施術用の椅子を大きくしたい、ホームページを英語にしたいという費用は、補助金で出るのでしょうか。東京都のこの補助金は、美容室が外国人旅行者を迎える準備にかかる費用の3分の2(上限200万円)を出します。ただし交付決定の前に発注した経費は、1円も対象になりません。
椅子の入れ替えのように「対象外」と「対象」の境目が細かい経費があります。先に線引きを確かめてから見積もりを取ってください。
多様な体験型観光推進事業補助金の要点まとめ
正式名:多様な体験型観光推進事業補助金
だれが
- 申請者
- 事業者(法人・個人事業主)
- 対象業種
- 美容室等(ヘアカット・ネイル・メイクなど)
- 利用目的
- 外国人旅行者向けサービスの開発・受入体制の整備
- 対象地域
- 東京都内(登記簿上の本店か支店が都内)
- 従業員数
- 公式ページに記載なし(受入環境課へお問い合わせください)
いくら
- 補助上限額
- 200万円
- 補助率
- 補助対象経費の3分の2
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年4月1日〜2026年11月30日(必着)
- 事業の完了
- 交付決定日から2027年3月31日まで
予算額に達した時点で、締切の前でも受付は終わります。
自分の店は対象になるか
次の4つに当てはまれば、対象になる見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
「美容体験型観光サービス」とは、ヘアカット、ネイル、メイクなどを観光コンテンツにした、外国人旅行者向けの体験プログラムです。「等」には、ヘアセット、染毛、洗髪、パーマ、顔そり、エクステンションが入ります(都のFAQによる)。ヘッドスパやマッサージも扱う総合的なサロンは、対象サービスと対象外サービスが混ざる場合の考え方がFAQに示されています。
登記のない個人事業主は、「都内に住所があり、都内で美容体験型観光サービスを提供している」ことで申請できます(FAQで読み替えが示されています)。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 風俗営業などを行っている
- ✕ 再生・破産手続中など継続が不確実
- ✕ 過去5年以内に刑事罰を受けた
ほかに暴力団関係者、宗教活動・政治活動が主な目的の団体も対象外です。申請前確認書では、都や都の政策連携団体への賃料・使用料の滞納がないこと、過去の補助金で不正等の事故を起こしていないことも確かめます。交付決定は1事業者につき1回限りなので、複数回に分けて申請する使い方はできません。
いくら補助されるか
補助額は、対象経費の3分の2です。対象経費は消費税を除いた額で、千円未満は切り捨てます。上限の200万円に届くのは、対象経費が300万円のときです。
- 予約システムの多言語化とメニュー表の翻訳を合わせて90万円:90万円 × 2/3 = 60万円
- 個室化の内装工事と多言語チラシの制作を合わせて100万円:100万円 × 2/3 = 66万6千円(千円未満を切り捨て)
- 受入体制を一式そろえて360万円:360万円 × 2/3 = 240万円 → 上限の200万円
金額はいずれも消費税を除いた、計算のための仮の数字です。実際の補助額は、交付決定額と、完了後に確定する額の低いほうになります。
どこまでが対象経費か
線引きの軸は、外国人旅行者を迎えるために必要か、そして受入れ体制の整備につながるかです。都の募集要領は、補助事業の目的を「実際に外国人旅行者へサービスを提供すること」に置いています。
対象にならないもの
- 日本語だけの広報ツールの制作
- システムの保守費用、自社ホームページの維持管理費
- 雑誌などへの広告掲載料、SNSの運用委託費
- 単なる老朽修繕や買い替え、単なる増設
- 中古品の購入、事務用の机・椅子などの汎用品
- 意匠性・快適性だけが目的の内装工事
- タブレット・PC、収納、ワゴンなど一般的な備品
- インフルエンサー本人のアカウントでの投稿の制作・委託
- 日常会話の研修費用、検定の受験料
- リース・レンタルの機器、直接人件費、消耗品費
対象になるもの
- 予約システムの導入
- 自社ホームページ・チラシの多言語での制作
- 自動翻訳機やアプリの導入、店内表示・メニューの多言語化
- 外国人旅行者が安心して施術を受けるための個室化や仕切りの工事
- 外国人旅行者に合わせたメニュー開発や備品の導入
- 外国人の髪質に合わせた薬剤の開発(自店で使うもの)
- サービスに特化した研修の講師報酬・会場費・テキスト代
「買い替えは対象外、でも体の大きな旅行者のための椅子は対象」という点が、いちばん迷うところです。FAQには、椅子の外国人対応だけでも申請できるが、単なる増設や買い替えは対象外とあります。どこまでが「単なる買い替え」にあたるかは、公式ページに具体的な基準が書かれていません。迷う経費は、申請前に受入環境課へ問い合わせるのが確実です。
なお、ホームページの多言語化や椅子の入れ替えだけを申請する場合でも、事業計画には店内の受入体制と広報について現状と今後の方向性を書く必要があります。
申請の流れ
- 申請書類をそろえる(事業者→東京都産業労働局 観光部 受入環境課。様式は都のページからダウンロード)
- 郵送かJグランツで申請する(事業者→都。2026年11月30日の必着)
- 審査を受けて交付決定を待つ(都→事業者。不備のない書類がそろってから3週間程度)
- 交付決定のあとに発注して、事業を進める(事業者→業者。2027年3月31日までに契約・納品・支払いまで完了)
- 実績報告を出す(事業者→都。事業の完了から30日以内、または2027年3月31日のいずれか早い日まで)
- 額の確定を受けて請求する(事業者→都。請求書は様式第8号。入金は請求のあと)
郵送は簡易書留で出します。持参しても、窓口での書類確認はしてもらえません。Jグランツ(国の補助金電子申請システム)を使う場合は、GビズIDプライムアカウント(国の電子申請に共通で使うID)が要ります。発行に2〜3週間かかるので、締切の直前に取り始めると間に合いません。
交付決定とは、都が「この内容で補助する」と決める通知です。これより前に発注・施工した経費は対象外になります。
必要な書類
準備できた 0 / 13
財務書類は、法人なら貸借対照表と損益計算書の写し、個人事業主なら確定申告書の写しです。個人事業主の登記簿謄本の代わりは「個人事業の開業・廃業等届出書」の写しです。登記簿謄本と印鑑証明書は発行後3か月以内のもので、電子申請なら印鑑証明書は要りません。営業許可書は許可が必要な業種だけで、美容所の開設届の写しなどが当たります。個人事業主の納税証明書は、事業税が課税される人と非課税の人で、取る証明書の種類が変わります。
申請書と申請前確認書には実印を押します。改修工事を含む場合は、建物の登記簿謄本か賃貸借契約書も付け、借りている建物なら所有者の許可を確認できる書類も要ります。事業内容が分かる書類は、仕様書や納品物が分かるもののほか、工事なら整備前後の図面・現況写真・工程表です。
書類は両面印刷をせず、ステープルではなくクリップで留めます。審査では白黒でコピーを取るため、白黒でも読める資料にします。マイナンバーが載っている書類は、その部分を消して出します。提出した書類は返却されないので、控えを残してください。見積書の相見積もりは、申請時には不要です。ただし金額が市場価格や事業規模に対して著しく高い場合は、求められることがあります。
もらえなくなるとき
- 交付決定の前に発注した:交付決定前に発注・施工・導入した経費は対象外です。契約書や注文書の日付が交付決定より前だと外れます。
- 期日までに支払いが終わらない:契約から支払いまでを2027年3月31日までに終える必要があります。支払いが終わっていなければ補助金は出ません。
- 帳票がそろっていない:見積書、契約書、納品書、請求書、振込の控えなどに不備があると、その経費は対象外です。手形・小切手、ポイント、他の取引との相殺による支払いも対象外で、支払いは原則として口座振込です。
- 予算が先に尽きた:申請額が予算額に達した時点で、締切前でも受付が終わります。
- 申請書にない物を買った、内容を無断で変えた:申請書に書いていない物の購入は対象外です。内容の変更や中止は、事前に承認を受けます。
- 補助で買った物を勝手に処分した:単価50万円(税抜)以上の財産を処分・移設するときは、事前に承認が要ります。無断で処分すると、交付決定の取り消しや返還の対象です。返還を命じられると、年10.95%の違約加算金がかかることがあります。
勘違いされやすい点
- ホームページを英語にするだけでは足りない:ホームページの多言語化だけの申請もできます。ただし事業計画には、店内の受入体制と外国人旅行者向けの広報について、現状と今後の方向性を書く必要があります。
- 補助率の3分の2は、そのまま入金される額ではない:補助金は、事業が終わって額が確定してから支払われます。それまでの費用は自分で立て替えます。
- ほかの補助金とは、費用を分ければ併用できる:同じ事業で複数の補助金は受けられません。国・都道府県・区市町村などの別の補助事業と、対象経費がはっきり分けられる場合は併用できます。
よくある質問
美容室以外の事業者でも申請できますか?
