電力系統に直接つなぐ大型の蓄電池を作る費用を、国が1/3から2/3まで補助します。上限は電池の種類と規模で決まり、最大の40億円は補助率1/2の枠です。2/3の枠の上限は20億円です。正式名称は「再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金」で、本記事は令和7年度補正の「系統用蓄電システム等導入支援事業」を扱います。
最大受電電力が1,000kW未満の蓄電池は対象外です。最大受電電力とは、電力系統から受け取る電力の最大値のことです。工場や店舗に置く自家消費用の蓄電池も対象になりません。
系統用蓄電システム等導入支援事業の要点まとめ
正式名:系統用蓄電システム等導入支援事業(令和7年度補正)
だれが
- 申請者
- 事業者(法人のみ)
- 対象業種
- 業種の指定なし
- 利用目的
- 系統用蓄電システムの新規導入
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 規定なし(日本国内で事業を営む法人)
いくら
- 補助上限額
- 最大40億円(区分により10億〜40億円。1申請あたり)
- 補助率
- 1/2以内(上限40億円の枠。ほかの枠は本文の表)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年9月4日〜2026年11月4日17時(必着)
- 事業の完了
- 2027年2月18日まで(単年度事業の場合)
うちの会社は対象になる?
次のすべてに当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 8
協議の相手は設置場所の自治体と地権者で、説明をしたうえで協議を始めていることが条件です。電力市場では、余剰電力の吸収や調整力の提供をします。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 一般送配電事業者
- ✕ 工場や店舗など、電気を使う側に置く蓄電池
- ✕ 発電所に併設して電力系統につなぐ蓄電池
- ✕ 風俗営業等を営む事業者
一般送配電事業者でも、発電事業者として調整力を出す場合は例外です。
令和7年度補正の補助金には、3つの事業区分があります。公募中なのは系統用だけで、大規模業務産業用と再エネ電源併設の2区分は公募が終わっています。
いくら補助される?
補助率と上限額は、電池の種類と最大受電電力の組み合わせで決まります。
| 区分 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| リチウムイオン電池・1,000kW以上10,000kW未満 | 1/3以内 | 10億円 |
| リチウムイオン電池・10,000kW以上30,000kW未満 | 1/3以内 | 25億円 |
| リチウムイオン電池・30,000kW以上 | 1/2以内 | 40億円 |
| リユース蓄電池(電動車の駆動用モジュールの再利用)・1,000kW以上 | 1/2以内 | 20億円 |
| 長期エネルギー貯蔵技術・1,000kW以上・6時間容量未満 | 1/2以内 | 20億円 |
| 長期エネルギー貯蔵技術・1,000kW以上・6時間容量以上 | 2/3以内 | 20億円 |
長期エネルギー貯蔵技術は、6時間以上続けて充電か放電ができる新しい技術です。圧縮空気、液化空気、重力、水電解水素などを使い、リチウムイオン電池以外が対象です。
計算の元になるのは補助対象経費で、消費税は含みません。以下は仮の事業費で計算した例です。
- リチウムイオン電池で5,000kWの蓄電所を作る:24億円 × 1/3 = 8億円
- リチウムイオン電池で20,000kWの蓄電所を作る:90億円 × 1/3 = 30億円 → 上限の25億円
- リチウムイオン電池で40,000kWの蓄電所を作る:70億円 × 1/2 = 35億円
- 6時間以上続く長期貯蔵の蓄電所を作る:36億円 × 2/3 = 24億円 → 上限の20億円
3者見積もりの最低価格が、補助対象経費の上限になります。契約は最低価格の業者でなくてもかまいません。ただし補助額は最低価格で計算されます。
何に使える?
