地熱発電は、井戸を掘ってみて初めて分かることが多い分野です。実証の費用を一社で背負うのは重く、民間だけでは踏み出しにくい領域でもあります。
NEDOが公募している「次世代型地熱技術の開発」は、その実証費用の2/3を国費で補助する事業です。2050年のカーボンニュートラルに向けて国が設けたグリーンイノベーション基金(以下、GI基金)の一つで、対象は企業等です。締切は2026年11月10日(火)正午。申請はJグランツだけで、GビズIDの取得に2週間以上かかる場合があります。
グリーンイノベーション基金事業/次世代型地熱技術の開発の要点まとめ
正式名:グリーンイノベーション基金事業/次世代型地熱技術の開発
だれが
- 申請者
- 企業等(単独またはコンソーシアム)
- 対象業種
- 業種の指定なし(地熱の研究開発を行う企業等)
- 利用目的
- 次世代型地熱技術の研究開発・実証
- 対象地域
- 全国(実施場所に国内を含むこと)
- 従業員数
- 公式ページに記載なし
いくら
- 補助上限額
- 1件の上限の記載なし(内容別の国費予算上限あり)
- 補助率
- 2/3(ほかに1/10のインセンティブ)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年8月28日〜2026年11月10日(正午まで)
- 事業の完了
- 2026年度〜2030年度(最長5か年度・予定)
自分の会社は応募できる?
次の4つにすべて当てはまれば、応募の入口に立てます。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
次のどちらかに当たると、応募できません。
- ✕ 大学だけで①〜③に応募する
- ✕ 企業の支出が全体の過半に満たない
事業戦略ビジョンは、2050年のカーボンニュートラルに向けて研究開発の成果を社会で使う段階までつなげる、という長期の計画書です。代表権を持つ経営者がこの課題にコミットしていることを示す必要があります。
応募の形は単独でも複数社の共同提案でも構いません。共同提案では、代表法人が他の法人の書類もまとめて、Jグランツで申請します。
大学・研究機関だけで応募できるのは、④の共通基盤技術の開発(委託)です。採択後に、他の研究開発内容を担う企業と連携することが条件になります。①〜③は、主たる実施者(支出が過半を占める実施者)が企業等でなければなりません。
いくら支援される?
補助率は2/3です。残りの1/3が自己負担になります。基本方針は、ステージゲートを通過した時点で補助率を見直す場合があるとしています。ほかに、事業が終わったあとの目標達成度に応じて、1/10のインセンティブ(成果に応じた上乗せ)が付きます。
1件あたりの上限額は、公募要領にも交付規程にも書かれていませんでした。代わりに、研究開発内容ごとに国費の予算上限があります。
| 研究開発内容 | 国費の予算上限 | 最初のステージゲートまで(約3年) |
|---|---|---|
| ① 超臨界地熱技術 | 191億円 | 153億円 |
| ② クローズドループ技術 | 805億円 | 621億円 |
| ③ EGS技術 | 76億円 | 61億円 |
予算上限は、その研究開発内容全体に対する国費の枠で、1社の上限ではありません。②クローズドループは、3者程度の実施が想定されています。自社が受け取る額は、積算用総括表(費用の見積表)と審査で決まります。以下は、仕組みをつかむための仮の数字です。補助対象費用の総額を9億円とします。
- 補助の部分:9億円 × 2/3 = 6億円(自己負担は3億円)
- インセンティブ(目標の達成度を100%と仮定):9億円 × 1/10 = 9,000万円
インセンティブは、事業が終わった年度に社会実装計画を出し、NEDOの審査とワーキンググループ(国の部会の下の評価の場)の議論を経て付与されます。補助事業では、終わってから3年間の確認で計画の指標が未達だと、一部を返す仕組みもあります。
何に使える?
対象にならないもの
- 研究開発内容④(委託事業で、補助とは別の契約)
- ステージゲート審査に通る前の、通過後の工程の費用
- 原状回復だけで終わる坑井の埋戻し・撤去
対象になるもの
- ① 超臨界地熱:調査井の掘削や、高温・高圧に耐える掘削・発電の要素技術
- ② クローズドループ:試験井の掘削と循環試験
- ③ EGS:試験井の掘削、人工貯留層の造成、循環試験
- 実証用坑井の埋戻しなどの撤去費(採択審査で妥当と認められた場合)
費目は、交付規程で次の4区分に分かれています。
| 費目 | 中身 |
|---|---|
| 機械装置等費 | 土木・建築工事、機械装置の製作・購入・借用、保守・改造修理 |
| 労務費 | 研究員費、アルバイト・パートの補助員費 |
| その他経費 | 消耗品、旅費、外注費、光熱水料などの諸経費 |
| 委託費・共同研究費 | 申請者以外の参加機関が行う研究開発 |
ステージゲートとは、事業の区切りごとに続けてよいかを判断する審査です。通過後の事業の費用は、審査で継続が認められた場合に限って使えます。掘削リグのように納品までが長い機器は、調達期間を見込んでステージゲートの時期を決める必要があります。
委託費・共同研究費は、原則として補助対象費用の総額の50%未満です。事前に交付申請書へ書いて、NEDOの承認を受ける決まりです。
申請の流れ
- GビズIDを取る(応募者→GビズID。プライムかメンバーのアカウント。2週間以上かかることがあります)
- 提案書類をそろえる(応募者→NEDOの公募ページから様式を入手。補助事業の提案書類一式のzipを使います)
- Jグランツで申請する(応募者→Jグランツ。2026年11月10日正午まで。期間内なら再提出できます)
- 審査を受ける(外部有識者の書面審査と、必要に応じた面接。面接は12月中旬の予定です)
- 採択・交付決定を受ける(採択先の決定は2027年1月下旬、契約・交付決定は3月下旬の予定です)
必要な書類
準備できた 0 / 8
GX取組の資料は、GXリーグへの加入状況か、温室効果ガスの排出削減の取組状況を示すものです。共同提案者を含む事業者ごとに1枚で、大学・研究機関と再委託先は要りません。賃金引上げの表明資料は任意で、中小企業等は平均受給額を1.5%以上、大企業は3%以上増やすと表明して公表する場合に、審査で加点されます。ワーク・ライフ・バランス等推進企業の認定を受けているかも、審査で見られます。主任研究者の経歴書は、委託先・共同研究先を含め、法人ごとに1名分です。事業戦略ビジョン・積算用総括表・経歴書は一つのPDFにまとめ、その他の資料と一緒にzipで出します。パスワードは付けません。
財務諸表には、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書(株式会社などのみ)を含めます。法人が設立されたばかりで3年分に満たなければ、設立年度から直近までで構いません。大学などの学術機関は、事業報告書だけで足ります。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 期限を過ぎた:2026年11月10日正午を過ぎると受け付けられません。持参・郵送・FAX・メールは原則不可です。
- GビズIDが間に合わない:IDがないと応募できません。IDを取れない事情があるときは、期限の前にNEDO担当者へ連絡する決まりです。
- 応募要件を満たしていない:提出後でも、要件の不備が分かれば無効になることがあります。
- 経営者の関与が不十分:ワーキンググループが改善点を指摘すると、改善が見られるまで補助金が支払われません。指摘された翌年度も十分な対応がなければ、プロジェクトは中止され、中止した年度の補助金も出ません。
- 目標が未達:終わってから3年間、社会実装計画の指標が未達だとインセンティブ額の一部を返します。
今年度の変更点・収益納付
2026年10月2日に公募要領が一部改訂されました。出向者の派遣に関する記載と、その提出資料が削除されています。10月2日以前に書類を作り始めた場合は、最新の公募要領で確かめ直します。
応募状況によっては、公募期間が延長されることがあります。延長はNEDOの公募ページで知らされます。
補助事業が終わった後、事業化によって収益が出たと認められると、交付した補助金を上限にその一部または全部を納めることがあります。事業化状況報告書は、補助事業の完了後5年後まで毎年度出します。
補助事業で取得した機械装置などには、処分の制限があります。取得財産の所有権は補助事業者にありますが、単価50万円以上の機械や器具を売却したり担保にしたりするには、事前にNEDOの承認が要ります。承認では、残存簿価相当額か処分の収入に補助割合を掛けた額を納めることが、原則の条件です。
よくある質問
補助と委託はどう違いますか?
この公募には両方が含まれます。研究開発内容①〜③は補助事業で、補助率は2/3です。④の共通基盤技術の開発は委託事業になります。補助は交付規程に沿って交付申請と交付決定を行い、成果の知的財産権は補助先に帰属します。委託は業務委託契約を結び、取得価額50万円以上の資産はNEDOの所有になります。この記事は補助の①〜③を中心に書いています。
中小企業やスタートアップでも応募できますか?
応募できます。応募資格は、企業等が単独または複数で応募することで、規模の制限は公募要領にありません。採択審査では、中小・ベンチャー企業が実施体制に効果的に組み込まれているかも見られます。ただし、経営者のコミットメントを示す事業戦略ビジョンや、3年分の財務諸表が必要です。GX取組の資料は、中小企業なら、GXリーグ加入や所定の排出削減の取組に代えて、その他の温室効果ガス排出削減の取組状況で出せます。
大学や研究機関は応募できますか?
①〜③は、主たる実施者が企業等でなければなりません。大学・研究機関が主たる実施者になれるのは、④の共通基盤技術の開発(委託)です。大学等だけで④に応募することも可能ですが、採択後に他の研究開発内容の実施企業と連携することが条件になります。①〜③に関わるなら、主たる実施者の企業等と組む形になります。申請者以外の機関が行う研究開発の費用は、委託費・共同研究費として交付申請書に書き、NEDOの承認を受けます。
締切はいつで、延長はありますか?
締切は2026年11月10日(火)正午です。応募状況によって、公募期間が延長されることがあります。延長する場合は、NEDOの公募ページで知らされます。ただし、延長を前提にした準備は勧められません。GビズIDの取得に2週間以上かかるため、まだ持っていない場合は、書類作りと並行して手続きを始めると間に合いやすくなります。
申請はどこから出しますか?
電子申請システムのJグランツからだけです。公募ページの「Jグランツで申請する」から入り、必要事項の入力と書類のアップロードを行います。持参・郵送・FAX・メールでの提出は原則受け付けられません。Jグランツに入るには、GビズIDのプライムかメンバーのアカウントが要ります。提出後に自動返信メールが届き、不備があるとNEDOから修正の連絡があります。期間内に自分で直したいときは、担当者に差し戻しを依頼します。
質問はどこに送ればいいですか?
公募説明会は2026年9月7日に終わっていて、資料は公募ページに載っています。それ以降の質問は、2026年10月27日(火)までに限り、NEDO再生可能エネルギー部 地熱担当へメールで受け付けています。宛先は公募ページに載っています。審査の経過に関する質問には答えてもらえません。研究開発・社会実装計画の内容については、資源エネルギー庁 地熱資源開発室(03-3501-2773)に聞けます。
採択はいつ決まりますか?
予定では、採択審査委員会(面接審査)が2026年12月中旬、契約・交付審査委員会が2027年1月中旬、採択先の決定が1月下旬です。ウェブサイトでの公表が2月下旬、契約締結・交付決定が3月下旬とされています。面接審査には、担当役員以上の出席が求められます。審査は非公開で、経過の問い合わせには応じてもらえません。スケジュールは、変わる場合があります。
ステージゲートで落ちたらどうなりますか?
通過後の工程の費用は、審査で継続が認められた場合に限って使えます。認められなければ、その先の事業は進められません。このため、提案では通過前の工程と通過後の工程を分けて計画します。審査の時期は2028年度頃が例として示されています。当初の契約・交付の期間は、最初のステージゲートまでです。
インセンティブとは何ですか?
プロジェクトが終わった時点で、2030年目標の達成度に応じて上乗せされる補助金のことです。額は、補助対象費用の総額(要領では「総事業費」)×(インセンティブ率)×(目標の達成度)で計算し、率は1/10です。企業は社会実装計画を出し、NEDOの審査とワーキンググループの議論を経て、妥当と認められると付与されます。補助事業では、終了後3年間の確認で指標が未達なら、一部を返します。
経営者は何をしなければなりませんか?
主要な企業等の経営者は、毎年度、ワーキンググループに出席し、取組の状況と今後の見通しを説明します。主要な企業とは、国費負担額が最大の実施主体と、全体の10%以上で上位3社程度の企業等です。参加する全企業は、毎年度マネジメントシート(経営の関与状況を書く書式)を出します。出席の拒否やマネジメントシートの未記入があると、改善の指摘を受けます。
共同提案のときは誰が申請しますか?
代表法人が、他の法人の書類一式をまとめて、Jグランツで申請します。代表法人以外のJグランツ上の申請は要りません。事業戦略ビジョンは、コンソーシアムの全ての実施主体がそれぞれ作ります。また、委託や共同研究を行うことは、交付申請書に書いてNEDOの承認を受ける必要があります。委託先や共同研究先の事業報告書と財務諸表は出さなくて構いません。
事業が終わったあとにお金を返すことはありますか?
あります。事業化によって収益が生じたと認められたときは、交付された補助金を上限に、その一部を納める決まりです。事業化状況報告書は、補助事業の完了後5年後まで毎年度出します。また、不正使用があれば全部または一部を返すことになり、返還には年10.95%の加算金が付きます。最大3年間の契約停止や応募制限もあります。
