陸上養殖は、水槽を置けば始まるわけではありません。飼育水をろ過して循環させるポンプ、殺菌や脱窒素の装置、温度調整の装置と、最初にそろえる機器が多い養殖です。宮城県はその導入費の1/2を、1事業者あたり上限1億円まで補助します。
ただし補助金の申請の前に、県から事業計画の「認定」を受ける必要があります。しかも認定は原則1年度につき1件で、予算次第で増える可能性はあるものの、審査の基準に届かなければ0件もありえます。いまは令和8年度の二次募集の期間中です。
宮城県 陸上養殖システム導入支援事業の要点まとめ
正式名:陸上養殖システム導入支援事業(補助金)
だれが
- 申請者
- 事業者(法人・個人事業主・漁協など)
- 対象業種
- 閉鎖循環式陸上養殖に新規参入する事業者
- 利用目的
- 閉鎖循環式陸上養殖システムの機器導入
- 対象地域
- 宮城県
- 従業員数
- 公式ページに記載なし
いくら
- 補助上限額
- 1事業者あたり1億円
- 補助率
- 対象経費の1/2以内
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年11月26日まで(チラシは11月6日)
何から始める?まず県の窓口へ連絡
県の案内ページには、活用したい場合は「申請期間中に必ず窓口へ連絡」と書かれています。窓口は宮城県水産林政部水産業基盤整備課の養殖振興班(電話 022-211-2943)です。
申請期間の終わりは、案内ページが「11月26日(金曜日)」、同じページに付いたチラシが「11月6日(金)」と、県の資料の中で食い違っています。暦では2026年11月26日は木曜日、11月6日が金曜日なので、案内ページの曜日とも合いません。どちらが正しいかは公式に説明がないため、窓口への連絡も、認定の申請書の提出も、11月6日までに済ませるつもりで準備すると、どちらの日付でも間に合います。
その後の大きな流れは、事業計画の認定を受け、認定を受けた事業者が補助金を申請する二段構えです。
うちの事業は対象になる?
次のすべてに当てはまれば、対象になる見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 4
「閉鎖循環式」には、飼育水をろ過して循環させる方式のほか、半閉鎖循環式も含まれます。県の案内ページは、一部注水を行う半循環式のシステムも対象と書いています。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 県税に滞納や未納がある
- ✕ 暴力団・同関係者に当たる
- ✕ 法令や公序良俗に反する業務をしている
このほか、知事が補助するのは適当でないと認める者も、交付申請ができません。県は「陸上養殖に参入しようとする事業者」を対象にしており、すでに陸上養殖をしている事業者の設備の増設が対象になるかは、公式に記載がありません。当てはまりそうなときは、先に窓口で確かめてください。
事業者の区分は3つあります。県内に住所のある漁協・漁業生産組合など(海面・内水面の漁業や養殖業を営む中小企業も入ります)、それ以外の県内の事業者、県外に事業所を置く事業者の順です。複数の事業者が申請した場合、認定はこの順番で優先されます。県外の事業者も区分には入っていますが、順位は最後です。
県の認定を受けるには?
認定の条件は5つで、すべてを満たす事業実施計画を作り、県の審査会の審査を経て知事の認定を受けます。
- 生産販売計画、収支・資金繰り計画、機器の整備計画が適切である
- 導入する地区の関連漁業者と調和が図られている
- 既存の養殖業者の市場と重複しない、または重複しても単価を著しく下げない
- 種苗の供給や原料確保などで、県内の漁業者・水産加工業者にメリットがある
- 宮城県の水産業の発展に貢献する
審査会が見る項目は、実現可能性、導入する機器の妥当性、売上・収支計画、資金計画、実施体制、そして県の水産業への波及効果です。
3番と4番は、書類の数字だけでは説明しきれない部分です。既存の養殖業者とどう棲み分けるか、種苗や餌の調達で県内の誰とつながるかは、計画の段階で具体的に書いておく必要があります。公式の資料には、審査の配点や基準の細かな点数は載っていません。
いくら戻ってくる?
