見積を取ったら、思ったより高い。設備投資はいつもここで止まります。しかも今回は、先に賃上げを実行していないと使えない補助金だと聞いて、二の足を踏む方も多いはずです。
仙台市の「賃上げドライブ補助金(仙台市設備投資促進補助金)」は、正社員の平均賃金を3%以上引き上げた仙台市内の中小企業者・個人事業主が対象です。設備投資費用の一部を、補助率最大4分の3・上限300万円まで補助してくれます。申請の受付は令和9年3月31日まで。ただし予算上限に達し次第、途中で締め切られます。
賃上げ率が高いほど、補助率も上限額も上がる仕組み。賃上げを実現できた分だけ手厚くなる、そんな設計です。
この補助金はどんな設備投資に使えるのか
補助対象経費は「従業員の賃金引上げの実現に資する生産性向上、競争力強化又は労働能率の増進を図るために必要な設備投資等」で、具体的には次のものが該当します。
- 機械装置等購入費: 生産性向上・自動化・省力化に資する機械装置、器具備品等の購入費(付属品・据付費・運搬費を含む)
- システム・ソフトウェア導入費: 生産管理・在庫管理・労務管理等を効率化する専用ソフトウェアの導入費(汎用ソフトのみの購入は対象外)
- 造作・改修費: 作業動線の短縮や省力化・自動化設備導入に伴うレイアウト最適化のための改修費(作業時間の短縮効果を図面等で客観的に示せる場合に限る。原状回復や快適性向上のみが目的の改修は対象外)
- 設計費・工事費/委託費: 設備導入・業務改善に必要なレイアウト設計、基礎工事、外部委託による設定作業・プログラム構築等
- 人材育成・教育訓練費: 導入設備の操作研修や生産性向上に資する業務改善研修(一般的な職能研修は対象外)
- 経営コンサルティング経費: 生産性向上計画の策定など専門家支援に係る経費(一般的なコンサルティング経費は対象外)
なお車両は原則対象外ですが、配送・送迎・訪問サービス等の業務工程そのものを構成し、単なる老朽化による買い替えでないことなど複数条件を満たす場合に限り対象になり得ます。PC・タブレット等の端末も、新規導入するシステムの稼働に不可欠な場合を除き、単なる更新や汎用的な事務利用は対象外です。通信費・保守費などのランニングコストも対象外になります。
対象になる事業者・賃上げ要件を確認する
対象になるのは、仙台市内に本店(会社以外の法人は主たる事務所)を置く中小企業者等、または仙台市内で卸売業・サービス業・小売業を営む個人事業主(市内在住、または市内に事業用の施設を所有・賃借している者)です。中小企業者の判定は業種ごとに次の基準を使います。
| 業種区分 | 資本金・出資額 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
| 上記以外の一般業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
加えて、「正社員」が6人以上いることが要件です(正社員数が5人以下の事業者は対象外)。ここでいう正社員とは、無期雇用・週30時間以上勤務・雇用保険加入・月給制(または年俸制)を満たす者を指し、代表取締役・取締役・個人事業主本人・専従者・日雇い・試用期間中の人は含みません。
肝心の賃上げ要件は、正社員の平均賃金を3%以上引き上げていることです。対象になる「賃金」は賃金台帳上の基本賃金と、役職手当・資格手当・職能手当・地域手当など恒常的かつ定額の手当を含み、通勤手当・家族手当・皆勤手当・残業代等の変動的な手当や賞与は含みません。
重要なのは、この補助金は「賃上げを約束する」制度ではなく、「すでに賃上げを実施した」ことを前提に申請する制度という点です。補助対象経費も、賃金引上げを行った事業年度またはその直前の事業年度に支出したものに限られます。つまり、先に賃上げを実行し、その効果を裏付ける設備投資を行ったうえで、まとめて申請する流れになります。
補助額シミュレーション:賃上げ率で上限が3倍に変わる
補助率・上限額は賃上げ率に応じて次のとおり変わります(補助対象経費の下限は10万円)。
| 正社員の平均賃上げ率 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 3%以上5%未満 | 3分の2 | 100万円 |
| 5%以上 | 4分の3 | 300万円 |
具体的な設備投資に当てはめてみます。
- 金属加工業(正社員8人・賃上げ率4.2%): 老朽化した加工機を自動化ラインに入れ替え、補助対象経費300万円を支出。補助率2/3なら200万円分の計算になりますが、上限100万円が適用され、補助額は100万円にとどまります。
- 雑貨小売店(正社員6人・賃上げ率5.5%): POSレジ・在庫管理システムの導入とバックヤードの動線改修に500万円を支出。5%以上の賃上げを達成しているため補助率3/4・上限300万円が適用され、補助額は上限いっぱいの300万円。3〜5%未満のケースなら上限100万円止まりだったところ、5%以上を達成したことで200万円分多く補助を受けられ、その分を追加の省力化設備(例えば別工程の自動梱包機)の導入資金に回すこともできます。
- 飲食店(正社員10人・賃上げ率3.2%): 厨房機器の自動化と調理オペレーションの研修費で150万円を支出。補助率2/3を掛けると100万円になり、上限100万円にちょうど収まる形で補助額100万円。
賃上げを実施したのに、あとで「未達」と判断されたらどうなるか