対象にならないもの
- 基本設計費(容量計算や機器選定にかかる設計費)
- 昇圧変圧器・主変圧器などの受変電設備、保護継電器、開閉器、系統への連系工事
- 土地造成、整地、フェンス工事
- 消費税、金融機関への振込手数料
- 将来用や予備の設備
対象になるもの
- 設計費(実際の工事に必要な実施設計費)
- 設備費(電池のセル・モジュール、電池を管理するBMS、電力を変換するPCS、制御装置、専用の空調・筐体・分電盤)
- 工事費(補助対象設備を設置する工事。機械基礎は必要最低限)
補助対象外の設備と共用する部分は、費用を按分して説明できる分だけが対象です。
申請の流れ
- GビズIDプライムを取得する(申請者→GビズID。申請はこのIDでJグランツにログインして行う)
- 3者から見積もりを取る(申請者→メーカー・施工業者。特定のメーカーや機種を指定しない)
- 自治体と地権者に説明し、協議を始める(申請者→自治体・地権者。申請の前に)
- Jグランツに入力し、SIIの様式のファイルを添付する(申請者→Jグランツ。11月4日17時まで)
- 書類一式を2冊作り、1冊をSIIへ郵送する(申請者→SII。簡易書留などで11月4日17時必着)
- 審査と交付決定を待つ(SII→申請者。交付決定は2027年1月上旬の予定)
- 交付決定の後に契約・発注し、工事と系統連系を終える(申請者。2027年2月18日まで)
- 実績報告を出し、確定検査を受ける(申請者→SII。完了から30日以内か2月18日の早い方まで)
- 精算払請求書を出して補助金を受け取る(申請者→SII。支払いは2027年3月末までの予定)
交付決定とは、採択とは別に届く通知です。この日より前の契約や発注は、補助の対象になりません。
必要な書類
準備できた 0 / 17
交付申請書は別紙1〜3を含みます。表明書は「温室効果ガス排出削減の取組に関する表明書」で、申請者と設備の供給事業者の分を出します。説明会実施計画書か、自治体・地権者との協議の議事録のどちらかを出します。
登記簿謄本は、会社は履歴事項全部証明書、設置場所は全部事項証明書です。財務諸表は貸借対照表と損益計算書です。類焼試験の証明書はリチウムイオン電池の場合に、設備の供給事業者か第三者認証機関から取ります。
上の表は主な書類です。そのほかの添付書類は、公募要領の「提出書類一覧」にあります。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に発注した:交付決定は2027年1月上旬の予定です。これより前に契約や発注をした経費は対象外です。
- 特定のメーカーや機種を指定して見積もりを取った:仕様の書き方で結果的に機種が限られた場合も、対象外になります。
- Jグランツの入力だけで終えた:入力が済んでも申請とは認められません。書類一式の郵送が11月4日17時に必着です。直接の持ち込みはできません。
- 自治体との協議が始まっていない:申請時点で協議が始まっていない場合や、自治体に確認が取れない場合は、採択されません。
- 2027年2月18日までに完了できなかった:系統連系の承諾、設置工事、試運転、費用の全額支払いがすべて終わって完了です。
- 補助を受けた設備を無断で処分した:法定耐用年数の間に転用や譲渡をするには、事前の承認が要ります。補助金の返還になる場合があります。
他の補助金との併用と、運用開始後の義務
国の他の補助金とは併用できません。税制優遇との併用は税制の窓口に、自治体の補助金との併用は自治体に確認します。
運用を始めた日から3年間は、運用データと活用状況報告書を国かSIIに出す義務があります。30分ごとの充放電データを保管しておく必要があります。
よくある質問
工場の屋根の太陽光とセットで置く蓄電池は対象になりますか?
対象になりません。この事業の対象は、電力系統に直接つなぐ蓄電システムです。電気を使う側に置く蓄電池と、発電設備に併設して電力系統につなぐ蓄電池は、補助対象外とされています。自家消費や非常用の蓄電池は、容量や出力によって別の補助事業があります。公募要領の冒頭に事業判別のフローチャートがあるので、申請の前に自社の計画がどの事業に当たるか確かめてください。
中小企業でも申請できますか?
申請できます。資本金や従業員数の上限は定められておらず、日本国内で事業を営む法人であれば対象です。ただし最大受電電力が1,000kW以上の蓄電システムが条件なので、規模の大きな投資になります。設備の所有者が直近の決算で債務超過の場合は対象外です。設立が1年未満の特別目的会社は、主な出資者の決算で債務超過かどうかが見られます。申請できるのは法人だけで、個人事業主は対象になりません。
補助率はどのように決まりますか?
