障害のある人を雇うのが初めてで、任せられる仕事がまだ見えていない会社もあります。いきなり本採用にせず、まず試しに働いてもらい、そのあとで継続雇用に進むかを決める方法があります。この試行雇用に使えるのが、障害者トライアル雇用助成金です。
雇用保険の適用事業所の事業主がハローワークなどの紹介で障害のある人を試行雇用すると、精神障害者以外の人なら月額4万円が最長3か月(最大12万円)出ます。精神障害者は月8万円を3か月と月4万円を3か月で最大36万円、精神障害者・発達障害者を週10〜20時間から始める短時間コースは月4万円を最長12か月で最大48万円です。公式ページに公募期間の記載はなく、期限は試行雇用の開始日と終了日から数えます。紹介を受ける前に採用の話が進んでいると、対象外になる点に注意してください。
障害者トライアル雇用助成金の要点まとめ
正式名:トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・短時間トライアルコース)
だれが
- 申請者
- 事業主(雇用保険の適用事業所)
- 対象業種
- 業種の指定なし
- 利用目的
- 障害者の試行雇用(継続雇用への移行が目的)
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 公式ページに記載なし
いくら
- 補助上限額
- 最大48万円(短時間コース12か月)。通常コースは12万円、精神障害者は36万円
- 補助率
- 定額(月額4万円。精神障害者は最初の3か月が月額8万円)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 公募期間の定めなし(試行雇用の終了日の翌日から2か月以内)
うちの会社は使える?
次の8つにすべて当てはまれば、対象の見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 8
紹介元は、ハローワークか一定の条件に同意した民間の職業紹介事業者等です。求人は紹介を受ける前に出しておきます。継続雇用する労働者は、雇用保険の被保険者になり1年を超える雇用が見込まれる人を指します。週20時間以上の条件は、短時間コースには当てはまりません。適用事業所は、雇用保険に入っている従業員がいる事業所です。資格取得の届出は試行雇用の期間について出し、短時間コースで週20時間未満の人は要りません。保管する書類は、出勤簿・労働者名簿・賃金台帳です。
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 紹介の前に内定を出していた
- ✕ 事業主や取締役の3親等以内の親族を雇う
- ✕ 過去3年以内に自社で働いた人を雇う
- ✕ 補助金・委託費でその人の人件費を出す
- ✕ 過去1年以内にその人を雇っていた
- ✕ 元の雇用主の親会社・子会社など
- ✕ 就労継続支援A型事業所である
過去3年・過去1年は、試行雇用を始める日の前日から数えます。過去3年の働き方は、雇用・請負・委任・出向・派遣などを含みます。補助金・委託費は国や地方公共団体などのものです。その人を雇っていた事業主と、資本や人事の面で密接な関係にある事業主も対象外です。A型事業所は障害者総合支援法の福祉サービスの事業所で、障害のある人が雇用契約を結んで働きます。利用者以外を雇う場合は除きます。
ほかに、事業主側の条件もあります。試行雇用を始める日の前日から6か月さかのぼった日から、試行雇用が終わる日までを「基準期間」と呼びます。この間に、事業主都合で雇用保険の被保険者を離職させていると支給されません。会社都合などの離職(雇用保険の離職区分1Aまたは3A)が被保険者数の6%を超えた場合も同じです。ただし、その離職者が3人以下なら対象から外れません。
対象になる人は、どんな人?
