高松市研究開発事業補助金は、市内の中小企業者が新製品・新サービスの開発や試作品づくりに使える研究開発費の補助制度です。補助率は3分の2(一定の条件では4分の3)、上限額は単独での申請で150万円、複数事業者によるコンソーシアムでの申請なら300万円まで補助されます。

なぜ高松市はこの補助金を用意しているのか

要綱の目的規定では、「市内の中小企業者が、新製品や新サービスの開発、試作品の作成及び既存製品の高付加価値化を図るために研究開発を実施する事業」を後押しし、成長を志向する市内の中小企業者の成長を後押しして地域経済の活性化を促進することがこの補助金の目的とされています。単なる設備投資ではなく、「概ね3年以内の商品化」を見据えた研究開発そのものに市が資金を出す珍しいタイプの制度です。

対象になる事業者と補助対象事業

補助対象者になるのは、次のすべてに該当する中小企業者です。

  • 中小企業基盤整備機構法上の中小企業者に該当すること
  • 市内に住所(個人)・主たる事業所(会社)を有すること
  • 事業収入を得ていること
  • 今後も市内で事業を継続する意思を有すること

一方で、次に該当する場合は対象外になります。

  • 大企業の子会社的な立場にある「みなし大企業」(発行済株式の1/2以上を大企業が保有 等)
  • 交付申請日時点で市区町村税を滞納している者
  • 過去に本補助金または高松市中小企業等環境変化対応補助金の交付を受けたことがある者
  • 補助対象事業と同一の事業について、国・県など他の補助金の交付を受けた(受ける予定の)者
  • 暴力団関係者、性風俗関連特殊営業を行う者、政治団体、宗教団体、法人格のない任意団体 など

重要なのは、「過去に本補助金の交付を受けた者は再度対象にならない」という制限です。一度採択されると、同じ制度で再チャレンジすることはできない設計になっています。

補助対象事業の実施形態は2区分あります。

  • 単独枠: 申請者が単独で実施する研究開発
  • コンソーシアム枠: 申請者を含む2者以上(大学・高専・国公設試験研究機関を含む)で構成する組織が実施する研究開発

いずれも、交付申請日から概ね3年以内に商品化を目指す事業であることが要件です。単なる汎用機械設備の購入だけの事業は対象になりません。

対象経費・補助率・上限額はいくら?

補助対象経費として要綱の別表に定められているのは、次の8費目です。

費目内容
原材料費補助事業に直接使用する原材料の購入費
消耗品費補助事業に直接使用する消耗品の購入費
機械装置・工具器具費機械装置・工具器具の購入・製作・借用(汎用性のあるものを除く)
試験検査費試作品等の試験・検査・分析にかかる経費
知的財産権等関連経費特許出願手数料、国際規格認証取得手数料、開放特許の使用料等
委託費自ら実行困難な業務の一部を第三者に委託・外注する経費
専門家謝金・旅費招へいした専門家への謝金・宿泊費・交通費
広告宣伝費研究開発した新製品等にかかる広告宣伝費
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委託費と広告宣伝費の合計額には上限があり、単独枠は75万円(税抜)、コンソーシアム枠は150万円(税抜)までです。また、広告宣伝費のみを補助対象経費とする申請は認められません。原材料費や機械装置費など、研究開発の実体を伴う経費と組み合わせる必要があります。

補助率と上限額は次のとおりです。

区分補助率補助上限額
単独枠3分の2150万円
コンソーシアム枠3分の2300万円
(地域課題の解決に資すると評価された場合)4分の3単独150万円/コンソーシアム300万円(上限額は変わらず)
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補助率が4分の3になるのは、審査において「補助対象事業の実施内容が地域課題の解決に資するもの」と評価された場合のみです。上限額そのものは単独枠150万円・コンソーシアム枠300万円で変わりませんが、同じ上限額に到達するまでに必要な自己負担額(実支出額)が少なくて済む、という形でメリットが出ます。

補助額シミュレーション:業種別に3パターンで見る

抽象的な計算例だけでなく、実際にどんな使い方ができるか、業種別に見てみます。

  • 製麺業(讃岐うどん関連の新商品開発・単独枠): 健康志向の新しい麺・つゆの試作に、原材料費30万円、試験検査費(成分分析)20万円、専門家謝金(食品開発コンサルタント)15万円、機械装置の借用費25万円、パッケージデザインの委託費10万円を計上。合計100万円(税抜)×補助率2/3=66万円の補助(委託費10万円は上限75万円の枠内)
  • 金属加工業(大学と連携した新素材加工技術の開発・コンソーシアム枠): 香川県内の大学と連携し、機械装置費150万円、大学への研究委託費80万円、専門家謝金20万円、試験検査費30万円、特許出願にかかる知的財産権等関連経費20万円を計上。合計300万円(税抜)×補助率2/3=200万円の補助(委託費80万円はコンソーシアム上限150万円の枠内)
  • 福祉・生活支援サービス業(地域課題解決型の新サービス開発・単独枠): 高齢者向け配食サービスの新メニュー開発として、試作材料費20万円、福祉専門家への謝金15万円、試験検査費10万円、注文システムの外注費40万円、サービス周知の広告宣伝費15万円を計上。合計100万円(税抜)のうち、審査で地域課題解決に資すると評価されれば補助率4分の3が適用され、75万円の補助(委託費40万円+広告宣伝費15万円=55万円は上限75万円の枠内)

