのが両立支援等助成金です。

両立支援等助成金は、目的別に6つのコースに分かれています。男性の育休取得促進、介護離職の防止、育休の取得・復帰支援、育休中の業務代替、柔軟な働き方の導入、不妊治療・女性の健康課題への対応と、テーマごとに支給要件・支給額が細かく設定されており、支給額はコースによって数万円〜最大260万円まで幅があります。自社の課題に近いコースはどれか、いくらもらえるのか、順番に見ていきましょう。

図: 両立支援等助成金の全体像。詳しくは本文で解説します

両立支援等助成金にはどんな取り組みが対象?【6コースの全体像】

まずは、自社の課題に近いのはどのコースかを確認しましょう。

①出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

雇用環境整備の措置を複数実施し、育休取得者の業務代替体制を整えたうえで、男性労働者が子の出生後8週間以内に一定日数以上の育児休業を取得した場合に支給されます。あわせて、男性労働者の育休取得率を大きく引き上げた事業主向けの区分もあります。

②介護離職防止支援コース

介護休業の取得・職場復帰支援に関する方針を社内周知し、労働者との面談を経て「仕事と介護の両立支援プラン」を作成・実施したうえで、労働者が実際に介護休業を取得・職場復帰した場合や、介護両立支援制度(時差出勤・短時間勤務・在宅勤務・フレックスタイム・介護サービス費用補助)を利用した場合に支給されます。介護休暇制度を有給化して労働者が利用した場合の区分もあります。

③育児休業等支援コース

育休の取得・職場復帰支援に関する方針を社内周知し、「育休復帰支援プラン」を作成・実施したうえで、労働者が連続3か月以上の育児休業を取得し、原則として原職に復帰した場合に支給されます。

④育休中等業務代替支援コース

育児休業取得者や短時間勤務者の業務を代わりに行う周囲の労働者に手当を支給した場合、または**代替要員を新規雇用(もしくは派遣受入)**した場合に支給されます。育休を取る本人だけでなく、フォローする側にも報いる仕組みです。

⑤柔軟な働き方選択制度等支援コース

フレックスタイム制度・テレワーク等・短時間勤務制度・保育サービスの手配及び費用補助・養育両立支援休暇制度という**「柔軟な働き方選択制度」を3つ以上導入**し、対象労働者が一定基準以上利用した場合に支給されます。子の看護等休暇制度を有給化した場合の区分もあります。

⑥不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース

不妊治療、月経(PMS含む)、更年期といった女性の健康課題に対応する両立支援制度を就業規則等に規定し、相談対応の担当者を選任したうえで、対象労働者が制度を合計5日(回)利用した場合に支給されます。

図: 課題別・6コースの使い分け。まずは自社がどのテーマに近いかを確認しましょう

コース選びで迷う場合、あるいは自社の取り組みがどのコースの要件に当てはまるかの実体判断が難しい場合は、専門家に相談すると確実です。どの取り組みをどのコースの計画・プランとして位置づけるかという整理のコツは、GRANTOS公式LINEの登録者限定ページでも紹介しています。

いくらもらえる?コース別の支給額(2026=令和8年度版)

「最大〇〇円」という単純な数字だけでは実態を捉えきれません。支給額はコースごと・要件の達成度合いで大きく変わるので、内訳を正確に押さえておきましょう。

コース種別・要件支給額
①出生時両立支援コース男性労働者の育児休業取得(子の出生後8週以内に育休開始)1人目20万円/2・3人目10万円
①出生時両立支援コース男性労働者の育児休業取得率の上昇等(1事業主1回限り)60万円
②介護離職防止支援コース介護休業を取得&職場復帰40万円
②介護離職防止支援コース介護両立支援制度:1つ導入&利用/2つ以上導入&1つ以上利用20万円/25万円
②介護離職防止支援コース業務代替支援:新規雇用/手当支給等(休業者向け)/手当支給等(短時間勤務者向け)20万円/5万円/3万円
②介護離職防止支援コース介護休暇制度有給化支援(1事業主1回限り)30万円
③育児休業等支援コース育休取得時/職場復帰時(各1事業主2人まで)各30万円
④育休中等業務代替支援コース手当支給等(育児休業):業務体制整備費(最大20万円)+業務代替手当(手当支給額の3/4、最大240万円)最大260万円
④育休中等業務代替支援コース手当支給等(短時間勤務):業務体制整備費(最大20万円)+業務代替手当(最大108万円)最大128万円
④育休中等業務代替支援コース新規雇用(育児休業):代替期間7日以上〜1年以上9万円〜81万円
⑤柔軟な働き方選択制度等支援コース制度を3つ導入&利用/4つ以上導入&利用(1事業主5人まで)20万円/25万円
⑤柔軟な働き方選択制度等支援コース子の看護等休暇制度有給化支援(1事業主1回限り)30万円
⑥不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース不妊治療/月経症状対応/更年期症状対応(各5日・回利用、各1事業主1回限り)各30万円

