堆肥舎の中でホイルローダーを使って切り返す。この堆積発酵から、ブロアーで空気を送ったり攪拌機を付けたりする強制発酵に替えたい。そう考える畜産農家に、国の補助が使えます。経費の1/2以内を補助する事業です。
農林水産省の受付は随時で、最終締切は令和8年12月1日です(予算がなくなり次第終了)。ただし申請は県を通して出し、県への提出期限は県の畜産課が決めます。J-Net21などの掲載には、奈良県の受付を令和8年9月30日までとするものがありました。県の案内ページは今は見つからず、この日付は県の原本で確かめられていません。申し込む前に、畜産課へ電話で確かめてください。
畜産環境総合対策事業・家畜排せつ物処理構造転換支援事業の要点まとめ
正式名:畜産環境総合対策事業・家畜排せつ物処理構造転換支援事業
だれが
- 申請者
- 協議会(畜産農家・農協・法人・自治体など2者以上)
- 対象業種
- 畜産業
- 利用目的
- 堆肥化施設の整備と補改修、堆肥の高品質化
- 対象地域
- 奈良県内
- 従業員数
- 規定なし
いくら
- 補助上限額
- 基準事業費の範囲内(堆肥舎は1㎡あたり7.1万円など)
- 補助率
- 1/2以内
いつ・どこへ
- 申請受付
- 県の期限は未確認(掲載は2026年9月30日まで。国は12月1日まで随時)
- 事業の完了
- 年度内の完了が原則
まず、どの事業を指しているのか
農林水産省の資料では、2つの事業が一緒に案内されています。
- 畜産環境対策総合支援事業:堆肥の高品質化やペレット化、成分分析、悪臭と汚水処理の施設を支援する
- 家畜排せつ物処理施設構造転換支援事業:温室効果ガスの少ない処理方法へ変えるための施設を支援する
奈良県の案内は、この2つをまとめた名前で出ていました。農水省の資料で調べるときは、名前が少し違う点に注意してください。この記事の金額と条件は、構造転換支援事業の実施要領で確認できた分が中心です。
総合支援事業のほうは、メニューによって成果目標と補助の形が違います。
- 堆肥生産流通体制支援(ソフト):協議会の開催や成分分析などは定額で、機械の導入は1/2以内。1つの事業実施計画書あたりの補助上限は3千万円(機械の導入費を除く)
- 施設等導入支援(ハード・堆肥の高品質化):施設の整備と補改修が1/2以内。堆肥の販売量の割合を10ポイント以上増やすなどの目標が要る
- 畜産環境関連施設等導入支援(ハード・悪臭と汚水):1/2以内。臭気指数の11%以上の低減か、排水の硝酸性窒素等の20%以上の低減が目標
堆肥化処理施設の基準事業費(1㎡あたりの上限単価)は、構造転換支援事業と同じ単価が使われています。
奈良県は、令和8年3月の計画で、老朽化した堆肥舎の補改修を進める方針を示しています。施設を支援するときは、強制発酵施設のように高度な処理ができる設備への強化を促すとも書いています。堆積式の堆肥舎のままで更新するより、強制発酵への切り替えのほうが県の方針に沿います。
うちは対象になる?
次の5つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
協議会は、畜産を営む者に加えて、自治体、農業者の団体、耕種農家、肥料業者などのうち、役割の違う2者以上が入る組織です。規約で代表者、意思決定の方法、会計の扱いを決めておく必要があります。共同利用の施設なら、施設の設置者が事業実施主体になることもできます。
構造転換支援事業の成果目標は、温室効果ガスの20%以上の低減です。事業完了年度の翌々年度までに達成します。総合支援事業の成果目標は、上に挙げたメニューごとのものです。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 同じ種類・能力の施設に更新する
- ✕ すでに自費で実施した取組
- ✕ 附帯設備だけを整備する
- ✕ 売電用の発電施設を整備する
配合飼料を買っている場合は、配合飼料価格安定基金との契約を続ける決まりもあります。事業実施年度の前年度に契約がない人や、自給飼料へ切り替えた人は除きます。
いくら戻ってくる?
補助率は1/2以内です。ただし補助の対象になる事業費には、基準事業費という上限があります。堆肥化処理施設は、500㎡未満が1㎡あたり71千円、500㎡以上が67千円です。
- 堆肥舎300㎡を整備して、実費が2,500万円:基準事業費は71千円 × 300㎡ = 2,130万円 → 2,130万円 × 1/2 = 1,065万円
- 堆肥舎300㎡を整備して、実費が1,500万円:1,500万円 × 1/2 = 750万円
- 堆肥舎600㎡を整備して、実費が4,500万円:67千円 × 600㎡ = 4,020万円 → 4,020万円 × 1/2 = 2,010万円
実費が基準事業費を超えた分は補助されません。超えた分は自己負担です。地域の事情でやむを得ない場合は、県知事が認めれば、特認事業費(500㎡未満は1㎡あたり92千円、500㎡以上は87千円)まで対象を広げられます。この場合は農政局長との協議が入ります。
液肥化処理施設は、1,000㎥未満が1㎥あたり55千円、1,000㎥以上が26千円です。上の例は施設の本体だけを数えた計算で、実際の事業費は個別の積算で決まります。
何に使える?
対象にならないもの
- 自己資金や他の助成で、すでに実施した取組
- 既存施設を同じ種類・同じ能力で作り直す更新
- 用地の買収や造成の費用
- 他の用途にも使える汎用の運搬車両
- 本事業と区分できない経費
対象になるもの
- 堆肥化処理施設(堆肥舎、堆肥発酵施設、密閉型の装置と脱臭装置)
- 液肥化処理施設(ばっ気槽、貯留槽、スラリータンク)
- 施設と一体で整備する設備と機械(堆肥散布機、切返作業機、特装した堆肥運搬車)
- 整備に伴う既存施設の撤去(成果目標に必要な最小限の範囲)
- リースでの導入(本体価格50万円以上。補助額はリース物件価格の税抜額 × 1/2)
機械は原則として新品です。県知事が必要と認めたときは、残存期間が3年以上の中古品も対象にできます。
申請の流れ
- 協議会をつくり、取組主体を決める(畜産農家・農協・自治体など)
- 県の畜産課に相談して、県の提出期限を確かめる(協議会→奈良県畜産課)
- 事業実施計画書と交付申請書を県に出す(協議会→県知事。見積書は原則2者以上から取る)
- 国の審査を受けて、交付決定を待つ(要望の受理から2か月程度かかります)
- 交付決定のあとに着工する(工事業者。工事の契約は原則として一般競争入札です)
- 完了後、実施状況を毎年報告する(協議会→県知事。事業完了年度から目標年度の前年度まで、翌年度の7月末まで)
農林水産省の段階は、随時募集で最終締切が令和8年12月1日です。
採択は点数の高い順です。構造転換支援事業の採点は、課題設定・実現性・協議会の体制・予算計画・地域への波及などの項目(各5点)と、成果目標の高さ(温室効果ガスの低減率が20%以上で2点、35%以上で4点、50%以上で6点、65%以上で8点、80%以上で10点)で決まります。同点のときは、補助金額が低い計画が上位になります。点数が足りなければ、要件を満たしていても採択されないことがあります。整備する施設と機械は、天災に備えた共済や損害保険にも加入しておく決まりです。年度内の事業完了が原則なので、期限ぎりぎりでは間に合いません。事業が年度をまたぐ場合は、複数年度の計画を作れます。ただし次年度の交付決定は保証されません。
必要な書類
準備できた 0 / 7
チェックシートは、環境負荷低減のクロスコンプライアンス(補助を受ける人が環境に配慮した取組を守ることを確かめる項目)のものです。全項目にチェックを入れて、事業実施計画書に添付します。補改修の評価書は、施設の老朽度合いと、必要な補改修の内容がわかる資料です。リース計画書はリース導入のときだけ要ります。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に着工した:着工は交付決定後が原則です。緊急でやむを得ない場合は、理由を書いた交付決定前着手届を県知事に出します。それまでに生じた損失は自己責任です。
- 売電に使った:整備した施設を発電に使い、固定価格買取制度などで売電すると、補助金の全部か一部を国に返す必要があります。
- 要件を満たしていなかった:交付後に判明すると、県の指示で補助金の全額か一部を返す決まりです。
- 成果目標に届かなかった:温室効果ガス20%以上の低減が達成できないと、改善計画を出します。同じ取組と地区で次に計画するときは、審査が厳しくなります。
- 予算がなくなった:国の随時募集は、予算がなくなり次第終了です。
併用について
国の他の補助事業と重なる経費は、対象になりません。畜産を営む者が、生産した堆肥を使うことに対して国の他の事業から補助を受けている場合や、受ける予定の場合も、この事業の対象外です。
よくある質問
奈良県の受付は終わっていますか?
県の期限は、県の原本で確かめられていません。J-Net21などの掲載では、受付は令和8年9月30日まででした。農林水産省の資料では、国の段階は随時募集で、最終締切が令和8年12月1日(予算がなくなり次第終了)です。県への提出期限は、各都道府県の畜産主務課が決めると書かれています。受け付けてもらえるかどうかは、奈良県食農部畜産課(0742-27-7450)に問い合わせて確かめてください。
個人の畜産農家が一人で申請できますか?
