奨学金を返しながら町工場に就職した若手社員がいる。その返済を、会社ではなく区が肩代わりしてくれる制度があるのか——結論から言うと、あります。ただし対象になるのは、区内の中小製造業・運輸業・建設業に令和7年4月1日以降に新たに就職した人に限られます。
この制度は個人(従業員)が申請するものですが、採用活動の武器にできるかどうかは経営者にとっても無視できない話です。あなたの会社が区内の中小製造業・運輸業・建設業なら、求人票に一文添えられるかどうかで、応募のハードルが変わってくるかもしれません。
対象になる会社・従業員、ならないケース
対象になるのは、次のすべてに当てはまる人です。
- 令和7年4月1日以降に新たに大田区内の中小製造業・運輸業・建設業に正社員として就職した
- 就職先が資本金3億円以下、または従業員300人以下の中小企業である
- 大田区の住民基本台帳に登録されている(区内在住)
- 事前申請の時点で40歳未満
- 奨学金(日本学生支援機構、交通遺児育英会、あしなが育英会、地方公共団体、学校教育法上の学校が貸与するもの等)を返還している
一方で、次のようなケースは対象になりません。
| 対象になる | 対象にならない |
|---|---|
| 区内中小の製造業・運輸業・建設業に正社員就職 | 小売業・飲食業・情報通信業など対象3業種以外への就職 |
| 資本金3億円以下または従業員300人以下の会社 | 資本金3億円超かつ従業員300人超の大企業 |
| 区内に住民登録がある | 区外在住(勤務先だけ区内というケース) |
| 令和7年4月1日以降に新規就職 | それ以前から同じ会社に勤務している人 |
| 正社員雇用 | 契約社員・パート・業務委託等 |
なぜ「製造業・運輸業・建設業」に限定されているかという点も押さえておきたいところです。この制度は大田区の産業政策として、担い手不足が深刻なものづくり関連業種への人材定着を目的に設計されています。だからこそ、同じ区内就職でも業種によって対象・対象外がはっきり分かれる設計になっています。
支援額はいくら?前年度返還額の半分・年間上限10万円
支援額の算定方法は、前年度に返還した奨学金の額の2分の1(1,000円未満切り捨て)です。年間の上限は10万円、支援期間は最長5年間(60か月分)にわたります。
具体的に計算してみます。
| ケース | 前年度の年間返還額 | 支援額(年間) |
|---|---|---|
| 月1万円返還(年12万円) | 12万円 | 6万円 |
| 月1.8万円返還(年21.6万円) | 21.6万円 | 10万円(上限) |
| 複数の奨学金を合算し月2万円返還(年24万円) | 24万円 | 10万円(上限) |
複数の奨学金を返還している場合は、それらを合算して申請できます。年間の返還額が20万円に達したところで、上限10万円に到達する計算です。5年間満額の支援を受けられれば、合計で最大50万円になります。
さらに見逃せないのが、この支援金が所得税法上「学資に充てるため給付される金品」に該当し、非課税所得として扱われる点です。給与とは別枠で受け取れるため、従業員側の手取り実感としても大きい制度だといえます。
申請の流れ:事前申請と毎年の交付申請は別物
この制度でつまずきやすいのが、「事前申請」と「毎年の交付申請」が別の手続きになっている点です。順を追うと次のようになります。
- 事前申請:内定後から、入社後3年を経過した最初の3月31日までに行う
- 現況報告・交付申請:毎年4月1日〜6月30日の間に、前年度の返還実績を報告して申請する
- 請求書の提出:交付決定通知を受け取ってから30日以内
事前申請さえ済ませれば自動的にお金が振り込まれる、という制度ではありません。毎年、期間内に現況報告・交付申請をし直す必要があるという点は、申請者本人にも会社の担当者にも伝えておきたいポイントです。
よく誤解されやすい点:「新たに就職した」の線引き
じつは、「令和7年4月1日以降に新たに区内中小製造業等に就職した」に当てはまるかどうかは、はっきり白黒つくものばかりではありません。同じグループ会社間での転籍や、部署異動を伴う配置転換が「新規就職」に当たるかどうかは、雇用契約の切り替え方や実態をどう位置づけるかで扱いが変わってきます。この考え方は、GRANTOS公式LINEの登録者限定ページで実例とあわせて紹介しています。
この補助金の概要(早見表)
| 検索項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 大田区ものづくり等人材確保のための奨学金返還支援事業 |
| 対象業種 | 製造業/運輸業、郵便業/建設業 |
| 利用目的 | 雇用・職場環境を改善したい(人材確保・定着) |
| 対象地域 | 東京都大田区(区内中小事業者に就職し、区内在住) |
| 従業員数 | 資本金3億円以下または常時雇用の従業員300人以下(就職先の要件) |
| 補助上限額 | 年間10万円(最長5年間・累計最大50万円) |
| 補助率 | 前年度奨学金返還額の2分の1 |
| 申請受付 | 事前申請:内定後〜入社3年経過後の最初の3/31まで/交付申請:毎年4/1〜6/30 |
| 公式サイト | https://www.city.ota.tokyo.jp/sangyo/kogyo/kakuho/sangyo_syougakukin.html |
※この表の項目(対象業種・利用目的・対象地域・従業員数)は、GRANTOSの補助金診断の検索軸に対応しています。
自分の会社が対象になる他の補助金・助成金がないか気になる方は、3分でできる補助金診断も活用してみてください。
対象業種の判定や転籍者の扱いなど、個別の状況で迷う場合は専門家に相談するのも一つの手です。
よくある質問
個人事業主やフリーランスでも対象になりますか?
対象になりません。就職先が中小の法人(製造業・運輸業・建設業)であり、申請者本人が正社員として雇用されていることが前提の制度です。個人事業主として独立した場合や、業務委託契約は対象外です。
転職者(すでに社会人経験がある人)も対象になりますか?
対象になります。この制度は新卒に限定していません。令和7年4月1日以降に新たに区内中小の対象業種へ就職したのであれば、転職者であっても40歳未満などの要件を満たせば申請できます。
支援金をもらうと税金がかかりますか?
かかりません。この支援金は所得税法上「学資に充てるため給付される金品」に該当するため、非課税所得として扱われます。給与所得とは別に受け取れます。
免責事項: 本記事の内容は2026年7月時点で確認できた情報にもとづきます。対象要件・支援額・申請期間は変更される場合があるため、申請前に必ず大田区の公式ページおよび最新の募集要項でご確認ください。
出典:
