就農希望者を雇えば、誰でもこの資金の対象になるのか——結論から言うと、お金を受け取るのは雇う側の農業法人等です。雇われる就農希望者本人には直接入りません。ここを取り違えると、「自分(新規就農者)がもらえる資金」だと勘違いしたまま話が進んでしまいます。
雇用就農資金は、50歳未満の就農希望者を新たに雇用し、実践研修を行う農業法人等に対して、農林水産省が交付する資金です。窓口は一般社団法人全国農業会議所(全国新規就農相談センター)が担っています。
雇用就農資金の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業者(農業法人等) |
| 制度名 | 雇用就農資金(雇用就農者育成・独立支援タイプ、新法人設立支援タイプ) |
| 対象業種 | 農業(法人経営体) |
| 利用目的 | 人材確保・育成(新規就農者の雇用・実践研修) |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 規定なし(新たに雇用する就農希望者が50歳未満であること) |
| 補助上限額 | 育成・独立支援タイプ=年間最大60万円(月5万円)×最長4年間、3人目以降は年間最大20万円/新法人設立支援タイプ=1〜2年目は年間最大120万円(月10万円)、3〜4年目は年間最大60万円(月5万円)。障がい者等の雇用は各年最大15万円加算 |
| 補助率 | 対象経費への率ではなく、雇用人数・年数に応じた定額助成 |
| 申請受付 | 令和8年度第2回は6月18日〜7月22日で終了。第3回は10月22日〜11月25日を予定(変更の可能性あり) |
| 公式サイト | https://www.be-farmer.jp/farmer/employment_fund/original/ |
図: 雇用就農資金の全体像。2つのタイプで金額・年数が異なります
2つのタイプ、何が違うのか
雇用就農資金には2つのタイプがあります。どちらも「農業法人等が就農希望者を雇う」点は同じですが、目的が違います。
- 雇用就農者育成・独立支援タイプ:就農希望者を雇用し、将来の就農や独立に必要な実践研修を行う場合。年間最大60万円(月5万円)を最長4年間
- 新法人設立支援タイプ:新たな農業法人の設立を目指す就農希望者を雇用し、経営に必要な技術・ノウハウを習得させる場合。1〜2年目は年間最大120万円(月10万円)、3〜4年目は年間最大60万円(月5万円)
新法人設立支援タイプは、独立・育成タイプの2倍の月額で始まります。ただし対象になるのは「新しい法人を立ち上げる」ことを前提にした雇用に限られ、単に人手が欲しいだけの雇用は育成・独立支援タイプの扱いになります。
対象になる/ならないの線引き
同じ「就農希望者を雇う」でも、対象になるかどうかは次のように分かれます。
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| 50歳未満の就農希望者を新たに雇用し、実践研修を行う農業法人等 | 就農希望者本人が直接受け取る(本人には資金が入りません) |
| 新たな農業法人の設立に向けて人材を雇用・研修する農業法人等 | すでに雇用している既存の従業員(新規雇用でない) |
| 障がい者・生活困窮者・刑務所出所者等を雇用する場合(加算あり) | 原則50歳以上の人材(対象外) |
なぜこの線引きになるのか。この資金の目的は「雇う側(農業法人等)の人材育成コストを下げ、新規就農者の受け皿を増やすこと」にあります。本人にお金が入る制度ではないという点は、名前だけを見ると誤解しやすいところです。
よくある誤解:似た名前の「本人向け」制度と混同しやすい
新規就農の資金というと、就農者本人が受け取る「経営開始資金」(旧・農業次世代人材投資資金の経営開始型に相当する制度)を思い浮かべる方も多いはずです。雇用就農資金と経営開始資金は別の制度で、受け取る側がまったく違います。
- 雇用就農資金:雇う側(農業法人等)が対象。就農希望者を雇用するコストを助成
- 経営開始資金(本人向け制度):就農する本人が対象。独立自営で新規就農する人の生活資金を助成
自分が「これから独立して農業を始めたい個人」なのか、「就農希望者を雇いたい法人」なのかで、調べるべき制度が変わります。求人・雇用を考えている農業法人の方は雇用就農資金、独立就農を目指す個人の方は別の制度()を探すのが正しい入り口です。
申請の流れと窓口
申請は、農業法人等が所在する都道府県の農業会議等、または一般社団法人全国農業会議所(全国新規就農相談センター)が窓口です。募集は年に複数回(令和8年度は第1回・第2回・第3回)実施されており、回によって受付期間が短いため、雇用を計画している時期から逆算して早めに窓口へ相談するのが安全です。
よくある質問
就農希望者本人が直接申請できますか?
できません。この資金の申請者は「農業法人等」であり、就農希望者を雇用して研修を行う法人・団体側が申請します。就農希望者本人がお金を直接受け取る制度ではない点が、後述する「経営開始資金」との大きな違いです。
経営開始資金とは何が違いますか?
雇用就農資金は「雇う側(農業法人等)」を支援する制度で、経営開始資金は「就農する本人」を支援する制度です。独立・自営で新規就農する人が生活費等に充てる資金を必要とする場合は経営開始資金、法人に雇われて研修を受ける場合は雇用就農資金と、対象者が異なります。
パート・アルバイトとして雇用した場合も対象になりますか?
公式の募集要領には正社員としての雇用契約が前提とされており、パート・アルバイト雇用が対象になるという明記は見当たりません。雇用形態に不安がある場合は、全国新規就農相談センターまたは都道府県の農業会議に事前確認することをおすすめします。
50歳以上の人を雇用した場合はどうなりますか?
原則として対象外です。対象となる就農希望者は「採用時点で50歳未満」であることが条件のひとつとして明記されています。年齢要件は基本条件のため、49歳と50歳の境界にあたる場合は採用時点の年齢で厳密に判定される点に注意してください。
すでに雇用している既存の従業員を対象にできますか?
できません。この資金は「新たに雇用する」就農希望者が対象です。また採用から4ヶ月以上12ヶ月未満であることや、過去の農業就業期間が5年以内であることなど、就農経験が浅い人材を対象とする条件が設けられています。
新法人設立支援タイプは、法人がまだ設立されていない段階でも申請できますか?
新法人設立支援タイプは、新たな農業法人の設立を前提とした雇用・研修を対象にしています。設立前のどの段階から申請できるかという具体的な時期の要件は、公式ページの記載だけでは判断できないため、全国新規就農相談センターまたは都道府県の農業会議に事前相談することをおすすめします。
障がい者を雇用した場合、支給額はどう変わりますか?
各タイプとも、障がい者等の雇用については年間最大15万円(月額1.25万円相当)の加算があります。あわせて、障がい者を雇用する場合は年間の就業時間要件が週20時間以上に緩和されている点も一般雇用との違いです。
家族を雇用した場合も対象になりますか?
対象外です。募集要領では、就農希望者が農業法人等の代表者の3親等以内の親族でないことが条件として挙げられています。親族雇用による研修は、この資金の対象範囲から外れます。
すでに何年か農業をしている人を雇用しても対象になりますか?
過去の農業就業期間が通算5年を超える場合は対象外になる可能性が高いです。対象となる就農希望者は「過去の農業就業期間が5年以内」であることが条件のひとつとされており、就農経験の浅い人材の育成を目的とした制度だからです。
途中で研修をやめた場合、受け取った資金を返す必要がありますか?
事業実施期間が3ヶ月未満で終了した場合は助成金が交付されない扱いとなっています。また、事業実施中に要件を満たさなくなった場合は中止届の提出が必要です。返還が発生する具体的な条件については、募集要領や交付決定時の説明で必ず確認してください。
応募すれば必ず採択されますか?
必ず採択されるわけではありません。雇用就農者育成・独立支援タイプでは、同一年度内で採択される人数に上限(同一法人につき5人、3人目以降は減額)が設けられています。予算や審査状況によっては希望どおりに採択されない場合があります。
令和8年度第3回の募集期間はいつですか?
10月22日〜11月25日を予定していると案内されていますが、正式な公募要領は農林水産省または全国新規就農相談センターのページで別途公表されます。 申請を予定している場合は、締切間際ではなく早めに問い合わせることをおすすめします。
申請はどこにすればよいですか?オンラインですか、郵送ですか?
タイプによって窓口が異なります。雇用就農者育成・独立支援タイプは専用の応募フォームからのオンライン申請、新法人設立支援タイプは指定様式を都道府県の農業会議へメール送付する形が案内されています。詳細は全国新規就農相談センターの募集要領で確認してください。
労働環境の整備について、具体的に何をすればよいですか?
農業法人等の要件として、労働環境整備に関する取り組みを2項目以上実施していることが求められています。具体的な取り組み項目の一覧は募集要領・事業実施マニュアルに定められているため、申請前に必ず確認してください。
雇用保険や労災保険への加入は必須ですか?
必須です。農業法人等の要件として、新たに雇用する就農希望者を雇用保険・労災保険に加入させることが明記されています。未加入のまま研修を開始すると要件不備になる可能性があるため、雇用契約と同時に加入手続きを進めてください。
