補助金の鉄則は、設備の発注を交付決定のあとにすることです。この事業には例外がありました。事前着手届出が受理されれば、交付決定の前に発注した経費も、補助の対象に入る場合があったのです。
ただし受付はすでに終わっています。公募の締切は2026年6月4日の正午で、採択結果は2026年8月3日に公表されました。対象は日本国内で登記された法人で、補助率は1/3以内です。上限額も下限額も決まっていません。次の回があるかどうかは、事務局(低炭素投資促進機構、GIO)のページで告知される形になります。
小型エンジンMRO拠点強化支援事業の要点まとめ
正式名:脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(小型エンジンMRO拠点強化支援事業)
だれが
- 申請者
- 国内で登記された法人(共同申請も可)
- 対象業種
- 航空機の小型エンジンを整備する事業者
- 利用目的
- MRO拠点の設備導入・増強
- 対象地域
- 全国(事業は日本国内で実施)
- 従業員数
- 規定なし
いくら
- 補助上限額
- 上限額の定めなし
- 補助率
- 1/3以内
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年5月7日〜2026年6月4日正午(終了)
- 事業の完了
- 遅くとも2029年3月30日
先に発注できる「事前着手届出」とは?
MROは、Maintenance(整備)、Repair(修理)、Overhaul(分解・点検)の頭文字です。この事業は、航空機の小型エンジンを国内で一貫して整備できる拠点づくりを支えるものでした。
通常、補助の対象になるのは交付決定のあとに発注した経費だけです。設備の準備には時間がかかるため、この事業は「必要性かつ緊急性」があると事務局が認めた場合に限り、例外を置きました。事前着手届出をjGrantsで出し事務局が受理すると、受理通知に書かれた「事前着手開始日として認める日」以降の経費が対象になります。
届出の受付は、公募と同じ2026年5月7日から6月4日の正午まででした。事前着手の流れは、次のとおりです。
- 事前着手届出を出して受理される
- 発注して設備や工事に着手する
- 公募に応募して採択される
- 交付申請をして交付決定を受ける
- 事業を終えて支払い、確定検査を受ける
注意点が3つあります。
- 受理されても、採択されなければ補助金は出ません。届出の受理は、採択や交付決定の約束ではありません
- 発注が公募開始日(2026年5月7日)より前なら、届出があっても対象外です
- 届出が受理されなかった場合、交付決定より前の経費は対象外です
建物など取得した財産に抵当権をつけるのは、届出が受理された場合でも交付決定日以降でないと認められません。
うちの会社は対象になる?
次の6つがそろえば、対象になる見込みでした。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 法人でない事業者
- ✕ 国外で実施する事業
- ✕ 投資決定を先に対外発表済み
大企業も中小企業も申請できました。一般社団法人・一般財団法人・NPO法人・事業協同組合・農業法人・大学も、中小企業等として扱われます。中小企業基本法の中小企業者は、業種ごとに資本金か従業員数の上限が決まっていて、どちらか一方を満たせば該当します。製造業その他なら資本金3億円以下または従業員300人以下です。卸売業は1億円以下または100人以下、小売業は5,000万円以下または50人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下です。
ただし大企業が株式の2分の1以上を持つなどのみなし大企業は、中小企業でも大企業として扱われます。資本金5億円以上の法人に株式の100%を持たれている会社と、直近3年分の課税所得の年平均が15億円を超える会社も、大企業の扱いです。
排出削減の取組とは、2025年度と2030年度の排出削減目標を設定して公表し、第三者の検証を受ける内容です。GXリーグ(排出削減に取り組む企業の枠組み)に参加していれば、実施したものとみなされます。2022年度のCO2排出量が20万トン未満の企業と中小企業は、その他の排出削減の取組を出すことで代えられました。
投資の対外発表には注意が要ります。原則として、交付決定日より前に投資の決定を発表した事業は対象外でした。中長期計画で「GXに向けた投資を行う」と書く程度で、個別の投資計画を決めたと発表していなければ、発表にはあたりません。採択先として公表されたあとなら、プレスリリースを出して構いません。
審査では、補助がなければ投資の収益性(内部利益率や回収期間)が投資判断の水準に届かない事業かどうかも問われました。
いくら戻ってくる?
