教育訓練休暇制度の30万円は、すでに休暇制度を持つ会社には出ません。対象は、これから制度を新しくつくる会社だけです。
就業規則に有給の教育訓練休暇を定め、社員が実際に取得すると、30万円が1事業主につき一度だけ支給されます。対象の社員が増えても額は変わりません。賃金を5%以上上げると、6万円が加わって36万円です。計画届を出す順番を間違えると対象外になるので、先に流れを確かめてください。
人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)の要点まとめ
正式名:人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)
だれが
- 申請者
- 事業者(雇用保険適用事業所の事業主)
- 対象業種
- 業種の指定なし
- 利用目的
- 社員が自発的に学ぶための有給休暇制度の導入
- 対象地域
- 全国
- 従業員数
- 規定なし(企業規模を問わない)
いくら
- 補助上限額
- 36万円(基本30万円+賃金要件を満たすと加算6万円)
- 補助率
- 定額支給(1事業主につき1回限り)
いつ・どこへ
- 申請受付
- 通年(計画届は制度の施行日の6か月前〜1か月前)
- 公式サイト
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」
うちの会社は対象になる?
次の6つにすべて当てはまれば、対象になる見込みです。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ すでに休暇制度を導入済み
- ✕ 過去に同じ休暇の助成を受給済み
- ✕ 計画届より前に制度を始めた
- ✕ 就業規則を施行日までに届け出ていない
用語を先に説明します。雇用保険適用事業所とは、雇用保険の被保険者がいる事業所のことです。推進者(職業能力開発推進者)は、社内の人材育成を進める担当者で、人事や教育担当の課長などから選びます。育成計画(事業内職業能力開発計画)は、自社の人材育成の方針を書いた計画です。労働組合などの意見を聴いて作り、社員に知らせます。
就業規則か労働協約に定めた休暇だけが対象です。個別の雇用契約や慣習で休暇を出している場合は、対象になりません。
事業所が複数ある会社は、すべての事業所の就業規則に休暇を定め、すべて届け出ます。申請は会社単位で、主たる事業所(登記上の住所の事業所)を管轄する労働局へ、全事業所の書類をまとめて出します。
いくら支給される?
額は定額で、30万円です。人数に応じて増える仕組みではありません。
- 従業員30人の会社が制度を導入し、社員1人が5日取得する:30万円
- 被保険者120人の会社が導入し、5人が各5日取得する:30万円
- 上の会社が、取得した社員全員の賃金を5%以上上げる:30万円 + 6万円 = 36万円
最後の6万円は賃金要件の加算です。通常分とは別に申請します。毎月決まって支払う賃金を、改定前後の3か月分で比べて5%以上増えていれば満たします。資格手当を就業規則に定めて払い、賃金が3%以上増える形でも構いません。賃上げは、3年の計画期間が終わった日の翌日から1年以内に行います。
取得させる日数は会社の規模で決まる
3年の計画期間のあいだに、5日以上取得する被保険者が何人必要かは次のとおりです。
| 企業全体の被保険者数 | 5日以上取得する人数 |
|---|---|
| 100人以上 | 5人以上 |
| 100人未満 | 1人以上 |
時間単位で付与してもかまいません。申請様式の記入上の注意には「1年ごとに1人以上」という古い記載が残っていますが、令和8年8月3日版の資料ではこの要件は廃止されています。時間単位の場合は、取得した社員の1日の所定労働時間を1日として数えます。所定8時間の社員が3時間、4日、5時間と取れば、合わせて5日です。
休暇で受けられる学びは?
休暇で受ける学びは、事業主以外が行うものに限ります。社員が自分の意思で受けることも条件です。
対象にならないもの
- 業務命令で受けさせる研修
- 年次有給休暇を使って受ける講座
- 日常会話程度の語学など、趣味や教養が目的のもの
- 普通自動車の運転免許の講習
- 自社の製品説明や社内制度の説明
- 労働安全衛生法で義務づけられた安全衛生教育
- 意識改革やモラール向上の研修
対象になるもの
- 事業主以外が行う教育訓練や職業訓練
- 職業能力検定(職業に必要な技能を測る検定)
- キャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティング
申請の流れ
- 推進者を選び、育成計画を作る(事業主→社員への周知。計画届を出す日までに)
- 制度導入・適用計画届と事前確認書を出す(事業主→主たる事業所を管轄する労働局。施行日の6か月前〜1か月前)
- 就業規則に休暇を定め、届け出る(事業主→労働基準監督署。制度の施行日までに)
- 社員が休暇をとって学ぶ(社員→事業主。3年の計画期間のうちに、前の表の人数が5日以上)
- 支給申請を出す(事業主→労働局。計画期間の終了日の翌日から2か月以内)
3の届出は、常時10人未満の会社なら、労働者代表者との申立書で代えられます。この場合も、休暇を定めた就業規則そのものは必要です。
5の支給申請は、制度の施行日から6か月を過ぎ、要件を満たした時点で早めに出せます。たとえば施行日が2026年5月1日で、7月1日に要件を満たした場合は、11月2日から申請できます。
計画届は、郵送だと労働局に届いた日が提出日です。消印は使えません。電子申請は雇用関係助成金ポータルで行い、GビズIDが要ります。
必要な書類
準備できた 0 / 15
下の3行は、6万円の加算を別に申請するときの書類です。確認シートは訓練休暇様式第12号です。賃上げ前後3か月分の賃金台帳も要ります。様式は、計画届を出した時期の版を使います。
労働局から、これ以外の書類を求められることがあります。受講申込書や領収書の写しは、修了証の代わりになります。支払方法・受取人住所届は、登録済みなら出す必要がありません。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 計画届より先に制度を始めた:計画届の提出日より前に制度の施行日を置くと、対象外です。届いた日を確かめてから施行日を決めてください。
- 就業規則を届け出ていない:10人以上の会社は、施行日までに労働基準監督署へ届け出ます。施行日に間に合わなければ対象外です。
- すでに休暇制度がある:有給でも無給でも、導入済みなら対象外です。長期の休暇制度を含みます。
- 会社都合の離職が多い:計画届の提出日の前日から6か月前〜支給申請日に、解雇などで離職させた被保険者がいると対象外です。特定受給資格者(会社都合に近い離職の人)が被保険者の6%を超える場合も同じです。該当者が3人以下なら、この割合の要件は外れます。
- 一部の事業所にしか導入していない:事業所が複数ある会社は、全事業所の就業規則に定め、すべて届け出ます。
- 計画の変更を届けていない:施行日を変えるときは、早い方の日の前日までに変更届を出します。1か月以上遅らせるなら、計画届を出し直します。
同じ冊子に載る、ほかの2つの制度との違い
この助成金の詳細版パンフレットには、教育訓練休暇制度のほかに2つの制度が載っています。長期教育訓練休暇制度と教育訓練短時間勤務等制度です。この2つは人への投資促進コースの扱いで、令和4年度から8年度までの期間限定です。
| 制度 | 休める日数・回数 | 助成額 |
|---|---|---|
| 教育訓練休暇制度 | 3年間に5日以上(有給) | 30万円(定額) |
| 長期教育訓練休暇制度 | 30日以上(10日以上連続を含む) | 20万円+賃金助成 |
| 教育訓練短時間勤務等制度 | 30回以上の時間短縮・残業免除 | 20万円 |
長期休暇制度には、有給で休む社員の賃金助成があります。1人1時間あたり1,000円で、大企業は800円です。上限は1人1,600時間(大企業は1,200時間)です。
所定8時間の社員が、30日休んだ場合を計算します。
- 賃金助成:30日 × 8時間 × 1,000円 = 24万円
- 制度導入の助成と合わせて:20万円 + 24万円 = 44万円
この例は、賃金助成の上限には届きません。上限の1,600時間に届くのは、所定8時間で200日分の休暇を取ったときです。
教育訓練休暇制度と長期休暇制度を同時に申請し、両方の要件を満たすと、導入の助成は教育訓練休暇制度の30万円だけです。20万円は上乗せされません。
中小企業には、休む社員の代わりを確保した場合の加算もあります。新規採用や派遣の受け入れは、休暇の期間に応じて27万円、45万円、67万5千円です。同僚への手当は、手当の75%(月16万円まで)です。
人への投資促進コースの受付が終わる日の細かい扱いは、パンフレットに書かれていませんでした。長期休暇制度を考えるなら、先に管轄の労働局へ確かめてください。
よくある質問
すでに休暇制度がある会社は対象になりますか?
対象になりません。有給でも無給でも、教育訓練休暇制度を導入済みの事業主は助成の対象外です。長期の教育訓練休暇制度を入れている場合も同じです。過去に同じ休暇の助成金を受給した事業主にも支給されません。制度が未導入かどうかは、今の就業規則を見て確かめてください。年次有給休暇や慶弔休暇は、教育訓練休暇には当たりません。
社員が有給休暇を取って講座を受けたら対象になりますか?
対象になりません。助成の対象は、就業規則などに定めた教育訓練休暇を使って学んだ場合です。労働基準法の年次有給休暇を使った受講は、休暇の取得日として数えられません。年休を振り替えても同じです。教育訓練休暇は、学ぶ目的だけに使える別の休暇として、就業規則に新しく定める必要があります。
従業員が10人未満で、就業規則がありません。
教育訓練休暇を定めた就業規則を作る必要があります。常時10人未満の会社は、労働基準監督署への届出を、事業主と労働者代表者がつくる申立書で代えられます。申立書も施行日までに作ります。個別の雇用契約や、会社の慣習として休暇を出す形では対象になりません。必ず書面の規定にしてください。
何人に、何日取得させればいいですか?
3年の計画期間のうちに、企業全体の被保険者が100人以上なら5人、100人未満なら1人が、それぞれ5日以上取得する必要があります。時間単位で取らせた場合は、社員の1日の所定労働時間を1日として数えます。3時間、4日、5時間の取得は合計5日です。5日に満たない人は、人数に数えられません。
計画届はいつまでに出せばいいですか?
制度の施行日から数えて、6か月前から1か月前までの間に出します。就業規則の施行日がその基準です。郵送では、労働局に届いた日が提出日になります。消印の日ではありません。電子申請を使うなら、GビズIDの取得が先に要ります。施行日から逆算して、1か月前の日を予定表の起点にすると間違えにくくなります。
支給申請はいつ出せますか?
計画期間の終了日(施行日から3年)の翌日から、2か月以内です。ただし、計画期間の途中で要件を満たしていれば、施行日から6か月を過ぎた日の翌日以降に、早めに申請できます。令和8年4月7日の改正で、この早期申請ができるようになりました。申請の期間を過ぎると受け付けられないので、日付は先に控えておいてください。
36万円になる賃金要件とは何ですか?
取得した社員全員の毎月決まって支払う賃金を、5%以上上げる要件です。改定前後の3か月分の賃金総額で比べます。資格手当を就業規則に定めて払い、賃金を3%以上増やす形でも満たせます。残業代のように月ごとに変わる手当や、家族手当・通勤手当のように個人の事情で出る手当は、賃金に含めません。賃上げは、計画期間の終了日の翌日から1年以内に行います。通常分とは別に申請し、期間は、要件を満たした賃金を3か月払った日の翌日から5か月以内です。
他の助成金と一緒に受けられますか?
原則として受けられません。パンフレットには、他の助成金を受けている場合、この助成金とはどちらか一方を選ぶと書かれています。同じ経費や取り組みが重なるかどうかは、助成金ごとに扱いが違います。重なりそうな制度があるなら、申請の前に管轄の労働局へ確かめてください。1事業主が受けられるのは、教育訓練休暇制度の助成を1回だけです。
社労士に申請を任せても大丈夫ですか?
申請の代行は頼めますが、責任は事業主に残ります。パンフレットには、代理人が不正をした場合でも、事業主が不正受給の責任を問われることがあると書かれています。受給が取り消されると、返還のほか事業主名の公表や、5年間は助成金を受けられなくなる扱いもあります。書類は、事業所ごとに実際に作成したものを出してください。
申請から支給までどれくらいかかりますか?
期間はパンフレットに書かれていません。ただし、確認する項目が多いため、他の助成金より支給の可否を決めるまでに時間がかかると明記されています。支給予定日の約束はないので、資金繰りにこの30万円を前提として組み込まないでください。書類は5年間の保管が必要です。会計検査の対象になることもあります。
書類に不足があったら、あとから差し替えられますか?
原則としてできません。一度出した書類は、事業主の都合による差し替えや訂正ができない扱いです。原本から転記して作り直した書類も無効になります。出す前に、日付と記載の整合を確かめてください。労働局から補正を求められた場合に応じない事業主は、対象外になります。
問い合わせ先はどこですか?
主たる事業所(登記上の住所の事業所)を管轄する都道府県労働局です。厚生労働省のページに、労働局ごとの助成金の窓口と電話番号が載っています。詳しい支給要件は、教育訓練休暇等付与コースの詳細版パンフレットに書かれています。計画届の前に、窓口で対象になるかを相談しておくと安心です。
