「相手を見つけてから使う」補助金と、「相手を見つけるために使う」補助金は、似ているようでまったく別物です。

長野市の「事業承継促進補助金」は、後者に近い制度です。事業承継やM&Aを検討し始めた段階で、企業価値の算定や承継計画の作成といった専門家への委託費用を、2分の1(上限50万円)まで補助します。M&A仲介手数料やデューデリジェンス費用も対象に含まれます。

この補助金の概要(早見表)

検索項目内容
制度名長野市事業承継促進補助金
対象業種業種指定なし
利用目的事業承継・M&Aに向けた専門家活用(診断・計画策定・仲介・デューデリジェンス)
対象地域長野県長野市(市内に本社を有する事業者)
従業員数中小企業者(原則1年以上同一事業を継続する法人・個人事業主)
補助上限額50万円
補助率2分の1
申請受付通年(対象事業は年度内=3月31日までに完了する必要あり)
公式サイトhttps://www.city.nagano.nagano.jp/soshiki/skr/458902.html
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※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。

なぜ「専門家費用」だけが対象になっているのか

この補助金の対象経費を見ると、設備投資や店舗改装のような「モノ」への支出は含まれていません。対象はすべて、診断・計画策定・仲介・デューデリジェンスといった専門家サービスへの支出です。

理由は、事業承継・M&Aという取組の性質にあります。事業承継は、設備を入れ替えれば完了する取組ではありません。 企業価値をどう算定するか、後継者や譲渡先とどう合意形成するか、契約をどう組み立てるかという、専門知識がなければ進められない工程が中心になります。長野市がこの補助金で専門家費用にしぼって支援しているのは、「相手を見つけ、条件を固めるまでの初期コスト」こそが、事業承継の最大のハードルだと見ているからだと考えられます。

一方で、顧問料や成功報酬は対象外とされています。顧問契約のように継続的な支払いになるものや、成約後にしか発生しない成功報酬は、「承継を検討する段階の一時的な費用」という制度の趣旨からは外れる、という整理だと理解できます。

対象になる経費・ならない経費を具体的に見る

対象になる経費は次のとおりです。

  1. 初期診断・課題分析・コンサルティング費用
  2. 企業価値の算出費用
  3. 事業承継計画・M&A計画の作成費用
  4. M&A仲介手数料・マッチング登録料
  5. デューデリジェンス費用

一方、次の費用は対象外です。

  • 専門家への顧問料(継続的な契約に基づく費用)
  • 成功報酬(承継・M&Aが成立した場合にのみ発生する費用)

たとえば、次のようなケースで対象・対象外が分かれます。

  • 対象になる例:後継者不在の製造業が、M&A仲介会社に相手先探索を依頼し、マッチング登録料と企業価値算定費用を支払った
  • 対象になる例:親族内承継を検討する小売業が、専門家に事業承継計画の作成を依頼した
  • 対象外になる例:M&Aが成立し、成功報酬として仲介会社に成約額の一定割合を支払った
  • 対象外になる例:顧問契約を結んでいる税理士に、月額顧問料の一部として承継相談も含めて支払っている

申請の流れと年度内完結という制約

申請から補助金交付までの流れは次のとおりです。

  1. 指定する支援機関へ相談
  2. 補助金の交付申請
  3. 市による交付決定
  4. 対象事業の実施(診断・計画作成・仲介依頼等)
  5. 実績報告の提出(提出期限:3月31日)
  6. 補助金額の確定・交付

ここで注意したいのが、対象事業は当該年度中(3月31日まで)に完了させる必要があるという点です。年度をまたいで専門家との契約や作業が続く場合、年度内に完了した部分までしか対象にならない可能性があります。事業承継の検討には数か月から1年以上かかることも珍しくないため、いつから専門家に相談を始めるか、逆算してスケジュールを組む必要があります。

国の「事業承継・M&A補助金」との設計思想の違い

「事業承継」を掲げる補助金には、国の「事業承継・M&A補助金」という大型制度もあります。同じテーマでも、長野市のこの補助金とは設計がまったく違います。

国の事業承継・M&A補助金は、事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠・廃業再チャレンジ枠という複数の枠から選ぶ、審査(採択・不採択)を伴う制度です。上限額も数百万円規模と大きく、承継後の経営革新の取組や、M&A成立後の統合作業まで対象に含まれます。

一方、長野市のこの補助金は、審査によって採択・不採択が分かれる制度ではなく、要件を満たせば補助される制度です。対象は「相手を見つけ、条件を固めるまでの専門家費用」に絞られており、上限額も50万円と、国の制度に比べれば小規模です。

「まず地域の補助金で専門家に相談する初期費用を抑え、承継・M&Aの方向性が固まった段階で、国の大型制度の対象になる取組(設備投資・PMI等)を検討する」という、2段階での活用が考えられます。国の事業承継・M&A補助金は審査型の制度で、事業計画の書き方によって採択・不採択が分かれる性質があります。

じつは、「経営革新に資する取組かどうか」の判断は、はっきり白黒つくものばかりではありません。同じ設備更新でも、承継を機にした新しい取組として位置づけるかどうかで、扱いが変わることがあります。この考え方は、GRANTOS公式LINEの登録者限定ページで、国の事業承継・M&A補助金の記入例とあわせて紹介しています。

よくある質問

個人事業主でも申請できますか?

対象になります。「市内に本社を有し、原則1年以上引き続いて同一事業を営んでいる法人または個人事業主」が対象と明記されています。

顧問税理士への相談費用は対象になりますか?

内容によります。事業承継計画の作成やデューデリジェンスなど対象経費に該当する業務であれば対象になり得ますが、顧問料(継続的な契約に基づく費用)は対象外です。依頼する業務の内容を、契約時に明確に切り分けておくことをおすすめします。

国の事業承継・M&A補助金と併用できますか?

公式ページの記載だけでは、国の事業承継・M&A補助金との併用可否は確認できませんでした。対象経費が重複しないよう、申請前に長野市商工労働課へ確認することをおすすめします。


免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。補助額・補助率・対象経費・受付状況は変更される場合があるため、申請前に必ず長野市の公式ページおよび最新の募集要項で内容をご確認ください。

出典:


補助金の概要早見表(暫定・subsidiesマスタ未登録)

項目内容
対象地域長野県長野市(市内に本社を有する事業者)
対象業種業種指定なし
利用目的事業承継・M&Aに向けた専門家活用
対象者規模中小企業者・個人事業主(原則1年以上同一事業を継続)
補助上限額50万円
補助率2分の1
申請受付期間通年(対象事業は年度内完了、実績報告締切3月31日)
公式サイトhttps://www.city.nagano.nagano.jp/soshiki/skr/458902.html
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対象経費の範囲や、国の事業承継・M&A補助金との組み合わせ方など、実務の進め方に迷う場合は専門家に相談するのも一つの手です。

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