失業保険(雇用保険の基本手当)は、離職前の給料のおおむね5〜8割が目安です。賃金が低かった人ほど割合が高く、高かった人ほど低くなる仕組みで、60〜64歳は45〜80%になります。
ただし、この割合をそのまま当てはめると多くの人が計算を間違えます。理由は年齢区分ごとに1日あたりの上限額が決まっているからです。令和8年8月1日以降、上限額は30歳未満で7,450円、30〜44歳で8,270円、45〜59歳で9,110円、60〜64歳で7,830円です。月給が50万円を超えるあたりから、多くの人は上限で頭打ちになります。
もう一つ、金額の実感を左右する事実があります。失業手当には所得税も住民税もかからず、社会保険料も引かれません。 給料は額面から2割前後が引かれて手取りになるので、額面の50%でも、手取りで比べればおおむね6割前後という感覚になります。「半分になる」と身構えていた方には、少し違う数字に見えるはずです。
この記事では、金額の当たりを付けるための全体像を扱います。賃金日額から基本手当日額を出す具体的な計算式は 失業手当はいくら?基本手当日額の計算方法 に、総額のシミュレーションは 失業手当はいくら?総額の計算シミュレーション3例 に詳しく書いてあります。手を動かして計算したい方はそちらへどうぞ。
1日あたりの上限額と、それに当たる年収
まず天井を確認します。どれだけ高い給料をもらっていても、これ以上は出ません。
| 年齢区分 | 基本手当日額の上限(令和8年8月1日〜) | 30日あたりに直すと |
|---|---|---|
| 30歳未満 | 7,450円 | 約223,500円 |
| 30歳以上45歳未満 | 8,270円 | 約248,100円 |
| 45歳以上60歳未満 | 9,110円 | 約273,300円 |
| 60歳以上65歳未満 | 7,830円 | 約234,900円 |
下限額は全年齢共通で日額2,562円です。30日分に直すと76,860円になります。
上限額は毎年8月1日に改定されます。 前年度の平均給与額の変動にもとづいて見直されるため、去年見た数字が今年も同じとは限りません。古い記事の数値をそのまま信じないでください。
年齢が上がるほど上限が高くなり、60歳を超えると下がる、という設計です。45〜59歳がいちばん厚く、60〜64歳は給付率の下限も45%と低くなります。
自分は上限に当たるか
ざっくりした目安として、45〜59歳の場合、上限額9,110円に達するのは賃金日額が18,220円を超えたあたりです。賃金日額は離職前6か月の給与合計を180で割った額なので、月給に直すとおよそ54万円、年収でいえばボーナスを除いて650万円前後になります。
30〜44歳なら、上限額8,270円に達するのは賃金日額16,540円超。月給でおよそ50万円弱です。
つまり、月給30万円台の方は上限には当たらず、給付率の計算がそのまま効きます。 月給50万円を超えるあたりから、給料が上がっても失業手当は増えなくなる、と理解しておいてください。
手取りで比べると割合が上がる理由
「額面の50%」と聞くと大幅に減る印象ですが、比べる対象を揃えると印象が変わります。
給料からは、所得税・住民税・健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料が引かれます。額面30万円の人の手取りは、おおむね23〜24万円というのが一般的な水準です。
一方、失業手当は非課税です。所得税も住民税もかからず、社会保険料も源泉徴収もありません。振り込まれた額がそのまま使える金額になります。
したがって、
- 在職中: 額面30万円 → 手取り約24万円
- 受給中: 基本手当が額面の6割として月18万円 → 手取りも18万円
手取りどうしで比べると、24万円 → 18万円で約75%です。額面ベースの60%より、実感はかなり違います。
ただし、油断できない点が2つあります。
- 住民税は前年の所得に対してかかるので、離職後も払い続けます。 会社が給与から天引きしていた分が、離職後は自分で納付書で払うことになります。前年の年収が高かった人ほど、この負担が重く感じられます
- 健康保険と年金も自分で払うことになります。 任意継続か国民健康保険かを選び、国民年金の保険料も発生します(免除・猶予の制度はあります)
この2つの支出が、失業手当の非課税というメリットを相当に食います。 家計を組むときは、手当の額から住民税・健康保険料・国民年金保険料を引いた残りで考えてください。
総額はいくらになるか(レンジ)
「いくらもらえる」の答えとして、総額の上限を知っておくと見通しが立ちます。
総額は基本手当日額 × 所定給付日数です。日数は年齢・雇用保険の加入期間・離職理由で90日から360日まで変わります。
上限額の人が、代表的な日数を受け切った場合の総額を示します。
| 年齢区分 | 上限日額 | 90日 | 150日 | 240日 | 330日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 7,450円 | 670,500円 | 1,117,500円 | 1,788,000円 | — |
| 30〜44歳 | 8,270円 | 744,300円 | 1,240,500円 | 1,984,800円 | — |
| 45〜59歳 | 9,110円 | 819,900円 | 1,366,500円 | 2,186,400円 | 3,006,300円 |
| 60〜64歳 | 7,830円 | 704,700円 | 1,174,500円 | 1,879,200円 | — |
330日は45歳以上60歳未満で、倒産・解雇等により離職し、雇用保険の加入期間が20年以上ある場合の日数です。このケースが上限額と重なると、総額300万円を超えます。
逆に、自己都合で退職して加入期間が10年未満なら日数は90日です。上限額の人でも70万円台にとどまります。離職理由と加入期間で、総額は4倍以上違います。
自分の日数がどれになるかは 失業保険はいつまで?所定給付日数と受給期間 の表で確認してください。実際の日額を使った総額の計算例は 失業手当はいくら?総額の計算シミュレーション3例 にあります。
なお、この総額は「受け切った場合」の話です。途中で就職すれば残りは出ません(代わりに再就職手当が出ます。後述)。
パート・アルバイトの場合
パートやアルバイトの方でも、条件を満たしていれば失業保険は出ます。
金額の面で知っておくべきことは、賃金が低い人ほど給付率が高くなるという点です。給付率は50〜80%の幅があり、賃金日額が低いほど80%に近づきます。したがって、パートで月10万円台だった方は、額面に対する割合では正社員より高い率が適用されます。
ただし、下限額(日額2,562円)があります。極端に賃金が低かった場合でも、この額を下回ることはありません。30日分に直すと76,860円です。
一方で、加入していなければ何も出ません。雇用保険の加入は、原則として1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあることが条件です。「週15時間のシフトだった」という場合、そもそも被保険者になっていない可能性があります。
給与明細に雇用保険料が引かれているかを確認するのが最も確実です。引かれていれば加入しています。
受給の条件(加入期間や離職理由)については 失業手当の条件は?加入期間と離職理由をチェック をご覧ください。
受給中に扶養に入れるかは「日額3,612円」で決まります
配偶者の健康保険の被扶養者でいられるかどうかは、世帯全体の手取りに大きく響きます。ここは金額の話として無視できません。
健康保険の被扶養者の認定基準は、原則として年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満、扶養認定を受ける方が19歳以上23歳未満の場合は150万円未満)です。そして、この「年間収入」には雇用保険の失業等給付が含まれます。
判定は年額ではなく日額で行われます。130万円を360日で割ったおおむねの水準として、失業給付の日額が3,611円以下であれば被扶養者の要件を満たします。 逆に3,612円以上になると、受給している間は被扶養者でいられません。
日額3,612円は、30日分に直すと108,360円です。基本手当日額がこの水準を超える方(=正社員として働いていた方の多く)は、受給が始まる時点で扶養から外れ、国民健康保険に加入する必要があります。
実務上の注意点を挙げます。
- 給付制限期間中は日額が発生しないので、扶養に入れることがあります。 ただし受給が始まったら抜ける手続きが必要です
- 受給が終わったら、また扶養に戻れます。 その都度、加入している健康保険組合へ届け出ます
- 同居している場合は、被扶養者の収入が被保険者(配偶者など)の収入の半分未満であることも条件です。別居の場合は仕送り額未満であることが条件になります
- 健康保険組合によって独自の運用がある場合があるので、加入先の組合に必ず確認してください
手続きを怠ったまま受給すると、あとから遡って保険給付の返還を求められることがあります。 面倒でも、受給開始と終了のたびに届け出てください。
基本手当以外にもらえるお金
「いくらもらえる」の答えは、基本手当だけではありません。就職促進給付という枠組みで、いくつかの手当があります。
再就職手当
早く再就職した人向けの手当です。残っている所定給付日数に応じて、まとまった額が一度に支給されます。
計算式は基本手当日額 × 支給残日数 × 支給率で、支給率は次のとおりです。
- 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上 → 70%
- 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上(3分の2未満) → 60%
主な要件は、待期期間(7日間)を経過していること、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること、再就職先が前職や密接に関連する会社でないこと、原則1年以上継続して雇用される見込みがあること、などです。
早く決まるほど得をする設計です。所定給付日数150日の人が30日分だけ受給して再就職した場合、残り120日は3分の2以上なので支給率70%となり、基本手当日額が6,000円なら6,000円×120日×70%=504,000円が一度に支給されます。
就業促進定着手当
再就職手当を受け取った人が、再就職先での賃金が前職より低かった場合に、その差額分を補う手当です。再就職先に6か月以上雇用され続けていることが条件になります。給与が下がることを理由に再就職をためらう必要がない、という設計です。
その他の給付