業種横断・シミュレーション

同じ「両立支援等助成金」でも、業種と取り組みたい内容によって使うコースも支給額もまったく変わります。3つの業種を例に見てみましょう。

図: 業種別に見る「どのコースで、どれくらい支給されるか」のイメージ

① IT企業(従業員18人・出生時両立支援コース) 男性エンジニアが第一子出産を控えている。育休を取りやすい空気を作りたいが、開発チームの人手が回るか不安がある。 → 雇用環境整備の措置を複数実施し、業務代替者の業務見直しに関する規定を整えたうえで、男性社員が出生後8週間以内に5日以上の育休を取得すれば1人目20万円が支給対象です。育休を取りやすくする社内制度の整備と、抜けた分の業務体制づくりを、育休開始前にセットで進めておくのがポイントです。

② 介護施設運営会社(従業員35人・介護離職防止支援コース) ベテラン職員が親の介護を理由に退職を考え始めた。介護休業を取得したうえで、復帰後も時差出勤や短時間勤務を選べるようにしたい。 → 介護休業の取得・職場復帰支援に関する方針を社内周知し、面談を経てプランを作成・実施したうえで、対象労働者が連続5日以上の介護休業を取得し復帰すれば介護休業40万円。あわせて時差出勤制度と短時間勤務制度の2つを導入し、対象労働者が利用すれば介護両立支援制度25万円も上乗せでき、合計65万円が視野に入ります。

③ 製造業(従業員60人・育休中等業務代替支援コース) 女性社員が7か月の育休を取得予定。周囲でフォローに回るメンバーにきちんと報いる仕組みを作りたい。 → 代替業務の見直し・効率化に取り組み、業務を代替する労働者への手当制度を就業規則等に規定したうえで、対象労働者が7日以上の育休を取得・復帰すれば、業務体制整備費(最大20万円)+業務代替手当(支給した手当額の3/4、最大240万円)で最大260万円が支給対象になります。手当をどれだけ支給するかで実際の支給額は変わるため、まず社内でどの水準の手当を払うかを決めるところから始めます。

このように、同じ「両立支援等助成金」でも、課題・業種によって使うコースも支給額の考え方も大きく変わります。まずは自社の課題がどのコースに近いかを確認してみましょう。

コースが多く、自社に合うものが分かりにくいと感じたら、他に使える補助金・助成金がないか探してみるのも有益です。

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コースの選び方や、取り組み内容をどうプラン・規定に落とし込むかで迷ったら、専門家に無料で相談できます。

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承認までの重要なタイミングと必要書類

両立支援等助成金には、他の助成金にあるような「計画届の提出」という手続き自体はありません。その代わり、「休業や制度利用が始まる前に、社内の準備を済ませておく」ことが実質的な期限になっています。ここを後回しにすると、後から申請しようとしても支給対象にならない可能性があります。

  • 休業・制度利用が始まる前:取得・利用に関する方針の社内周知、対象労働者との面談、育休復帰支援プラン・介護支援プラン等の作成、業務代替に関する規定の整備――これらはいずれも対象労働者が休業や制度利用を始める前に済ませておく必要があります
  • 休業・制度利用の実施中:コースごとに定められた日数・期間(例:介護休業なら連続5日以上、育児休業等支援コースなら連続3か月以上)の取得・利用を満たす
  • 復帰後:原則として原職等に復帰させ、コースごとに定められた期間(例:申請日までの間6か月以上)継続雇用する
  • 要件を満たした後:支給申請を行う。

図: 申請から支給までのスケジュール。「事前準備を休業開始前に済ませているか」が最初の分かれ目です

「育休の取得が決まってから慌てて規定を整える」のではなく、普段から雇用環境整備の措置や規定を用意しておき、休業の話が出たタイミングですぐに動ける状態にしておくのが、この助成金特有のコツです。

