この助成金で外せないのは、金額より順番です。賃金を上げるのも、設備を買うのも、交付決定のあと。先に動いた分は対象になりません。
賃金の引上げは、申請より後に行います。賃上げを済ませてから申請する進め方は、令和8年度はできません。締切は都道府県ごとに違い、9月末で終わる県もあります。
業務改善助成金の要点まとめ
正式名:業務改善助成金(令和8年度)
だれが
- 申請者
- 事業者(労働者を雇う中小企業・小規模事業者)
- 対象業種
- 全業種
- 利用目的
- 賃上げと設備投資(機器の導入・コンサルなど)
- 対象地域
- 全国(事業場を管轄する労働局に申請)
- 従業員数
- 規定なし(業種ごとに中小企業の上限あり)
いくら
- 補助上限額
- 最大600万円(コース・人数・事業場規模で変わる)
- 補助率
- 3/4〜4/5(賃上げ前の事業場内最低賃金で変わる)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年9月1日〜11月30日(県ごとに発効日の前日で早まる)
- 事業の完了
- 交付決定年度の1月31日まで
- 公式サイト
- 厚生労働省「業務改善助成金」
うちの事業場は対象になる?
次のすべてに当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 労働者を雇っていない
- ✕ 賃上げを済ませてからの申請
- ✕ 同じ事業場で年度内に2回目の申請
事業場内最低賃金は、事業場で最も低い時間給です。ここでは、雇入れ後6か月を過ぎた労働者のうち最も低い時給を指します。令和8年度の地域別最低賃金(都道府県ごとの最低賃金)を下回っている事業場が対象です。すでに現行の地域別最低賃金を下回っている事業場は、申請できません。現行の額以上で、改定後の額に届かない範囲が対象です。
中小企業事業者は、業種ごとに資本金か労働者数の上限があります。製造業その他は資本金3億円以下または労働者300人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下、小売業は5,000万円以下または50人以下です。どちらか一方を満たせば該当します。
ただし、大企業が株式の2分の1以上を持つ会社などは、みなし大企業として対象外です。直近3年の課税所得の年平均が15億円を超える会社も外れます。
引き上げる労働者は、雇用保険の被保険者で、週の所定労働時間が20時間以上の人です。申請前6か月に労働者を解雇した場合や、賃金を下げた場合などは、交付されません。労働保険に入っていない、または保険料を滞納している場合や、申請前1年以内に労働基準監督署の是正勧告を受けた場合も、申請できません。
申請は事業場ごとです。工場と事務所があれば、別々に申請します。同じ事業主が複数の事業場で申請するときは、年間の申請額が合計600万円までです。過去にこの助成金を受けた事業場も対象ですが、同じ事業場の申請は年度内1回までです。前回の事業のあとに賃金を下げ、その時の事業場内最低賃金を下回っている場合は対象外です。
いくら戻ってくる?
助成額は、設備投資などの費用に助成率を掛けた額と、上限額を比べて低い方です。1,000円未満は切り捨てます。助成対象経費は、税抜で合計10万円以上が必要です。
助成率は、賃上げ前の事業場内最低賃金で決まります。1,050円未満なら4/5です。1,050円以上なら3/4です。
上限額は、コース・引き上げる労働者数・事業場の規模で決まります。単位は万円です。
| コース | 引き上げる人数 | 事業場規模30人未満 | それ以外 |
|---|---|---|---|
| 50円 | 1人 | 40 | 30 |
| 50円 | 2〜3人 | 70 | 40 |
| 50円 | 4〜5人 | 70 | 70 |
| 50円 | 6〜7人 | 90 | 90 |
| 50円 | 8人以上 | 110 | 110 |
| 50円 | 10人以上※ | 130 | 130 |
| 70円 | 1人 | 50 | 40 |
| 70円 | 2〜3人 | 100 | 50 |
| 70円 | 4〜5人 | 130 | 130 |
| 70円 | 6〜7人 | 180 | 180 |
| 70円 | 8人以上 | 230 | 230 |
| 70円 | 10人以上※ | 300 | 300 |
| 90円 | 1人 | 100 | 90 |
| 90円 | 2〜3人 | 240 | 150 |
| 90円 | 4〜5人 | 270 | 270 |
| 90円 | 6〜7人 | 360 | 360 |
| 90円 | 8人以上 | 450 | 450 |
| 90円 | 10人以上※ | 600 | 600 |
※10人以上の区分は、特例事業者が10人以上の賃金を引き上げるときだけ使えます。特例事業者は、事業場内最低賃金が1,050円未満の事業者と、物価高騰で利益率が下がった事業者です。後者は、申請前6か月の平均の利益率(売上高総利益率か売上高営業利益率)が、前年同期より3%ポイント以上下がっていることが条件です。
計算例です。
- 定食店(4人・30人未満・70円コース)が券売機と食洗機に170万円:170万円 × 4/5 = 136万円 → 上限の130万円
- 金属加工業(8人・90円コース)が溶接ロボットに600万円:600万円 × 3/4 = 450万円(上限の450万円と同額)
- 雑貨店(2人・30人未満・50円コース)がPOSレジに80万円:80万円 × 4/5 = 64万円(上限70万円に届かない)
定食店は事業場内最低賃金1,020円から1,090円へ、金属加工業は1,060円から1,150円へ、雑貨店は1,015円から1,065円へ上げる想定です。
最大の600万円に届くのは、90円コースで10人以上の賃金を上げる特例事業者だけです。助成率が4/5なら750万円以上、3/4なら800万円以上の設備投資が要ります。
何に使える?
対象にならないものを先に確認します。
- 単なる経費削減が目的の費用(LED電球への交換、通信プランの変更、資料作成の外注など)
- 快適化が目的の職場環境の改善(動線確保のレイアウト変更、エアコン設置、内装工事、机・椅子の増設、空調服など)
- 通常の事業活動の経費(事務所の家賃、光熱費、従業員の賃金、消耗品、汎用の事務機器)
- 広告宣伝費・販売促進費(パンフレット、動画、展示会の出展、セミナー、市場調査、ランディングページなど)
- 建物や構築物の取得費、太陽光などの発電設備、船舶・航空機の購入費・修理費
- 娯楽性が高く、生産性向上に直接つながらない設備(全自動麻雀機、カラオケ機器、ゲーム機など)
- 法令で義務づけられた整備の費用と、事業に必須の資格の取得費
- 特種用途自動車(ナンバーの頭が8の車)以外の自動車
- パソコン・スマートフォン・タブレットの新規導入(物価高騰で利益率が下がった特例事業者は対象)
- 交付決定の前に発生した費用と、日本国外で実施する事業
POSシステムや会計給与システムのように、特定の業務専用のシステムを動かすために入れる端末は、対象になる場合があります。
対象になるものです。
- 機械装置等購入費(機器・設備類の購入・製作・改良。据付の造作費を含む)
- 経営コンサルティング(中小企業診断士や社会保険労務士などの国家資格者か、金融機関によるもの。人員削減や労働条件の引下げを内容とするものは除く)
- 調査会社やシステム開発会社への委託費(就業規則の作成・改正と賃金制度の整備は除く)
- 外部講師による従業員向けの研修・操作研修の謝金(1回10万円まで・5回まで)
- 専門家の旅費、機器のリース料、マニュアルの印刷製本費、資材の購入費
申請の流れ
- 事業場内最低賃金を確かめる(事業者。賃金台帳で、雇入れ後6か月を過ぎた人の最も低い時給を見る)
- コースと人数を決める(事業者。50円・70円・90円のどれか)
- 設備の見積書を2者以上からとる(事業者→販売業者。契約や発注は交付決定のあと)
- 交付申請書を出す(事業者→都道府県労働局。Jグランツでも出せる。期限は発効日の前日か11月30日の早い日)
- 交付決定を待つ(労働局→事業者。申請が届いてから原則3か月以内に通知)
- 賃金を上げ、設備を入れ、代金を払う(事業者。賃金は発効日の前日まで。すべて1月31日まで)
- 実績報告と支給申請を出す(事業者→労働局)
- 審査を受けて支給される(労働局→事業者の口座へ振込)
締切の決まり方は、2つのうち早い方です。ひとつは、申請事業場の都道府県で適用される地域別最低賃金の発効日の前日。もうひとつは2026年11月30日です。たとえば発効日が10月1日の県は、9月30日が期限になります。発効日が12月1日以降の県は、11月30日が上限です。自社の県の発効日は、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で確かめます。
事業完了期限は、納品日・支払完了日・賃金引上げ日のいちばん遅い日で見て、交付決定の年度の1月31日です。やむを得ない理由があれば、理由書を付けて3月31日まで延ばせます。
予算の範囲で交付するため、期間内でも募集が終わることがあります。
必要な書類
準備できた 0 / 4
見積書は2者以上から取ります。賃金台帳は申請前6か月分で、時給が引上げ後の事業場内最低賃金に満たない労働者の分を出します。給与の形態によっては、6か月分より多く求められます。事業場内最低賃金が1,050円未満の賃金要件は、交付申請書の記載で確認されるため、別の書類は要りません。物価高騰の要件で申請するときは、利益率の申出書とその証拠書類(月次の損益計算書など)を付けます。上限額と対象経費の特例のどちらも使わないなら、申出書は要りません。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に設備を入れた:交付決定前に発生した費用は、理由を問わず対象外です。見積をとるのは構いません。契約と発注は、決定のあとにします。
- 賃金を先に上げた、または複数回に分けた:引上げは申請のあとに、1回で行います。引上げ後の額を就業規則などに定める必要もあります。
- 期限までに支払いや引上げが終わらなかった:納品・支払い・賃金引上げのどれかが1月31日を過ぎると対象外です。クレジットカード払いは、1月31日(延長が認められたときはその期限)までに口座から全額引き落とされていることが要ります。信販会社のローンで分割払い中のものも、その日までに完済していなければ対象外です。
- 申請後に解雇や賃金引下げをした:労働者の解雇や、時間当たり賃金の引下げなどがあると交付されません。支払いは振込で、ポイントやギフトカードは認められません。
併用・税金・変更点
同じ経費に、国や自治体の別の補助金を受けている場合は、併給調整の対象になることがあります。
消費税は、助成対象経費から除いて申請するのが基本です。免税事業者や簡易課税事業者などは、含めて申請できます。含めた場合は、確定申告で仕入控除税額が決まったあと、その分を返還します。
令和8年度は、コースが50円・70円・90円の3つに再編されました。助成率の境目も1,050円に変わっています。自動車(特種用途自動車を除く)は助成の対象外になり、引き上げる労働者は雇用保険の被保険者になりました。
よくある質問
助成率は9/10と聞きましたが本当ですか?
令和8年度の助成率は、事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4の2区分です。厚生労働省のリーフレットに9/10の記載はありません。古い年度の記事を見て資金計画を立てると、助成額がずれます。申請の前に、令和8年度の交付要綱と公式ページの助成率を必ず確かめます。
先に賃上げをしてから申請してもいいですか?
できません。賃金の引上げは、交付申請のあとに行います。賃上げを済ませた後の申請は、令和8年度は認められません。設備の導入と支払いも、交付決定のあとです。順番は、計画を立てる、交付申請、交付決定、賃上げと設備導入と支払い、実績報告です。先に動いた分は、取り戻せないので注意します。
締切は11月30日で全国共通ですか?
共通ではありません。締切は、都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日と11月30日のうち、早い方です。発効日が10月1日の県なら9月30日で終わります。発効日が12月1日以降の県は、11月30日が上限になります。自社の県の発効日は、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で調べられます。
従業員が1人でも使えますか?
使えます。雇用保険の被保険者である労働者を1人雇っていれば、その1人分の賃上げから申請できます。上限額は、50円コースで30万円(事業場規模30人未満なら40万円)からです。労働者を雇っていない個人事業主は、対象になりません。1人だけ引き上げる場合、その人が事業場内最低賃金の対象なので、雇入れ後6か月を過ぎ、雇用保険に入っていて、週の所定労働時間が20時間以上の人です。
パートやアルバイトも賃上げの人数に数えられますか?
申請日に雇用保険の被保険者で、週の所定労働時間が20時間以上なら数えられます。雇入れから6か月に満たない人も数えられます。6か月を過ぎている必要があるのは、事業場内最低賃金の対象になる人です。事業場内最低賃金の労働者だけでなく、その人を引き上げた結果、賃金が追い抜かれる労働者も数えられます。ただし、どちらも申請したコースと同額以上の引上げが必要です。
エアコンやLED照明の入替えは対象ですか?
対象外です。LED電球への交換のように単なる経費削減が目的の費用と、エアコン設置のように快適化が目的の職場環境の改善は、対象から除かれます。生産性の向上に直接つながる機器や設備が対象です。判断に迷う設備は、見積を取る前に管轄の労働局に聞くと、申請のやり直しを避けられます。
パソコンやタブレットは対象になりますか?
原則は対象外です。物価高騰で利益率が下がった特例事業者は、新規導入に限って対象になります。利益率は、申請前6か月の平均で、前年同期より3%ポイント以上の低下が条件です。申出書と証拠書類を付けます。POSシステムなど特定業務専用のシステムを動かすための端末は、対象になる場合もあります。
設備の見積は何社からとりますか?
交付申請書には、2者以上の見積書を付けます。契約予定額が10万円未満の場合は、この限りではありません。中古の機械は、古物商の許可を持つ3者以上から、型式や年式を書いた見積をとります。特許などで販売元が限られるときは、その資料を出します。交付決定のあとは、最も安い見積を出した業者と契約します。自社や親会社、子会社などの関連会社、代表者の親族が作った見積書は認められません。見積をとるのは交付決定の前でも構いませんが、契約と発注は決定のあとです。
事業完了期限に間に合わないときはどうなりますか?
期限は、交付決定の年度の1月31日です。納品・支払い・賃金引上げのいちばん遅い日がこの日を過ぎると、対象外になります。納入が遅れそうなど、やむを得ない理由があるときは、あらかじめ理由書を付けて申請すれば、3月31日まで延ばせる場合があります。交付決定のあとに必要になったときも、労働局に相談します。
社会保険労務士に申請を頼めますか?
頼めます。申請事業場の労働者以外の第三者として、社会保険労務士か弁護士を代理人にして申請できます。ただし、見積書を出した業者や、助成対象経費の契約相手は代理人になれません。交付決定の通知は、代理人ではなく申請事業場に届きます。助成金の勧誘を厚生労働省が特定の業者に委託することはないので、勧誘には注意します。
他の補助金と併用できますか?
同じ経費に、国や地方公共団体から同様の補助金などを受けている場合は、併給調整の対象になることがあり、交付されない場合もあります。別の経費で別の制度を使う場合は、各制度の決まりで確認します。申請書には、他の助成金の受給や申請の有無を書く欄があります。併用を考えるときは、先に労働局へ聞きます。
問い合わせ先はどこですか?
業務改善助成金コールセンターです。電話は0120-366-440で、受付は平日の9時から17時までです。申請の受付や個別の相談は、事業場を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が窓口です。電子申請はJグランツを使い、GビズIDプライムが要ります。令和8年度は、事業場の都道府県ごとに申請フォームが違います。
