航空機部品の設備を入れ替えるとき、いつ発注するかで、補助の対象になるかどうかが決まります。交付決定より前の発注は、事前着手の届出が受理されたものを除いて対象外です。
この記事の制度は、次期航空機開発等支援事業のうち、部品加工や特殊工程を担うサプライヤー向けの「サプライチェーン現代化投資支援」です。対象は国内で登記された法人で、補助率は中小企業等が1/2以内、大企業が1/3以内、補助の下限額は2,500万円です。公募は2025年10月31日正午で締め切られました。事前着手届出のJグランツ掲載分も、2026年2月20日15時で終わっています。
次の公募に備える人向けに、確かめる順に並べました。
航空機サプライチェーン現代化投資支援の要点まとめ
正式名:令和7年度「脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(次期航空機開発等支援事業)」サプライチェーン現代化投資支援
だれが
- 申請者
- 事業者(国内で登記された法人。共同申請も可)
- 対象業種
- 航空機部品の加工・特殊工程を担うサプライヤー
- 利用目的
- 高レート生産を見据えた設備投資・生産実証、新工程の認定取得
- 対象地域
- 全国(国内に事業実施場所があること)
- 従業員数
- 規定なし(中小企業等か大企業かで補助率が変わる)
いくら
- 補助上限額
- 上限の定めなし(補助金の下限額は2,500万円)
- 補助率
- 中小企業等は1/2以内、大企業は1/3以内
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年2月16日〜2026年2月20日15時(事前着手届出)
- 事業の完了
- 遅くとも2030年2月28日
自社は対象になる?
次のすべてに当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 個人事業主として申請する
- ✕ 交付決定前に投資を対外発表した
補足を4点書きます。生産時間の削減は、タクトタイム(1個つくる時間)、サイクルタイム、リードタイムのどれか一つの目標で足ります。リードタイムは、自社内だけでなくサプライチェーン全体での削減も認められます。
温室効果ガスの取組は、2022年度のCO2排出量が20万t未満の企業と中小企業は、他の排出削減の取組を出す形で代えられます。中小企業等は、中小企業基本法の中小企業者(業種ごとに資本金と従業員数の上限があり、どちらか一方を満たせば該当)と、一般社団法人・事業協同組合などです。ただし、資本金5億円以上の法人に100%の株式を持たれている会社などは、大企業として扱われます。
航空機部品の認証は、まだ取っていなくても、取得に向けた具体的な計画を示せれば足ります。
申請は、国の補助金申請システム「Jグランツ」だけで受け付けます。利用にはgBizIDプライム(国の電子申請に共通で使うID)が要るため、未取得なら先に取っておく必要があります。
同じ対象に当たる国の別の補助金とは併用できません(防衛生産基盤強化法の特定取組契約などは併用可)。1企業の複数申請も、原則認められません。
発注の順番はどう考える?
この制度でいちばん事故が起きやすいのは、金額よりも順番です。
補助対象になる経費は、原則として交付決定日以降に発注・契約したものです。発注先への内示も、発注とみなされます。設備メーカーに「この機械で進めます」と伝えた時点で、対象から外れるおそれがあります。
例外が事前着手の届出です。事務局が緊急性と必要性を認めて受理すると、受理通知に書かれた「事前着手開始日として認める日」以降の経費が、対象になる場合があります。ただし条件が三つあります。
- 事前着手の開始日は、公募開始日以降の日付になる
- 受理されても、採択されなければ補助金は受けられない
- 相見積などの補助金のルールに沿った発注でなければ、対象にならない
届出が受理されても、採択の約束にはなりません。 届出は、採択される前提で動くための保険ではなく、採択を待つ間の発注を対象に残すための手続きです。
届出の受付は、公募要領ではJグランツの専用画面で、公募の受付期間と同じ2025年9月2日〜10月31日正午とされています。この記事の元になるJグランツの掲載は、2026年2月16日から20日15時までです。2月の枠が何のために設けられたかは、事務局のページに説明がありませんでした。次の公募で届出を使うなら、受付期間を事務局に確かめてください。
いくら補助される?
補助率は、中小企業等が対象経費の1/2以内、大企業が1/3以内です。審査の結果、希望した補助率を下回ることもあります。補助金の下限額は、1企業あたり2,500万円と定められています。上限額は、事務局のQ&Aで「特段の上限額は設定していない」とされ、予算と採択件数を見て決まります。
- 中小企業等が5,000万円の設備投資をする:5,000万円 × 1/2 = 2,500万円(下限額ちょうど)
- 中小企業等が6,000万円の設備投資をする:6,000万円 × 1/2 = 3,000万円
- 大企業が6,000万円の設備投資をする:6,000万円 × 1/3 = 2,000万円(下限額に届かない)
下限額は補助金の額に対するものなので、補助率1/2の中小企業等は、対象経費5,000万円が最低ラインです。事務局のQ&Aでも、中小企業の最低投資額は5,000万円で合っているとされています。大企業は1/3なので、同じ割り算で7,500万円前後です。大企業の数字は公募要領からの計算で、事務局が示した目安ではありません。審査で補助率が希望より下がることもあるため、ぎりぎりの規模では組まないほうが安全です。
共同申請では、中小企業等どうしなら中小企業等の率、大企業が一社でも入れば大企業の率です。リース会社が大企業に当たっても、中小企業等とのリース共同申請は中小企業等の率が適用されます。みなし大企業(大企業が株式の半数以上を持つ会社など)は、大企業として扱われます。
補助金は事業が終わったあとの精算払いです。消費税等は、原則として補助対象経費から除いて申請します。
何に使える?
対象にならないものを先に挙げます。
- 土地の取得費用
- 既存の建物・設備の撤去費と、既存設備の移設費
- 事業をしなくても必要な、通常の設備更新
- 汎用性のあるもの(コンピュータ、プリンタなど)の購入費
- 価格の妥当性が分からない中古品
- 家賃、敷金、光熱水費、通信費
- 交付決定日より前に発注した経費(事前着手の受理分を除く)
既存設備の撤去費が対象外なので、古い機械を入れ替える投資では、撤去の見積りを分けて取っておく必要があります。 通常の設備更新に当たらないかも、事前に事務局へ確かめる点です。
対象になるのは、事業に必要な次の費目です。
- 機械装置等費:機械装置の製作・購入、設置に必要な土木・建築工事、保守・改造修理
- 労務費:事業に直接従事する人の人件費、アルバイト・パートの経費
- その他経費:消耗品費、旅費、会議費・借料・運送費・認定取得費などの諸経費
- 委託・外注費:自社で実施できない部分の委託費
認定取得費は、申請費、審査費、初回登録料などで、取得後の維持や定期審査の費用は含みません。
申請の流れ(前回の公募)
次の公募でも似た流れになる可能性があります。前回の公募要領の予定を、時系列にします。
- 事前着手を届け出る(事業者→事務局。Jグランツ。公募の締切と同じ2025年10月31日正午まで)
- 応募する(事業者→事務局。Jグランツのみ。同日正午まで)
- 審査を受ける(第三者委員会が書類審査と面接審査。面接には代表権を持つ人の参加を求められる)
- 採択を受け、交付申請を出す(採択先の公表は2026年1月16日の予定。交付申請の期限は2026年2月27日)
- 交付決定のあとに事業を進める(遅くとも2030年2月28日までに終了し、支払いも済ませる)
- 実績報告と確定検査を受ける(事業完了後30日以内。そのあと精算払いの請求)
採択結果は、2026年4月22日に事務局のページへ掲載されています。
必要な書類
応募時の書類です。様式は事務局のサイトからダウンロードします。
準備できた 0 / 17
法人税の別表は3期分を出します。履歴事項全部証明書は、提出から3か月以内の発行で、今の代表者名が載っているものです。出資者の一覧は、出資比率の上位10社(名)を割合つきで出します。借入がある場合は金融機関の同意を示す資料と資金計画が、リースを使う場合はリース契約書(案)などが加わります。共同申請では、共同申請者も決算書類や登記の書類などを出します。チェックシートで〔必須〕の項目が抜けていると、審査の対象になりません。郵送、持参、FAX、メールでの提出は受け付けていませんでした。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に発注した:事前着手が受理されていなければ、交付決定日より前の発注、購入、契約は対象外です。
- 相見積を取らなかった:契約先1者あたりの見積額が50万円(税抜)未満の場合を除き、最低価格の業者を選ぶ必要があります。選ばないときは理由書を整えて事務局に相談します。
- 生産時間15%減が達成できない:外的要因などの特段の理由がなく未達なら、経済産業省との協議で補助金の返還を求められることがあります。
- 導入した設備を他の事業に使った:この事業で入れた設備を、自動車部品など航空機以外の加工に使うことは認められません。
- 取得した設備を処分した:耐用年数の期間は、補助の目的に反する使用、譲渡、貸付け、担保提供ができません。承認を得ても原則として補助金の返納になります。
- 賃上げ表明をしたのに実施しなかった:賃上げ計画の表明(大企業は3%以上、中小企業等は1.5%以上)は任意の加点項目です。ただし申請書に書いたのに、交付決定までに従業員へ表明しないと、原則として交付決定が出ません。
次の公募の前に確かめること
次の公募の有無と時期は、事務局のページに記載がありません。確かめられる範囲は次のとおりです。
- 同じ事業には別のメニューがあり、募集の締切も別です。次期機体主要構造体開発・高レート生産技術実証は、2025年12月3日から2026年1月6日正午までの募集でした。
- 投資の決定を、交付決定より前に外へ発表していないこと。公表のタイミングを広報担当と合わせておく必要があります。
- 事務局(電話 03-6264-8515、平日9時〜17時)に、次の公募の予定を聞く。
よくある質問
今から申請できますか?
