AIを使った新しい仕組みを開発したのに、特許を取る費用まで手が回らない。そんな都内の中小企業を後押しする助成金です。第1回(令和8年5月27日~6月30日17時)は受付を終了していますが、第2回(8月24日~9月30日)・第3回(11月24日~12月25日)がまだ控えています。
運営は東京都中小企業振興公社の東京都知的財産総合センターで、AI等の技術革新によるデータ活用技術に関連した特許の出願から登録までにかかる費用の一部を助成します。助成限度額は45万円(小規模事業者は60万円)、助成率は対象経費の1/2以内(小規模事業者は2/3以内)です。単なる資金援助ではなく、弁理士などの専門家によるハンズオン支援(特許アイデアの発掘・先行技術調査・スケジュール策定)も無料で受けられるのが特徴です。
AI×データ知財取得支援事業の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業者(法人・個人事業主。中小企業者・小規模企業者・中小企業団体・一般社団法人及び一般財団法人) |
| 制度名 | 令和8年度 AI×データ知財取得支援事業 |
| 対象業種 | 業種指定なし(AI等の技術革新によるデータ活用技術に関連した特許取得を目指す事業者) |
| 利用目的 | 特許出願・審査請求・中間手続・登録にかかる費用の一部助成(DX・IT導入、知的財産) |
| 対象地域 | 東京都内(登記簿上の本店・支店が都内にあり、都内で実質的に1年以上事業を行っていること) |
| 従業員数 | 小規模企業者の場合は製造業等20人以下、卸売業・小売業・サービス業5人以下(助成率2/3を使う場合の要件) |
| 補助上限額 | 45万円(小規模企業者は60万円) |
| 補助率 | 対象経費の1/2以内(小規模企業者は2/3以内) |
| 申請受付 | 第1回終了(~6/30)。第2回:令和8年8月24日~9月30日17時、第3回:11月24日~12月25日17時(予算執行状況により第2回以降が中止になる場合あり) |
| 公式サイト | 東京都中小企業振興公社「AI×データ知財取得支援事業」 |

助成金だけでなく「無料の専門家支援」が付く
この事業のつくりは、単純な経費補助とは少し違います。交付決定後、まず知財アドバイザーや弁理士による無料のハンズオン支援が始まり、特許アイデアの発掘・先行技術調査・出願スケジュールの策定まで伴走してもらえます。専門家への謝金は公社が負担するため、申請者側の持ち出しはありません。
そのうえで、実際に出願から登録までにかかった経費(出願手数料・審査請求料・代理人(弁理士)費用・翻訳料など)の一部を、後から助成金として受け取る流れです。助成金の交付は事業完了後の後払いで、出願が完了しなければ1円も支払われません。ここは見落としやすいポイントです。
対象になる事業者・ならない事業者
申請できるのは、次のいずれかに該当し、かつ都内に登記または事業所があり実質的に1年以上事業を行っている事業者です。
- 中小企業者・小規模企業者(会社・個人事業主)
- 中小企業団体
- 一般社団法人・一般財団法人
一方、医療法人・学校法人・宗教法人は対象外です。また、申請時点ですでに出願が完了している案件も対象になりません。「これから出願する」計画があることが前提の制度です。
中小企業者の判定は、中小企業基本法の業種区分にもとづきます(業種ごとに資本金と従業員数の上限が決まっており、製造業その他は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、サービス業・小売業は5,000万円以下または100人以下・50人以下。どちらか一方を満たせば該当します)。さらに助成率2/3(限度額60万円)を使うには、そのうち従業員数がより少ない「小規模企業者」(製造業その他は20人以下、卸売業・小売業・サービス業は5人以下)に該当する必要があります。
助成対象になる経費・ならない経費
対象経費は、国内・外国出願手数料、審査請求料・中間手続費用、代理人(弁理士)費用、翻訳料、外国出願に係るその他の経費(国際調査手数料等)に限られます。
一方で、次のような費用は対象外です。
- 助成対象期間(交付決定日から1年以内)より前に発生した費用
- 特許登録後の権利維持費用
- 親会社・子会社・グループ企業との取引にかかる費用
- 現金・手形・小切手・電子記録債権による支払い(原則、口座振込のみ対象)
助成対象期間中に「発注・契約」から「支払い」までの一連の手続きがすべて完了していないと、その経費は対象外になります。 交付決定日をまたいで契約だけ先に済ませてしまうと、その分の費用は助成されません。
出願が完了しないと助成金はゼロになる
この制度でもっとも注意すべき点は、助成対象期間(交付決定日から最大1年)内に、国内または海外での出願完了が確認できなければ、助成金が一切交付されないことです。交付決定はあくまで「助成対象の事業として認めた」という通知であり、支払いを保証するものではありません。
PCT出願(複数国へまとめて手続きできる国際出願制度)の場合は、指定国のうち1か国以上への国内移行が助成対象期間中に完了していることが基準になります。スケジュールに余裕を持たせず出願を先延ばしにすると、助成対象期間の満了で助成金がもらえなくなるリスクがあるという点は、申請前に必ず押さえておきたいところです。
次回(第2回・第3回)に向けて準備しておくこと
第1回の受付はすでに終わっていますが、第2回(8月24日~9月30日)・第3回(11月24日~12月25日)に応募する場合、今から準備を進めておける項目があります。
- GビズIDプライムアカウントの取得: 申請にはJグランツでの電子申請が必須で、GビズIDプライムの発行には概ね2週間以上かかります。第2回なら申請の2~3週間前に取得が必要です
- 履歴事項全部証明書(発行後3か月以内)の準備: 都内に登記があることを証明する書類です
- 直近2期分の確定申告書・決算書一式: 個人事業者以外は別表一・二、貸借対照表、損益計算書など一式が必要です
- 先行技術調査の実施: 外部委託した場合は調査報告書、自社で行った場合は関連する特許公報の写しが必要になります
- 共同出願を予定している場合は契約書の準備: 権利の持分・費用負担割合が明記された共同出願契約書が必須です
よくある質問
第1回に落選した場合、第2回に再申請できますか?
要領上、同一年度の交付決定は一申請者につき一件と定められています。第1回で不採択だった場合は、内容を見直したうえで第2回に再申請することが可能です。
個人事業主でも申請できますか?
申請できます。ただし、税務署に提出済みの個人事業の開業・廃業等届出書の写しで、都内に納税地・主たる事業所があることを確認できる必要があります。
助成対象期間より前に出願してしまった経費は助成されますか?
されません。助成対象期間(交付決定日から起算)より前に出願が完了している場合、その経費は本事業の対象になりません。 申請前にすでに出願済みの案件は、この制度の対象外です。