3パターン目のように地域課題の解決に資すると評価されると、同じ100万円の投資でも補助額が約17万円増える計算になります。増えた分は、試作を1回多く回す試験検査費や、専門家への追加相談に充てるといった使い方が考えられます。

審査ではどこが見られるのか

この補助金は予算の範囲内での書面審査による採択制です。誰でも通るわけではなく、要綱では次の基準で審査すると定められています。

  1. 新規性・革新性
  2. 市場性・成長性
  3. 妥当性
  4. 実現可能性
  5. 地域経済活性化への波及効果
  6. 地域課題の解決への寄与度(補助率4分の3を選択する場合のみ)
  7. その他市長が定める基準

審査にあたっては、市長が原則として中小企業診断士等に意見を求め、その意見を参酌して交付の適否を決定するとされています。つまり、事業計画書(様式第2号)に書く「自社の強み・弱み」「新規性・革新性」「市場性・成長性」「実現可能性」の記述が、そのまま審査の評価軸に対応している構造です。

同じ研究開発の中身でも、事業計画書での書き方・位置づけ方次第で評価が変わりうるグレーな部分でもあります。特に「地域課題の解決への寄与度」は補助率4分の3を選ぶ場合にのみ審査される項目のため、自社の事業がどう地域課題の解決につながるかを言語化できるかどうかが分かれ目になります。具体的な書き方に迷う場合は、事業計画書の作成支援も含めて専門家に相談するのも一つの手です。

申請から実績報告までのタイミングと必要書類

申請は「交付申請」→「交付決定」→「着手届・完了届」→「実績報告」→「交付指令・請求」という流れで進みます。

  • 交付申請時: 交付申請書(様式第1号)、事業計画書(様式第2号)、事業実施スケジュール(様式第3号)、収支予算書(様式第6号)、誓約書(様式第7号)、経費の見積書の写し、法人は履歴事項全部証明書・直近3期分の決算書、個人は住民票の写し・直近3か年の確定申告書等の写し。コンソーシアム枠の場合はコンソーシアム体制調書(様式第4号)・構成員調書兼同意書(様式第5号)も全構成員分が必要
  • 交付決定後、事業着手時: 高松市研究開発事業着手届(様式第10号)を直ちに提出
  • 事業完了後: 高松市研究開発事業完了届(様式第11号)を直ちに提出し、完了日から20日を経過する日、または補助金にかかる会計年度の2月28日のいずれか早い日までに実績報告書(様式第15号)・事業実績書・収支決算書等を提出
  • 完了1年後・2年後: 事業計画書に記載した売上目標の実績を報告する「事業実施効果報告書」(様式第19号)を提出

直近の募集では、申請期間は2026年6月8日(月)〜7月24日(金)(当日消印有効)、交付決定は2026年8月下旬頃を予定と案内されていました。採択予定件数は単独枠2件程度・コンソーシアム枠1件程度とされており、決して広き門ではありません。

また、1件あたり100万円(税抜)を超える契約や中古物品の購入契約は、原則2者以上から見積りを取り最低価格の相手と契約することが求められる点、補助事業で取得した単価50万円以上の機械・器具等は耐用年数を経過するまで市長の承認なく処分できない点も、実務上おさえておきたいポイントです。

国の補助金とあわせて検討する

高松市研究開発事業補助金は「概ね3年以内の商品化を目指す研究開発」に特化した制度ですが、新製品開発にあたっては設備投資そのものを補助する国の制度が使える場合もあります。

新製品開発には国の補助金もあります。あわせてこちらの記事で解説しています。

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なお、要綱上は「補助対象事業と同一の事業に対して、国・県その他各種団体等からこの要綱で定める補助金とは別の補助金の交付を受けた、又は受ける予定の者」は本補助金の対象外とされています。同一事業での重複受給はできないため、どちらの制度を使うか(あるいは事業を切り分けて使い分けられるか)は事前に高松市産業振興課に確認するのが確実です。

他にも自社の事業が対象になる補助金・助成金がないか気になる方は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。

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事業計画書の書き方や、単独枠・コンソーシアム枠のどちらを選ぶべきかなど、申請実務の進め方に迷う場合は専門家に相談するのも一つの手です。

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よくある質問

個人事業主でも申請できますか?

対象は「中小企業基盤整備機構法上の中小企業者」で、市内に住所を有する個人も対象に含まれます。申請時には発行後3か月以内の住民票の写し、直近3か年の確定申告書等の写しの提出が必要です。

コンソーシアム枠と単独枠、どちらを選ぶべきですか?

補助上限額はコンソーシアム枠(300万円)の方が単独枠(150万円)より大きく、大学等と連携した研究開発など体制を組める場合はコンソーシアム枠のメリットがあります。ただし、コンソーシアムの構成員に対象外要件に該当する者が含まれる場合は補助対象事業とならない点、構成員全員分の書類提出が必要になる点には注意が必要です。

過去にこの補助金をもらったことがあっても再申請できますか?

できません。要綱上、過去に本補助金または高松市中小企業等環境変化対応補助金の交付を受けたことがある者は補助対象者から除外されています。新たな研究開発テーマであっても、一度採択された事業者の再申請は認められない点に注意してください。


免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた高松市公式ページ・交付要綱にもとづきます。補助額・補助率・対象経費・申請要件・募集期間は変更される場合があるため、申請前に必ず高松市の公式ページおよび最新の公募要領で内容をご確認ください。

出典: