離職してもらう社員の再就職支援を、民間の職業紹介会社に任せた費用は戻ってくるのか。戻ってきます。ただし再就職が決まって初めて支給されるので、委託しただけでは出ません。再就職支援分は1人あたり最大80万円(訓練の上乗せを含む)です。休暇付与支援と職業訓練実施支援は、別に計算します。
もう一つ、契約後に気づいても遅い条件があります。人員削減のやり方を紹介会社に相談していた場合は「退職コンサルティング」に当たり、申請する会社が助成の対象から外れます。
早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)の要点まとめ
正式名:早期再就職支援等助成金(再就職支援コース)
だれが
- 申請者
- 事業者(法人・個人事業主)
- 対象業種
- 業種の指定なし(雇用保険適用事業所の事業主)
- 利用目的
- 離職者の再就職支援(委託・休暇付与・訓練)
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 規定なし(中小企業かどうかで割合が変わる)
いくら
- 補助上限額
- 再就職支援は1人あたり80万円まで
- 補助率
- 委託費の1/4〜4/5(企業規模・年齢・区分で変動)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 通年(支給申請は再就職した月の末日の翌日から2か月以内)
うちの会社は対象になる?
次の4つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
売上の条件は、人員削減をする部署や事業所の単位で見ます。生産量・販売量・売上高のどれかが前年比10%以上減っていれば足ります。比べるのは、計画を出した日の直前3か月の平均が原則です。直近の決算1年の平均でも、3年以内に10%以上減る見込みでも構いません。直近の決算で経常利益が赤字、または3年以内に赤字になる見込みでも足ります。
勤続1年は、雇用保険の被保険者として続けて働いた期間です。紹介事業者への委託契約日の前日(休暇なら休暇の初日の前日)の時点で数えます。
再就職援助計画は、離職者への再就職支援の中身を書いた計画です。ハローワークの認定を受けます。1か月に30人以上が離職する場合は、作成が法律で義務づけられています。対象が45歳以上70歳未満の人なら、求職活動支援基本計画書を労働局に出す方法もあります。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 退職コンサルティングを受けた
- ✕ 中小企業以外で対象者が30人未満
- ✕ 退職強要と受け止めた人が離職
中小企業の範囲は業種で決まっています。資本金か従業員数のどちらか一方を満たせば中小企業です。小売業(飲食店を含む)は5,000万円以下か50人以下、サービス業は5,000万円以下か100人以下、卸売業は1億円以下か100人以下、その他の業種は3億円以下か300人以下です。
中小企業以外は、紹介事業者への委託による再就職支援の対象者が30人以上必要です。
いくら戻ってくる?
支給は1人ごとに計算し、「再就職支援」「休暇付与支援」「職業訓練実施支援」の3つを組み合わせられます。休暇付与だけ、訓練だけでも使えます。
再就職支援分は、委託総額から訓練の委託費用とグループワーク加算額を引いた額に、助成割合をかけます。割合は次のとおりです。
| 区分 | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 通常(45歳未満) | 1/2 | 1/4 |
| 通常(45歳以上) | 2/3 | 1/3 |
| 特例(45歳未満) | 2/3 | 1/3 |
| 特例(45歳以上) | 4/5 | 2/5 |
特例区分は、紹介事業者との契約に次の3点を入れたうえで、対象者が期間の定めのない雇用(パートタイムを除く)で、賃金が離職時の8割以上の再就職をした場合に使えます。
- 委託開始時に払う委託料が、総額の2分の1未満
- 紹介事業者が行う訓練の費用を、事業主が全部または一部負担
- 良い条件で再就職したとき、委託料を5%以上多く払う
