地震のあと、取引先が動かない、客が戻らない、通勤の道が通れない。それで従業員に休んでもらう日が出てきたなら、雇用調整助成金の特例が使える可能性があります。熊本県の事業所だけの話ではなく、全国の事業所が対象です。
条件の軸は日付です。休業・教育訓練・出向の初日が、2026年7月28日から2027年1月27日までのあいだにあること。助成率は中小企業が2/3、大企業が1/2です。
すでに休業を始めている場合も、計画届を2026年10月27日までに出せば、7月28日にさかのぼって助成の対象になります。
令和8年熊本地震 雇用調整助成金特例の要点まとめ
正式名:雇用調整助成金(令和8年熊本地震に伴う特例措置)
だれが
- 申請者
- 雇用保険の適用事業所の事業主
- 対象業種
- 業種の指定なし
- 利用目的
- 地震の影響で休業・教育訓練・出向をした雇用の維持
- 対象地域
- 全国(熊本県内の事業所は追加の特例あり)
- 従業員数
- 規定なし
いくら
- 補助上限額
- 1人1日9,110円(令和8年8月1日時点)× 日数(1年100日まで)
- 補助率
- 中小企業2/3、大企業1/2
いつ・どこへ
- 申請受付
- 休業等の初日が2026年7月28日〜2027年1月27日
「2027年1月27日」は、申請の締切ではありません。休業などを始める日が、この日までに来ていればよいという意味です。申請そのものは、支給対象期間の末日の翌日から2か月以内に出します。
うちの会社は対象になる?
次の5つにすべて当てはまれば、対象になる見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 5
中小企業は、小売業(飲食店を含む)が資本金5,000万円以下または従業員50人以下、サービス業が資本金5,000万円以下または従業員100人以下、卸売業が資本金1億円以下または従業員100人以下、その他の業種が資本金3億円以下または従業員300人以下です。どちらか一方を満たせば中小企業になり、当てはまらなければ大企業の扱いです。
休業等協定は、労働者の過半数で組織する労働組合があればその組合と、なければ労働者の過半数を代表する人との間で、書面で結びます。
「地震の影響」とは、厚生労働省が次の5つを例に挙げています。需要の減少や風評被害による販売・集客の困難、取引先の被災による取引の困難、交通の途絶による運送や通勤の悪化、電気・水道・ガス・通信の途絶、施設や設備の修理に時間がかかること、です。自社の建物が壊れた場合も、休止や縮小がこれらの理由を伴うなら対象です。
売上などの減少は、通常は最近3か月の月平均を前年同期と比べますが、特例では最近1か月で見ます。比べる月は、支給対象期間の初日が属する月、その前月、前々月のうち、地震の影響を受けた月のどれかです。初日が7月28日から31日の場合は、8月が初日の属する月として扱われます。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 地震後に事業所を設置した
- ✕ 地震と関係のない理由で休業した
- ✕ 雇用保険に6か月未満の人だけを休ませた
- ✕ 前年度より前の労働保険料が未納
- ✕ 不正受給の処分から5年以内
最後の項目について、助成の対象になる労働者は、雇用保険の被保険者です。休業等の日が属する判定基礎期間(賃金の締め日で区切る1か月)の初日の前日まで、同じ事業主のもとで6か月以上被保険者だった人に限り、解雇を予告された人や退職を申し出た人なども外れます。
どんな条件がゆるむ?
通常の雇用調整助成金より、次の点が軽くなります。全国の事業所が対象のものと、熊本県内の事業所だけのものがあります。
全国の事業所が対象の措置
- 売上などの比較期間を、3か月から1か月に短くする
- 最近3か月の雇用量が前年より増えていても対象にする
- 地震の時点で事業所を設置して1年未満でも対象にする(地震前のいずれかの1か月と比べる)
- 計画届を事後に出せるようにする
熊本県内の事業所だけの措置
- 残業相殺をやめる(休業日数から所定外労働の時間を差し引く扱いをしない)
- 教育訓練の実施率による助成率の引き下げをやめる(中小2/3、大企業1/2のまま)
- 被災した事業所で復旧作業のために自主的に出勤した日も、一定の条件で休業として数える
設置1年未満の事業所の比較は、地震の発生前のいずれかの1か月と、最近1か月を比べます。地震のあとに設置した事業所は対象になりません。
いくら戻ってくる?
助成額は、休業手当などの総額に助成率を掛けた額です。ただし、1人1日あたり、雇用保険の基本手当の日額の最高額が上限になります。期間は1年のあいだに100日までです。
- 中小企業が、従業員を20日休ませ、1日あたり6,000円の休業手当を払う:6,000円 × 20日 = 12万円、これに2/3を掛けて8万円(1人あたり)
- 同じ条件の大企業:12万円 × 1/2 = 6万円(1人あたり)
1人1日あたりの上限は9,110円です(令和8年8月1日時点の基本手当日額の最高額で、ガイドブックに書かれています)。休業手当が高い人は、この上限で頭打ちになります。
- 休業手当が1日15,000円の中小企業:15,000円 × 2/3 = 10,000円は上限を超えるので、1日あたり9,110円
100日の目安は、リーフレットに例があります。週5日勤務の事業所で、週の半分を休業にすると、約10か月は助成を受けられます。
教育訓練をしたときは、休業手当などの助成に加えて、1日あたり1,200円の加算があります(支給日数が30日を超えた期間で、実施率が20%以上なら1,800円)。
申請の流れ(いつ、どこへ、何を出す?)