できません。公募は2025年10月31日正午に締め切られ、事前着手届出のJグランツ掲載分も2026年2月20日15時で終わっています。採択結果は、2026年4月22日に事務局のページへ掲載されました。次の公募の予定は事務局のページに記載がないため、公式サイトの新着情報を見るか、事務局に問い合わせて確かめてください。
個人事業主は対象になりますか?
対象になりません。補助対象事業者は、日本国内で登記された法人に限られます。法人であれば、中小企業等でも大企業でも申請できます。個人事業主として部品加工を担っている場合は、この制度に個人で応募する道は公募要領にありません。取引先の法人が申請する計画に関わる場合など、立場が複雑なときは、事務局に相談してください。
補助の上限額はいくらですか?
上限額は定められていません。事務局のQ&Aに「1申請あたりの補助上限額は定めていません」とあります。書かれているのは、補助金の下限額が1企業あたり2,500万円であることと、補助率が中小企業等で1/2以内、大企業で1/3以内であることです。実際の補助額は審査と交付決定で決まり、希望した補助率を下回ることもあります。額の見込みは、事務局に早めに相談して確かめてください。
中小企業も対象ですか?
対象です。中小企業等は、補助率が1/2以内と大企業より高く設定されています。ただし、補助の下限額が2,500万円と定められているため、投資の規模が小さい計画は対象に届きません。資本金5億円以上の法人に100%の株式を持たれている会社など、大企業として扱われる中小企業者もいます。該当するかは公募要領の定義で確認してください。
事前着手届出とは何ですか?
通常は交付決定の前に発注できない経費を、例外として対象に残すための届出です。事務局が緊急性と必要性を認めて受理すると、受理通知に書かれた日以降の発注が補助対象になる場合があります。受理されても採択は約束されません。公募開始日より前の発注、契約、支出は対象になりません。届出はJグランツの専用画面から行います。
生産時間15%の削減とは、何を減らすことですか?
タクトタイム、サイクルタイム、リードタイムのうち、いずれか一つの削減目標を設定します。リードタイムは自社内だけでなく、サプライチェーン全体の削減でも構いません。事業の終了時に15%以上の削減を達成することが要件で、終了後は2034年度まで毎年度、達成状況などを報告します。未達で特段の理由がなければ、返還を求められる場合があります。
どんな設備投資が対象になりますか?
実施内容は四つのうち一つに当たる必要があります。表面処理などの特殊工程の国内生産能力の増強、複合材や難削材の機械加工・成形技術の増強、複雑形状の部品の検査工程などの自動化、顧客企業の要請や受注の相談に基づく高レート生産の体制づくりです。戦略との整合も求められ、次期単通路機の開発への参画を見据えた投資が前提になります。
補助を受けたあと、設備はいつまで使い続けますか?
事業が終わってから5年間以上、導入した設備を使った生産や加工を続ける必要があります。認定の場合は維持します。経済産業省がやむを得ないと認める事情がある場合は例外です。あわせて、取得した財産は耐用年数の期間中に処分できません。やむを得ず処分するときは事前に承認を受け、原則として補助金の返納になります。
補助金はいつ受け取れますか?
原則は、事業が終わったあとの精算払いです。実績報告書を事業完了後30日以内(または2030年2月28日のいずれか早い日)に出し、確定検査で額が決まってから、精算払いの請求を出します。特に必要と認められる場合に限り、事業の途中で支払われる概算払いもありますが、概算払いを前提にした資金計画は認められません。
共同申請はできますか?
できます。単独では事業が成り立たない場合に認められます。例は、設備投資、生産企画、生産の機能が別会社に分かれている場合、設備の所有者と使用者が違う場合、リース会社を使う場合です。幹事会社を決め、幹事会社が申請と共同実施者の管理を担います。リース会社を使うときは、手数料や保険料は対象になりません。
どこに問い合わせればよいですか?
次期航空機開発等支援事業事務局(低炭素投資促進機構)です。電話は03-6264-8515で、受付は平日9時〜17時です。事務局のお問い合わせフォームも使えます。審査状況や採否に関する問い合わせには回答しない決まりです。対象に当たるか、通常の設備更新にならないかは、応募書類を作る前に聞いておくと出し直しが減ります。
