人手が足りず、注文が入っても対応しきれない。溶接や搬送、配膳や調理といった手間のかかる工程を自動化して、少ない人数でも今まで通り、あるいはそれ以上の仕事を回したい――。そんな省力化投資の費用を、投資額の1/2から最大2/3、上限は最大1億円まで国が補助してくれるのが「中小企業省力化投資補助金」です。

この補助金には**「一般型」「カタログ注文型」という2つの申請類型があります。一般型は自社の現場に合わせてオーダーメイドで設計する設備・システムが対象、カタログ注文型は事務局の製品カタログに登録済みのIoT・ロボットなど汎用製品が対象という違いがあります。一般型の直近の締切(第7回)は2026年7月31日(金)17:00**、一方でカタログ注文型は随時受付(締切なし)という、スケジュールの仕組みも異なります。どちらが自社に合うのか、いくらもらえるのか、順番に見ていきましょう。

図: 省力化投資補助金の全体像(一般型とカタログ注文型の違い)。詳しくは本文で解説します

省力化投資補助金は何に使える?【一般型とカタログ注文型の違い】

同じ「省力化投資補助金」という名前でも、対象になる設備・製品の性質がまったく違います。まずはこの2類型の違いを押さえましょう。

一般型(現場に合わせたオーダーメイドの自動化設備・システム)

一般型は、「個別現場の設備や事業内容に合わせた設備導入・システム構築」が対象です。自社の生産ラインや業務フローに合わせて設計する専用設備・システムのイメージで、機械装置・システム構築費(必須)のほか、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費も対象になります。既製品を組み合わせるだけでは対応しきれない、オーダーメイド性のある投資に向いています。

カタログ注文型(カタログ掲載のIoT・ロボット等の汎用製品)

カタログ注文型は、事務局の「製品カタログ」に登録済みの、付加価値額向上・生産性向上に効果的なIoT・ロボット等の汎用製品が対象です。製品購入費・設置費・運搬費・システム構成費・稼働確認費などが対象になります。カタログに載っている製品の中から選ぶ仕組みのため、一般型に比べて申請から交付決定までのスピードが速い(概ね1〜2か月)という特徴があります。

図: 一般型とカタログ注文型で、対象になりやすい設備・製品の違い

「うちはどっちを見ればいいか」の考え方

  • 自社の現場・工程に合わせて個別に設計・構築する必要がある投資(生産ラインの自動化、独自の搬送・仕分けシステムなど)→ 一般型を検討
  • カタログに載っている既製の配膳ロボット・清掃ロボット・IoTセンサーなどで足りる投資 → カタログ注文型を検討
  • どちらの型で申請すべきか迷う場合や、対象経費として認められるかの実体判断(例えば「この設備は現場向けのカスタマイズなのか、汎用製品の組み合わせなのか」)が微妙なケースもあります。ただし、これはあくまで実際にオーダーメイド性のある設備・システムであるかどうかという実体で決まるものであり、書き方や言い回しだけで型・対象経費の区分を変えられるわけではありません。 迷ったときは、認定経営革新等支援機関や事務局の窓口に相談するのが確実です

いくらもらえる?従業員規模別の補助上限額

「最大1億円」「最大1,500万円」という数字だけでは実態を捉えきれません。上限額は従業員規模で段階的に決まるので、まずは型ごとの内訳を正確に押さえておきましょう。

一般型の補助上限額・補助率

従業員数補助上限額(通常)補助上限額(大幅賃上げ特例時)補助率
5人以下750万円1,000万円1/2(小規模企業者・小規模事業者は2/3)
6〜20人1,500万円2,000万円1/2(小規模企業者・小規模事業者は2/3)
21〜50人3,000万円4,000万円1/2(賃上げ特例達成で2/3)
51〜100人5,000万円6,500万円1/2(賃上げ特例達成で2/3)
101人以上8,000万円1億円1/2(賃上げ特例達成で2/3)

カタログ注文型の補助上限額・補助率

従業員数補助上限額(通常)補助上限額(賃上げ時)補助率
5人以下500万円750万円1/2以下
6〜20人750万円1,000万円1/2以下
21人以上1,000万円1,500万円1/2以下

※カタログ注文型の上限額は2026年3月19日の制度改定後の数値です。カタログ注文型は補助率が1/2以下で固定され、賃上げ達成時は補助率ではなく上限額のみが引き上がる仕組みです。

補助率はいくら?

  • 一般型:中小企業者は原則1/2以内。小規模企業者・小規模事業者・再生事業者は基本2/3。さらに「1人当たり給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上」かつ「事業所内最低賃金が地域別最低賃金+50円以上」を満たす大幅賃上げ特例では2/3に引き上がります(小規模企業者・小規模事業者がこの特例をさらに上乗せできるかは)
  • カタログ注文型:補助率は1/2以下で固定。事業場内最低賃金を3.0%以上引き上げる等の賃上げ要件を満たすと、補助率ではなく上限額が引き上がります

業種別・シミュレーション

同じ「上限」でも、業種とやりたいことで使い方はまったく変わります。3つの業種を例に、一般型・カタログ注文型それぞれで、いくら投資するといくら補助になるかを見てみましょう。

図: 業種別に見る「いくら投資して、いくら補助されるか」。賃上げ要件を満たすと補助が増える仕組みもあわせて確認できます

① 金属部品加工業(従業員28人・一般型) 手作業に頼っていた溶接工程を自動化したい。溶接ロボット2台と部品搬送ラインをあわせて構築する見積もりは6,000万円(従業員28人は「21〜50人」区分)。 → 6,000万円 × 1/2 = 3,000万円の補助(上限3,000万円ぴったり)。 大幅賃上げ特例を満たすと補助率は2/3に上がり、6,000万円 × 2/3 = 4,000万円(新しい上限4,000万円ぴったり)。浮いた1,000万円分の補助で、検品工程の自動化カメラシステムまで追加導入できます。

② 定食・居酒屋チェーン(従業員14人・カタログ注文型) 配膳の人手不足を解消したい。カタログ掲載の配膳ロボット4台と自動調理システム、モバイルオーダー連携をあわせて導入する見積もりは1,500万円(従業員14人は「6〜20人」区分)。 → 1,500万円 × 1/2 = 750万円の補助(上限750万円ぴったり)。 賃上げ要件(事業場内最低賃金3.0%以上増加)を満たすと上限額が750万円から1,000万円に引き上がるため、投資額を2,000万円まで拡大しても1,000万円の補助を受けられます(新しい上限1,000万円ぴったり)。増えた500万円の投資枠で、自動精算レジや需要予測システムまで追加導入できます。

③ 食品卸・配送センター(従業員65人・一般型) 倉庫内の入出庫・搬送を自動化したい。自動搬送ロボット(AGV)と入出庫管理システムをあわせて構築する見積もりは1億円(従業員65人は「51〜100人」区分)。 → 1億円 × 1/2 = 5,000万円の補助(上限5,000万円ぴったり)。 大幅賃上げ特例を満たすと補助率は2/3に上がり、1億円 × 2/3 = 6,667万円となりますが、上限6,500万円が適用されるため補助額は6,500万円。浮いた1,500万円分の補助で、ピッキング支援システムまで追加導入できます。

このように、業種や設備の種類が違っても「投資額の1/2〜2/3を国が補助する」という考え方は共通です。まずは自分の会社が一般型・カタログ注文型のどちらに近く、どの従業員規模区分に当てはまるかを確認してみましょう。

人手不足の解消以外にも、販路開拓や新分野展開など、やりたいことによっては別の補助金のほうが自社に合っているケースもあります。この補助金だけで判断がつかないと感じたら、他に使える補助金がないか探してみるのも有益です。

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締切はいつ?一般型とカタログ注文型で仕組みが違います

一般型とカタログ注文型は、締切の仕組みそのものが異なります。

  • 一般型:回次ごとに締切が設定される公募です。現行の第7回は、申請受付が2026年7月1日(水)10:00に始まっており、締切は2026年7月31日(金)17:00。交付決定は2026年11月中旬(予定)です。次回(第8回)の日程は、本記事作成時点で「詳細確定次第、公式サイトで更新」とされており未定です
  • カタログ注文型:2024年8月9日以降、回次制ではなく随時受付に移行しています。締切という概念がなく(メンテナンス期間を除く)、申請から交付決定まで概ね1〜2か月というスピード感が特徴です

一般型の締切に間に合わない場合でも、カタログ掲載製品で足りる投資であれば、随時受付のカタログ注文型を検討するという選択肢があります。

図: 一般型は回次ごとの締切、カタログ注文型は随時受付という仕組みの違い

一般型の事業実施期間は、交付決定日から原則18か月以内(採択発表日から20か月後までが上限)です。カタログ注文型の事業実施期間は、交付決定日から原則12か月以内です。補助金はいずれも経費を立て替えて支払った後に実績報告を経て交付される仕組みのため、着金までの資金繰りに不安がある場合は、早い段階で金融機関に相談しておくと安心です。

承認までの重要なタイミングと必要書類

「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を押さえるほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。

タイミングやること必要になるもの
導入を決めたらすぐGビズIDプライムアカウントを取得する(電子申請には両型ともこのIDが必須)マイナンバーカードや印鑑証明書等の本人確認書類
申請前(一般型)事業計画を作成し、導入する設備・システムについて2者以上から同一条件の見積もりを取る(原則)事業計画書、相見積書
申請前(カタログ注文型)製品カタログから対象製品を選び、その製品の「販売事業者一覧」から販売事業者を選定。販売事業者と共同で事業計画を策定する共同事業計画、製品・販売事業者の選定資料
〜一般型・第7回締切:2026年7月31日(金)17:00電子申請システムで応募申請事業計画書、決算書、その他必要書類
カタログ注文型:随時販売事業者と共同で電子申請システムから応募・交付申請共同事業計画、見積書等
一般型:2026年11月中旬(予定)交付決定
カタログ注文型:申請から概ね1〜2か月後交付決定
交付決定日〜事業実施期間終了(一般型:原則18か月以内/カタログ注文型:原則12か月以内)事業実施(設備の発注・導入・支払い)契約書・見積書・請求書・領収書などを保管
事業終了後30日以内(一般型)実績報告 → 補助金の入金実績報告書、支払いを証明する証憑(領収書・振込明細など)
事業終了後(両型とも数年間)効果報告(一般型は5年間、カタログ注文型は3年間、毎年度)稼働状況・生産性向上の達成状況に関する報告

図: いつ・何が必要になるか。GビズIDプライムの取得は両型共通の最初の一歩です

特に注意したいのが、交付決定より前に発注・契約してしまうと補助対象外になること。一般型では交付決定前の相見積り(2者以上・同一条件)、カタログ注文型では販売事業者との共同事業計画の策定が、申請前に済ませておくべきステップです。

「うちの会社でも対象?」対象事業者の考え方

一般型・カタログ注文型ともに、対象になるのは中小企業者、小規模企業者・小規模事業者、特定事業者の一部、特定非営利活動法人、社会福祉法人等です(カタログ注文型は「人手不足の状態にある中小企業等」という要件も明記されています)。

中小企業者にあたるかどうかは、資本金または常時使用する従業員数のいずれかが、業種ごとの基準以下であることで判断されます。

業種資本金の基準従業員数の基準
製造業・建設業・運輸業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業(ソフトウェア業を除く)5,000万円以下100人以下

このほか、常時使用する従業員数が商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で5人以下、それ以外の業種で20人以下の事業者は「小規模企業者・小規模事業者」に該当し、一般型では賃上げ特例なしでも補助率が2/3になります。

例:フルタイム社員18人+パート10人の金属加工業(法人) → 製造業の基準は「資本金3億円以下または従業員300人以下」。従業員28人・資本金がこの基準以下であれば中小企業者として対象です。小規模企業者(20人以下)の基準は超えているため、一般型では中小企業者向けの補助率1/2(賃上げ特例達成で2/3)が適用される見込みです。

自社が中小企業者・小規模企業者のどちらにあたるかの最終判断に迷う場合は、公式サイトで確認するか、認定経営革新等支援機関に相談すると確実です。

よくある質問

一般型とカタログ注文型、両方に同時に申請できますか?

自社の投資内容が「オーダーメイドの設備」と「カタログ登録製品」の両方にまたがる場合は、どちらの型で申請すべきか、事務局や認定経営革新等支援機関に事前に相談することをおすすめします。

締切の2026年7月31日に間に合わなかったらもう申請できませんか?

一般型は次回(第8回)の日程が本記事作成時点で未定ですが、公式サイトで確定次第公表されます。カタログ掲載製品で足りる投資であれば、随時受付のカタログ注文型を検討する選択肢もあります。

補助上限は本当に1億円ですか?

1億円は、一般型で従業員101人以上・大幅賃上げ特例を達成した場合の上限です。従業員規模や賃上げ特例の達成有無によって上限額は異なり、無条件で1億円がもらえるわけではありません。

対象になる設備・製品は自分で自由に選べますか?

一般型は自社の現場に合わせた設計が前提のため、事業計画の中で設備・システムの内容を具体的に説明する必要があります。カタログ注文型は、事務局の製品カタログに登録済みの製品の中から選ぶ仕組みです。どちらも「何でも自由に選べる」わけではなく、それぞれのルールに沿った選定が必要です。

※補助上限額・補助率・締切などの制度内容は、公募要領の改定により変更される場合があります。申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

出典(一次情報): 中小企業省力化投資補助金 公式サイト(中小機構)一般型・制度概要一般型・スケジュール一般型・申請の流れカタログ注文型・制度概要カタログ注文型・スケジュールカタログ注文型・申請の流れカタログ注文型・2026年3月19日制度改定


採択される事業計画には“書き方の型”があります

同じ設備投資でも、事業計画の書き方ひとつで採択・不採択は変わります。審査で見られるポイントや、そのまま使える記入例は、一般には出回っていません。

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この補助金の概要(早見表)

検索項目一般型カタログ注文型
制度名中小企業省力化投資補助金(一般型)中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)
対象業種全業種全業種
利用目的設備整備・IT導入をしたい設備整備・IT導入をしたい
対象地域全国全国
従業員数中小企業・小規模事業者(業種により資本金額・従業員数で判定。目安300人以下)中小企業・小規模事業者(業種により資本金額・従業員数で判定。目安300人以下)
補助上限額最大1億円(従業員規模・賃上げ特例で変動。内訳は本文表を参照)最大1,500万円(従業員規模・賃上げで変動。内訳は本文表を参照)
補助率1/2(賃上げで2/3。小規模企業者は基本2/3)1/2以下(固定)
申請受付第7回:2026年7月1日(水)〜2026年7月31日(金)17:00(次回は未定)随時受付中(締切なし)
公式サイト一般型 公式サイトカタログ注文型 公式サイト

※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。