相模原市の「ベンチャー・スタートアップ企業進出補助金」は、市外から相模原市に事業所を新たに設置する企業に対し、賃料は最大10割・整備費や外注加工費等は最大半額を、合計上限120万円まで補助する制度です。先着順の随時受付で、令和8年度(2026年度)の申請締切は2027年2月末、予算上限に達し次第それより前に受付終了となります。
対象になる企業・進出のかたち
補助対象になるのは、これまで相模原市内に事業所を持たず、市外の日本国内で開業・法人登記をしており、新たに相模原市内に事業所を設置した中小企業等です。対象は中小企業基本法上の会社および個人のため、法人だけでなく個人事業主としての進出も対象に含まれます。
申請枠は次の2つのいずれかです。
- 一般枠: 市外で法人登記または開業の届出をして15年以内であり、かつ「対象産業」に該当する企業等
- 市アクセラレーションプログラム採択者枠: 申請する当該年度に、相模原市のアクセラレーションプログラムの採択を新たに受けた企業等
一般枠の対象産業は、次の分野に該当するものです。
| 分野 | 対象産業の例 |
|---|---|
| 情報通信分野 | AI、IoT、DX(自動化・RPA等)、デジタルツイン、量子技術、VR・AR、Web3、通信、スマートシティ、ロボティクス、フィンテック、ヘルステック等 |
| 製造関連分野 | ロボット製造、先端素材、ナノテクノロジー、次世代モビリティ製造、ドローン・空飛ぶクルマ製造、GX関連製造、航空宇宙関連、半導体関連等 |
| 環境・エネルギー分野 | 省エネルギー関連サービス、再生可能エネルギー関連サービス、GX関連サービス、カーボンニュートラル関連サービス等 |
| その他 | 先進的・先端的な分野と見做せるもの |
進出の形も「営業拠点機能」「本社機能」「研究開発拠点機能」「生産拠点機能」のいずれかが対象で、商品在庫の保管のみを目的とした倉庫機能や、事業活動に関わらない拠点は対象外と明記されています。すでに相模原市内で開業・法人登記している事業者や、これから相模原市内で新規に開業・法人登記する事業者は対象になりません。あくまで「市外の実績ある企業が、新たに相模原に進出する」ケースが対象です。
補助対象経費と補助率:5項目は併用できる
補助対象経費は次の5項目で、①〜⑤は併用可能です。
| 経費項目 | 内容 | 補助率 |
|---|---|---|
| ①賃料 | 事業所の賃貸借契約に基づく賃料 | 最大10分の10 |
| ②事業所整備費 | 賃借する事業所の改修・リノベーション費用 | 最大2分の1 |
| ③外注加工費 | 事業に係る外部委託・試作/製作依頼の費用 | 最大2分の1 |
| ④材料費 | 事業に係る材料費(仕入れた材料をそのまま販売する場合は対象外) | 最大2分の1 |
| ⑤販売促進費・広告宣伝費 | 展示会出展費等を含む販売促進・広告宣伝費(接待交際費は対象外) | 最大2分の1 |
補助上限額は①〜⑤の合計で120万円です。賃料は事務所として登記する場合、コワーキングスペースやレンタルオフィスの利用も対象になりますが、入居を伴わないバーチャルオフィスは対象外です。事業所整備費は設計・撤去・電気通信工事・建築工事などの改修費用が対象で、物品等の購入費用そのものは対象外である点にも注意が必要です。
補助額のシミュレーション:業種・使い道別に3パターン
実際にどの程度の補助になるか、異なる業種・使い道で試算してみます。
- 情報通信分野のAIスタートアップが研究開発拠点を新設: 月8万円の事業所を賃借(年間賃料96万円、補助率10/10で96万円)し、あわせてネットワーク工事などの事業所整備費30万円(補助率1/2で15万円)を計上。合計111万円が補助対象(上限120万円の枠内)
- 製造関連分野のロボットベンチャーが生産拠点を賃借: 月10万円の事業所を借りる場合、年間賃料120万円がすべて補助対象(補助率10/10)となり、ちょうど上限の120万円に到達
- 環境・エネルギー分野のスタートアップが市アクセラレーションプログラム採択者枠で営業拠点を開設: 月5万円の事業所を賃借(年間賃料60万円、補助率10/10で60万円)に加え、外注加工費40万円(補助率1/2で20万円)、展示会出展等の広告宣伝費80万円(補助率1/2で40万円)を計上。合計120万円で上限にちょうど到達
