静岡市の「スタートアップ立地促進事業補助金」は、市内中心市街地に新たに事業所を借りるスタートアップに対し、賃借料・施設利用料の2/3を最大400万円まで補助する制度です。2年間(24か月)にわたって毎年度200万円を上限に支給されるため、開設初期の固定費負担を大きく抑えながらオフィスを構えられます。
なぜ静岡市はこの補助金を用意しているのか
静岡市は、市内へのスタートアップの集積・定着によって、行政・地域団体・市内企業との共働や協業を促し、社会課題の解決や地域経済の活性化につなげることを目的にこの制度を設けています。単に「起業を応援する」というより、静岡の街なかにスタートアップの拠点ができることで、地元企業との協業や新たな雇用が生まれる状態を狙った制度設計です。
対象になるのは、革新的なアイデア・テクノロジー・ビジネスモデルを持ち、短期間での急成長、または社会課題解決と持続可能な経済的成長の両立を目指す法人(いわゆるスタートアップ)です。東京や他都市で事業化した会社が静岡に開発拠点を新設するケースだけでなく、静岡発で社会課題解決型のビジネスを立ち上げる法人も対象に含まれます。
対象になる事業者・要件を具体例で見る
補助対象となるには、次の要件のすべてに該当し、市長が必要と認める必要があります。
- 静岡市内における3年以上の事業計画を有し、市の認定を受けること
- 事業計画の認定日以後に実施する事業であること
- 市内に新たに事業所を賃借し事業を実施すること(既存事業所の単なる移転・事業拡大を伴わない移転は対象外)
- 事業所が静岡市中心市街地活性化基本計画に定める区域(静岡地区・清水地区)内であること
- 事業計画の認定から6か月以内に市内で当該事業所の商業・法人登記をする意思を示すこと
- 賃金給与等を支給されている者(代表者以外の役員を含む)が1人以上いること。ただし市内で創業して2年以内の場合はこの限りでない
- 過去に当該事業所で本補助金や静岡市クリエーター活動事業補助金など、静岡市の事務所賃借系補助金の交付を受けたことがないこと
具体的にどんなケースが当てはまるか、3パターンで見てみます。
- 東京の受託開発スタートアップが静岡に開発拠点を新設: 代表1名・エンジニア社員2名体制で、静岡駅周辺(呉服町・両替町エリア等)にオフィスを借りるケース。要件6の「賃金給与を支給されている者1人以上」を社員がいることで満たせる
- 静岡発・社会課題解決型スタートアップが創業1年目で開業: 市内で創業したばかりで代表1名のみの体制。市内で創業し2年以内にあたるため、要件6(従業員1人以上の要件)は適用除外になり得る
- 地方から静岡に本社機能を移すスタートアップ: すでに他都市で事業実績がある法人が、静岡・清水地区内に新たに事業所を借りて登記も移す予定のケース。要件5の「認定から6か月以内の登記」が実務上の重要な期限になる
補助額のシミュレーション:家賃によって2年間の総額はここまで変わる
補助対象経費は事業計画認定の申請日以降に生じた事業所の賃借料・施設利用料のみです。敷金・礼金・入会金・保証金・不動産仲介手数料・火災保険料や消費税相当額は対象外になります。
| 区分 | 補助率 | 補助上限 |
|---|---|---|
| 事業所の賃借料・施設利用料 | 2/3 | 400万円(200万円/年度) |
月額家賃ごとに2年間の補助総額を試算すると、次のようになります。
| 月額家賃 | 年間家賃 | 年間補助額(2/3・上限200万円) | 2年間合計 |
|---|---|---|---|
| 8万円(個室型コワーキング・代表1名中心) | 96万円 | 64万円 | 128万円 |
| 15万円(小規模オフィス・社員2〜3名) | 180万円 | 120万円 | 240万円 |
| 25万円以上(オフィスビルのワンフロア・10名規模) | 300万円以上 | 200万円(上限) | 400万円(上限) |
月額家賃が25万円を超えても、年間補助額は200万円で頭打ちになるため、2年間合計は400万円が上限です。賃借料が上限に達したあとは、家賃をさらに上げても補助額は増えない点を踏まえて、オフィスの規模感を検討すると資金計画が立てやすくなります。
申請実務のタイミング:契約締結"前"の認定申請がすべての起点
