人手が足りない。注文は来るのに、こなせない。溶接、搬送、配膳、調理――手間のかかる工程ほど、そこで詰まります。
そこで使えるのが「中小企業省力化投資補助金」。省力化投資の費用を、投資額の1/2から最大2/3、上限は最大1億円まで国が補助してくれます。対象は中小企業者・小規模事業者など。ただしこの補助金、「一般型」と「カタログ注文型」という2つの型があるのが最初の関門です。
一般型は現場に合わせたオーダーメイド、カタログ注文型は登録済みの汎用製品。どちらを選ぶかで、締切もスピードも変わります。一般型の直近の締切(第7回)は2026年7月31日(金)17:00。カタログ注文型は随時受付、締切そのものがありません。まず自社がどちらに近いか、そこから確認していきましょう。
中小企業省力化投資補助金の要点まとめ
| 項目 | 一般型 | カタログ注文型 |
|---|---|---|
| 制度名 | 中小企業省力化投資補助金(一般型) | 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型) |
| 対象業種 | 全業種 | 全業種 |
| 利用目的 | 設備整備・IT導入をしたい | 設備整備・IT導入をしたい |
| 対象地域 | 全国 | 全国 |
| 従業員数 | 中小企業・小規模事業者(業種により資本金額・従業員数で判定。目安300人以下) | 中小企業・小規模事業者(業種により資本金額・従業員数で判定。目安300人以下) |
| 補助上限額 | 最大1億円(従業員規模・賃上げ特例で変動。内訳は本文表を参照) | 最大1,500万円(従業員規模・賃上げで変動。内訳は本文表を参照) |
| 補助率 | 1/2(賃上げで2/3。小規模企業者は基本2/3) | 1/2以下(固定) |
| 申請受付 | 第7回:2026年7月1日(水)〜2026年7月31日(金)17:00(次回は未定)(受付終了) | 随時受付中(締切なし) |
| 公式サイト | 一般型 公式サイト | カタログ注文型 公式サイト |
図: 省力化投資補助金の全体像(一般型とカタログ注文型の違い)。詳しくは本文で解説します
省力化投資補助金は何に使える?【一般型とカタログ注文型の違い】
同じ「省力化投資補助金」という名前でも、対象になる設備・製品の性質がまったく違います。まずはこの2類型の違いを押さえましょう。
一般型(現場に合わせたオーダーメイドの自動化設備・システム)
一般型の対象は、「個別現場の設備や事業内容に合わせた設備導入・システム構築」。自社の生産ラインや業務フローに合わせて設計する専用設備です。
対象経費は、機械装置・システム構築費(必須)のほか、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費。既製品の組み合わせでは足りない投資に向いています。
カタログ注文型(カタログ掲載のIoT・ロボット等の汎用製品)
カタログ注文型の対象は、事務局の「製品カタログ」に登録済みのIoT・ロボット等の汎用製品です。対象経費は製品購入費・設置費・運搬費・システム構成費・稼働確認費など。
載っている製品から選ぶ仕組みなので、交付決定までが速い(概ね1〜2か月)のが特徴です(交付決定とは、採択の後に届く「補助金を出します」という正式な通知のことです。この通知より前に発注・契約した費用は対象外になります)。
図: 一般型とカタログ注文型で、対象になりやすい設備・製品の違い
「うちはどっちを見ればいいか」の考え方
- 自社の現場・工程に合わせて個別に設計・構築する必要がある投資(生産ラインの自動化、独自の搬送・仕分けシステムなど)→ 一般型を検討
- カタログに載っている既製の配膳ロボット・清掃ロボット・IoTセンサーなどで足りる投資 → カタログ注文型を検討
- 「この設備は現場向けのカスタマイズなのか、汎用製品の組み合わせなのか」。判断が微妙なケースもあります。ただし決まるのは実体であり、書き方や言い回しだけで型・対象経費の区分は変えられません。迷ったら、認定経営革新等支援機関や事務局の窓口へ(国が認定した支援機関。商工会議所・金融機関・税理士など)
いくらもらえる?従業員規模別の補助上限額
「最大1億円」「最大1,500万円」という数字だけでは実態を捉えきれません。上限額は従業員規模で段階的に決まるので、まずは型ごとの内訳を正確に押さえておきましょう。
一般型の補助上限額・補助率
| 従業員数 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(大幅賃上げ特例時) | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 5人以下 | 750万円 | 1,000万円 | 1/2(小規模企業者・小規模事業者は2/3) |
| 6〜20人 | 1,500万円 | 2,000万円 | 1/2(小規模企業者・小規模事業者は2/3) |
| 21〜50人 | 3,000万円 | 4,000万円 | 1/2(賃上げ特例達成で2/3) |
| 51〜100人 | 5,000万円 | 6,500万円 | 1/2(賃上げ特例達成で2/3) |
| 101人以上 | 8,000万円 | 1億円 | 1/2(賃上げ特例達成で2/3) |
カタログ注文型の補助上限額・補助率
| 従業員数 | 補助上限額(通常) | 補助上限額(賃上げ時) | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 5人以下 | 200万円 | 300万円 | 1/2以下 |
| 6〜20人 | 500万円 | 750万円 | 1/2以下 |
| 21人以上 | 1,000万円 | 1,500万円 | 1/2以下 |
※カタログ注文型の上限額は2026年3月19日の制度改定後の数値です。カタログ注文型は補助率が1/2以下で固定され、賃上げ達成時は補助率ではなく上限額のみが引き上がる仕組みです。
補助率はいくら?
