海外の廃棄物処理は、日本と同じようには進みません。アジアの途上国では処理体制そのものが未整備で、廃家電のリサイクル制度がうまく機能せず、野焼きによる環境汚染や健康被害が起きている地域があります。日本の廃棄物処理・リサイクル技術を海外に持ち出せば解決できるはずなのに、進出の初期費用の重さで止まっている企業は少なくありません。
環境省の「資源循環分野の脱炭素化促進事業」は、この初期費用の壁に使える補助金です。海外で行う廃棄物の収集・運搬、中間処理、リサイクル、最終処分の各事業、またはそれに必要な施設の建設事業を対象に、上限4,400万円、補助率1/2(中小企業者は2/3)で支援します。受付期間は令和8年4月14日から11月30日までです。
資源循環分野の脱炭素化促進事業の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業者(法人) |
| 制度名 | 令和8年度 資源循環分野の脱炭素化促進事業 |
| 対象業種 | 指定なし(全20分類。実質的には廃棄物処理・リサイクル関連事業者が前提) |
| 利用目的 | 海外展開・研究開発・実証(海外での廃棄物処理・リサイクル事業) |
| 対象地域 | 全国(事業の実施地は海外の対象国) |
| 従業員数 | 規定なし |
| 補助上限額 | 4,400万円 |
| 補助率 | 1/2(中小企業者は2/3) |
| 申請受付 | 令和8年4月14日〜11月30日 |
| 公式サイト | jGrants「令和8年度 資源循環分野の脱炭素化促進事業」 |

この事業で何ができるのか
対象になる事業は、大きく2つに分かれます。
- ア)海外で実施される廃棄物等の事業: 収集・運搬、中間処理、リサイクル、最終処分のいずれか(直接エネルギー起源CO2が削減されるものに限る)
- イ)施設の建設を受託する事業: 海外の行政・事業者からアの事業に必要な施設の建設を委託され、それを実施する事業
「自社が海外で処理事業を運営する」パターンだけでなく、「海外の行政・事業者から施設建設を請け負う」パターンも対象になる点は、見落としやすいポイントです。プラント建設や設備メーカーの立場からも申請の余地があります。
自分の会社は対象になる?
事業者としての要件は3つあり、①〜③のすべてを満たす必要があります。
- 日本に本社(または主たる事務所)を置く法人で、海外に本社を置く法人の子会社でないこと(海外子会社が申請する場合は、その親会社がこの要件を満たしていること)
- 海外展開事業計画で自ら中心的な役割を果たす事業者であること(共同実施の場合は代表事業者・共同事業者)
- 次のいずれかを満たすこと
- 環境省の競争参加資格(全省庁統一資格)で「物品の製造」「物品の販売」「役務の提供等」のいずれかがA〜D級に格付けされている
- 自治体の廃棄物処理に係る調達業務の入札参加資格を持っている
- 一般廃棄物処理業または産業廃棄物処理業の許可を持っている
すでに国内で廃棄物処理・リサイクル業の許可を持っている事業者であれば、③の要件はクリアしやすくなります。一方で①・②は、海外展開の事業計画そのものの作り込みが問われる部分なので、早い段階から準備しておく必要があります。
どの国が対象になりやすいか
対象国には優先順位があります。
| 優先順位 | 区分 | 該当国の例 |
|---|---|---|
| 1 | JCM(二国間クレジット制度)パートナー国 | 2025年8月時点で31か国 |
| 2 | AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)パートナー国 | 豪州・ブルネイ・カンボジア・インドネシア・ラオス・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイ・ベトナムなど11か国 |
| 3 | 環境協力の覚書締結国・二国間協力実施国 | アラブ首長国連邦・インド・インドネシア・ウクライナ・カンボジア・タイ・ベトナム・フィリピン・マレーシアなど |
3番目の「覚書締結国・二国間協力実施国」は、他の2区分より優先度が劣後する扱いです。進出先の候補国が複数ある場合は、JCMパートナー国かどうかを最初に確認すると計画が立てやすくなります。
いくら戻る?
補助率は1/2ですが、申請者が中小企業者に該当する場合は2/3まで引き上がります。上限額は4,400万円です。中小企業者かどうかは、業種ごとに資本金・従業員数の基準が法律(中小企業基本法第2条第1項)で決まっており、どちらか一方を満たせば該当します(製造業その他は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は1億円以下または100人以下など、業種によって基準が異なります)。
動く順番
- 進出を計画している国が、JCM・AZEC・覚書締結国のいずれに該当するかを確認する
- 自社が事業者要件①〜③をすべて満たすかをチェックする(特に③の資格・許可の有無)
- 海外展開事業計画(単独実施か、共同事業者・コンソーシアムかを含む)を作成する
- 令和8年4月14日〜11月30日の受付期間中に申請する
よくある質問
Q. 国内での廃棄物処理事業だけでも対象になりますか?
いいえ。対象となるのは海外で実施される廃棄物処理・リサイクル・最終処分事業、またはその施設建設事業です。国内事業のみでは対象になりません。
Q. 海外子会社が単独で申請できますか?
海外に本社を置く子会社(イの類型)が申請する場合は、日本国内に本社を置く親会社が要件①を満たしていることが前提になります。単独での自由な申請ではなく、親会社の要件充足が条件です。
Q. 対象国の優先順位が低い国では申請できませんか?
申請自体は可能と考えられますが、覚書締結国・二国間協力実施国はJCM・AZECパートナー国より優先度が劣後する扱いです。審査での位置づけが変わる可能性があるため、詳細は公募要領でご確認ください。
