女性の係長や管理職を1人増やすと、取組ごとに30万円。東京しごと財団のこの奨励金は、そう組み立てられています。女性役員を増やす、非正規でも就ける役職をつくる、といった取組も選べます。対象になるのは、その役職で女性の割合が4割を下回っている会社だけです。役職ごとに数えます。
この記事は、奨励金そのものの解説です。取りやめるときに出す「中止届」は、後半で説明します。
女性の活躍推進に向けた職場環境改善奨励金の要点まとめ
正式名:令和8年度女性の活躍推進に向けた職場環境改善奨励金
だれが
- 申請者
- 都内の中小企業等(個人事業主を含む)
- 対象業種
- 業種の指定なし(風俗営業等は対象外)
- 利用目的
- 女性の登用拡大、非正規従業員の処遇改善
- 対象地域
- 東京都(本社または主たる事業所が都内)
- 従業員数
- 常時雇用の労働者が300人以下
いくら
- 補助上限額
- 最大180万円(取組A〜Dが各30万円、E・Fは加算)
- 補助率
- 定額(A〜D各30万円、E10万円、F1人10万円)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年6月15日〜2027年3月31日(月ごとに全10回)
- 事業の完了
- 支給決定後の実施期間6か月以内(回ごとに期日あり)
うちの会社は対象になる?
次の条件をすべて満たす必要があります。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 女性が4割以上の区分で申請する
- ✕ 過去にこの奨励金を受給した
- ✕ 同じ取組で国や都の奨励金を受けた
補足を書きます。
常時雇用する労働者とは、期間の定めがない人です。有期雇用でも、過去1年以上続けて雇われている人、または雇入れ時から1年以上続くと見込まれる人を含みます。就業規則の届出は、常時雇用の労働者が10人未満の企業は不要です。届出義務がなくても、申請日時点で作成済みなら就業規則を提出します。
4割の判定は、増やしたい役職の区分ごとに行います。役員を増やすなら役員の中で、管理職を増やすなら管理職の中で数えます。式は「その区分の女性の人数÷その区分の人数×100」で、40%未満が条件です。新設する役職は、同じ雇用管理区分(職種や雇用形態などで分けた労働者の区分)の女性割合で見ます。非正規向けの退職金制度(取組E)だけは、区分ごとの女性割合を問いません。
管理職は課長級以上で、役員は除きます。係長職は課長級より下で、通常「係長」と呼ばれる人か、同じ重さの職務の人です。
併給の制限もあります。令和6年度の雇用環境整備促進奨励金、令和7年度の男女間賃金格差改善促進奨励金を、同じ取組内容で受給した会社は対象外です。
ほかに、宗教活動や政治活動が主な目的の団体、民事再生・破産などの手続き中の会社、都や都の関連団体への賃料などを滞納している会社も対象外です。令和8年度にこの奨励金を申請したことがある会社も、申請できません。
いくらもらえる?
取組ごとの定額です。A〜Dのうち1つ以上が必須で、EとFは加算です。EかFだけの申請はできません。
| 取組 | 金額 |
|---|---|
| A 女性役員の増加 | 30万円 |
| B 女性管理職の増加 | 30万円 |
| C 女性係長職の増加 | 30万円 |
| D 非正規でも就ける役職の新設 | 30万円 |
| E 非正規の退職金制度の導入(加算) | 10万円 |
| F 女性の育成計画と研修(加算) | 1人10万円(最大5人) |
計算例です。
- 女性係長を1人増やす:30万円
- 女性管理職と女性係長を1人ずつ増やす:30万円 + 30万円 = 60万円
- 上の2つに退職金制度(E)と、育成計画の対象2人(F)を足す:60万円 + 10万円 + 10万円 × 2人 = 90万円
- A〜Dをすべて実施し、Eを導入し、Fを5人:30万円 × 4 + 10万円 + 10万円 × 5人 = 180万円
上限の180万円に届くのは、4つの取組すべてで女性が就任し、5人分の育成計画まで進めた場合です。審査で、申請額より少なく決まることもあります。
何に使える?