雇う人は障害者雇用促進法が定める障害者で、障害の原因や種類は問われません。そのうえで、次のどれかに当たる必要があります。
- 重度の身体障害者・重度の知的障害者・精神障害者(この3つは、次の3条件を満たさなくても対象)
- 紹介日(職業紹介を受けた日)に、就労経験のない職業への就職を希望している人(学校在学中のパート・アルバイトは経験に数えません)
- 紹介日の前2年以内に、離職が2回以上か転職が2回以上ある人
- 紹介日の前に、パート・アルバイトを含め一切働いていない期間が6か月を超えている人
どの場合も、継続雇用での採用を希望し、試行雇用も理解したうえで希望している人が前提です。学校を卒業する前の人は、卒業日の翌日以降でなければ試行雇用を始められません。紹介日に次のどれかに当たる人は対象になりません。
- すでに継続雇用の労働者として働いている人
- 自営業や役員で週30時間以上働いている人
- 学校に在学中の人(卒業年度の1月1日を過ぎて内定がない人は除く)
- 別の試行雇用の期間中の人
ただし重度の身体障害者や45歳以上の身体・知的障害者、精神障害者は、すでに継続雇用の労働者でも対象になることがあります。
いくら受け取れる?
支給額は、雇う人の障害の種類とコースで決まります。賃金の何割という計算ではなく、月額の定額です。
- 精神障害者以外の人(通常コース):4万円 × 3か月 = 12万円
- 精神障害者(通常コース):8万円 × 3か月 + 4万円 × 3か月 = 36万円
- 精神障害者・発達障害者の短時間コース:4万円 × 12か月 = 48万円
48万円は、短時間コースを12か月まるごと使った場合の最大額です。3か月で終われば、短時間コースでも4万円 × 3か月 = 12万円になります。
毎月の支給額は、就労予定日数に対する出勤日数の割合で決まります。1か月の就労予定が20日の場合は、次のようになります。
- 15日出勤(75%):4万円(精神障害者の最初の3か月は8万円)
- 12日出勤(60%):3万円(同6万円)
- 8日出勤(40%):2万円(同4万円)
- 4日出勤(20%):1万円(同2万円)
割合が75%以上なら満額で、25%を下回ると1万円になります(出勤が0日の月は支給されません)。年次有給休暇など就業規則等で定めた有給の休暇は、本人都合の休みに数えません。事業主の都合で休業させた日は、割合の計算に響きます。期間の途中で本採用に切り替えた場合は、切り替えの前日までが対象です。
試行雇用は何か月やる?
期間は、障害の種類で違います。
- 原則3か月(身体障害者・知的障害者で重度でない人は、本人との合意で1か月か2か月にもできる)
- 精神障害者は原則6か月以上12か月以内(合意があれば3〜5か月にもできる)。ただし助成金の対象は6か月までで、それより長くしても支給は増えません
- 短時間コースは3か月以上12か月以内
在宅勤務などのテレワークで働く場合は、精神障害者以外でも期間を最長6か月に延ばせます。支給の対象は延ばさない場合と同じで、3か月分までです。
短時間コースは、始めるときの週の所定労働時間を10時間以上20時間未満にします。体調や職場への慣れに合わせて、期間中に20時間以上を目指す形です。求人も、短時間トライアル専用で出す必要があります。
申請の流れは? 手順の順番
「求人を出してから紹介を受ける」順番が崩れると、あとから直せません。時間の順に並べました。
- 求人を出す(事業主→ハローワーク。障害者トライアル雇用求人として出します。求人数を超える試行雇用は始められません)
- 紹介を受けて面接する(事業主→応募者。選考は書類ではなく面接で行います)
- 雇用契約を結び、試行雇用を始める(事業主→本人。雇用保険の資格取得の届出も出します)
- 開始日から2週間以内に、実施計画書を出す(事業主→紹介したハローワーク。民間の紹介のときは、事業所の所在地を管轄する労働局かハローワーク。雇用契約書か雇入れ通知書を添えます。民間の紹介のときは、紹介証明書と対象者確認書類も添えます)
- 試行雇用を実施する(賃金を支払期日に払い、出勤簿や賃金台帳を整えておきます)
- 終了日の翌日から2か月以内に、支給申請を出す(事業主→管轄の労働局。ハローワーク経由でも、電子申請でも出せます)