補助率は対象経費の1/3以内です。「以内」とあるのは、審査の結果で希望した補助率を下回ることがあるためです。上限額と下限額は決まっておらず、全体の予算と採択件数を見て決まりました。
計算の仕組みを見るための仮の数字です。
- 対象経費12億円で、補助率が1/3のとき:12億円 × 1/3 = 4億円
- 審査で補助率が1/4に下がったとき:12億円 × 1/4 = 3億円
消費税は、申請時の計算では対象経費から外します。免税事業者など一部の事業者は、消費税等を含めて計算できました。
採択結果一覧は1件で、事業計画名は「国内小型エンジンMRO能力強化」です。申請者として4者(IHI、三菱重工航空エンジン、川崎重工業、IHIファイナンスサポート)の名前が並び、採択金額は3,989,760,666円とあります。4者の内訳は一覧に載っていません。この金額は、交付決定額の上限です。交付申請のあとに、この額を上限として交付決定額が別に決まります。
何に使える?
対象にならないもの
- 交付決定日より前の発注(事前着手が受理された場合を除く)
- 土地の取得費
- 既存の建物や設備の撤去費と移設費
- この事業をしなくても必要な、通常の設備更新
- パソコンなど、ほかの用途にも使える汎用品
- 価格の適正性がはっきりしない中古品
- 割賦契約(リースには含まれません)
対象になるもの
- 機械装置等費(土木・建築工事、機械装置の購入、保守・改造・修理)
- 労務費(この事業に直接たずさわる人の人件費)
- その他経費(消耗品費、旅費、諸経費)
- 委託・外注費
実績報告書の作成や経理処理にかかる人件費は、対象外です。自社製品の購入や共同申請者への発注は、利益が除かれます。
申請の流れ
前回の公募は、次の順で進みました。
- gBizIDプライムを取る(法人→gBizID。jGrants申請に必須。早めに)
- 事前着手届出を出す(法人→GIO事務局。jGrants、2026年6月4日正午まで)
- 公募に応募する(法人→GIO事務局。jGrants、2026年6月4日正午まで)
- 書面審査と面接審査を受ける(第三者委員会。面接には代表権のある人が出る)
- 採択されたら交付申請を出す(採択者→GIO。原則2026年8月21日まで)
- 交付決定のあとに事業を進める(2026年10月を目処に、ステージゲート審査がある)
- 実績報告を出して精算払を請求する(事業完了後30日以内。遅くとも2029年3月30日)
ステージゲート審査は、事業の途中で、継続していいかを第三者委員会が決める審査です。結果によっては事業が中止になります。
必要な書類
準備できた 0 / 14
法人税申告書は3期分、決算報告書は直近3年度分です。共同申請では、共同申請者も申告書や決算報告書、履歴事項全部証明書、定款などを出します。金融機関の同意を示す資料やリース契約書(案)は、該当するときだけ要ります。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 相見積を取らずに発注した:同じ仕様で複数社から見積もりを取り最低価格の会社を選びます。合理的な理由がなければ、相見積のない発注は原則として補助の対象外です。契約先1者あたりの見積額が税抜50万円未満なら省けます。
- 事前着手の開始日より前に発注した:受理通知に書かれた日より前の発注は、対象になりません。
- 概算払を前提に計画した:支払いは、事業終了後の精算払が原則です。概算払を前提にした投資計画は認められません。
- ステージゲート審査で中止になった:中止が確定して通知された時点以降は補助が出ません。
- 取得した設備を勝手に処分した:処分制限期間内の譲渡や貸付、担保にする行為はできません。やむを得ない場合は、事前の承認を受け、原則として補助金の全部か一部を返します。
- 整備台数などの目標に届かなかった:外的な要因がないのに未達なら、経済産業省との協議のうえで補助金の返還を求められることがあります。
次の回に備えるなら
追加の公募を予告する記載は、GIOの事業ページと経済産業省の公募情報から確認できませんでした。この事業は2028年度を事業終了年度として設計されていて、採択結果も4者です。次の募集を前提にせず、告知が出たときにすぐ動ける準備を整えておく形が現実的です。
準備できることが3つあります。
- gBizIDプライムを取っておく。発行に時間がかかります
- 投資の決定を発表する時期を、交付決定のあとにそろえる
- 排出削減の目標設定と第三者検証の取組を始めておく
併用にも注意が要ります。補助対象が重複する国のほかの補助事業とは、原則として併用できません。併願を考えるなら事前に事務局へ相談します。
よくある質問
今から申請できますか?
この公募の受付は、2026年6月4日の正午で終わっています。採択結果も2026年8月3日に公表されました。次の回が出るかどうかは、GIOの事業ページで告知されます。経済産業省の公募情報にも同じ案内が載るため、あわせて見ておくと確実です。追加の公募が出たときに慌てないよう、gBizIDプライムの取得は先に済ませておけます。
事前着手届出を出せば、補助は確実にもらえますか?
確実ではありません。届出の受理は、採択や交付決定を約束するものではなく、受理後に採択されなければ補助金は出ません。届出が受理されなかった場合は、交付決定より前に発注した経費が対象外になります。届出の受理は、あくまで事務局が必要性と緊急性を認めたというだけです。採択されなかったときの自己負担も考えて、発注を決める必要があります。
補助率の「1/3以内」とは、どういう意味ですか?
対象経費のうち、最大で3分の1までが補助されるという意味です。「以内」とあるのは、審査の結果、希望した補助率を下回ることがあるためです。たとえば対象経費が12億円なら、12億円 × 1/3 = 4億円が最大になります。残りは自己資金や借入で用意します。補助金は精算払が原則なので、支払いの資金も先に必要になります。
補助金の上限額は、いくらですか?
事務局のQ&Aには、1企業あたりの上限額も下限額も特段設定しないとあります。全体の予算額と採択件数を見て決まる仕組みです。採択結果一覧に載る採択金額は、交付決定額の上限にあたります。交付申請のあとに、この額を上限として交付決定額が別に決まります。申請した額が、そのまま交付決定額になるわけではありません。
中小企業でも申請できましたか?
申請できました。対象は、単独または複数の大企業や中小企業等です。中小企業基本法の中小企業者のほか、一般社団法人、一般財団法人、NPO法人、事業協同組合、農業法人、大学も中小企業等に入ります。ただし、大企業が一定の割合の株式を持つ、みなし大企業は大企業として扱われます。排出削減の取組は、中小企業なら別の取組で代えられました。
個人事業主は対象でしたか?
対象外でした。公募要領の対象者は、法人に限られています。日本国内で登記された法人であり、国内に事業実施場所があることが条件です。外資系の企業でも、日本で登記されて事業実施場所があれば対象になります。海外で運営している事業所の事業は、日本国内で実施する事業ではないため、対象になりません。
リース会社を使って設備を入れることはできましたか?
できました。ただし設備を使う事業者とリース会社の共同申請になり、リース会社は1企業につき1社です。補助の対象は、リース会社が買った機械装置で、手数料や保険料は含まれません。リース料から補助金相当分が減っていることを示す書類が要ります。契約期間は、導入設備の減価償却期間以上にします。割賦契約はリースに含まれず、対象になりません。
土地や建物の費用は対象になりますか?
土地の取得費は対象外です。土木・建築工事費も、土地やオフィス用の建物を買う費用は含みません。一方で、機械設備を置くために必要な土木工事や工場などの建築工事は、対象経費にあたります。設備の取得に必要不可欠な基礎工事は対象になるとQ&Aにあります。建物とは別の設備なのか、切り離せない附帯設備なのかで経費の区分が変わるため、明細で分けて示します。
ほかの補助金と併用できましたか?
補助対象が重複する国のほかの補助事業とは、原則として併用できません。国のほかの補助金を申請すること自体は止められていませんが、同じ経費を重ねては受けられません。国が助成するほかの制度と重複した交付申請書の提出も、原則として認められません。併願や併用を考えるときは、事前に事務局へ相談します。
事業の途中で中止になることはありますか?
あります。2026年10月を目処に、ステージゲート審査が行われました。事業で得たデータや知見を蓄積する国内共通の仕組みと、その運用体制が審査されます。審査後に、追加の情報提出や実施内容の見直しを求められることがあります。審査の結果によっては、事業が中止になります。中止が確定した通知より後の分は、補助が出ません。
事業が終わったあとにやることはありますか?
報告が続きます。事業終了年度の翌年度に、国内連携体制の構築状況、作業効率の改善率、年間270台以上を整備できる体制の確立状況を報告します。毎会計年度の終了後90日以内に、事業継続の状況も5年間報告します。証拠書類は、事業が終わった国の会計年度の終了後5年間保存します。収益が出ても、収益納付は求められません。
問い合わせ先はどこですか?
申請方法、対象経費、申請書の記載内容は、事務局のGIO(低炭素投資促進機構)が窓口です。電話は03-6264-8515、受付は平日9時から17時です。事業の趣旨については、経済産業省 製造産業局 航空機武器産業課が窓口になります。審査の状況や採否については、事務局は一切回答しないとしています。
