育児休業給付金は賃金の67%に減ります。「3割減るなら育休は取りにくい」と考える家庭は多いはずです。この差を埋めるために2025年4月に始まったのが、出生後休業支援給付金です。
要件を満たすと、育児休業給付金の67%に13%が上乗せされ、実質の給付率が80%になります。 育休中は社会保険料が免除され、給付金自体も非課税なので、給付率80%は手取りでみるとほぼ10割相当になります。
支給されるのは最大28日間だけです。ただし、この28日をどう使うかで受け取れる額が変わります。この記事では、支給要件・配偶者の育休が不要になる例外・具体的な金額を、厚生労働省の資料にもとづいて整理します。
なお、育児休業給付金そのものの計算式や月収別の早見表は育児休業給付金はいくら?計算式と月収別の早見表、延長の手続きは育児休業給付金の延長、会社側がもらえる助成金は両立支援等助成金にまとめています。
出生時育児休業給付金・育児休業給付金との違い
出生後休業支援給付金は、単独の給付金ではなく、既存の育休給付に上乗せする仕組みです。土台になる2つの給付金との関係を整理します。
| 出生時育児休業給付金 | 育児休業給付金 | 出生後休業支援給付金 | |
|---|---|---|---|
| 対象になる休業 | 産後パパ育休(出生後8週間以内) | 通常の育児休業 | 上記いずれかの休業(最大28日分) |
| 基本の給付率 | 67% | 67%(180日超は50%) | 上乗せ分として13% |
| 支給日数の上限 | 通算28日 | 原則1歳まで(延長あり) | 最大28日 |
| 申請先 | ハローワーク(勤務先経由) | ハローワーク(勤務先経由) | 育休給付の申請書に併記 |
要件を満たすと、出生時育児休業給付金・育児休業給付金のどちらの支給期間でも13%が上乗せされ、合計で80%(手取りで10割相当)になります。 上乗せされるのは最大28日分だけで、それ以降は元の給付率に戻ります。
そもそも何が「上乗せ」されるのか
出生後休業支援給付金は、それ単体でもらえる給付金ではありません。すでにある育児休業給付(出生時育児休業給付金・育児休業給付金)に、あとから13%を足す仕組みです。
土台になる給付は2種類あります。
- 出生時育児休業給付金(産後パパ育休。子の出生後8週間以内に取る短期の育休に対する給付。給付率67%)
- 育児休業給付金(通常の育休に対する給付。休業開始から180日目までは給付率67%、それ以降は50%)
どちらの給付が支給されている期間でも、要件を満たせば13%が上乗せされます。 ただし上乗せされるのは最大28日分だけで、それ以降は元の給付率(67%または50%)に戻ります。
支給要件は2つ。どちらも欠けると支給されない
厚生労働省のリーフレットでは、支給要件を次の2つに整理しています。
- 被保険者本人が、対象期間内に、出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給される休業を通算14日以上取得したこと
- 被保険者の配偶者が、対象期間内に通算14日以上の育児休業を取得したこと。 または、子の出生日の翌日時点で「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当していること
つまり、自分だけ育休を14日取っても、配偶者側の条件が満たされていなければ支給されません。 ここが「知らずに申請し忘れる」原因になりやすい部分です。
「対象期間」はいつからいつまでか
厚生労働省の定義では、対象期間は本人が産後休業を取ったかどうかで変わります。
| 被保険者の状況 | 対象期間 |
|---|---|
| 産後休業をしていない場合(父親、または子が養子のとき) | 子の出生日(または出産予定日のうち早い日)から、出産予定日のうち遅い日を起算して8週間を経過する日の翌日まで |
| 産後休業をした場合(母親で、子が養子でないとき) | 同じ起点から16週間を経過する日の翌日まで |
母親は産後休業(産後8週間)がある分、対象期間が16週間まで延びます。 父親は産後休業がないので8週間で区切られます。この期間内に14日以上の育休を取得していることが条件です。
なお、2025年4月1日より前から引き続き育児休業をしている場合は、対象期間の起点を「2025年4月1日」として要件を確認する扱いになります。制度そのものが2025年4月に始まったため、それ以前に育休を開始していた方については、開始日をそのまま基準にすると対象期間の計算が成り立たないためです。
配偶者の育休が「要件にならない」7つのケース
「配偶者が育休を取れない・取らない」家庭では、本人だけの要件で支給を受けられる場合があります。 厚生労働省のリーフレットは、子の出生日の翌日時点で次のいずれかに該当すれば、配偶者の育休取得を要件にしないと定めています。
- 配偶者がいない(行方不明を含む。ただし勤務先で3か月以上の無断欠勤、または災害による行方不明に限る)
- 配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
- 被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
- 配偶者が無業者
- 配偶者が自営業者やフリーランスなど、雇用される労働者でない
- 配偶者が産後休業中
- 1〜6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない(日々雇用される者など。単に業務の都合で取らない場合は含まれない)
ひとり親家庭は1に該当するため、配偶者側の要件を気にせず、本人の14日以上の育休だけで支給対象になります。
父親が申請する場合は、子が養子でない限り、必ずこの1〜7のいずれかに当てはまります。 なぜなら母親は出産した本人であり、その期間は「配偶者が産後休業中(6)」に該当するためです。つまり父親にとっては、母親の育休取得の有無そのものが要件にならない、という整理になります。
一方、母親が申請する場合は、父親(配偶者)が実際に14日以上の育休を取っているかどうかが問われます。 父親が「取らない」のではなく1〜7のどれにも該当しない状態で育休を取らなければ、母親側も出生後休業支援給付金の対象になりません。
支給額の計算式
支給額の計算式は次のとおりです。
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(28日が上限) × 13%
休業開始時賃金日額は、同一の子に関する最初の出生時育児休業または育児休業の開始前、直近6か月間に支払われた賃金の総額を180で割って算出します。育児休業給付金の計算に使う「休業開始時賃金日額」と同じ値です。
支給日数は、対象期間中に実際に出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給された休業の取得日数で、28日が上限です。14日取得すれば14日分、28日取得すれば上限の28日分が計算対象になります。
なお、休業開始時賃金日額には上限があります。2025年4月1日時点で15,690円(毎年8月1日に改定)です。高収入の方はこの上限で頭打ちになる点に注意してください。
具体的な金額シミュレーション
3つのパターンで試算します。前提として、休業開始時賃金日額の上限(15,690円)には達していないものとします。
パターン1: 夫婦で28日ずつ育休を取った場合(月収35万円の夫・月収28万円の妻)
夫の休業開始時賃金日額はおよそ11,700円(月収35万円×6か月÷180で近似)、妻はおよそ9,300円です。
| 夫(出生時育休28日) | 妻(産休明けの育休28日) | |
|---|---|---|
| 元の給付(67%) | 11,700円×28日×67% = 約219,500円 | 9,300円×28日×67% = 約174,500円 |
| 出生後休業支援給付金(13%上乗せ) | 11,700円×28日×13% = 約42,600円 | 9,300円×28日×13% = 約33,900円 |
| 合計(給付率80%) | 約262,100円 | 約208,400円 |
世帯で見ると、上乗せ分だけで合計約76,500円が上積みされます。 給付率67%のままなら受け取れなかった金額です。
パターン2: 父親が14日だけ育休を取った場合(月収30万円)
休業開始時賃金日額はおよそ10,000円です。
- 元の給付(67%): 10,000円×14日×67% = 約93,800円
- 上乗せ分(13%): 10,000円×14日×13% = 約18,200円
- 合計: 約112,000円
14日ちょうどでも要件は満たせます。 ただし上乗せ額は日数に比例するため、可能であれば28日まで延ばしたほうが受け取る額は大きくなります。
パターン3: ひとり親(配偶者がいない)が28日の育休を取った場合(月収26万円)
休業開始時賃金日額はおよそ8,700円です。この場合、配偶者の育休要件は「配偶者がいない」(前述の1)に該当するため問われません。
- 元の給付(67%): 8,700円×28日×67% = 約163,200円
- 上乗せ分(13%): 8,700円×28日×13% = 約31,700円
- 合計: 約194,900円
本人の要件(14日以上の育休取得)さえ満たせば、配偶者の状況にかかわらず上乗せを受けられます。 「うちはひとり親だから対象外」と思い込んで申請しないケースが実際には最も多い誤解です。
申請方法
出生後休業支援給付金は、単独では申請しません。
- 出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給申請書を用意する(勤務先を通じてハローワークに提出するのが一般的)
- 申請書にある「配偶者の被保険者番号」「配偶者の育児休業開始年月日」「配偶者の状態」の3つの欄のうち、該当するいずれか1つを記入する(複数記載は不可)
- 配偶者が雇用保険の被保険者であれば「配偶者の被保険者番号」欄に記入し、ハローワークが配偶者側の育休取得日数を確認します
- 配偶者が公務員(雇用保険被保険者でない場合)であれば「配偶者の育児休業開始年月日」欄に記入し、育休の承認通知書の写し等を添付します
- 配偶者の育休を要件としない7つのケースに該当する場合は「配偶者の状態」欄に該当番号を記入し、その状態を確認できる書類を添付します
父親が申請する場合、子が養子でない限り「配偶者の状態」欄への記入が基本になります。 母親(配偶者)が産後休業中であることが、そのまま該当理由(6)になるためです。
出生時育児休業給付金・育児休業給付金の申請後に、出生後休業支援給付金だけを別途申請することも可能です。ただしその場合は、先に育児休業給付金等が支給された後に申請する必要があります。
育児休業給付金の延長・両立支援等助成金との関係
出生後休業支援給付金は最大28日で終わりますが、育児休業自体はその後も続きます。ここから先の期間にどんな制度があるかを整理しておくと、産休から育休までの見通しが立てやすくなります。
- 育児休業給付金: 出生後休業支援給付金の対象期間(最大28日)を過ぎると、通常の育児休業給付金(180日目までは67%、それ以降は50%)に切り替わります。原則1歳までですが、保育所に入れない等の事情があれば、育児休業給付金の延長により1歳6か月・2歳まで延ばせます
- 両立支援等助成金: 出生後休業支援給付金は本人(従業員)に対する給付ですが、これとは別に、会社側が育休取得を後押しした場合に受け取れる助成金もあります。詳しくは両立支援等助成金で解説しています
制度が複数に分かれているのは、「本人への所得補償」と「会社への後押し」という役割が違うためです。 従業員が出生後休業支援給付金を申請したからといって、会社側の助成金の申請が自動的に進むわけではありません。それぞれ別に手続きが必要です。夫婦それぞれの勤務先が異なる場合、双方の会社が独立してこの助成金を申請できる可能性もあるため、育休の予定が固まった段階で、それぞれの勤務先の人事担当者に共有しておくと後の手続きがスムーズになります。
よくあるつまずき — 申請のタイミングと勤務先との連携
出生後休業支援給付金の申請でつまずきやすいのは、制度そのものの理解よりも、勤務先とのやり取りの部分です。
- 勤務先の担当者が制度を知らない、または申請書の記入欄を誤る: 出生後休業支援給付金は2025年4月に新設された比較的新しい制度のため、担当者によっては通常の育児休業給付金の申請だけで済ませてしまうことがあります。申請書に配偶者関連の3つの欄があることを、自分から確認することをおすすめします
- 配偶者の勤務先から必要書類をもらい忘れる: 配偶者が公務員の場合、育休の承認通知書の写しなど、配偶者側の勤務先からの書類が必要になります。取得のタイミングを事前に配偶者と共有しておくとスムーズです
- 育休の取得日数を「予定」で申告してしまう: 支給要件は「実際に取得した」14日以上です。予定を早めに切り上げた場合、要件を満たさなくなる可能性があります
- 配偶者が別々の勤務先で申請書類を出すタイミングがずれる: 配偶者の被保険者番号や育休開始日を記入する際、配偶者側の育休取得がまだ確定していないと、ハローワークでの確認が保留になることがあります。できるだけ早い段階から夫婦で育休の予定と手続き状況を共有し、認識のずれがないようにしてから申請するのが確実です
見落としやすい・支給されない要因
- 就労状況や賃金の支払い状況により、そもそも出生時育児休業給付金・育児休業給付金が不支給になった場合。 この場合、出生後休業支援給付金も支給されません
- 配偶者の育休が14日に届いていない。 「取得を予定している」だけでは不十分で、実際に通算14日以上取得している必要があります
- 単に配偶者の業務の都合で育休を取らなかった場合。 これは「配偶者の育児休業を要件としない場合」の7番(1〜6以外の理由で育休ができない)には該当しません。あくまで「取ることができない」客観的な事情が必要です
- 2025年4月1日より前から育休を継続している場合の対象期間の数え方を誤る。 この場合は、対象期間の起点を「2025年4月1日」として要件を確認する扱いになります
よくある質問
出生後休業支援給付金は自分で申請しないともらえませんか?
はい、申請が必要です。出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給申請書に、配偶者に関する3つの欄のいずれかを記入することで申請したことになります。何も記入しなければ、要件を満たしていても支給されません。
配偶者が育休を取る予定がない場合、あきらめるしかありませんか?
該当する事情によっては、配偶者の育休取得なしで支給対象になります。配偶者が無業者・自営業者・フリーランスである場合、産後休業中である場合、配偶者がいない場合などは、本人の要件(14日以上の育休取得)だけで支給されます。まず自分の家庭がこの7つのケースのどれかに当てはまらないか確認してください。
28日より短い育休でも受け取れますか?
受け取れます。要件は「通算14日以上」の育休取得です。14日以上であれば支給対象になりますが、支給額は実際に育児休業給付が支給された日数(28日が上限)に比例するため、日数が少ないほど上乗せ額も小さくなります。
出生時育児休業給付金と育児休業給付金のどちらでも対象になりますか?
どちらでも対象になります。出生後休業支援給付金は、子の出生直後の産後パパ育休(出生時育児休業給付金)でも、その後の通常の育児休業(育児休業給付金)でも、対象期間内であれば上乗せの対象です。
出産手当金にもこの上乗せは適用されますか?
適用されません。出生後休業支援給付金は雇用保険から支給される育児休業給付(出生時育児休業給付金・育児休業給付金)への上乗せであり、健康保険から支給される出産手当金はハローワークが取り扱う制度ではありません。出産手当金の金額は出産手当金の計算方法で解説しています。
転職したばかりでも対象になりますか?
出生時育児休業給付金・育児休業給付金の受給資格そのものに、休業開始前2年間にみなし被保険者期間が通算12か月以上あることが求められます。この受給資格を満たしていれば、出生後休業支援給付金の要件(本人14日以上・配偶者14日以上または例外事由)を満たすことで支給対象になります。転職の時期によっては、この12か月の通算に前職の期間を含められる場合があるため、詳しくはハローワークに確認することをおすすめします。
育休を分割して取得した場合、14日の数え方はどうなりますか?
対象期間内であれば、分割して取得した日数を通算して14日以上になれば要件を満たします。たとえば出生時育児休業を2回に分けて7日ずつ取得した場合、合計14日として扱われます。まとめて連続14日取る必要はありません。
会社員ではなくパート・アルバイトでも対象になりますか?
雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者であれば、雇用形態を問わず対象になり得ます。ただし、出生時育児休業給付金・育児休業給付金自体の受給資格(休業開始前2年間にみなし被保険者期間が通算12か月以上あること等)を満たしている必要があります。勤務先の労務担当者、またはハローワークに雇用保険の加入状況を確認してください。