一人では申請できません。事業実施主体は、役割の違う2者以上が参加する協議会です。畜産を営む者に、自治体、農業者の団体、耕種農家、肥料業者などを加えて組みます。規約で代表者と会計の扱いを決めておく必要があります。堆肥を渡す耕種農家や、地元の農協に声をかけるところから始める進め方が考えられます。
補助率と上限額はどうなっていますか?
構造転換支援事業の補助率は1/2以内です。上限額は決まった金額ではなく、基準事業費で決まります。堆肥化処理施設は、500㎡未満が1㎡あたり71千円、500㎡以上が67千円です。300㎡の堆肥舎なら基準事業費は2,130万円で、補助は最大でその1/2の1,065万円になります。奈良県独自の上乗せは、確認できませんでした。
古い堆肥舎の建て替えは対象になりますか?
同じ種類・同じ能力の施設に作り直すだけの更新は対象外です。堆積式の堆肥舎を、送風装置や攪拌機を備えた強制発酵の施設へ変える場合は、構造転換に当たります。温室効果ガスの排出量が20%以上減ることを、算出方法に沿って示す必要があります。老朽化した施設を補改修する場合は、老朽度合いがわかる評価書を計画書に付けます。
堆肥舎を先に建ててしまった場合はどうなりますか?
原則として対象になりません。着工は交付決定のあとでなければならず、自己資金ですでに実施した取組は補助の対象外です。緊急でやむを得ない場合に限り、交付決定前着手届を県知事に出して、交付決定前に着工できます。この場合でも、交付決定までに生じた損失は自己責任です。見積を取る段階で、県の畜産課に相談しておきます。
中古の機械やリースでも補助されますか?
機械は原則として新品が対象です。県知事が必要と認めれば、残存期間が3年以上の中古品も対象にできます。リースでの導入も対象で、リース物件の本体価格は50万円以上、補助額はリース物件価格の税抜額の1/2です。リース期間は1年から法定耐用年数以内で、中途解約はできません。リース料から補助額を引いた額を支払う契約にします。
補助金をもらった後に守ることはありますか?
あります。整備した施設は、処分制限期間のあいだ、補助の目的に沿って管理する必要があります。固定価格買取制度などで売電する使い方は、期間中はできません。事業完了年度から目標年度の前年度まで、毎年翌年度の7月末までに、実施状況を県へ報告します。目標年度は事業完了年度の翌々年度で、成果目標の達成を評価されます。
年度内に工事が終わらないときはどうなりますか?
原則は年度内の完了です。工程上、単年度で終えられない場合に限り、複数年度にわたる事業実施計画書を作れます。ただし、次年度以降の交付決定は保証されません。国の要望調査の案内でも、要望の受理から審査に2か月程度かかるため、年度内に完了できる計画で申し込むよう求めています。工事の日程は、審査期間を含めて組みます。
採点で落ちることはありますか?
あります。国は、各県から出た計画を点数の高い順に採択します。構造転換支援事業では、課題設定、計画の実現性、協議会の体制、予算計画、スケジュール、地域への波及などを各5点で見て、成果目標の高さを最大10点で加えます。同点なら補助金額が低い計画が先です。過去3年間に補助金の交付決定の取消しを受けた事業実施主体や、地域住民への事業説明が足りない計画は、採択されません。
見積書は何社から取りますか?
原則として、2者以上の業者から取ります。事業実施計画書を作る段階で、複数の業者から見積書を取り、実勢価格から外れないように補助対象経費を計算します。機械の購入先を選ぶときは、希望小売価格を確認したうえで、一般競争入札をするか、3者以上から見積りを取って事業費を抑える決まりです。結果は計画書に添付します。
申請はどこに出しますか?
事業実施主体が、県知事が定める交付申請書に事業実施計画書を付けて、県に出します。県知事が必要と認める場合は、市町村長を経由して出すこともあります。奈良県では食農部畜産課が窓口です。県が内容をまとめて国に出す仕組みなので、書類の様式や提出期限は、農林水産省ではなく県の畜産課に先に確かめます。
自家の堆肥を使うだけでも対象になりますか?
対象になる場合があります。取組主体の要件に、家畜排せつ物から作った堆肥を、自家農場で適正に使うか、他者へ販売・譲渡して、肥料資源として使うことが入っています。作った堆肥は、肥料の品質確保に関する法律にもとづく登録か届出と、表示を適正に行う必要があります。堆肥の成分は分析して、耕種農家のニーズに合うものを作ります。
問い合わせ先はどこですか?
奈良県食農部畜産課です。農林水産省の要望調査の案内に載る電話番号は0742-27-7450(令和8年6月時点)です。県への提出期限、書類の様式、県独自の条件は、県の窓口で確かめます。国の事業の仕組みや要領については、農林水産省の資料に担当の畜産局畜産振興課環境保全班が記載されています。県の案内ページの場所が変わっている場合があるため、県のサイトで事業名を検索するか、電話で畜産課に確かめるのが確実です。