- 一般型:中小企業者は原則1/2以内。小規模企業者・小規模事業者・再生事業者は基本2/3。さらに「1人当たり給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上」かつ「事業所内最低賃金が地域別最低賃金+50円以上」を満たす大幅賃上げ特例では2/3に引き上がります(小規模企業者・小規模事業者がこの特例をさらに上乗せできるかは)
- カタログ注文型:補助率は1/2以下で固定。事業場内最低賃金を3.0%以上引き上げる等の賃上げ要件を満たすと、補助率ではなく上限額が引き上がります
業種別・シミュレーション
同じ「上限」でも、業種とやりたいことで使い方はまったく変わります。3つの業種を例に、一般型・カタログ注文型それぞれで、いくら投資するといくら補助になるかを見てみましょう。
図: 業種別に見る「いくら投資して、いくら補助されるか」。賃上げ要件を満たすと補助が増える仕組みもあわせて確認できます
① 金属部品加工業(従業員28人・一般型) 手作業に頼っていた溶接工程を自動化したい。溶接ロボット2台と部品搬送ラインをあわせて構築する見積もりは6,000万円(従業員28人は「21〜50人」区分)。 → 6,000万円 × 1/2 = 3,000万円の補助(上限3,000万円ぴったり)。 大幅賃上げ特例を満たすと補助率は2/3に上がり、6,000万円 × 2/3 = 4,000万円(新しい上限4,000万円ぴったり)。浮いた1,000万円分の補助で、検品工程の自動化カメラシステムまで追加導入できます。
② 定食・居酒屋チェーン(従業員14人・カタログ注文型) 配膳の人手不足を解消したい。カタログ掲載の配膳ロボット4台と自動調理システム、モバイルオーダー連携をあわせて導入する見積もりは1,500万円(従業員14人は「6〜20人」区分)。 → 1,500万円 × 1/2 = 750万円の補助(上限750万円ぴったり)。 賃上げ要件(事業場内最低賃金3.0%以上増加)を満たすと上限額が750万円から1,000万円に引き上がるため、投資額を2,000万円まで拡大しても1,000万円の補助を受けられます(新しい上限1,000万円ぴったり)。増えた500万円の投資枠で、自動精算レジや需要予測システムまで追加導入できます。
③ 食品卸・配送センター(従業員65人・一般型) 倉庫内の入出庫・搬送を自動化したい。自動搬送ロボット(AGV)と入出庫管理システムをあわせて構築する見積もりは1億円(従業員65人は「51〜100人」区分)。 → 1億円 × 1/2 = 5,000万円の補助(上限5,000万円ぴったり)。 大幅賃上げ特例を満たすと補助率は2/3に上がり、1億円 × 2/3 = 6,667万円となりますが、上限6,500万円が適用されるため補助額は6,500万円。浮いた1,500万円分の補助で、ピッキング支援システムまで追加導入できます。
まずは自社が一般型・カタログ注文型のどちらに近いか。そして、どの従業員規模区分に入るか。この2つを確認してください。
販路開拓や新分野展開など、やりたいことによっては別の補助金のほうが合っています。判断がつかないと感じたら、他に使える補助金も探してみてください。
締切はいつ?一般型とカタログ注文型で仕組みが違います
一般型とカタログ注文型は、締切の仕組みそのものが異なります。
- 一般型:回次ごとに締切が設定される公募です。現行の第7回は、申請受付が2026年7月1日(水)10:00に始まっており、締切は2026年7月31日(金)17:00。交付決定は2026年11月中旬(予定)です。次回(第8回)の日程は、本記事作成時点で「詳細確定次第、公式サイトで更新」とされており未定です
- カタログ注文型:2024年8月9日以降、回次制ではなく随時受付に移行しています。締切という概念がなく(メンテナンス期間を除く)、申請から交付決定まで概ね1〜2か月というスピード感が特徴です
一般型の締切に間に合わない場合でも、カタログ掲載製品で足りる投資であれば、随時受付のカタログ注文型を検討するという選択肢があります。
図: 一般型は回次ごとの締切、カタログ注文型は随時受付という仕組みの違い
事業実施期間は、一般型が交付決定日から原則18か月以内(採択発表日から20か月後までが上限)。カタログ注文型は原則12か月以内です。
いずれも、経費を立て替えて支払ったあと、実績報告を経て交付されます。着金までの資金繰りに不安があるなら、早めに金融機関へ相談してください。
承認までの重要なタイミングと必要書類
「何が必要か」よりも「いつ何が必要か」を押さえるほうが、準備のスケジュールを組みやすくなります。