訓練加算は、訓練の委託費用の2/3です。訓練時間に応じた上限があります。グループワーク加算は、3回以上の実施で1万円です。
| 訓練時間 | 中小企業の上限 | 中小企業以外の上限 |
|---|---|---|
| 10時間以上100時間未満 | 15万円 | 10万円 |
| 100時間以上200時間未満 | 30万円 | 20万円 |
| 200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
再就職支援分の合計には上限があります。委託総額か60万円の低いほうです。中小企業で訓練が200時間以上なら、60万円が80万円になります。
計算例です。いずれも訓練とグループワークがない場合です。
- 中小企業が40歳の人の再就職支援を60万円で委託:60万円 × 1/2 = 30万円
- 中小企業以外が50歳の人の再就職支援を60万円で委託:60万円 × 1/3 = 20万円
- 特例区分に当たる中小企業が50歳の人を60万円で委託:60万円 × 4/5 = 48万円
上限に当たる例です。中小企業が50歳の人を、委託総額150万円(うち訓練の委託費用60万円、訓練は200時間以上)で支援したとします。
- 通常分:(150万円 − 60万円) × 2/3 = 60万円
- 訓練加算:60万円 × 2/3 = 40万円(上限50万円の内側)
- 合計100万円 → 上限80万円
休暇付与支援は、求職活動のための休暇1日につき、中小企業8,000円、それ以外5,000円です。上限は180日分です。休暇の日に通常払う賃金がこの額に満たなければ、その賃金額になります。休暇の日には、通常の賃金以上を払うことが条件です。休暇は、計画の認定日(提出日)から離職日までの間に与えたものだけが数えられます。離職の翌日から1か月以内に再就職が決まれば、1人10万円が加わります。たとえば中小企業が20日の休暇を出すと、8,000円 × 20日 = 16万円です。
1年度に1事業所で支給できるのは500人分までです。同じ訓練や休暇に別の助成金を受けているときは、原則としてこの助成金は受けられません。
何に使える?
休暇付与支援と職業訓練実施支援は、紹介事業者に委託しなくても使えます。
対象にならないもの
- 通信教育・eラーニングの訓練
- 趣味教養と区別がつかない訓練、就職活動のノウハウだけの訓練
- 都道府県や高齢・障害・求職者雇用支援機構の施設が行う訓練の受講料
- 年次有給休暇として与えた休暇
対象になるもの
- 有料職業紹介事業者への再就職支援の委託費用
- 紹介事業者が行う10時間以上の訓練(対象者が8割以上受講)の費用
- 教育訓練施設などに委託する訓練の入学料・受講料・教科書代
- 年次有給休暇とは別に与えた、求職活動のための1日以上の休暇
職業訓練実施支援は、訓練の委託費用の3/4が経費助成です。上限は訓練時間で変わり、中小企業は15万円・30万円・50万円、それ以外は10万円・20万円・30万円です。訓練中の賃金助成は1時間あたり中小企業960円、それ以外480円です。
紹介事業者は、有料職業紹介事業者に限ります。無料職業紹介事業者は数に入りません。委託料の振込手数料は、対象経費になりません。
申請の流れ
順番は決まっています。計画の届出が先、委託契約はあとです。届出の前に結んだ委託契約は、原則として対象になりません。離職のあとに結んだ契約も対象外です。
- 再就職援助計画を作る(事業主→労働組合等の同意を得て、ハローワークへ認定を申請。または求職活動支援基本計画書を労働局へ提出)
- 有料職業紹介事業者を複数選び、委託契約を結ぶ(事業主→紹介事業者。計画の認定・提出のあと、離職の前に)
- 再就職支援・休暇付与・訓練を実施する(紹介事業者・事業主→対象者)
- 離職の翌日から6か月以内に再就職が決まる(45歳以上は9か月以内)
- 委託費用を払い終えて、支給申請を出す(事業主→労働局またはハローワーク。再就職日が属する月の末日の翌日から2か月以内)
複数人の分をまとめて申請できます。その場合の期限は、最後の人の再就職日で数えます。申請は各月1回までです。
必要な書類
準備できた 0 / 8
様式は、再就職援助計画などを出した日によって版が分かれています。令和8年4月8日以降に出した計画の対象者は、その版を使います。再就職支援を申請するときは、紹介事業者ごとに続紙(様式3-2号)も要ります。特例区分を使うなら、離職時の賃金がわかる離職証明書と、再就職先の雇用契約書の写しも要ります。休暇付与は出勤簿と賃金台帳の写し、訓練は内容と受講時間がわかる資料が加わります。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 退職コンサルティングを受けていた:離職日の前日から1年前の日以後、計画を出す日までの間に、紹介事業者などから人員削減の実施の提案、対象者の選び方、面接のやり方の助言を受けていると対象外です。有料か、契約があるか、会社から頼んだかは問われません。
- 紹介事業者の支援より先に再就職先が決まっていた:支援を一度も受けずに再就職した場合や、支援の開始前に内定していた場合は対象外です。内定後に支援を受けても同じです。
- 期限を過ぎて再就職した:離職の翌日から6か月(45歳以上は9か月)以内に再就職が実現しないと、助成されません。
- 退職を迫ったと受け止められた:紹介事業者の退職勧奨や、事業主の退職強要を受けたと本人が受け止めている場合は、その人の分は出ません。
- 委託契約の結び方が違った:計画の届出の前、または離職のあとに結んだ契約は、原則として対象になりません。
- 本人が確認を断った:個別表の本人確認欄の確認を本人が拒むと、その人の分は出ません。
- 申請が2か月を過ぎた:再就職日が属する月の末日の翌日から2か月以内に出さないと、受け付けられません。
似た名前のコースとの違い
早期再就職支援等助成金には、ほかにもコースがあります。送り出す側か受け入れる側かで選びます。
- 離職する社員を送り出す事業主が使うのが、この記事の再就職支援コースです。
- 離職者を雇い入れて賃金を上げた事業主は、雇入れ支援コースです。
- 中途採用を増やして賃金を上げた事業主は、中途採用拡大コースです。
令和8年4月8日の変更
令和8年4月8日から、支給要領と一部の様式が変わりました。申請書類は、計画を出した日によって使う版が分かれます。厚労省のページで、自分の計画に合う版を確かめてから書類をそろえてください。
よくある質問
紹介事業者は1社だけでも申請できますか?
原則として複数の有料職業紹介事業者を選ぶ必要があります。離職する人の希望を踏まえて選んでもらうためです。労働組合等との合意で2社以上を選ぶ方法と、対象者の希望に合わせて選ぶ方法があります。すでに1社と契約していても、内容が基本的なものだけで、後から2社以上を選ぶ場合などは申請できることがあります。個別の事情は労働局に確かめてください。
休暇付与だけでも使えますか?
使えます。再就職支援を紹介事業者に委託しなくても、求職活動のための休暇を与える、または再就職のための訓練を実施する場合は対象です。ただしどの場合も、対象者が離職の翌日から6か月以内(45歳以上は9か月以内)に再就職することが必要です。再就職援助計画などを先に届け出る点も共通です。休暇が年次有給休暇なら対象外です。
退職コンサルティングとは何ですか?
離職する人が具体的に決まって計画を出す日までに、紹介事業者や、それと連携した会社などが人員削減について行う働きかけです。実施の提案、対象者の選定基準づくりの支援、面接方法などの助言や資料の提供が当たります。助成が外れるのは、離職日の前日から1年前の日以後、計画を出す日までに受けた場合です。違法かどうか、有料かどうか、契約があるか、会社から頼んだかは問われません。助成金の内容の説明や、人員削減に触れない再就職支援の紹介は含まれません。
再就職が決まらなければ、委託費は出ませんか?
出ません。この助成金は、対象者が助成対象期限までに雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として再就職して、はじめて支給されます。期限は離職の翌日から6か月、45歳以上は9か月です。委託費は事業主の負担になるので、契約の前に報酬の支払い条件を紹介事業者と確かめておくと安心です。
特例区分とはどんな仕組みですか?
助成割合が高くなる区分です。紹介事業者との契約に、委託開始時の支払いが総額の2分の1未満、訓練費用の事業主負担、良い再就職のときの5%以上の上乗せ払いを入れます。そのうえで、期間の定めのない雇用(パートを除く)で賃金が離職時の8割以上の再就職を実現すると使えます。契約の内容を事前に決める必要があります。
離職時の賃金と再就職先の賃金は、どう比べますか?
特例区分で比べます。離職前の6か月に支払われた賃金の総額を6で割った額が、離職時の平均賃金です。基本給と毎月決まって支払われる手当は入り、臨時の業績手当と3か月を超える期間ごとの賞与は入りません。再就職先は、雇入れ時の基本給や手当など毎月決まって支払われる金額です。この割合が8割以上であることが条件です。
45歳以上かどうかは、いつの年齢で決まりますか?
再就職援助計画の認定日、または求職活動支援基本計画書の提出日の時点の年齢で決まります。再就職した日や離職した日ではありません。同じ会社の離職者でも、年齢によって割合と期限(6か月か9か月か)が分かれます。45歳以上は割合が高く、期限も3か月長くなります。年齢は離職者ごとに数え、計画を出す前に一覧にしておくと、見込みの助成額も計算しやすくなります。
申請の期限はいつですか?
支給申請は、対象者の再就職日が属する月の末日の翌日から2か月以内です。たとえば4月10日に再就職したなら、5月1日から2か月以内になります。複数人をまとめて申請するときは、最後に再就職した人の日付で数えます。申請は各月に1回までです。期限を過ぎると受け付けられないので、再就職の報告を受けた時点で日付を控えておきます。
1年度に何人分まで支給されますか?
1年度に1事業所あたり500人分までです。厚労省のページにも、1年度1事業所あたり500人を限度とすると書かれています。数えるのは雇用保険の適用事業所ごとで、人数は支給の対象になった人の数です。大規模な人員削減で500人を超える見込みなら、超える分の扱いを労働局に確かめてください。
紹介事業者はどんな事業者でもよいですか?
職業安定法に基づく有料職業紹介事業者で、この助成金のために国が定める条件に同意し、標識を事務所の見やすい場所に掲示している事業者に限ります。無料の職業紹介事業者は含まれません。また、再就職先が紹介事業者や、その事業者と資本的・経済的・組織的に密接な関係にある会社だった場合は、原則として対象外です。
計画の届出をする前に、委託契約を結んでしまいました。
原則として、届出の前に結んだ契約は支給の対象になりません。計画の認定(提出)のあとに結ぶ決まりだからです。ただし、届出の前に結んだのが基本的・包括的な条件を定めた基本契約で、届出のあとに個別の対象者への支援について個別契約を結んでいれば、個別契約の日が契約日として扱われます。個別契約は、対象者の氏名、委託元の事業所名、紹介事業者名、支援の内容、契約の日を明らかにし、両者の合意がわかる書面にします。どちらにも当たらないときは、申請前に労働局へ事情を伝えて確認してください。
離職してから紹介事業者に委託しても使えますか?
使えません。離職の前に再就職支援を委託しておく必要があります。在職中に契約していれば、実際の支援が離職後に始まっても対象です。再就職は、委託の契約日の翌日以降に実現したものだけが数えられます。契約は、計画の認定を受けたあと、離職の前に結ぶ順番を守ります。契約日の前日の時点で、離職する人が勤続1年以上であることも必要です。
問い合わせ先と電子申請はどこですか?
支給申請の窓口は、事業所の所在地を管轄する労働局とハローワークです。厚労省のページに、窓口の一覧と電子申請のリンクがあります。再就職援助計画の認定はハローワーク、求職活動支援基本計画書の提出は労働局です。様式や記入のマニュアル、FAQもこのページから入手できます。