対象は、都内で美容室等を運営し、美容体験型観光サービスを提供する事業者です。サービスの中身は、ヘアカット、ネイル、メイクなどを外国人旅行者向けの体験にしたものを指します。エステやリラクゼーションが中心の店が対象になるかは、公式ページに具体的な業種名が列挙されていないため、受入環境課に確かめてください。
個人事業主でも申請できますか?
申請できます。登記簿上の本店・支店がない個人事業主は、都内に住所があり、都内で美容体験型観光サービスを提供している場合に対象になります。都のFAQで、募集要領の「登記簿上の本店又は支店」を「都内に住所を有する」と読み替えると示されています。法人と同じ補助率・上限額で、交付決定も1事業者につき1回限りです。
外国人向けのホームページの制作費は対象になりますか?
自社ホームページやチラシなど、多言語の広報ツールを作る費用は対象です。雑誌やSNS用の動画・原稿の制作費も入ります。一方で、ホームページの維持管理費、雑誌への広告掲載料、SNSの運用委託費は対象外です。日本語だけの広報物も対象外で、事業計画に受入体制と広報の現状・方向性を書く必要があります。
施術用の椅子を大きいものにしたいのですが、対象ですか?
体の大きな外国人旅行者に合わせて椅子を更新する取組は、申請できます。ただし単なる増設や買い替えは対象外で、外国人対応が目的だと説明できなければなりません。通訳機器の導入など、ほかの取組もあわせて申請すると、それも対象になる可能性があるとFAQにあります。判断が分かれる経費は、事前に窓口へ確認してください。
内装工事は対象になりますか?
外国人旅行者が安心して施術を受けるために必要な環境整備は対象です。例は個室化や仕切りの工事です。デザイン性の向上や雰囲気づくりなど、意匠性・快適性だけが目的の内装工事は、外国人向けであっても対象外です。単なる老朽修繕も対象外です。工事の目的を事業計画にどう書くかが、対象になるかの分かれ目になります。
研修費や外部講師の費用は対象になりますか?
サービス提供に特化した内容の研修なら、外部に支払う講師報酬、会場費、テキスト代が対象です。日常会話の研修費用や、検定の受験料は対象外です。従業員向けの多言語対応研修を考えている場合は、研修の内容が外国人旅行者への美容サービスの提供に結びついていることを、事業計画で説明してください。
契約や発注はいつからしてよいですか?
交付決定のあとです。募集要領は、補助対象事業の契約・発注を交付決定後に行うよう求めています。交付決定の前に発注・施工・導入した経費は、補助対象外です。見積もりを取ること自体は申請の準備として必要ですが、注文書を出したり着工したりするのは、決定通知書を受け取ってからにしてください。
事業はいつまでに終えればよいですか?
交付決定の日から2027年3月31日までです。この期間内に、契約(発注)、作業、納品、経費の支払いの全部を終える必要があります。支払いが終わっていない経費には補助金が出ません。完了後の実績報告は、事業が終わった日から30日以内、または2027年3月31日のいずれか早い日までに出します。
申請の締切はいつで、どう出しますか?
2026年11月30日(月)必着です。簡易書留による郵送か、Jグランツでの電子申請で出します。書類に不備や不足があると、締切日の時点で受け付けてもらえません。審査は、不備のない書類がそろってから3週間程度かかります。事業に必要な期間と審査期間を引いた日程で、早めに出してください。
他の補助金と併用できますか?
同じ事業で複数の補助金を受けることはできません。ただし東京都、国、区市町村などが実施する他の補助事業と、対象経費がはっきり区分できる場合は併用できます。同じ領収書や同じ工事の費用を、両方の補助金に載せることはできません。経費を分けられるか不安なときは、申請の前に窓口に相談してください。
補助金はいつ入金されますか?
補助金は後払いです。事業が終わって実績報告を出し、都の審査と完了検査を経て額が確定します。確定通知を受けたあとに請求書(様式第8号)を出すと、指定した口座に振り込まれます。入金までの期間は公式ページに記載がありません。それまでの費用は自分で立て替えるので、資金繰りを考えて計画を立ててください。
問い合わせ先はどこですか?
東京都産業労働局 観光部 受入環境課です。電話番号は03-5320-4802(代表)です。対象経費に当たるか迷うときや、事業計画の書き方で迷うときは、申請の前に問い合わせてください。受付は予算額に達した時点で終わるので、予算の残りもあわせて聞いておくと、申請の時期を決めやすくなります。