タイミングやること必要になるもの
休業・制度利用が始まる前方針の社内周知、対象労働者との面談、プラン(育休復帰支援プラン・仕事と介護の両立支援プラン等)の作成、業務代替に関する規定の整備就業規則等の規定文書、周知資料、面談記録、プランの文書
休業・制度利用の実施中コースごとに定められた日数・期間の取得・利用を満たす休業・制度利用の記録
復帰後原則として原職等に復帰させ、コースごとの期間継続雇用する雇用状況の記録(出勤簿・賃金台帳等)
要件を満たした後支給申請を行う支給申請書、各種要件を証明する書類

図: いつ・何が必要になるか。事前準備が最初の分かれ目です

コースによってプランの名称・必要な社内規定・継続雇用期間の長さが異なります。自社の取り組みがどのコースの、どの手続きに当てはまるかを早い段階で確認しておくと、慌てずに済みます。

「うちの会社でも対象?」対象事業者の考え方

両立支援等助成金は、雇用保険適用事業所の事業主であれば、コースごとの要件を満たすことで対象になります。多くのコースが中小企業事業主を主な対象としてきましたが、 育休中等業務代替支援コースの手当支給等(①②)のように企業規模の要件がないコースもあります。自社が対象になるかはコースによって異なるため、確認しておきましょう。

例:従業員35人の介護施設運営会社(法人・正社員28人+パート7人) → 雇用保険適用事業所であれば、介護離職防止支援コースの対象です。介護休業の取得・職場復帰支援の方針を社内周知し、プランを作成・実施したうえで、対象労働者が連続5日以上の介護休業を取得し職場復帰・継続雇用すれば、介護休業分(40万円)の支給対象になります。

自社の規模・業種がどのコースの、どの要件に該当するかの最終判断に迷う場合は、専門家に相談すると確実です。

よくある質問

両立支援等助成金は中小企業しか使えませんか?

コースによって異なります。多くのコースは中小企業事業主を主な対象としていますが、育休中等業務代替支援コースの手当支給等(①②)のように企業規模の要件がないコースもあります。自社が対象になるかは、コースごとに公式サイト・労働局でご確認ください。

育休を取得した本人ではなく、代わりに働く従業員にもお金が出るコースはありますか?

はい。育休中等業務代替支援コースがそれにあたります。育児休業取得者や短時間勤務者の業務を代わりに行う周囲の労働者に手当を支給した場合や、代替要員を新規雇用・派遣受入した場合に支給されます(最大260万円)。

締切はいつですか?申請のタイミングはどう決まりますか?

年◯回という形の締切はありません。ただし、方針の社内周知・面談・プラン作成・規定整備といった事前準備は、対象労働者の休業や制度利用が始まる前に済ませておく必要があります。支給申請自体も、要件を満たした日を起点とした期限が設けられているコースがあるため、早めに準備を始めることが大切です。

※支給額・要件・申請の期限などの制度内容は、支給要領の改定により変更される場合があります。申請前に必ず厚生労働省の公式サイトまたは都道府県労働局で最新情報をご確認ください。

出典(一次情報): 子ども・子育て両立支援等助成金のご案内(厚生労働省)両立支援等助成金|厚生労働省(総合案内)2026(令和8)年度 両立支援等助成金のご案内(リーフレットNo.14)両立支援等助成金(出生時両立支援コース)Q&A(2024年度版)


支給されるプラン・規定には"整え方の型"があります

同じ取り組みでも、事前のプラン・規定をどう整えるかで、支給対象になるかどうかは変わります。どの制度を選び、どう社内規定に落とし込むかは、一般には出回っていません。

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この助成金の概要(早見表)

検索項目内容
制度名両立支援等助成金(出生時両立支援コース/介護離職防止支援コース/育児休業等支援コース/育休中等業務代替支援コース/柔軟な働き方選択制度等支援コース/不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース の6コース)
対象業種全業種
利用目的雇用・職場環境を改善したい
対象地域全国
従業員数主に中小企業事業主(コースにより企業規模の要件は異なります)
支給上限額コースにより20万円〜最大260万円(内訳は本文表を参照)
支給率コースにより定額支給が中心(育休中等業務代替支援コースの手当支給等は手当支給額の3/4)
申請受付通年受付(休業・制度利用開始前の事前準備が実質的な期限。支給申請にも要件充足後の期限あり)
公式サイト両立支援等助成金|厚生労働省

※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。