前述のとおり、この制度は賃上げを実施した「あと」に申請する仕組みのため、国の業務改善助成金のように「賃上げを約束して、達成できなければ設備投資の補助金を返す」という将来目標型の仕組みとは前提が異なります。
ただし、交付要綱には交付決定の取消し・返還に関する規定があります。次のいずれかに該当すると判明した場合、市長は交付決定の全部または一部を取り消し、すでに交付済みの補助金についても返還を請求できます。
- 虚偽その他不正の手段により交付決定または交付を受けたとき
- 対象者要件(中小企業者・賃上げ率3%以上など)に該当していなかったことが判明したとき、または該当しなくなったとき
- 交付決定の内容や付された条件、市長の指示に違反したとき
つまり「賃上げ率3%以上」という申告内容が、賃金台帳等の証拠書類で実際には満たされていなかったと判明した場合は、交付決定後であっても取消し・返還の対象になり得るということです。証拠書類は交付を受けた年度の翌年度から5年間の保存義務があり、市による立入検査の対象にもなります。申請前に賃金台帳ベースで正社員全員分の引上げ率を正確に計算しておくことが重要です。
申請の流れとタイミング別の必要書類
この制度は「交付申請書兼実績報告書(様式第1号)」を使う一体型の申請で、認定申請・交付申請・実績報告が分かれていません。賃上げと設備投資(支出)を終えた後にまとめて提出する形です。
- 賃上げの実施・設備投資の支出(申請前): 対象事業年度またはその直前の事業年度のうちに、正社員の平均賃金を3%以上引き上げ、対象設備等への支出を完了させておく
- 交付申請(=実績報告を兼ねる): 様式第1号に、賃金引上げ前後の賃金台帳の写し、(改定していれば)賃金規程の写し、給与振込依頼書の写し、履歴事項全部証明書の写し、経費の支出を証する契約書・納品書・領収書・通帳の写し等を添えて提出。研修やコンサルティングを実施した場合は実施日時・場所・内容がわかる書類も必要
- 交付決定: 市が申請書類を審査し、申請到達から30日以内に交付決定(様式第2号)または不交付決定(様式第3号)を通知
- 交付請求・受給: 交付決定後、交付請求書(様式第5号)を提出し、内容審査のうえで補助金が交付される
申請期間は令和9年3月31日までで、予算上限に達し次第、受付を終了します。年度の途中で一度受付を停止し、その後に予算の追加等で受付を再開する運用も行われています。
また、同じ経費について国や他の地方公共団体から補助金等の交付を受けている場合は対象外になる点にも注意が必要です。設備投資の経費を複数の制度に重複して充てることはできません。
国の制度との組み合わせ方
国にも賃上げと設備投資をセットで支援する制度があります。あわせてこちらの記事で解説しています。
業務改善助成金は「これから賃上げを行うことを約束し、その計画にもとづいて設備投資を行う」将来目標型の仕組みで、仙台市の賃上げドライブ補助金は「すでに実施した賃上げ」を裏付けとして申請する事後確認型です。両制度は仕組みが異なるため、同一の設備投資経費に重複して充てられるかどうかは必ず両制度の窓口に確認したうえで検討してください。
自分の事業が対象になる補助金・助成金が他にもないか気になる場合は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。
賃上げ率の計算方法や、対象経費に該当するかどうかの判断に迷う場合は、専門家に相談するのも一つの手です。
概要早見表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象地域 | 宮城県仙台市(本店・主たる事務所が市内) |
| 対象業種 | 業種横断(中小企業者の定義は業種別基準による) |
| 対象従業員規模 | 正社員6人以上(正社員5人以下の事業者は対象外) |
| 補助上限額 | 300万円(賃上げ率5%以上の場合) |
| 補助率 | 3分の2〜4分の3(賃上げ率3〜5%未満/5%以上) |
| 申請受付 | 〜令和9年3月31日(予算上限に達し次第終了) |
| 公式サイト | https://www.city.sendai.jp/kikakushien/setubitousisokusin.html |
よくある質問
個人事業主でも申請できますか?
卸売業・サービス業・小売業を営む個人事業主であれば、仙台市内に住民登録がある、または市内に事業用の施設を所有・賃借していることなどを条件に対象になり得ます。正社員6人以上・賃上げ率3%以上などの要件は法人と共通です。
賃上げを約束すれば申請でき、あとで未達でも問題ありませんか?
いいえ。この制度は「これから賃上げする計画」を約束する仕組みではなく、申請時点ですでに正社員の平均賃金を3%以上引き上げていることが交付の要件です。あとになって賃上げ率の申告内容が実態と異なっていたと判明した場合は、交付決定後であっても取消し・返還の対象になり得ます。
リース契約・レンタル契約で導入した設備も対象になりますか?
対象になり得ますが、交付申請日までに実際に支払った額(前払金を含む)のみが対象です。交付申請日以降に発生する支払いや未払金は対象外で、契約が複数年度にわたる場合も、対象期間内に支払い済みの金額のみが補助対象になります。
免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。補助額・補助率・対象経費・申請要件・受付状況は変更される場合があるため、申請前に必ず仙台市の公式ページおよび最新の交付要綱で内容をご確認ください。
出典:
