対象業種はわずか4つだけです。狭いと感じるかもしれません。ですが、この絞り込みにこそ、江東区の狙いが表れています。

製造業、運輸業、建設業、情報通信業(情報サービス業・インターネット附随サービス業に限定)。江東区が「人手不足がとりわけ深刻」と見極めた業種です。この4業種の中小企業に正社員就職した40歳以下の若手が、奨学金を返還中であれば、企業を通じて返還額の2分の1、年間10万円を上限に補助されます。

この補助金の概要(早見表)

検索項目内容
制度名江東区人材確保及び定着に向けた奨学金返還支援事業補助金
対象業種製造業/運輸業/建設業/情報通信業(情報サービス業・インターネット附随サービス業に限定)
利用目的若手人材の確保・定着、奨学金返還の負担軽減
対象地域東京都江東区(区内に事業所を有する中小企業者)
従業員数中小企業基本法の定義に該当する中小企業者(個人事業主は対象外)
補助上限額年間10万円(対象となる従業員1人あたり)
補助率返還額の2分の1
申請受付事前申請:入社後3か月以内(令和8年度は特例あり)/現況報告・交付申請:毎年7月1日〜9月30日
公式サイトhttps://www.city.koto.lg.jp/102000/shougakukin-henkanshienjigyou-hojokin.html
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※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。

なぜ対象業種が「建設・製造・運輸・情報通信」の4つなのか

補助金の対象業種を絞る制度には、たいてい理由があります。

この4業種は、若手の採用そのものが難しい業種です。きつい・危険・きたないという古いイメージが根強く、他業種に人材が流れやすい傾向があります。江東区が奨学金返還という個人の経済的負担に着目したのは、賃上げのように企業側の体力に依存する策より、若手個人への直接的なメリットの方が採用競争で効きやすいと判断したからだと考えられます。

一方で、飲食・小売・宿泊といった業種は対象に含まれていません。公式に明記があるのはここまでです。理由の詳細な説明は公式ページに見当たりません。 人手不足の実感は業種を問わず広がっていますが、区が優先度をつけて予算配分をした結果として、この4業種に絞られたと理解しておくのが妥当です。

対象になる人・ならない人を要件で確認する

事前申請の時点で、次のすべてを満たす必要があります。

  1. 就業開始から3か月以内であること
  2. 申請年度の3月31日時点で40歳以下であること
  3. 江東区内に住所があること
  4. 対象業種の事業所で正社員として就業していること
  5. 対象となる奨学金を返還予定、または返還中であること
  6. 同種の他の補助金を受けていないこと

たとえば、次のようなケースで対象・対象外が分かれます。

  • 対象になる例: 建設会社に正社員入社した28歳の社員が、日本学生支援機構の奨学金を返還中。区内に居住し、入社3か月以内に事前申請
  • 対象になる例: 情報サービス業の会社に正社員転職した35歳の社員が、大学時代の奨学金返還が残っている
  • 対象外になる例: 同じ会社に契約社員として勤務している(正社員でないため)
  • 対象外になる例: 入社時点で42歳(40歳以下という年齢要件を超えている)
  • 対象外になる例: 情報通信業のうち、通信インフラの保守を行う会社(情報サービス業・インターネット附随サービス業に該当しない可能性がある)

補助額はいくらか:返還額の2分の1・年10万円という設計

補助額の考え方はシンプルです。その年の奨学金返還額の2分の1、ただし年間10万円が上限です。

たとえば年間の返還額が15万円なら、2分の1は7万5,000円。上限の10万円には届かないため、そのまま7万5,000円が補助額になります。返還額が25万円の場合は、2分の1が12万5,000円となり、上限の10万円で頭打ちになります。

この「2分の1・上限10万円」という設計は、返還負担が大きい人ほど恩恵が薄まるという側面も持っています。上限に達したあとの自己負担は、そのまま従業員本人(または肩代わりする企業)にのしかかります。奨学金の残額が大きい人ほど、この補助だけで完結する制度ではないと理解しておく必要があります。

申請は「事前申請」と「交付申請」の2段構え

この補助金でもっとも間違えやすいのが、申請のタイミングです。

  1. 事前申請:就業開始から3か月以内に行います。令和8年度は特例があり、4月1日〜12月31日に入社した人は、令和9年3月31日まで事前申請が可能です
  2. 認定通知:区から事前申請の認定結果が届きます
  3. 現況報告・交付申請:毎年7月1日〜9月30日の間に、その年度の返還実績をもとに申請します
  4. 交付決定・請求書提出:区の交付決定後、請求書を提出します
  5. 補助金の振込:請求した月の翌月に振り込まれます

事前申請を忘れると、その年度の交付申請そのものができません。 入社してから慌てて調べるのではなく、正社員として採用が決まった時点で、企業側が「対象になりうる従業員がいないか」を確認しておく設計にしておくと安全です。

じつは、この事前申請のタイミングを巡っては、判断に迷うケースがあります。入社日をどう扱うか、転籍・出向のようなケースで「就業開始」がいつになるかは、雇用形態によって扱いが変わることがあります。この考え方は、GRANTOS公式LINEの登録者限定ページで、人材確保・定着系の助成金に共通する「要件充足の順番」の考え方とあわせて紹介しています。

似た「人材確保」の看板を掲げる他の補助金との違い

「人材確保」を掲げる区市の補助金は、江東区以外にも数多くあります。同じ「人材確保・定着」という看板でも、中身の設計思想はかなり違います。

たとえば、豊中市の「人材確保促進補助金」は、就業規則整備や研修参加費など、企業側の職場づくりの取組を補助する設計です。墨田区の「人材確保・定着支援補助金」も同様に、就業規則の整備や職場環境の改善という企業側の投資を後押しします。

一方、江東区のこの補助金は、従業員個人の奨学金返還という経済的負担に直接アプローチする設計です。企業の職場づくりを支援するのではなく、若手本人にとっての「この会社で働くメリット」を作るという発想に近いといえます。同じ「人材確保」でも、支援する対象が「企業の取組」なのか「従業員個人の負担」なのかで、制度の作りがまったく変わってくる。ここが、この補助金を理解するうえでの一番のポイントです。

よくある質問

個人事業主は対象になりますか?

対象外です。対象は中小企業基本法に定める中小企業者で、個人事業主としての就業(雇用契約のない働き方)は対象になりません。

パート・契約社員として働いている場合も対象になりますか?

公式ページの記載では、対象は正社員として就業していることが要件です。契約社員・パートタイムでの就業は、現時点で確認できる情報の範囲では対象に含まれません。

事前申請を忘れて3か月を過ぎてしまった場合はどうなりますか?

原則として、事前申請の期限(就業開始から3か月以内)を過ぎると申請できません。ただし令和8年度は特例があり、4月1日〜12月31日入社者に限り、令和9年3月31日まで事前申請が可能です。特例の対象になるかどうかは、江東区の担当窓口へ早めに確認することをおすすめします。


免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。補助額・対象業種・対象要件・受付状況は変更される場合があるため、申請前に必ず江東区の公式ページおよび最新の募集要項で内容をご確認ください。

出典:


補助金の概要早見表(暫定・subsidiesマスタ未登録)

項目内容
対象地域東京都江東区(区内に事業所を有する事業者)
対象業種製造業/運輸業/建設業/情報通信業(情報サービス業・インターネット附随サービス業に限定)
利用目的若手人材の確保・定着、奨学金返還の負担軽減
対象者規模中小企業基本法該当の中小企業者(個人事業主は対象外)
補助上限額年間10万円
補助率返還額の2分の1
申請受付期間事前申請:入社後3か月以内(令和8年度特例あり)/現況報告・交付申請:毎年7月1日〜9月30日
公式サイトhttps://www.city.koto.lg.jp/102000/shougakukin-henkanshienjigyou-hojokin.html
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