対象経費に1/2を掛けた額が補助されます。1事業者あたりの上限は1億円で、補助額の千円未満は切り捨てです。
- 機器の導入費が4,000万円:4,000万円 × 1/2 = 2,000万円
- 機器の導入費が1億5,000万円:1億5,000万円 × 1/2 = 7,500万円
- 機器の導入費が2億5,000万円:2億5,000万円 × 1/2 = 1億2,500万円 → 上限の1億円
上限の1億円に届くのは、対象経費が2億円以上のときです。それ以下の規模でも、補助率の1/2は変わりません。
国や県の別の補助金の対象になった機器は、この補助の対象経費から外れます。消費税等の仕入控除税額(事業者が消費税の申告で差し引ける分)は、補助額から減らして申請します。
何に使える?
先に、対象にならないものです。
- 建物や用地の賃借・取得の経費
- 稚魚などの種苗代、餌代
- 人件費、電気代などの運転経費
次に、対象になるものです。
- 養殖システムを構成する機器(飼育水槽、循環ポンプ、泡沫分離装置、生物ろ過槽・ろ材、殺菌装置、脱窒素装置、温度調整装置など)
- 運営費の削減につながる機器(ソーラーパネル、新素材の水槽、省力ポンプ、自動給餌機、魚体測定装置など)
2つ目の省エネ・省力化の機器は、1つ目のシステム本体と併せて導入する場合に限ります。ソーラーパネルだけ、自動給餌機だけを対象にする使い方はできません。
申請から入金までの順番
認定の申請と、補助金の交付申請は別の手続きです。着手の時期がいちばんのつまずきどころになります。
- 窓口に連絡する(事業者→水産業基盤整備課。申請期間中に必ず。目安は11月6日まで)
- 事業実施計画の認定を申請する(事業者→知事。要領の様式第1号で、審査会が審査)
- 認定書を受け取る(県→事業者)
- 補助金の交付を申請する(事業者→県。要綱の様式第1号と添付書類)
- 交付決定を待つ(県→事業者。決定の前に発注や入札をしない)
- 機器を発注して導入し、契約結果を報告する(事業者→県。様式第4号)
- 実績を報告する(事業者→県。完了から1か月後か、事業年度の3月5日のどちらか早い日まで)
- 補助金の額が確定してから入金される(県→事業者)
必要に応じて、事業の途中で概算払い(かかった出来高の範囲で先に受け取ること)が認められる場合もあります。交付決定のあった年度の1月31日時点の状況を翌月末までに報告する遂行状況報告も、決まりごとの1つです。
必要な書類
まず、認定の申請(実施要領の様式第1号)に添える書類です。
準備できた 0 / 10
見積書は、内訳明細つきで2社以上のものを出します。
次に、認定を受けたあとの交付申請(要綱の様式第1号)に添える書類です。
| 書類 | どこで手に入るか |
|---|---|
| 事業実施計画書(別紙1) | 県の案内ページ |
| 事業実施計画認定書 | 県の認定後に交付 |
| 収支予算書(別紙2) | 県の案内ページ |
| 実施設計書(別紙3) | 県の案内ページ |
| 暴力団排除の誓約書 | 県の案内ページ |
| 保険加入の誓約書 | 県の案内ページ |
| 納税証明書(全県税) | 県税事務所 |
| 定款の写し | 自社の書類 |
| 住民票抄本 | 市区町村 |
定款の写しは法人の場合、住民票抄本は個人の場合です。このほかに知事が必要と認める書類を求められることがあります。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に発注した:機器の入札や発注を含めて、着手は交付決定のあとです。先に発注した経費は対象外になります。
- 処分や使い方の変更を無断でした:1件50万円以上の機器は、減価償却の耐用年数に相当する期間、無断で売却や移転ができません。
- 保険に入っていない:天災等への補償を含む建物共済や動産総合保険などに、処分制限期間のあいだ加入しておく必要があります。
- 事業完了後の報告をしなかった:完了翌年度から5年間、毎年の実施状況の報告があります。県の視察の受け入れにも協力します。
- 消費税の確定後に返還を求められた:完了後の申告で仕入控除税額が確定したときは、その分の返還を命じられます。
よくある質問
二次募集とは何ですか?一次募集の記事はありますか?
県は令和8年度の事業として募集しており、9月4日に「二次募集開始」と案内を出しました。一次募集の期間や結果は、今回確認した公式資料に載っていません。この記事の補助率・限度額・対象経費は、二次募集の案内ページと、要綱・要領の記載にもとづいています。いまから申請を考えるときは、受付の状況や予算の残りを、養殖振興班の窓口で先に確かめておくと安心です。
申請期間は11月26日までですか、11月6日までですか?
県の案内ページには「令和8年11月26日(金曜日)まで」とあり、同じページにあるチラシには「11月6日(金)まで」とあります。暦では11月26日は木曜日で、11月6日が金曜日です。食い違いの理由は公式に書かれていません。窓口への連絡は申請期間中に必ず必要とされ、認定の申請書も同じ期間内の提出になると考えられるため、早い11月6日までに連絡と提出を終えるつもりで動けば、どちらの日付でも間に合います。電話は 022-211-2943(養殖振興班)です。
半循環式の陸上養殖でも対象になりますか?
対象になります。県の案内ページには、完全閉鎖循環式に限らず、一部注水を行う半循環式の陸上養殖システムも対象と書かれています。実施要領でも、飼育水をろ過システムで浄化して閉鎖系で循環利用する方法に半閉鎖循環式を含めると定義しています。種苗生産も、食用の水産動植物の養殖に含まれます。観賞魚など食用でないものが対象になるかは、公式に記載がありません。
県外の事業者でも申請できますか?
実施要領の事業者の区分に、県外に事業所を置く法人・団体・個人事業主が入っています。ただし複数の事業者が申請した場合、認定は県内の漁協等、その他の県内事業者、県外の事業者の順に優先されます。養殖の場所は県内で、県の水産業に貢献するものであることが認定の条件です。県外に住所がある場合の細かい手続きは、窓口に確かめてください。
すでに養殖をしている事業者が設備を増やす場合は対象ですか?
公式には「陸上養殖に参入しようとする事業者」を対象と書いていて、既存の陸上養殖設備の増設が対象になるかは、記載がありません。海面養殖などを営む事業者が、新たに閉鎖循環式の陸上養殖に参入する場合は、参入にあたると読めます。増設や更新のみの場合は、申請の前に窓口へ事業の内容を伝えて確かめるのが安全です。
補助の対象にならない経費は何ですか?
実施要領に、建物と用地の賃借・取得の経費、養殖生産に直接かかる種苗代と餌代、人件費と電気代などの運転経費は対象外と書かれています。システムを置く建屋の建設費や、稼働後のランニングコストは自己負担です。機器の導入費だけが対象なので、資金計画では、建物や運転資金を別に用意しておく必要があります。
補助金はいつ入金されますか?
補助金は、補助金の額が確定したあとに交付されるのが原則です。額の確定は、事業の完了後に実績報告を出して県の確認を受けてからです。実績報告は、事業完了から1か月後か、事業実施年度の3月5日のどちらか早い日までに出します。事業の遂行上必要と認められた場合は、出来高に応じた概算払いが受けられることもあります。機器代の支払いは、いったん自己資金や融資でまかなう前提で考えると安全です。
補助を受けたあとに守る決まりはありますか?
あります。完了翌年度から5年間は、毎年度の事業実施状況を翌年の5月末までに県へ報告します。1件50万円以上の機器は、耐用年数に相当する期間、無断で処分できません。その間は、天災等への補償を含む保険にも加入しておく必要があります。補助金に関する書類は、交付決定日の属する会計年度の翌年度から5年間保管します。
計画の内容を後から変えることはできますか?
補助事業の内容や経費の配分を変えるときは、あらかじめ変更の申請をして承認を受けます。ただし、補助事業に要する経費の30%以内の減少や、補助目的に変更をもたらさない細部の変更は、承認が要りません。事業を中止・廃止する場合も、事前に申請して承認を受けます。予定の期間内に終わらない見込みのときは、速やかに県へ報告します。
他の補助金と一緒に使えますか?
本補助金以外の国や県の補助金の対象となった機器は、この補助の対象経費から除かれます。同じ機器を別の補助で購入する使い方はできません。一方で、機器ごとに分けて別の制度を使うことができるかは、公式に細かい記載がありません。他の補助金を検討している場合は、申請の前に窓口へ、対象にする機器を具体的に伝えて確認してください。
問い合わせ先はどこですか?
宮城県水産林政部水産業基盤整備課の養殖振興班です。電話は 022-211-2943、メールは suikiseiys@pref.miyagi.lg.jp、住所は〒980-8570 仙台市青葉区本町3丁目8番1号です。活用を希望するときは、申請期間中に必ず連絡することになっています。認定の見込みや、計画に入れる内容で迷ったときも、早めに相談しておくと手戻りを減らせます。