このように、賃料だけで上限に届くケースもあれば、賃料・整備費・外注加工費・広告宣伝費を組み合わせて上限まで使い切るケースもあります。自社の進出計画にどの経費項目が当てはまるかを洗い出してから、120万円の枠内でどう配分するかを検討するのが実務上のポイントです。
申請の流れ:交付決定"前"でも契約・着手はできるが、交付申請"前"はNG
手続きは次の順で進みます。
- 事業計画書・交付申請書等の提出(募集開始〜2027年2月末)
- 契約締結・事業の着手(〜2027年2月末)
- 交付決定通知(提出後随時〜3月上旬)
- 事業完了・実績報告書の作成・提出(〜3月中旬)
- 補助金交付請求(〜3月中旬・末頃)
- 補助金交付(〜4月末頃)
ここで押さえておきたいのは、この制度は交付決定の通知を待たずに契約・事業着手へ進める設計になっている点です。事業計画書・交付申請書の提出時に「補助金等交付決定前事業着手届」をあわせて提出し、その後の事業着手時にも「事業着手届」を提出することで、交付決定前の契約・着手が認められます。
ただし交付申請日より前に契約したもの、あるいは申請書受付の前に事業に着手したものは、いずれも補助の対象になりません。物件を仮押さえした段階で契約を急がず、必ず交付申請書を提出したあとに契約・着手するという順番を守る必要があります。
タイミング別の主な必要書類は次のとおりです。
- 交付申請時: 交付申請書、補助事業等計画書、収支予算書、補助金等概要調書、履歴事項全部証明書、納税証明書(国税・都道府県税・市町村税)、会社案内等、暴力団排除に関する誓約書、役員等氏名一覧表、補助金等交付決定前事業着手届、直近2期分の決算資料、(賃料補助の場合)賃貸借契約書案・賃料支払計画書、(整備費の場合)整備着手前の平面図・写真、見積書等
- 事業着手時: 事業着手届
- 事業完了・実績報告時: 事業完成届、収支決算書、補助事業等実績報告書、補助対象経費を証する書類(見積書・契約書・領収書)等
重要なのは、進出後も義務が続く点です。事業開始日から2年を経過する年度の末まで相模原市内での操業継続義務があり、市の担当者による現地確認や毎年度末の実施状況報告が必要です。倒産・廃業等のやむを得ない場合を除き、この義務に違反すると交付決定が取り消され、交付済みの補助金は全額返還となります。
他の補助金との併用・注意点
公式の注意事項では、販売活動・研究開発・商品開発・生産等の事業活動全般に要する経費の補助を目的とした神奈川県・相模原市の補助金制度を除き、他の補助金との併用はできないと明記されています。国の補助金や、目的の異なる神奈川県・相模原市の他制度との組み合わせを考えている場合は、対象経費が重複しないかを事前に創業支援・企業誘致推進課へ確認しておくと安全です。
また、外資系企業は日本法人であれば対象になりますが、親会社・子会社・グループ企業等の関連会社や代表者の親族(三親等以内)との取引にかかる経費は対象外です。申請は同一申請者(法人)につき1回のみとされています。
他の自治体にもオフィス開設を支援する制度があります。あわせてこちらの記事で解説しています。
相模原市の制度以外にも自社が対象になる補助金・助成金がないか気になる方は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。
対象経費の組み立て方や、交付申請のタイミング設計、他制度との併用可否など実務の進め方に迷う場合は、専門家に相談するのも一つの手です。
よくある質問
個人事業主でも対象になりますか?
対象になり得ます。補助要領では「中小企業基本法第2条第1項各号に掲げる会社及び個人」が対象と明記されており、法人だけでなく個人事業主による進出も対象に含まれます。
相模原市内で新たに創業・法人登記する場合も対象ですか?
対象になりません。この制度はあくまで「市外の日本国内で既に開業・法人登記をしている企業等」が新たに相模原市内に進出するケースが対象で、これから相模原市内で新規に開業・法人登記する場合は対象外と明記されています。
バーチャルオフィスやコワーキングスペースの利用でも申請できますか?
入居を伴わないバーチャルオフィスは対象外です。一方で、事務所として登記される場合は、コワーキングスペースやレンタルオフィスの利用も対象になります。
免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。補助額・補助率・対象要件・申請期限・予算状況・関連制度の内容は変更される場合があるため、申請前に必ず相模原市の公式ページおよび最新の補助要領でご確認ください。
出典:
