雇用就農資金の募集は、今年度3回あります。残るのは第3回です。募集期間は2026年10月22日から12月4日までです。当初の11月25日から延長されました。応募状況によっては、さらに変わることがあります。
この資金を受け取るのは、就農希望者を雇う農業法人等の側です。雇われる本人には入りません。なお本稿の時点で、第3回の募集要領は公式ページに出ていません。要件と金額は、第2回の募集要領(公式ページにサンプルとして載っているもの)で確かめました。
雇用就農資金の要点まとめ
正式名:雇用就農資金(雇用就農者育成・独立支援タイプ、新法人設立支援タイプ)
だれが
- 申請者
- 事業者(農業法人、農業者、農業支援サービス事業者など)
- 対象業種
- 農業
- 利用目的
- 就農希望者を雇い、実践研修を行う費用の助成
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 規定なし
いくら
- 補助上限額
- 年間120万円(新法人設立支援の1〜2年目)。育成・独立支援は年60万円
- 補助率
- 定額(月5万円または月10万円)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 第3回 2026年10月22日〜2026年12月4日
- 事業の完了
- 助成期間は4年間。第3回の支援開始は2027年2月1日から
うちの農業法人は対象になる?
雇う側(農業法人等)と、雇われる人の両方に条件があります。第2回の募集要領では、次のとおりでした。
- 農畜産物の販売収入がある
- おおむね年間を通じて農業を営む
- 農業経験5年以上の指導者を置ける
- 雇う人が採用時点で50歳未満
- 支援開始時に採用後4か月以上12か月未満
- 期間の定めのない正社員で雇っている
- 雇用保険と労災保険に入れている
- 週の所定労働時間が平均35時間以上
- 地域計画に担い手として載る見込み
研修指導者は役員か従業員です。独立が前提なら、正社員でなく従業員の契約でも構いません。法人は厚生年金保険と健康保険にも入れます。労働時間は年間平均で見て、障がい者は週20時間以上です。地域計画は、市町村が定める10年後の地域農業の将来像のことで、農業を担う者として位置づけられているか、今後位置づけられる見込みであることが原則の条件です。
ほかに、有給休暇の付与、就業規則への休憩と休日の規定、出勤簿・賃金台帳・労働者名簿の整備、働き方改革の実行計画づくりも要件です。代表者等は、事業説明会を含む指導者養成研修会に出席し、雇う人も説明会に出ます。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 就農希望者本人が受け取るつもり
- ✕ 代表者の3親等以内の親族を雇う
- ✕ 雇う人の農業就業期間が5年超
- ✕ 就農準備資金などで研修した人
- ✕ 過去の受け入れ者の定着が半分未満
- ✕ 過去の不正受給や返還未済がある
- ✕ 対象外の在留資格の外国人を雇う
資金を受け取るのは雇う法人等です。親族には集落営農組織などの例外があり、農業就業期間にはパートやアルバイトの期間も含みます。研修の資金には農業次世代人材投資資金(準備型)なども含みます。定着は、過去5年間に受け入れた人が2人以上いて、農業を続けている人が半分に満たないと対象外です。雇用や研修に関する法令違反や事業の不正で取消・不採択を受けた過去があっても、是正から1年が過ぎていれば対象外にはなりません。外国人は、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、特別永住者の在留資格が要ります。経営開始資金などの交付期間中の経営体も対象外です。
採用してから、あとで申請する順番の制度です。第2回は、2025年10月1日から2026年6月1日までに採用した人が対象でした。第3回の範囲は、要領が出るまで分かりません。
いくらもらえる?
助成額は定額です。雇う人1人あたり月額で決まり、かかった経費の額は関係しません。助成の対象になる期間は、2タイプとも4年間です。
| 区分 | 助成額 | 年額 |
|---|---|---|
| 雇用就農者育成・独立支援タイプ | 月5万円 | 年60万円 |
| 新法人設立支援タイプ(1〜24か月目) | 月10万円 | 年120万円 |
| 新法人設立支援タイプ(25か月目以降) | 月5万円 | 年60万円 |
| 障がい者・生活困窮者・刑務所出所者等を雇う場合の加算 | 月1万2,500円 | 年15万円 |
計算例です。第2回の要領の金額で試算しています。
- 育成・独立支援タイプで1人を4年間:5万円 × 48か月 = 240万円
- 新法人設立支援タイプで1人を4年間:10万円 × 24か月 + 5万円 × 24か月 = 360万円(3〜4年目は、進捗状況報告の審査を通った場合)
- 同じ年度に育成・独立支援タイプで3人が採択(1年分):60万円 × 2人 + 20万円 = 140万円
- 障がい者を雇う場合の加算(1年分):1万2,500円 × 12か月 = 15万円
3人目以降は、年間の助成額が最大20万円に下がります。1〜2人目か3人目以降かは、募集回の早い順と、申請書に書く優先順位で決まり、採択後に変えられません。同じ年度に採択される人数は、1つの経営体で5人までです。ただし新法人設立支援タイプの対象者は、この5人に数えません。
事業の実施期間が3か月に満たないと、助成金は交付されません。予算の執行状況によっては、減額して払われることもあります。
2つのタイプは何が違う?
雇用就農者育成・独立支援タイプは、雇った人を自社で育て、将来の独立も視野に入れる研修です。新法人設立支援タイプは、研修が終わって1年以内に新しい農業法人を立ち上げる人を雇って育てる研修です。自分の経営を後継者に譲りたい農業者が、その後継者を雇って育てる場合も対象になります。経営を譲る意志は、申請書で確かめられます。
新法人設立支援タイプは、最初の2年の月額が2倍になります。そのかわり、申請書に新法人の設立計画(設立の時期、5年後までの経営ビジョン、生産基盤の確保など)を書きます。支援の2年目が終わる時点で進捗状況報告書を出し、3・4年目は毎年の審査で続けるかが決まります。自社で長く働いてもらう前提なら、育成・独立支援タイプを選びます。
同じ要領で募集している「次世代経営者育成タイプ」は、雇った人ではなく、職員を次の経営者に育てる派遣研修への支援です。この記事では扱いません。
申請の流れ
第2回の要領にもとづく流れです。第3回で変わる点があれば、要領が出てから確かめてください。
- 研修計画と書類をそろえる(農業法人等。第2回の要領では、事業申請書、履歴書、「みどりチェック」シートなど)
- 応募する(農業法人等→全国農業会議所のホームページの応募フォーム、または就業場所のある都道府県の農業会議等。募集期間の最終日の午後5時まで)
- 審査を待つ(事業推進委員会が総合的に審査して、予算の範囲内で採択する。第2回は9月下旬を目途に結果を通知)
- 採択後は期間ごとに交付申請をする(農業法人等→全国農業会議所。期日までに出さないと採択が取り消される)
- 事業の状況を確認してもらう(都道府県農業会議等が現地を確認し、そのうえで助成金が払われる)
育成・独立支援タイプは、応募フォームから申請します。フォームが難しいときは、メールか郵送で都道府県の農業会議等に出せます。新法人設立支援タイプは、都道府県の農業会議等に原則メールで出します。
必要な書類
準備できた 0 / 7
様式は、公式ページの募集要領・申請様式のほか、都道府県の農業会議等でも手に入ります。様式第1号はチェックリストです。雇う人の履歴書は空白期間がないように書いて写真を付け、研修指導者の履歴書(参考様式②)は指導者全員分を出します。
みどりチェックは、農業経営体向けか畜産経営体向けのどちらかを使います。農地を使わない法人は、耕作証明書の代わりに決算書などで農業を営む事業体だと示します。就業規則は、常時10人以上の従業員がいる法人は必須です。
障がい者を雇うときは、障害者手帳などの写しも要ります。外国人を雇うときは在留カードの写しです。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 研修計画どおりに研修していない:著しく計画に沿っていない、または効果が認められないときは、助成金が交付されません。
- 法人の都合で研修を中止した:すでに払われた分は、加算金つきで返すよう求められます。災害などやむを得ない事情は除かれます。
- 雇った人が経営側に回った:役員に登用された、または農業経営を始めた場合も、交付されません。
- 3・4年目の継続審査で不適切とされた(新法人設立支援タイプ):進捗状況報告書にもとづく審査で、以降の支援が中止されます。
- 要件を満たさなくなった:たとえば採択後に代表者が変わり、新しい代表者が雇った人の親族で同居している場合です。採択が取り消されます。
国の他の助成との関係
雇った人の人件費や研修に対して、国の助成や雇用奨励金をすでに受けていると、重なる期間は対象になりません。受ける予定があるときは、事前に都道府県の農業会議等に相談します。
募集要領には、受け入れた人の就農状況について、事業期間中・終了直後・終了1年後の3回の調査に協力することも書かれています。採択された経営体は、経営体名や研修計画が全国農業会議所のサイトで公開されます。
よくある質問
就農希望者本人は申請できますか?
できません。申請するのは、就農希望者を雇って研修を行う農業法人等です。本人が受け取る資金ではありません。就農準備資金や経営開始資金のような、本人向けの資金は別の制度です。就農準備資金などを受けて研修した人を雇っても、この資金の対象にはなりません。自分が雇う側か、雇われる側かで、調べる制度が変わります。募集要領は、応募する法人等に向けて書かれています。
第3回の募集期間はいつですか?
2026年10月22日から12月4日までです。当初は11月25日でしたが、延長されました。公式ページには「募集期間は応募状況により変更する場合があります」と書かれています。提出期限は、第2回の要領では募集期間の最終日の午後5時でした。第3回の募集要領は、本稿の時点で公開されていません。公式ページに載っているのは第2回の募集要領のサンプルです。10月22日が近づいたら、第3回の要領と様式を確かめてください。
パートやアルバイトで雇った人は対象になりますか?
対象になりません。募集要領では、正社員として期間の定めのない雇用契約を結ぶことが条件です。ただし支援が終わったあとに独立することを前提とする人は、従業員としての雇用契約で認められます。どちらも、週の所定労働時間が年間平均で35時間以上必要です。育児や介護で短時間勤務のときは20時間以上、障がい者は20時間以上で認められます。
50歳以上の人を雇った場合は対象になりますか?
原則として対象外です。年齢の条件は、採用日の時点で50歳未満であることです。申請の時点や支援開始の時点の年齢ではありません。たとえば49歳で採用した人は、その後に50歳になっても対象です。要領には「原則」50歳未満とあります。例外が認められる場合は、要領に書かれていません。境目の年齢の人は、申請の前に農業会議等で確かめてください。
すでに働いている従業員は対象になりますか?
雇ってからの期間が合えば対象になります。条件は、支援を始める時点で、採用から4か月以上12か月未満が過ぎていることです。第2回は、2025年10月1日から2026年6月1日までに採用した人が対象でした。長く働いている人は、12か月を超えるので対象になりません。第3回の採用日の範囲は、募集要領が出たら確かめてください。採用日は、勤務を開始した日です。
家族や親族を雇った場合はどうなりますか?
原則として対象外です。雇う人が、農業法人等の代表者の3親等以内の親族であってはいけません。例外が2つあります。集落営農組織で、代表者と同居していない人を採用する場合と、親族以外の雇用保険の被保険者がいる事業所で、代表者と同居しておらず、ほかの従業員と同じ条件で採用する場合です。親族である人を雇うときは、ほかの従業員の雇用契約書なども出します。
農業経験が長い人は対象になりますか?
過去の農業就業期間が、正社員の採用日の時点で5年以内の人が対象です。パートや期間雇用、アルバイトの期間も、農業の研修を受けた期間も、自営で農業をした期間も合計します。農業高校や農業大学校で学んだ期間は含めません。5年以内でも、就業にあたって研修が必要な人かどうかを、事業推進委員会が確かめます。農業経験が長い人は、この点で外れやすくなります。
新法人設立支援タイプは、法人が未設立でも申請できますか?
申請するのは、雇う側の農業法人等です。雇う人に、研修が終わって1年以内に新しい農業法人を立ち上げて独立する意志があることが条件です。新法人が未設立でも申請できます。申請書には、新法人の設立計画を書きます。設立の予定時期、設立5年後までの目標、生産基盤や販路の確保の計画などです。研修の途中に、進捗状況の報告も求められます。
障がい者を雇うと、助成額はどう変わりますか?
どちらのタイプも、月1万2,500円(年15万円)が加算されます。障がい者のほか、生活困窮者や刑務所出所者等を雇う場合も同じです。新法人設立支援タイプなら、24か月目までは月11万2,500円、25か月目以降は月6万2,500円になります。障がい者を雇う場合は、週の所定労働時間も20時間以上で認められます。手帳などの写しを申請書類に付けます。
研修の途中でやめたら、資金を返す必要がありますか?
助成金は、事業の実施期間が3か月に満たないと交付されません。それより長く続けたあとの返還は、理由で分かれます。法人の都合で研修を中止したり、研修計画に著しく沿っていなかったりすると、払われた分の返還を、加算金つきで求められます。災害などのやむを得ない事情や、雇った人の責任で続けられなくなった場合は除かれます。要件を満たさなくなったときは、速やかに中止届を出します。
応募すれば必ず採択されますか?
必ず採択されるわけではありません。募集要領には、採択は予算の範囲内で行うとあります。要件を満たす人の数が予算を超えたときは、審査会が優先順位をつけます。要件を満たしていても、不採択になる場合があると書かれています。審査の経過や結果についての問い合わせには、答えてもらえません。第2回の要領では、審査結果は応募から約2か月後の9月下旬に通知される予定でした。
申請はどこにすればよいですか?
育成・独立支援タイプは、公式ページの応募申請フォームです。ウェブ上で申請が終わります。新法人設立支援タイプは、都道府県の農業会議等に、原則メールで出します。第2回の要領では、新法人設立支援タイプの受付は土日祝日を除くとされていました。どちらも、申請する法人の所在地と就業場所が違うときは、就業場所のある都道府県の農業会議等に出します。窓口の連絡先は、公式ページと募集要領に一覧があります。フォームが難しいときは、メールか郵送でも出せます。
労働環境の整備として、何をすればよいですか?
第2回の要領では、決められた項目のうち2つ以上に、すでに取り組んでいるか、支援開始後1年以内に取り組むことが条件でした。年間の総労働時間を2,445時間以内と規則に書く、育児・介護休業を規則に書く、人材育成と評価の仕組みを整える、といった項目です。期限までに取り組まないと、採択が取り消されます。第3回の項目は、要領が出たら確かめてください。