電池の種類と、最大受電電力の大きさで決まります。リチウムイオン電池は30,000kW未満が1/3以内、30,000kW以上が1/2以内です。リユース蓄電池は1/2以内です。長期エネルギー貯蔵技術は、6時間容量未満が1/2以内、6時間以上が2/3以内です。いずれも「以内」なので、審査で減額されることがあります。最大受電電力は、蓄電システムの定格出力から最小自家消費電力を引いて求めます。
上限額はいくらですか?
1申請あたりの上限は、区分によって10億円から40億円です。リチウムイオン電池は、1,000kW以上10,000kW未満が10億円、10,000kW以上30,000kW未満が25億円、30,000kW以上が40億円です。リユース蓄電池と長期エネルギー貯蔵技術は、どの区分でも20億円が上限です。申請できるのは1社あたり2件までで、共同申請も含めて数えます。
申請はどこへ出しますか?
Jグランツで申請し、書類一式の冊子を2冊作って、1冊をSIIへ郵送します。締切は2026年11月4日17時の必着です。Jグランツの入力だけでは申請と認められません。郵送は簡易書留など、配送状況が確認できる方法を使います。申請書類の到着状況に関する個別の問い合わせは、SIIでは受け付けていません。GビズIDプライムの取得に必要な日数は、公募要領に書かれていませんでした。早めに手続きを始めてください。
3者見積もりはなぜ必要ですか?
補助対象経費の価格が妥当かどうかを、SIIが確かめるためです。見積依頼仕様書を作って書面で依頼し、見積書にはメーカーと型番を書いてもらいます。同じ資本関係にある会社だけに頼むことはできません。見積もりの最低価格が補助対象経費の上限になります。3者を選んだ理由を書いた選定理由書も出します。特定のメーカーを指定した依頼は、採択されない事例に挙げられています。
事業はいつまでに終える必要がありますか?
単年度事業なら、2027年2月18日までです。系統連系の承諾、設置工事、試運転、補助対象経費の全額支払いがすべて終わった日が、事業の完了日です。単年度で終わらない事業は、複数年度事業として申請できます。全体が2年なら2028年1月19日、3年なら2029年1月19日が最終期限です。2月から4月も事業を進められる仕組みなので、工期が長い蓄電所に向いています。
審査ではどこが見られますか?
審査は、要件審査と採点審査の2段階です。要件を1つでも満たさないと不採択になります。採点審査では、系統連系協議の進み具合、活用電力率、ビジネスモデルの実現性、火災などへの安全対策が見られます。外部有識者の委員会が採点し、予算の範囲内で採択されます。要件を満たしていても、減額や不採択になることがあります。初年度(2026年度)の予算は、約80億円の内数です。
地域への説明会は必ず開く必要がありますか?
申請の前に、設置場所の自治体と地権者との協議を始めておく必要があります。自治体との協議で説明会が必要とされた場合は、申請時に実施計画書を出します。説明会は工事を始める前に、原則2026年度末までに開きます。期限までに確認できないと、交付決定が取り消されます。協議が完了していて議事録を出せる場合は、実施計画書は要件になりません。
リースで導入しても申請できますか?
申請できます。設備の所有者であるリース事業者と、使用者が、共同で申請します。リース事業者も対象事業者の要件を満たす必要があります。リース料から補助金相当分が減っていることを示す書類も出します。リース期間は、法定耐用年数と同じかそれより長くします。使用者とは、設備を動かして電力市場の取引を主に行う事業者のことです。運転と保守だけを任される事業者は含まれません。
交付決定の金額がそのまま支払われますか?
そのまま支払われるとは限りません。交付決定通知の金額は、実際に払われる補助金の額ではありません。事業が終わって実績報告を出したあと、SIIの確定検査で金額が確定します。申請どおりの設備が設置されていなければ、補助金は支払われません。確定通知を受けたら精算払請求書を出し、補助金は振込で支払われます。交付決定のあとに経費が増えても、交付決定額は増えません。
問い合わせ先はどこですか?
SII(環境共創イニシアチブ)事業第3部の問い合わせ窓口です。電話は03-6260-6951で、受付は平日の10時から12時と13時から17時です。メールはk_ess_info@sii.or.jpです。申請の前に、対象になるか、補助率の区分はどれかを確かめておくと、書類の出し直しを避けられます。公募説明会や説明動画の案内は、SIIの公式ページに載っています。