手続きは「事業計画認定申請」→「補助金交付申請」→「実績報告」→「補助金請求」の順に進みます。ここで重要なのは、事業所の契約を結ぶ前に、まず事業計画認定申請書(様式第1号)を提出する必要がある点です。
タイミング別に整理すると、次のとおりです。
- 事業計画認定申請(事業所の契約締結前): 事業計画認定申請書(様式第1号)、事業詳細資料(任意様式・ミッション/ビジネスモデル/事業計画等を記載)、履歴事項全部証明書、直近3年分の貸借対照表・損益計算書
- 認定審査(申請後1か月程度): 市による書類審査・ヒアリングを経て認定通知
- 事業所開設・入居: 認定後に契約締結・事業開始
- 補助金交付申請(事業所設置後〜認定通知から1年以内): 補助金交付申請書(様式第4号)、企業等概要調書(様式第5号)、事業計画書(様式第6号)、収支予算書(様式第7号)、従業員数確認書類、定款の写し、登記事項証明書の写し、賃貸借契約書の写し、市民税の納税証明書
- 実績報告(補助期間の終期、または申請年度末): 実績報告書(様式第11号)、事業実績書(様式第6号)、収支決算書(様式第7号)
- 補助金請求: 請求書(様式第13号)を提出し、受領後30日以内に指定口座へ振込
事業計画の認定から6か月以内に商業・法人登記をする意思を示す必要がある点、また認定日から1年以内に事業を開始しないと特段の事情がない限り認定が取り消される点も、時系列上の隠れた期限として押さえておきたいポイントです。申請は静岡市の各種申請フォーム(Web)から行います。
対象地域は静岡・清水の中心市街地エリアに限定される
この補助金の対象になるのは、静岡市中心市街地活性化基本計画に定める区域(静岡地区・清水地区)内に事業所を賃借する場合のみです。静岡地区は駅周辺の追手町・呉服町・両替町・七間町・鷹匠エリアなど、清水地区は清水駅周辺の江尻町・巴町・清水町エリアなどが含まれます。市内であればどこでもよいわけではないため、物件を探す前に候補エリアが対象区域に含まれるかを確認しておくことが遠回りを避けるコツです。
他の補助金もあわせて検討したい方へ
静岡市はスタートアップ支援のほかにも、事業所の賃借に関する補助金(クリエーター活動事業補助金・企業立地促進事業補助金など)を複数運用しています。ただし同じ事業所について、これらとスタートアップ立地促進事業補助金を重複して受けることはできません。
国の補助金もあわせて検討したい方は、こちらの記事で解説しています。
自社の事業内容や地域によっては、この補助金以外にも活用できる制度がある可能性があります。他にももらえる補助金がないか気になる方は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。
事業計画の認定申請の書き方や、要件6(従業員要件)の該当可否など実務の進め方に迷う場合は、専門家に相談するのも一つの手です。
よくある質問
個人事業主でも申請できますか?
制度の対象は「法人」であり、募集要領は履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)の提出を求めていることから、法人格を持つスタートアップが対象と考えられます。個人事業主のまま申請できるかどうかは明記がないため、申請前に産業政策課へ確認するのが確実です。
補助対象の経費はいつから発生した分が対象になりますか?
事業計画認定の申請日以降に生じた賃借料・施設利用料のみが対象です。認定申請を行った日より前に契約・発注・購入・利用開始した経費は補助対象外になるため、物件の契約を先に済ませてしまわないよう注意が必要です。
すでに静岡市内に事業所がある場合も対象になりますか?
対象は「市内に新たに事業所を賃借し事業を実施する」ケースです。既存の事業所を有していて、事業拡大を伴わない単なる移転の場合は対象外とされています。事業拡大を伴う新規賃借に該当するかどうかは、個別の事業内容によって判断が分かれるため、産業政策課への事前相談が推奨されます。
免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報(令和8年度募集要領)にもとづきます。補助額・補助率・対象経費・申請要件・対象地域の内容は年度により変更される場合があるため、申請前に必ず静岡市の公式ページおよび最新の募集要領でご確認ください。
出典:
