「就業規則を整えるだけの補助金」だと思って読み飛ばすと、もったいない制度です。
墨田区の「人材確保・定着支援補助金」は、就業規則等の整備(補助率1/2・上限10万円)に加えて、職場環境整備(補助率1/2・上限100万円)という、金額の桁が違うメニューを持っています。就業規則の整備は、いわばこの補助金の"入口"にあたる位置づけです。
この補助金の概要(早見表)
| 検索項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 墨田区人材確保・定着支援補助金 |
| 対象業種 | 業種指定なし(区内中小企業) |
| 利用目的 | 就業規則の整備、職場環境整備(工事・機器導入・研修等)による人材の確保・定着 |
| 対象地域 | 東京都墨田区(区内に1年以上主たる事業所を有する事業者) |
| 従業員数 | 常時雇用従業員5人以上 |
| 補助上限額 | 就業規則等の整備:10万円/職場環境整備:100万円 |
| 補助率 | いずれも2分の1 |
| 申請受付 | 令和8年6月1日〜12月21日(月)必着 |
| 公式サイト | https://www.city.sumida.lg.jp/sangyo_jigyosya/sangyo/koyou_syuurou/hojokin_jinzai.html |
※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。
なぜ「就業規則の整備」が入口になっているのか
この補助金には、就業規則等の整備と職場環境整備という、2つのメニューがあります。補助上限額を見ると、10万円と100万円で10倍の差があります。
なぜ、わざわざ2段階の構成にしているのか。公式ページの案内順を見ると、まず就業規則を整え、そのうえで職場環境を整備するという順序が想定されていると読み取れます。理由として考えられるのは、「ルールが整っていない状態で、設備や環境だけを整えても、働きやすさが従業員に伝わりにくい」という発想です。有給休暇の取得ルール、労働時間の管理、諸手当の規定といった土台がないまま、空調を入れ替えたり休憩室を新設したりしても、「会社が本気で働きやすさに投資している」というメッセージが伝わりにくくなります。
公式ページに、この2段階構成の意図そのものが明記されているわけではありません。 ただし、就業規則整備の上限額が低く抑えられている一方、職場環境整備の上限額が突出して高い設計から、「まず土台、次に本丸」という優先順位が透けて見えます。
対象になる事業者・ならない事業者を要件で確認する
対象になるには、次のすべてを満たす必要があります。
- 中小企業であること
- 墨田区内に1年以上、主たる事業所があること
- 前年度の法人都民税(個人事業主は特別区民税)を滞納していないこと
- 常時雇用従業員が5人以上いること
- 暴力団関係者でないこと、風俗営業等に該当しないこと
- 同一の取組で他の公的補助金を利用していないこと
常時雇用従業員5人以上という要件が、実務上の一番のハードルになりやすい点です。たとえば、正社員2人・パート2人・業務委託1人という構成の場合、「常時雇用」に業務委託が含まれるかどうかで、要件を満たすかどうかが変わってきます。
- 対象になる例:正社員4人・パート2人(常時雇用扱い)を雇用する印刷会社が、就業規則を新設したうえで、休憩室のエアコン更新を計画
- 対象になる例:区内で3年営業する飲食店(常時雇用5人)が、シフト管理システムの導入を計画
- 対象外になる例:常時雇用従業員が4人の小規模事業者(5人以上という要件を満たさない)
- 対象外になる例:区内での事業歴が半年の新規開業企業(1年以上という継続要件を満たさない)
職場環境整備100万円は、具体的に何に使えるか
職場環境整備のメニューは、対象経費の幅が広いのが特徴です。工事費、機器購入費、研修費などが対象になります。
- 飲食店:厨房の空調更新と、従業員休憩スペースの新設をあわせて実施
- 製造業の工場:作業負担軽減のための搬送機器導入と、安全衛生に関する研修の実施
- 小売業の店舗:勤怠管理システムの導入と、接客スキル向上研修の実施
上限100万円・補助率1/2ということは、対象経費200万円で上限に到達する計算になります。それ以上投資しても補助額は増えないため、200万円という水準を一つの目安に、投資規模を検討するとよいでしょう。
なお、令和8年度は熱中症対策に特化した特別メニューも案内されています。
申請の流れと実績報告の締切
申請の流れは次のとおりです。
- すみだビジネスサポートセンターでの事前確認
- 必要書類の提出(令和8年6月1日〜12月21日必着)
- 交付決定通知書の受領
- 事業の実施:就業規則整備や職場環境整備工事の着手
- 実績報告書の提出:提出期限は令和9年2月26日
- 額確定通知書の受領・補助金の支払い
受付は12月21日までですが、実績報告の提出期限は令和9年2月26日と、その後2か月程度しか猶予がありません。工事を伴う職場環境整備の場合、着手から完了・実績報告までのスケジュールを、申請の段階から逆算しておく必要があります。
似た「人材確保」補助金との設計思想の違い
「人材確保・定着」を掲げる補助金は多くの自治体にありますが、支援の入り口はそれぞれ違います。
江東区の「奨学金返還支援事業補助金」は、従業員個人の奨学金返還負担に直接アプローチする設計です。対象業種も建設・製造・運輸・情報通信の4業種に絞られています。
豊中市の「人材確保促進補助金」は、就業規則整備・研修・ものづくり人材育成・副業人材活用という4つの選択肢から選べる設計です。
墨田区のこの補助金は、就業規則整備から職場環境整備へと、段階的に投資規模を引き上げていく設計だといえます。同じ「人材確保・定着」でも、江東区は個人の負担軽減、豊中市は選択肢の広さ、墨田区は段階的な投資という、まったく違う切り口で同じ課題に向き合っています。
じつは、「職場環境整備」の対象経費として何が認められるかは、はっきり白黒つくものばかりではありません。同じ什器の入れ替えでも、従業員の働きやすさに資する投資として位置づけるかどうかで、扱いが変わることがあります。この考え方は、GRANTOS公式LINEの登録者限定ページで、人材確保等支援助成金の要件充足の考え方とあわせて紹介しています。
よくある質問
就業規則の整備をせず、いきなり職場環境整備だけ申請できますか?
公式ページの案内順からは、就業規則整備を先に行うことが想定されていると読み取れますが、職場環境整備単独での申請可否を明確に断定する記載までは確認できませんでした。申請前にすみだビジネスサポートセンターへ確認することをおすすめします。
常時雇用従業員5人未満の事業者は対象になりませんか?
対象外になります。常時雇用従業員が5人以上という要件が明記されています。パート・業務委託の数え方に迷う場合は、事前確認の段階で相談しておくと安心です。
職場環境整備で対象経費200万円を超える投資をした場合、超えた分はどうなりますか?
補助されるのは対象経費の2分の1かつ上限100万円までです。上限を超える部分は自己負担になります。
免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。補助額・補助率・対象要件・受付状況は変更される場合があるため、申請前に必ず墨田区の公式ページおよび最新の募集要項で内容をご確認ください。
出典:
補助金の概要早見表(暫定・subsidiesマスタ未登録)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象地域 | 東京都墨田区(区内1年以上事業所を有する事業者) |
| 対象業種 | 業種指定なし |
| 利用目的 | 就業規則の整備、職場環境整備による人材の確保・定着 |
| 対象者規模 | 常時雇用従業員5人以上の中小企業 |
| 補助上限額 | 就業規則等の整備:10万円/職場環境整備:100万円 |
| 補助率 | いずれも2分の1 |
| 申請受付期間 | 令和8年6月1日〜12月21日必着 |
| 公式サイト | https://www.city.sumida.lg.jp/sangyo_jigyosya/sangyo/koyou_syuurou/hojokin_jinzai.html |
常時雇用従業員のカウント方法や、職場環境整備の対象経費の範囲など、実務の進め方に迷う場合は専門家に相談するのも一つの手です。