- 常用就職支度手当: 障害があるなど就職が困難な方が、支給残日数が所定給付日数の3分の1未満の状態で安定した職業に就いた場合の手当
- 移転費: 就職や訓練のために住所を変える必要がある場合の引越し費用や交通費
- 広域求職活動費: ハローワークの紹介で遠方の企業を訪問して求職活動をする場合の交通費・宿泊費
- 短期訓練受講費: 再就職のために教育訓練を受けて修了した場合の費用の一部
- 求職活動関係役務利用費: 面接や訓練のために保育等のサービスを利用した場合の費用。小さいお子さんがいて活動が制約される方には実利があります
これらは自動では出ません。 該当しそうな場合は、ハローワークの窓口で「この給付は使えますか」と聞いてください。基本手当の相談に行った際、窓口から積極的に案内されるとは限らないので、自分から名前を挙げるのが確実です。
金額が減る・止まるケース
見込んでいた額が入らないパターンを挙げます。
アルバイトをした日は、収入の額に応じて基本手当が減額されるか、その日の分が先送りになります。働いたこと自体を隠すと不正受給になります。失業認定申告書には、収入がなくても働いた事実を必ず書いてください。
認定日に行かなかった場合、その認定対象期間の基本手当は支給されません。次回の認定日にまとめて認定してもらえるわけではないので、日程は最優先で押さえてください。
求職活動の実績が足りない場合も、その期間は不支給になります。認定日数に応じた回数が必要で、ハローワークでの職業相談や求人への応募が実績になります。
不正受給をした場合は、支給の停止に加えて、受給した額の返還と、その2倍に相当する額以下の納付を命じられます。合計で3倍の負担になり得ます。悪質な場合は刑事罰の対象にもなります。
受給期間は原則として離職の翌日から1年です。この1年を過ぎると、所定給付日数が残っていても受け取れません。病気・けが・妊娠・出産・育児などで30日以上働けない期間があった場合は、延長の申請ができます(最長3年)。延長は自動ではないので、該当したら早めに申請してください。
いくらもらえるかの見通しを立てる順番
金額の当たりを付ける手順をまとめます。
- 離職前6か月の給与合計を確認する。 賞与は含めず、毎月きまって支払われた賃金です。これを180で割ると賃金日額になります
- 年齢区分の上限額を見る。 賃金日額に給付率をかけた額が上限を超えるなら、上限額が自分の日額です
- 所定給付日数を確認する。 年齢・加入期間・離職理由で決まります
- 日額 × 日数で総額を出す。 これが受け切った場合の最大額です
- 扶養に入っているか確認する。 日額が3,612円以上なら、受給中は外れます
- 住民税・国民健康保険料・国民年金保険料を差し引く。 実際に使えるお金はここまで引いた残りです
計算式の詳細は 失業手当はいくら?基本手当日額の計算方法 を、いつから振り込まれるかは 失業保険は自己都合だといつから?振込開始の日付を計算 をご覧ください。
よくある質問
失業保険は前の給料の何割ですか?
おおむね50〜80%です(60〜64歳は45〜80%)。賃金が低い方ほど高い率になります。ただし年齢区分ごとに1日あたりの上限額があり、令和8年8月1日以降で30歳未満7,450円、30〜44歳8,270円、45〜59歳9,110円、60〜64歳7,830円です。月給50万円を超えるあたりから上限で頭打ちになります。
失業保険に税金はかかりますか?
かかりません。所得税も住民税もかからず、社会保険料も引かれません。 ただし住民税は前年の所得に対して課税されるため、離職後も納付書で払う必要があります。健康保険料と国民年金保険料も自分で負担することになるので、その分は差し引いて家計を考えてください。
総額で最大いくらもらえますか?
日額の上限と所定給付日数の上限が重なるケースで、300万円を超えることがあります。45歳以上60歳未満で、倒産・解雇等により離職し、雇用保険の加入期間が20年以上ある場合の330日が最長です(就職困難者は360日)。上限額9,110円×330日=3,006,300円になります。自己都合で加入期間が短ければ90日なので、70万円台にとどまります。
パートでももらえますか?いくらですか?
もらえます。雇用保険に加入していることが前提で、加入の条件は1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みです。金額は賃金が低い人ほど給付率が高くなる仕組みなので、額面に対する割合では正社員より高くなることが多いです。下限額は日額2,562円で、これを下回ることはありません。
受給中に夫(妻)の扶養に入れますか?
失業給付の日額が3,611円以下であれば要件を満たします。 3,612円以上になると、受給している間は被扶養者でいられず、国民健康保険に加入することになります。給付制限期間中は日額が発生しないため扶養に入れることがありますが、受給が始まったら抜ける手続きが必要です。同居の場合は被保険者の収入の半分未満であることも条件です。加入先の健康保険組合に必ず確認してください。
早く就職すると損をしますか?
損はしません。再就職手当があり、支給残日数が所定給付日数の3分の2以上なら残日数分の70%、3分の1以上なら60%が一度に支給されます。さらに、再就職先の賃金が前職より低い場合は就業促進定着手当で差額が補われます。早く決まるほど支給率が高いので、金銭面でも早期の再就職が有利な設計になっています。
