量産ラインの機械は、この助成金で買えるのか。買えません。助成の範囲は試作開発から試験・評価までで、生産・量産対応の機器や金型は対象外です。
東京都と東京都中小企業振興公社(以下、公社)が、ゼロエミッションに役立つ製品の開発・改良・規格適合にかかる経費の2/3以内を助成します。令和8年度の電子申請は2026年9月8日17時に終了しました。令和9年度以降の募集については、公式ページに記載がありません。募集要項の中身を先に知っておけば、募集が出たときに動けます。
ゼロエミ事業転換支援助成金(製品開発助成)の要点まとめ
正式名:ゼロエミッション推進に向けた事業転換支援事業(製品開発助成)
だれが
- 申請者
- 事業者(法人・個人事業主)、中小企業グループ・団体
- 対象業種
- 業種の指定なし
- 利用目的
- ゼロエミッションに資する製品の開発・改良・規格適合
- 対象地域
- 東京都
- 従業員数
- 中小企業者(資本金か従業員数の上限は業種別・本文)
いくら
- 補助上限額
- 共同申請3,000万円(単独申請1,500万円)
- 補助率
- 対象経費の2/3以内
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年6月1日〜2026年9月8日(受付終了)
- 事業の完了
- 交付決定日(2027年2月1日予定)から最長1年6か月
うちの会社は対象になる?
次の5つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 開発がほぼ終わっている
- ✕ 量産設備の導入が目的
- ✕ NPO法人や社団法人など
- ✕ 事業税などを滞納している
「1年以上」は、2026年4月1日(基準日)の時点で数えます。都内で創業して1年に満たない法人(未決算法人)も申請できます。同じ年度の申請は、1社につき1件までです。
中小企業者とは、中小企業基本法で決まっている会社の規模の範囲のことです。資本金か従業員数のどちらか一方が、次の数字以下なら該当します。
| 業種 | 資本金または従業員数 |
|---|---|
| 製造業(ソフトウェア・情報処理サービス含む)、その他 | 3億円以下または300人以下 |
| ゴム製品製造業(一部を除く) | 3億円以下または900人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下または100人以下 |
| サービス業(旅館業を除く) | 5千万円以下または100人以下 |
| 旅館業 | 5千万円以下または200人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下または50人以下 |
数字に合っても、大企業が実質的に経営に参画している会社は対象外です。大企業が1社で株式の1/2以上を持つ場合や、役員の1/2以上を大企業の役職員が兼ねている場合などが当たります。
「7つの政策」とは、東京都の「ゼロエミッション東京戦略 Beyond カーボンハーフ」に掲げる次の分野です。
- 再生可能エネルギーの基幹エネルギー化
- ゼロエミッションビルの拡大(省エネ・低消費電力の照明や設備、AI・IoTなど)
- ゼロエミッションモビリティの推進
- 水素エネルギーの普及拡大
- サーキュラーエコノミーへの移行(資源利用・プラスチック・食品ロス)
- フロン対策
- 気候変動適応策の推進(防災など)
完成品だけでなく、ゼロエミッションに役立つ製品のパーツや、その製造工程で使う部材の開発も対象です(公社の案内ページ)。
単独申請か共同申請か
上限は単独が1,500万円、共同が3,000万円です。共同は2倍の額が出る代わりに、組み方の条件が細かく決まっています。
共同申請は、次の2つの形があります。
- 中小企業グループ:代表企業を決め、複数の中小企業者で組みます。構成企業のあいだに出資関係がなく、役職員の兼務もないことが条件です。
- 中小企業団体等:事業協同組合、企業組合、協業組合などが申請します。構成員の半数以上が中小企業者である必要があります。
どちらも、構成企業が受け持つ部分に技術的な開発・改良の要素が要ります。名前だけ入れた構成企業は認められません。交付決定のあと、代表企業は構成企業と共同開発の契約を結びます。
共同申請の人件費の上限は1,000万円、不動産賃借料の上限は500万円で、単独申請より大きく取れます。
いくら戻ってくる?
対象経費の2/3以内です。上限の1,500万円(単独)に届くのは、対象経費が2,250万円のときです。
- 単独申請、試作用の部材と外注に900万円:900万円 × 2/3 = 600万円
- 単独申請、機械装置と外注に3,000万円:3,000万円 × 2/3 = 2,000万円 → 上限の1,500万円
- 共同申請、3社で6,000万円:6,000万円 × 2/3 = 4,000万円 → 上限の3,000万円
- 単独申請、人件費だけで1,200万円:1,200万円 × 2/3 = 800万円 → 人件費の上限500万円
最後の例のように、経費の区分ごとにも上限があります。人件費は単独で500万円、不動産賃借料は単独で250万円です。全体の上限に届く前に、区分の上限で止まることがあります。
「交付予定額」は予定の上限で、支払いの保証ではありません。検査の結果、実際の支払いが予定より減ることがあります。
何に使える?
線引きは「世に出す前の開発」か、「作って売る段階」かです。助成の範囲は、企画、試作開発、試験・評価までで、生産と量産は範囲の外にあります。
対象にならないもの
- 生産・量産用の機械装置や金型の導入
- 試作品そのものの販売・譲渡が目的の事業
- 技術的な開発要素がなく、試験・評価だけの事業
- 申請の時点で開発がほぼ終わっている事業
- 完了の時点で使い残した原材料
- 既製品の模倣や、仕様変更にすぎないもの
- パソコン、デジタルカメラなど汎用性の高いもの
- 中古品の購入、自家用機械の改良・修繕
- 建物附帯設備とその工事
- 調査費、会議費、消耗品などの事務的経費
- 関連会社(出資関係や役員の兼任がある会社など)との取引
対象になるもの(5つの経費区分)
- 原材料・副資材費:試作品の部品、鋼材、化学薬品、試験用部品など
- 機械装置・工具器具費:試作金型、計測機械、サーバ、ソフトウェアなどの購入・リース・レンタル。クラウドの利用料もここに入ります
- 委託・外注費:開発や試験の委託、加工の外注、共同研究、専門家の指導、規格の認証・登録の費用
- 直接人件費:開発の工程に直接従事した時間の人件費。時間給の単価は公社が決めた一覧表を使います
- 不動産賃借料:試験・評価のために、新しく借りる施設や場所の費用
見積書は、単価100万円(税抜)以上の機械装置と、1契約100万円(税抜)以上の委託・外注費で、原則2社分が要ります。
よく誤解されるポイント
「自社で作らなくても開発主体になれる」:なれません。ファブレス(製造設備を持たない)企業でも申請はできますが、仕様の策定やテストなど、開発の主要な部分を自社で行うことが要件です。開発実施場所も申請者の事業所に限り、委託先の工場は使えません。
「開発が終われば全額が出る」:出ません。事業の完了には、申請書に書いた達成目標を達成することが条件です。目標に届かなかった場合、それまでの経費は支払われません。達成目標は、あとから変更できません。
「採択された会社向けの販路開拓支援とは同じ枠」:別の助成です。製品開発助成の採択者には、公社の販路拡大助成(限度額150万円)が別に用意されています。この記事で扱うのは製品開発助成のほうです。
「交付決定が出たら支払いも決まる」:決まりません。交付決定は助成対象事業として決まったという意味で、支払いは事業が終わって公社が確認したあとの後払いです。
申請の流れ
令和8年度の流れは次のとおりでした。
- GビズIDプライムを取る(事業者→デジタル庁のGビズID。発行に2〜3週間かかるので、受付が始まる前に)
- 募集要項と申請書を入手する(事業者→公社の案内ページ。単独用と共同用が別です)
- 見積書をそろえ、申請書を作る(事業者。100万円以上の機械・外注は2社分)
- Jグランツで電子申請する(事業者→公社。令和8年度は9月8日17時まで。持参・郵送・メールは不可)
- 書類審査と面接審査を受ける(公社→事業者。9〜10月に書類、11〜12月に面接)
- 交付決定を受けて開発を始める(令和9年2月1日予定。助成対象期間は最長1年6か月)
Jグランツは、国が運営する補助金の電子申請システムです。GビズIDプライムは、そのシステムに入るための法人・個人事業主向けのIDです。
面接審査は対面で、公社が決めた日時と場所で行います。オンラインはできず、日時の変更もできません。必要に応じて現地調査もあります。
必要な書類
準備できた 0 / 9
法人か個人か、決算を済ませているかで、必要な書類は変わります。決算を済ませている法人は、法人事業税・都民税の納税証明書を出します。個人事業者と未決算法人は、かわりに代表者の所得税と住民税の納税証明書を出します。履歴事項全部証明書は法人と未決算法人、開業・廃業等届出書の写しは個人事業者が出します。確定申告書は直近2期分で、事業開始から2年未満なら直近1期分です。未決算法人はほかに、代表者の源泉徴収票(直近2期分)、資金繰り表、資金の裏付けになる残高証明書などが要ります。共同申請では、構成企業の履歴事項全部証明書もそろえます。全体の一覧は募集要項の「申請に必要な書類」で確かめてください。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 達成目標に届かなかった:完了検査で目標の達成が確認できないと、それまでの経費は支払われません。
- 対象期間の外で支払った:契約、取得、支払のすべてを助成対象期間内に終えた経費だけが対象です。期間より前に払った分は対象外です。
- 申請書にない物を買った:申請書に書いていない物の購入は対象外です。内容の大きな変更は、事前に公社の承認が要ります。
- 要件を途中で満たさなくなった:助成対象期間の途中で申請要件を外れると、支援を打ち切られることがあります。
- 不正があった:交付決定の取消しと返還になり、事業者名が公表されることがあります。
事業化のあとに続く義務
採択されたあとも、手続きが続きます。成果が出たあとに負担になるので、申請前に知っておいてください。
- 事業完了の翌年度から5年間、毎年、企業化状況報告書を出します。
- 事業化で相当の収益が出た場合、その一部を納付します。納付額の上限は、受け取った助成金の額です。
- 助成金で取得した設備や試作品は、5年間保存します。取得価格が50万円(税抜)以上の設備や成果物には公社のステッカーを貼って管理し、処分には公社の承認が要ります。
他の補助金との関係は、国や都の他の機関の助成(ものづくり補助金など)とは併願できます。ただし同じテーマで二重には受け取れず、両方で交付決定を受けたら一方を辞退します。公社の他の助成事業との併願はできません。前年度に別のテーマで交付決定を受けて実施中でも、テーマが別なら申請できます。
よくある質問
量産用の機械や金型は買えますか?
買えません。助成の範囲は、企画構想のあとの試作開発から試験・評価までです。生産・量産対応の機器や金型の導入を目的とする事業は、対象外と募集要項に書かれています。試作のために作る試作金型は、機械装置・工具器具費として対象になります。量産に移したあとの設備投資は、別の補助金や融資を探すことになります。
試験や評価だけの申請はできますか?
できません。技術的な開発・改良の要素がなく、試験・評価だけを助成の対象にすることはできないとされています。試験や評価は、試作や改良とセットで計画に入れます。開発の中身が分かる企画書や仕様書は、補足説明資料として添えられます。規格適合のための改良と、認証・登録の費用は、経費の区分として対象に入っています。
既存製品の改良でも申請できますか?
申請できます。ただし「既製品の模倣や仕様変更にすぎないもの」と「技術的な開発・改良の要素がないもの」は対象外です。ゼロエミッションの効果を高める技術的な改良になっているかが分かれ目です。改良前と改良後で何が変わるのか、達成目標をどう測るのかを、申請書に具体的に書く必要があります。
個人事業主でも申請できますか?