支給申請の期限は、試行雇用が終わった日の翌日から2か月以内です。過ぎると受け取れなくなります。
起算日は、場合によって変わります。精神障害者で期間が6か月より長いときは、開始から6か月がたった日からです。期間の途中で離職したときはその翌日、途中で継続雇用に移ったときはその移行日です。短時間コースで期間が6か月を超えるときは、開始から6か月がたったときと終了の翌日の2回に分けて申請します(終了後にまとめて出すこともできます)。
実施計画書には、「継続雇用に移るための要件」を書きます。この要件は、始める前に本人とよく話し合って同意を得てから出します。
必要な書類
準備できた 0 / 10
実施計画書の正式名は「障害者トライアル雇用等実施計画書(共通様式第1号)」で、ハローワーク・労働局の様式は厚生労働省のサイトにもあります。結果報告書兼支給申請書(共通様式第2号)は、計画書を受理したハローワーク等が計画書の写しと一緒に渡します。出勤簿などは期間中の出勤状況が分かる書類、賃金台帳は支払期日までに賃金を払ったことが分かるものです。雇用契約書は雇入れ通知書でもよく、継続雇用後のものは移行した場合だけ出します。紹介証明書・対象者確認書類は、民間の職業紹介事業者等の紹介の場合だけ計画書と一緒に出します。
労働者名簿も、整備して保管する書類です。支給後も、出した書類の写しを5年間保存します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 紹介の前から採用の話が進んでいた:紹介を受ける前に選考を始めていたり、雇用の内定があったりすると対象外です。
- 期間中に事業主都合で辞めさせた:試行雇用の期間に、事業主の都合で解雇などをすると支給されません。
- 賃金を期日までに払っていない:支払期日を過ぎた賃金が残ると支給されません。試行雇用が終わった月の支払期日から1か月以内に払えなければ、対象外になります。
- 試行雇用のあと、継続雇用しなかった人が多い:過去3年間に継続雇用に移らなかった人と支給申請をしなかった人の合計が3人を超え、かつ継続雇用に移った人の数を上回ると対象外です。
- 高年齢者雇用確保措置の勧告を受けたままになっている:高年齢者雇用安定法に基づく雇用確保措置の勧告を受け、申請日までに是正していない事業主は対象外です。
- 雇用関係助成金に共通の条件に当たる:前年度より前の労働保険料の未納、申請日の前日から1年前までの労働関係法令の違反、不正受給から5年が過ぎていないことなどがあると受け取れません。
- 求人票と実際の労働条件が違う:本人からハローワークや労働局に申し出があり、労働条件に不利益や違法行為がある場合は支給されません。
併用と、令和8年の改正
試行雇用のあとで継続雇用に移った場合は、移行日を雇入れ日とみなして「特定就職困難者雇用開発助成金」を受けられます。厚生労働省のパンフレットに書かれています。ただし同じ雇入れを対象に2つ以上の助成金を同時に申請すると、支給されるのは一方だけです。同じ事由で原子力災害対応雇用支援事業などの助成を受けた場合も、この助成金は支給されません。
支給要領と実施要領は、令和8年4月8日に改正されました。令和8年4月8日より前に紹介を受けた事業主には、改正前のルールが引き続き適用されます。
よくある質問
求人サイトで直接応募してきた人を雇った場合は対象ですか?
対象になりません。この助成金は、ハローワークか一定の条件に同意した民間の職業紹介事業者等の紹介で雇い入れることが条件です。知人の紹介や求人サイトからの直接応募で採用した場合は、紹介を介していないので支給されません。民間の職業紹介事業者を使うときは、その事業者が助成金を取り扱える事業者かを先に確かめてください。
紹介の前に面接をしてしまいました。申請できますか?
申請できない可能性が高いです。紹介の前にその人への選考を始めていた事業主は、対象外とされています。雇用の内定があった場合も同じです。試行雇用の選考は、紹介を受けたあとに書類ではなく面接で行う決まりです。紹介前の面接に当たるかどうか迷うときは、労働局かハローワークに事実関係を伝えて相談してください。
試行雇用の途中で本採用に切り替えてもいいですか?
切り替えられます。制度の目的は、試行雇用のあとの継続雇用への移行です。途中で移行した場合は、移行日の前日までが支給の対象です。支給申請の期限は移行日から数えて2か月以内です。移行した月は、その月の出勤日の割合で支給額が決まります。移行後の雇用契約書も、支給申請に添付する書類です。
精神障害者の試行雇用を12か月にすると、12か月分もらえますか?
もらえません。精神障害者の試行雇用は6か月以上12か月以内で設定できますが、助成金の支給対象は最長6か月です。6か月を超える期間は、支給が増えません。最初の3か月が月額8万円で次の3か月が月額4万円なので、合計36万円が上限です。12か月の計画を立てるときは、後半の期間は支給がない前提で見込んでおくと安心です。
短時間トライアルコースは、誰でも使えますか?
使えるのは精神障害者か発達障害者です。ほかの障害の人は、通常のコースが対象になります。始めるときの週の所定労働時間を10時間以上20時間未満にし、期間中に20時間以上を目指します。期間は3か月以上12か月以内で、求人も短時間トライアル専用で出す必要があります。支給は月額4万円で、最長12か月です。
週の所定労働時間が20時間未満でも、通常コースは使えますか?
使えません。通常のコースは、期間中の週の所定労働時間が20時間以上であることが条件です。試行雇用の途中で週20時間未満に変更した場合は、変更の前日までが支給の対象になります。週10〜20時間で始めたい人向けには、精神障害者・発達障害者に限って短時間コースがあります。
親族や、以前アルバイトだった人を雇っても対象ですか?
対象外になる場合があります。事業主や取締役の3親等以内の親族は対象外です。また、試行雇用を始める日の前日から過去3年以内に、その事業所で雇用・アルバイト・請負・委任などの関係があった人や出向・派遣で働いた人も対象になりません。事前研修や職場適応訓練(短期のものを除く)で関わった人も、3年以内なら対象になりません。雇う前に、該当しないかを確かめてください。
試行雇用のあと、継続雇用しない場合に不利になりますか?
不利になることがあります。過去3年間に継続雇用に移らなかった人と支給申請をしなかった人の合計が3人を超え、かつ継続雇用に移った人の数を上回ると支給されません。本人の都合による離職や本人の責めによる解雇、期間の終了時に本人が合意した離職は、この数に入りません。
申請はどこに出しますか?
試行雇用を行った事業所の所在地を管轄する労働局に出します。ハローワークを経由して出すこともできます。厚生労働省のページには、電子申請の案内もあります。実施計画書だけは、開始日から2週間以内に紹介したハローワークなどへ出す点が別です。窓口は、厚生労働省の「支給申請窓口」のページで確かめられます。
申請期限を過ぎたらどうなりますか?
申請期限を過ぎると、助成金を受け取れなくなります。通常コースは、試行雇用が終わった日の翌日から2か月以内です。ただし、精神障害者で6か月を超える期間のときや、途中で離職したとき、途中で継続雇用に移ったときなどは起算日が変わります。起算日が分からないときは、早めに労働局かハローワークに確かめてください。
継続雇用に移ったあとに使える助成金はありますか?
「特定就職困難者雇用開発助成金」です。試行雇用から継続雇用に移った場合は、移行した日を雇入れ日とみなして受給できます。厚生労働省のパンフレットに書かれています。支給の条件はその助成金の要領で別に定められています。移行が決まる前に、労働局かハローワークで受給できるかを確かめておくと準備しやすくなります。
問い合わせ先はどこですか?
事業所の所在地を管轄する都道府県労働局か、最寄りのハローワークです。助成金の窓口は、厚生労働省の「支給申請窓口」のページに一覧があります。パンフレットには、助成金を受けるためのすべての要件が書かれているわけではないと注記されています。細かい条件に迷うときは、求人を出す前の段階で相談しておくと手戻りを防げます。