| タイミング | やること | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 導入を決めたらすぐ | GビズIDプライムアカウントを取得する(電子申請には両型ともこのIDが必須) | マイナンバーカードや印鑑証明書等の本人確認書類 |
| 申請前(一般型) | 事業計画を作成し、導入する設備・システムについて2者以上から同一条件の見積もりを取る(原則) | 事業計画書、相見積書 |
| 申請前(カタログ注文型) | 製品カタログから対象製品を選び、その製品の「販売事業者一覧」から販売事業者を選定。販売事業者と共同で事業計画を策定する | 共同事業計画、製品・販売事業者の選定資料 |
| 〜一般型・第7回締切:2026年7月31日(金)17:00 | 電子申請システムで応募申請 | 事業計画書、決算書、その他必要書類 |
| カタログ注文型:随時 | 販売事業者と共同で電子申請システムから応募・交付申請 | 共同事業計画、見積書等 |
| 一般型:2026年11月中旬(予定) | 交付決定 | ― |
| カタログ注文型:申請から概ね1〜2か月後 | 交付決定 | ― |
| 交付決定日〜事業実施期間終了(一般型:原則18か月以内/カタログ注文型:原則12か月以内) | 事業実施(設備の発注・導入・支払い) | 契約書・見積書・請求書・領収書などを保管 |
| 事業終了後30日以内(一般型) | 実績報告 → 補助金の入金 | 実績報告書、支払いを証明する証憑(領収書・振込明細など) |
| 事業終了後(両型とも数年間) | 効果報告(一般型は5年間、カタログ注文型は3年間、毎年度) | 稼働状況・生産性向上の達成状況に関する報告 |
図: いつ・何が必要になるか。GビズIDプライムの取得は両型共通の最初の一歩です
注意したいのが、交付決定より前に発注・契約すると補助対象外になること。申請前に済ませておくのは、一般型なら相見積り(2者以上・同一条件)、カタログ注文型なら販売事業者との共同事業計画の策定です。
「うちの会社でも対象?」対象事業者の考え方
両型とも、対象は中小企業者、小規模企業者・小規模事業者、特定事業者の一部、特定非営利活動法人、社会福祉法人等です。カタログ注文型には「人手不足の状態にある中小企業等」という要件も明記されています。
中小企業者にあたるかは、資本金または常時使用する従業員数のどちらかが、業種ごとの基準以下かで決まります。
| 業種 | 資本金の基準 | 従業員数の基準 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業(ソフトウェア業を除く) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
このほか「小規模企業者・小規模事業者」の区分があります。常時使用する従業員が、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)で5人以下、それ以外の業種で20人以下。ここに入ると、一般型は賃上げ特例なしでも補助率2/3です。
例:フルタイム社員18人+パート10人の金属加工業(法人) → 製造業の基準は「資本金3億円以下または従業員300人以下」。従業員28人で資本金も基準以下なら、中小企業者として対象です。ただし小規模企業者(20人以下)は超えています。一般型の補助率は1/2(賃上げ特例達成で2/3)になる見込みです。
自社が中小企業者・小規模企業者のどちらにあたるかの最終判断に迷う場合は、公式サイトで確認するか、認定経営革新等支援機関に相談すると確実です(国が認定した中小企業の支援機関で、商工会議所・金融機関・税理士などが登録しています)(国が認定した中小企業の支援機関で、商工会議所・金融機関・税理士などが登録しています)。
よくある質問
一般型とカタログ注文型、両方に同時に申請できますか?
自社の投資内容が「オーダーメイドの設備」と「カタログ登録製品」の両方にまたがる場合は、どちらの型で申請すべきか、事務局や認定経営革新等支援機関に事前に相談することをおすすめします。
締切の2026年7月31日に間に合わなかったらもう申請できませんか?
一般型は次回(第8回)の日程が本記事作成時点で未定ですが、公式サイトで確定次第公表されます。カタログ掲載製品で足りる投資であれば、随時受付のカタログ注文型を検討する選択肢もあります。
補助上限は本当に1億円ですか?
1億円は、一般型で従業員101人以上・大幅賃上げ特例を達成した場合の上限です。従業員規模や賃上げ特例の達成有無によって上限額は異なり、無条件で1億円がもらえるわけではありません。
対象になる設備・製品は自分で自由に選べますか?
いいえ。一般型は自社の現場に合わせた設計が前提なので、設備・システムの内容を事業計画で具体的に説明します。カタログ注文型は、事務局の製品カタログに登録済みの製品から選ぶ仕組みです。