申請できます。都内で実質的に1年以上事業を行っているか、都内で創業して1年に満たない個人事業者が対象です。納税地や主たる事業所が都内にあることを、税務署に出した開業・廃業等届出書の写しで確かめます。自分への報酬は人件費の対象になりません。個人事業者や創業予定者の自らに対する報酬は、助成対象外と書かれています。
ファブレスの会社でも申請できますか?
申請できます。ただし、仕様の策定やテストなど、開発の主要な部分を自社で行い、自社が開発の中心になることが要件です。開発の主要な部分まで外部に任せる計画は、対象外の例に挙げられています。開発の実施場所は申請者の事業所に限られ、委託先を含む他社の場所は認められません。
見積書は1社分だけでも出せますか?
原則は2社分です。単価100万円(税抜)以上の機械装置・工具器具と、1契約100万円(税抜)以上の委託・外注費が対象です。「1社しか生産していない」「販売先が1社に限られる」など、業界の事情によるやむを得ない理由があるときだけ、1社分でも認められます。その理由は申請書に書きます。「過去に取引実績がある」という理由は認められません。
パソコンやクラウドの利用料は対象になりますか?
パソコンやデジタルカメラのように汎用性が高く、使い道を開発に限れない物は対象外です。一方、レンタルサーバ代やクラウドサービスの利用料は、助成事業のために使い、助成対象期間内に契約・支払をしたものなら対象になります。機械装置・工具器具費に入れて計上します。見積書や契約書で、開発にだけ使うことが分かるようにしておきます。
助成金はいつ支払われますか?
事業が終わったあとの後払いです。完了検査で、交付決定どおりに事業が行われたか、達成目標を達成したか、経費が適切に支払われたかを公社が確認します。検査が済むと助成金額が確定します。開発の期間中の支払いは、いったん自己資金で行うことになります。
助成対象期間より前に払った経費は対象になりますか?
対象になりません。助成対象期間は交付決定日から最長1年6か月で、令和8年度は2027年2月1日の交付決定予定でした。この期間内に契約、取得、支払のすべてが終わった経費が対象です。見積書だけは、交付決定日より前の日付でも構いません。申請の時点で先に発注してしまうと、その分は対象外になります。
開発に失敗したら、使った経費はどうなりますか?
支払われません。事業の完了は、申請書に書いた達成目標を達成することが条件です。完了検査で達成目標と経費の書類が確認できて、はじめて完了になります。達成目標は変更できないため、申請の段階で、達成できる水準で決めておく必要があります。見込みがないと公社が判断した場合、期間内でも支援を打ち切られることがあります。
採択されたあとにも義務はありますか?
あります。事業完了の翌年度から5年間は、毎年、企業化状況報告書を出します。事業化で相当の収益が出た場合は、その一部を納付します。納付額の上限は、受け取った助成金の額です。取得した設備や試作品は5年間保存します。取得価格50万円(税抜)以上の設備や成果物にはステッカーを貼って管理し、売却や廃棄などの処分には公社の承認が要ります。
次の募集はいつですか?
公式ページに、令和9年度以降の募集時期の記載はありません。公社のページには「令和8年度の申請受付は終了いたしました」とあります。この事業は令和4年度から実施されています。ただし、次の募集があるかどうかは確認できませんでした。確実に知るには、公社 多摩支社(電話 042-500-3901)に問い合わせるか、公社のページを見ます。
問い合わせ先はどこですか?
助成金と事業の詳細は、公社の総合支援部 多摩支社(電話 042-500-3901)です。事業全般については、東京都産業労働局 商工部 創業支援課(電話 03-5320-7589)が窓口です。Jグランツの操作やGビズIDで困ったときは、GビズIDヘルプデスク(電話 0570-023-797)に問い合わせます。申請の前に、開発内容が対象の範囲に収まるかを相談しておくと安全です。