- 計画届を出す(事業主→管轄の労働局またはハローワーク。休業の前日まで。特例では2026年10月27日までに出せば7月28日以降の休業に遡れます)
- 休業や教育訓練を実施する(事業主。休業手当を労働者に払います)
- 支給申請書を出す(事業主→労働局またはハローワーク。支給対象期間の末日の翌日から2か月以内)
- 支給の決定を待つ(労働局→事業主)
申請は、紙のほか、雇用関係助成金ポータルで電子申請もできます。電子申請には、GビズID(国の電子申請に共通で使うID)が要ります。特例を選ぶときは、「特例1」を選びます。熊本県内の事業所と県外では、使う様式が違います。休業を終えてから計画届と支給申請書を同時に出す場合、電子申請では計画届の審査が終わってから支給申請書を出せる形になります。
必要な書類
準備できた 0 / 13
教育訓練計画一覧表は、教育訓練をするときだけ要ります。支給申請合意書は、事業主以外の人が教育訓練を実施したときだけ要ります。事業活動に関する申出書は、県内外とも特例用の様式(様式熊特第1号(2))です。支給申請書・助成額算定書と実績一覧表は、熊本県内の事業所が特例用の様式(様式熊特第5号)を使い、県外の事業所は通常の様式第5号(1)(2)と第5号(3)-2を使います。
売上の分かる書類は、最近1か月と前年同期の売上高などが分かる月次損益計算書や総勘定元帳などです。就業規則・労働条件通知書は、所定労働日や賃金の締め日を示す書類です。出勤簿・タイムカード、賃金台帳、給与の振込が分かる書類は、支給申請のときに付けます。そのほか、労働局が必要とした書類の提出を求めることがあります。
休業等協定書は、労働者の過半数で組織する労働組合、またはそれがなければ労働者の過半数を代表する人との、休業の内容についての書面の協定です。特例では、労働組合等との確約書などで代わりにできます。助成金を受けた事業主は、書類の写しなどを支給決定日の翌日から5年間保存します。
助成が出なくなるのは?
- 計画届の期限に遅れた:特例で遡れるのは、2026年10月27日までに届けた場合です。これを過ぎると、通常の事前届出の考え方に戻ります。
- 初日が期間の外だった:2027年1月27日より後に始める休業は、この特例では扱われません。
- 雇用量が増えていても、売上の減少がない:雇用量の要件はゆるみますが、最近1か月の売上などが1割以上減っていることは必要です。
- 熊本県内の非該当施設を分けなかった:同じ事業主に、熊本県の雇用保険事業所非該当承認を受けた施設がある場合は、県内分とそれ以外で書類を分けて出します。
- 前回の助成から1年が経っていない:過去に雇用調整助成金を受けた事業主は、前の対象期間で助成が支給された最後の期間の末日の翌日から、1年を超えていないと新しい対象期間を設けられません。
- 休業手当が少なかった:休業手当は平均賃金の6割以上にする必要があります。申請の期限内に差額を追って払えば対象になることがあります。
- 申立書の項目に「いいえ」があった:支給要件確認申立書には、労働保険料の未納、過去1年の送検、不正受給、倒産、風俗営業等の項目があり、該当すると申請できません。
- 日数の上限に達した:1年のあいだに100日に達したら、それ以降は助成の対象になりません。
よくある質問
すでに地震の影響で休業を始めています。今から間に合いますか?
間に合う可能性があります。通常は休業の前に計画届を出す必要がありますが、特例では、計画届を2026年10月27日までに出せば、事前に届出があったものとみなされます。そのため、2026年7月28日以降に始めた休業にさかのぼって助成の対象にできます。この扱いは全国の事業所が対象です。計画届を出す前に、売上高などを示す書類を月ごとにそろえておくと話が早く進みます。10月27日が近いので、管轄の労働局またはハローワークに早めに問い合わせておくと安心です。
熊本県にない事業所でも、この特例は使えますか?
使えます。生産指標の確認期間を1か月にする措置、雇用量が増えていても対象にする措置、設置1年未満の事業所を対象にする措置、計画届の事後提出は、全国の事業所が対象です。熊本県外の事業所に取引先の被災や交通の途絶などの影響が出て、事業を縮小した場合が想定されています。ただし、残業相殺の撤廃など一部の措置は熊本県内の事業所のみなので、そこは通常のルールのままです。
「経済上の理由」には、どんなものが当たりますか?
厚生労働省は5つを例に挙げています。需要の減少や風評被害による販売・集客の困難、取引先の被災による原材料や商品の取引の困難、交通の途絶による運送や通勤などの悪化、電気・水道・ガス・通信の途絶や困難、施設や設備の修理業者の手配や部品の調達に期間がかかること、です。例にないものが自社に当てはまるかどうかは、管轄の労働局やハローワークに問い合わせて確かめるのが確実です。
売上の比較は、通常とどう違いますか?
通常は、売上や生産量などの最近3か月の月平均が、前年同期より10%以上減っていることが条件です。特例では、この比較期間が最近1か月になります。1か月の落ち込みでも条件を満たせる分、使いやすくなります。事業所を設置して1年未満の場合は、前年同期と比べられないので、地震の発生前のいずれかの1か月と、最近1か月を比べます。地震のあとに設置した事業所は、この特例の対象外です。
助成率はいくらですか?
中小企業は2/3、大企業は1/2です。支給日数が30日を超えると、通常は教育訓練の実施率が10%未満のとき、助成率が中小1/2、大企業1/4に下がります。ただし、熊本県内の事業所は、特例でこの引き下げが適用されず、教育訓練の実施率にかかわらず中小2/3、大企業1/2のままです。熊本県外の事業所は、この引き下げが通常どおり適用される点に注意が必要です。
助成が受けられる日数の上限はありますか?
あります。特例の期間内に実施した休業等は、1年のあいだに100日が上限です。たとえば週5日勤務の事業所で週の半分を休業にすると、約10か月は助成を受けられると、リーフレットに例が示されています。過去に雇用調整助成金を受けたことがある事業主は、過去3年以内の受給日数を踏まえて、上限が100日より小さくなる場合があります。詳しい計算は労働局で確認してください。
残業相殺とは何ですか。熊本県外でも撤廃されますか?
残業相殺は、休業をさせた日がある一方で、同じ労働者に所定外労働をさせた場合、その時間分を休業の日数から差し引く扱いです。特例では、これをやめます。ただし、熊本県内の事業所の休業だけが対象で、県外の事業所は通常どおり残業相殺が行われます。県外で様式を選ぶときは、所定外労働の実施状況を書く様式(様式第5号(3)−2)を使います。
自主的に出勤した従業員の日は、休業として数えられますか?
通常は数えられません。熊本県内の事業所が被災していて、写真などで被害を示せること、復旧のために通常の業務と明らかに違う作業をしたこと、出勤・退勤の時間が特定できることなどの条件をすべて満たす場合に限り、出勤した時間以外の所定労働時間内の部分を休業として数えられます。熊本県外の事業所には、この扱いはありません。
書類がそろえられない場合はどうなりますか?
地震の影響で、支給手続きに必要な書類の整備や保管が難しいと管轄の労働局長が認める場合は、その要件を適用しないとされています。提出が難しい書類は、事業主の疎明書(任意様式)で代えられることがあります。ただし、書類を出せるようになった時点で、提出を求められます。個別の判断になるので、事前に労働局またはハローワークへ相談してください。
申請はどこに出せばいいですか?
事業所の所在地を管轄する労働局、またはハローワークです。紙で出すほか、雇用関係助成金ポータルから電子申請もできます。電子申請で特例を選ぶときは「特例1」を選びます。特例用の様式は、厚生労働省の特設ページに掲載されています。通常の様式とは異なる点があるので、ポータル上のリンクではなく、特設ページの様式を使う必要があります。
熊本県に雇用保険の事業所非該当承認を受けた施設があります。
同じ事業主の下で、熊本県内に雇用保険事業所非該当承認を受けた施設がある場合は、実態として事業所に準じる機能を果たしていれば、雇用保険の適用事業所とみなせます。特例には、全国の事業所に適用される措置と熊本県の事業所だけの措置があり、様式が異なるため、熊本県の非該当施設とそれ以外で書類を分けて、管轄の労働局またはハローワークに出します。
教育訓練や出向でも使えますか?
使えます。特例の対象は、休業、教育訓練、出向のいずれかを、地震に伴う経済上の理由で行う事業主です。教育訓練をしたときは、休業手当などの助成に加えて、1日あたり1,200円の加算があります(30日を超えた期間で実施率が20%以上なら1,800円)。出向の場合は、別の様式(様式第2号(1)や第6号など)を使います。出向の細かい要件は通常版のガイドブックに書かれています。
問い合わせ先はどこですか?
お近くの都道府県労働局、またはハローワークです。厚生労働省の特設ページに、雇用調整助成金のお問い合わせ先一覧が掲載されています。通常版のガイドブック(令和8年8月1日現在版)と支給要領(令和8年9月10日現在版)、特例のQ&A、申請様式記載例・チェックリストも同じページで見られます。特例の内容は改訂されることがあるので、最新の版を確かめてください。
