「出向させただけ」で助成金が出るのか——結論から言うと、出ません。産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)が対象にするのは、出向によって労働者が新しいスキルを身につけ、出向から戻ってきたあと実際に賃金が上がった場合だけです。
出向は目的ではなく手段です。「出向させて終わり」ではなく「戻ってきてからの賃上げ」まで見られる制度だと理解しておくと、要件を読み違えません。
産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)の要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業者(法人・個人事業主。出向元・出向先の両方) |
| 制度名 | 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース) |
| 対象業種 | 業種不問 |
| 利用目的 | 人材確保・育成(在籍型出向によるスキルアップ) |
| 対象地域 | 全国 |
| 従業員数 | 中小企業・中小企業以外のどちらも対象(助成率が異なる) |
| 補助上限額 | 1人1日あたり8,870円(雇用保険の基本手当日額の最高額)を上限に、最長1年間。1事業所・1年度あたり最大1,000万円 |
| 補助率 | 中小企業3分の2、中小企業以外2分の1 |
| 申請受付 | 通年(出向計画の提出が必要。締切日の定めは公式ページに記載なし) |
| 公式サイト | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082805_00012.html |
図: スキルアップ支援コースの全体像。出向元・出向先の両方が助成対象です
助成率・上限額はいくらか
助成率は中小企業3分の2、中小企業以外2分の1です。助成額は、次の2つのうち低いほうの額に助成率をかけて計算します。
- 出向労働者の出向中の賃金のうち、出向元が負担する額
- 出向労働者の出向前賃金の2分の1の額
1人1日あたりの上限は8,870円(雇用保険の基本手当日額の最高額)で、1事業所・1年度あたり最大1,000万円です。上限1,000万円は「1事業所あたり」の枠であり、出向させる人数が多いほど早く上限に近づきます。複数人を同時に出向させる計画がある場合は、事前に上限との兼ね合いを確認しておくべきです。
対象になる/ならないの線引き
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| 在籍型出向で労働者のスキルアップを行い、復帰後6か月間の各月賃金を出向前比5%以上上げた場合 | 出向はしたが、復帰後の賃金が出向前と変わらない・下がった場合 |
| 出向終了後、元の事業所に戻って働くことが前提の出向 | 転籍(元の事業所に戻らない出向) |
| 出向元・出向先のどちらの事業主も対象 | 企業グループ内での出向(対象外) |
なぜ「復帰後6か月」まで見るのか。この助成金は出向を「一時的な人材育成の場」として使うことを想定しています。出向させただけで賃金に反映されない出向は、スキルアップの実質がないとみなされるためです。
よくある誤解:似た名前の「産業連携人材確保等支援コース」とは別物
産業雇用安定助成金には複数のコースがあり、中でも紛らわしいのが「産業連携人材確保等支援コース」です。名前が似ていますが、対象になる場面がまったく異なります。
- スキルアップ支援コース:出向で労働者を"送り出す"側・"受け入れる"側の両方が対象。出向復帰後の賃上げが条件
- 産業連携人材確保等支援コース:事業活動の一時的な縮小を経験した事業主が、生産性向上のために新たに人材を雇い入れる場合が対象。ものづくり補助金・事業再構築補助金などの交付決定を受けていることが前提になる
「出向」の話をしているのか「新規雇い入れ」の話をしているのかで、見るべきコースが変わります。取り違えると、まったく違う要件のページを読み続けることになるので注意してください。
よくある質問
Q. 出向先が中小企業でなくても対象になりますか?
出向先が中小企業以外でも対象にはなりますが、助成率は2分の1になります(中小企業は3分の2)。
Q. 出向期間はどのくらい必要ですか?
出向期間や具体的な計画届の提出時期は公式ページに記載なし(労働局・ハローワークへお問い合わせください)。
Q. 出向元・出向先の両方が同時に申請できますか?
はい。出向元事業主・出向先事業主の両方が支給対象になります(企業グループ内出向を除く)。