使い道を決める補助金ではありません。取組を実施した結果に対する定額の奨励金です。ただし、取組には次の決まりがあります。
対象にならないもの
- 実施期間より前にすでに実施済みの取組
- 同じ人を複数の取組(A〜D)でかぞえること
- E・Fだけの申請
対象になるもの
- A:女性役員が1人以上増える。週3日以上、その会社を主な勤務場所として業務に専念している人です
- B:女性管理職が1人以上増える
- C:女性係長職が1人以上増える
- D:パートなどの非正規従業員でも就ける役職をつくり、女性の非正規従業員が1人以上就く
- E(加算):非正規従業員の退職金制度を新たに導入し、対象に女性が1人以上いる
- F(加算):B〜Dで就いた女性の育成計画を立て、研修をする
取組A〜Dは、取組ごとに別の人が対象です。実施期間中の新規採用で増えた場合も、要件を満たせば対象になります。
申請の流れ
- 取組を決める(事業者。A〜Dから1つ以上。行動計画に書く内容を社内で固めます)
- 支給申請を出す(事業者→東京しごと財団。Jグランツ。月ごとの受付期間内)
- 支給決定を受ける(財団→事業者。決定のあとに取組を始める)
- 取組を実施する(事業者。支給決定後の実施期間6か月以内。行動計画の届出、厚労省のデータベースでの公表、全従業員向け研修を含む)
- 専門家の派遣を2回受ける(事業者。1回目は実施期間の開始後すぐ。2回目は1回目の月から3か月以上あと)
- 実績報告を出す(事業者→財団。Jグランツ。回ごとの報告期間内)
- 支払いを申請する(事業者→財団。額の確定通知のあと、おおむね1か月以内)
用語を説明します。行動計画は、女性活躍推進法にもとづく一般事業主行動計画です。自社の女性活躍の状況を把握し、課題を分析して、数値目標などを定めます。これを都道府県の労働局に届け出ます。厚労省のデータベースは「女性の活躍推進企業データベース」で、行動計画と、女性労働者・係長職・管理職・役員の割合、男女の賃金の差異を公表します。
Jグランツは、デジタル庁の補助金の電子申請システムです。使うにはGビズIDプライムというアカウントが要ります。発行に時間がかかるため、先に取っておいてください。
申請は回ごとに100社です。受付は、回の最終日か、基金の予算が全額使われた日のいずれか早い時点で終わります。定員に達して受け付けられなかった会社は、次回以降に申請できます。1回目の支給申請は2026年6月15日から30日まで、実施期間は8月1日から2027年1月31日までです。以降の回は、受付月が1か月ずれるごとに実施期間も1か月ずれます。別の回の実施期間に取り組んでも、奨励金は出ません。
専門家派遣は、女性活躍に詳しい社会保険労務士などが行います。1回おおむね2時間です。1回目は原則、都内の事業所への訪問、2回目は訪問かオンラインです。
必要な書類
準備できた 0 / 12
表の補足です。
- 雇用保険の確認通知書は、都内勤務の常時雇用の労働者1名分です。
- 履歴事項全部証明書は、発行から3か月以内のものです。登記情報提供サービスのものは使えません。
- 個人事業主は、履歴事項全部証明書の代わりに開業・廃業等届出書と住民票記載事項証明書を出します。
- 行動計画は、労働局の受付日が申請日以前のものです。常時雇用の労働者が100人未満で、申請日時点で未策定の会社は不要です。
- 女性活躍DBの写しは、申請日時点で公表済みの項目が要ります。常時雇用の労働者が101人以上なら、男女の賃金の差異と管理職の女性割合に加えて1項目です。100人以下は、1項目以上公表済みの会社だけが出します。データの最終更新日は申請日以前にします。
- 登記上の本店と本社機能のある事業所が違う場合や、登記上の本店が都外の場合は、水道光熱費の領収書か賃貸借契約書も要ります。
- 名簿は取組に応じて、役員、管理職、係長職の別に出します。女性が4割未満と分かるものが必要です。
- 実績報告では、就任の資料、行動計画、データベースの写し、専門家派遣完了報告書、研修資料などを別に出します。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 指定の期間を守れなかった:実施、専門家派遣2回、実績報告のどれか一つでも期日を過ぎると、その回の奨励金は出ません。
- 別の申請回の期間で実施した:申請した回ごとに実施期間が決まっています。ずれると対象外です。
- 取組の変更:支給申請後は原則、取組を変えられません。変えたいときは撤回届を出し、承認を得て出し直します。
- 併給の制限に当たった:同じ取組で、国や都などの奨励金を受給すると、この奨励金は出ません。
- 不正や条件違反が分かった:支給決定が取り消され、すでに払われた分は返還を求められます。返還が遅れると、年10.95%の違約加算金や延滞金もかかります。
- 書類の不備・事務局の連絡への未対応:追加書類の期限を過ぎると、辞退したとみなされます。
途中でやめるとき(撤回届と中止届)
この奨励金には、取りやめるための届け出が2種類あります。出すタイミングで結果が変わります。
支給申請を取り下げる場合は、支給申請撤回届出書(様式第5号)です。支給決定の通知から14日以内に、Jグランツで出します。撤回すると申請回数に数えられず、もう一度申請できます。
支給決定の通知から14日を過ぎてから取組を取りやめる場合は、中止届出書(様式第7号)を速やかに出します。中止届を出すと申請回数に数えられ、奨励金の申請も専門家派遣も、もうできません。やむを得ない事情で取り組めなくなったときの手続きです。
なお、名称や所在地、代表者が変わった場合は、変更届出書(様式第6号)です。
よくある質問
常時雇用の労働者が300人を超えていたら申請できませんか?
申請できません。支給申請日の時点で、常時雇用する労働者が300人以下であることが条件です。ただし、同じ事業の別の奨励金に、女性活躍情報公開促進奨励金があります。こちらは100人以下の会社が対象で、金額は20万円です。二つを同時には申請できませんが、情報公開促進奨励金の額が確定したあとに、この奨励金を申請できます。基準は取組内容も違うため、公式サイトの案内で確かめてください。申請要件のチェックも公式サイトにあります。
女性の割合が4割以上の会社は対象外ですか?
増やしたい役職の区分で、女性が4割以上なら、その取組は対象外です。たとえば会社全体の女性が少なくても、管理職の女性がすでに4割以上なら、管理職の増加(B)では申請できません。係長職や役員など、4割を下回る別の区分で取り組めるかを見ます。区分ごとの人数を、組織図と名簿で確かめておくと安心です。
取組はいくつ選べますか?
A〜Dから1つ以上が必須で、最大でA〜F全部を選べます。EとFは加算で、単独では申請できません。申請は1事業者につき1回だけです。複数の取組をやるなら、1回の申請にまとめます。後から取組を足すことはできません。また、A〜Dはそれぞれ別の人が対象です。同じ女性を管理職と係長職の両方でかぞえることはできません。
申請したあとに取組を変えられますか?
原則として変えられません。支給申請後の取組の変更は認められていません。どうしても変えたい場合は、支給申請撤回届出書(様式第5号)を出し、財団の承認を得てから、改めて申請します。撤回は支給決定の通知から14日以内です。撤回すれば申請回数に数えられないので、再申請できます。ただし、期間や定員の都合で、希望の回で出せないこともあります。
専門家派遣は何回で、費用はかかりますか?
2回です。1回の相談はおおむね2時間で、1回目は原則、都内の事業所を訪ねる形です。2回目は訪問かオンラインです。専門家派遣は無料です。ただし、申請書類の作成や提出にかかる経費は、事業者の負担と書かれています。専門家は助言をするだけで、行動計画の作成と申請は事業者が行います。
全従業員向けの研修は、パートも対象ですか?
対象です。正規従業員と非正規従業員のすべてに、行動計画にもとづく自社の取組を伝える研修をします。原則、実施期間中に全員が受講を終えます。勤務時間外や休日に行うなら、時間外勤務手当を払うか、代休や振替休日を与えてください。研修の概要と、出席状況が分かる資料が実績報告に要ります。
すでに行動計画を公表している会社はどうしますか?
実施期間中に、取組の内容を行動計画に新しく書き加え、労働局に変更届を出します。取組の拡充や前倒しを追記する形でも構いません。変更によっては、えるぼし認定の基準を満たさなくなることがあるので、先に労働局に相談してください。そのうえで、厚労省のデータベースで、必要な項目を公表します。
公表しなければならない項目は何ですか?
行動計画に加えて、労働者に占める女性の割合、係長職に占める女性の割合、管理職に占める女性の割合、役員に占める女性の割合、男女の賃金の差異の5つです。厚労省の「女性の活躍推進企業データベース」で、実施期間中に公表します。実績報告では、行動計画のPDFが載った企業ページの写しを出します。更新日が取組期間内であることが必要です。
他の助成金と一緒にもらえますか?
同じ取組内容で国や都の奨励金を受給している、またはした場合は、この奨励金は受けられません。国や都が団体に委託している事業も含みます。令和6年度の雇用環境整備促進奨励金や、令和7年度の男女間賃金格差改善促進奨励金を、同じ取組で受給した場合も対象外です。別の取組で受け取る分は、対象になる可能性があります。
中止届を出すと何が起きますか?
支給決定の通知から14日を過ぎて取組を取りやめるときに出す届け出です。出すと申請回数に数えられ、この奨励金の申請も専門家派遣も、もうできません。14日以内なら、中止届ではなく撤回届(様式第5号)で足りる場合があります。この場合は申請しなかった扱いなので、やり直せます。迷うときは、決定の通知から14日以内に事務局へ相談してください。
専門家に頼んで申請を代行してもらえますか?
できません。Jグランツでは、申請企業に在籍する人以外の、社会保険労務士や行政書士などによる手続きの代行はできないと、募集要項に書かれています。担当者の欄にも、連絡が取れる自社の担当者を入れます。専門家派遣で助言は受けられますが、行動計画の作成と申請は、事業者自身が行います。
奨励金はいつ振り込まれますか?
実績報告の審査が通ると、額の確定通知が届きます。それを受け取ったあと、おおむね1か月以内にJグランツで支払いを申請します。財団が申請を正式に受け取ってから、1か月程度で口座に振り込まれます。振込の連絡はなく、振込日の問い合わせにも応じてもらえません。通帳で、財団の振込名義と金額を確かめてください。
問い合わせ先はどこですか?
女性の活躍推進に向けた職場環境改善プロジェクト事務局で、電話は03-6744-6539です。平日の午前9時から午後5時まで受け付けます。土日・祝日・年末年始は除きます。行動計画の書き方も、事務局に問い合わせられます。公式サイトには、5つの質問で対象かどうかが分かる、申請要件のチェックもあります。
