業績が落ちている会社が賃上げを約束すると、助成率はどう変わるのか。通常の2/3以内が3/4以内(小規模企業者は4/5以内)に上がり、上限は600万円です。
ただし賃上げ計画を達成できなければ助成率は2/3以内に戻り、すでに受け取った分は返す場合があります。第2回の受付は2026年9月14日に終わりました。次の第3回は11月16日9時から12月14日16時までです。
創意工夫チャレンジ促進事業(賃上げ重点コース)の要点まとめ
正式名:経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業(賃上げ重点コース)
だれが
- 申請者
- 事業者(都内の中小企業者・個人事業者)
- 対象業種
- 業種の指定なし
- 利用目的
- 既存事業の深化・発展(設備・システム導入など)
- 対象地域
- 東京都
- 従業員数
- 中小企業者の範囲内(業種ごとに上限あり)
いくら
- 補助上限額
- 600万円
- 補助率
- 3/4以内(小規模企業者は4/5以内)。未達成は2/3以内
いつ・どこへ
- 申請受付
- 2026年9月1日〜2027年3月12日(年4回に追加募集1回、次は11月16日〜)
- 事業の完了
- 交付決定日から最大1年間
うちの会社は対象になる?
次の6つにすべて当てはまれば、申請要件の入口は通ります。
当てはまるものにチェックを入れてください。0 / 6
次のどれかに当たると対象外です。
- ✕ 営業利益が前期以上で、赤字でもない
- ✕ 事業開始から1年たっていない
- ✕ 他コースで交付決定済みか申請中
- ✕ ハンズオン支援の決定を受けた
- ✕ 同じ内容で他の助成を受けている
線が引かれる位置を順に確認します。業績の条件は「営業利益」で見ます。直近の決算期が2025年なら、2024年の決算期より営業利益が減っているか、2025年に営業損失が出ていれば当てはまります。売上が伸びていても営業利益が減っていれば要件を満たします。
事業開始から1年たっていないと外れるのは、賃金引上げ計画の基準期間(12か月分の賃金台帳)がそろわないからです。公式の募集要項にも、基準日現在で事業期間が1年に満たない場合は計画を策定できず申請できないと書かれています。
本店は、実施場所が都内なら支店でも構いません。賃金引上げ計画書の誓約欄には、従業員全員が労働保険に加入していること、助成事業の実施場所に従業員が所属していてバーチャルオフィスではないこと、申請時点の直近月で最低賃金者が法令上の地域別最低賃金以上であることも並びます。ハンズオン支援は、令和8年度中小企業収益力強化サポート事業のものです。同じテーマ・内容で公社・国・都・区市町村などの助成を受けている場合と、事業税を滞納(分納を含む)している場合も申請できません。
都内の中小企業者かどうかは、業種ごとの資本金か従業員数で決まります。どちらか一方が上限以下なら該当します。
- 製造業・建設業・運輸業・情報通信業・その他の業種:資本金3億円以下または従業員300人以下
- 卸売業:1億円以下または100人以下
- サービス業:5,000万円以下または100人以下(旅館業は5,000万円以下または200人以下)
- 小売業・飲食業:5,000万円以下または50人以下
ゴム製品製造業の一部など例外もあります。大企業が株式や出資の2分の1以上を持つ場合などは「実質的に経営に参画」とされ、対象外です。
賃上げ計画で、何をすれば助成率が上がるのか
助成率の特例を受けるには、賃金引上げ計画を出して実行します。募集要項の条件は2つです。
- 計画期間の従業員の給与等総額を、基準期間より2.0%以上増やす
- 助成事業を行う場所の最低賃金者を、地域別最低賃金+30円以上にする
計画期間は、助成事業が終わった月の翌月から最大12か月です。基準期間は、基準日の前月までの12か月を指します。第2回の基準日は2026年9月1日でした。第3回以降の基準日は、募集要項が公開されたら確認してください。
「常時使用する従業員」が1名以上いることも条件です。役員は賃金台帳に含めません。個人事業主なら代表者を除いて数えます。
計画を達成できないと助成率は2/3以内になり、特例分が支払済みなら返還を求められる場合があります。計画は、実行できる範囲で組むのが安全です。
交付も2回に分かれます。1回目は2/3以内で計算した額、2回目は賃上げの達成が確認されてから、特例の率で計算した額との差額が出ます。全額を受け取り終えるまでに時間がかかります。
いくら戻ってくる?
対象経費に助成率をかけ、千円未満を切り捨てた額です。上限は600万円です。
- 賃上げを達成した中小企業者:400万円 × 3/4 = 300万円
- 賃上げを達成した中小企業者:800万円 × 3/4 = 600万円(上限に到達)
- 賃上げを達成した小規模企業者:500万円 × 4/5 = 400万円
- 賃上げを達成した小規模企業者:750万円 × 4/5 = 600万円(上限に到達)
- 賃上げが未達成の場合:800万円 × 2/3 = 533万3千円
小規模企業者は、常時使用する従業員が製造業・その他で20人以下、商業(卸売・小売)とサービス業で5人以下の事業者です。
募集要項には、対象経費600万円の例もあります。中小企業者は助成額450万円で、1回目に400万円、賃上げの達成確認後に50万円が支払われます。小規模企業者なら助成額480万円で、2回目は80万円です。
助成金は後払いです。交付決定が出ても、費用は先に自社の資金で立て替えます。完了検査で認められた範囲だけが支払われるため、決定額から減ることもあります。
何に使える?
最初に、対象にならないものを確認します。申請書に書いても、あとから外れる経費があります。
対象にならないもの
- 直接人件費
- 土地・建物・車両の購入費
- パソコン、テレビ、文書作成ソフトなど汎用性があるもの
- 中古品の購入、レンタル、リース(一覧で認めるものを除く)
- 税抜10万円未満の物品の購入費(機械装置、設備、システムなど)
- 消費税、印紙代などの租税公課
- 振込手数料、通信費、光熱費、飲食費などの間接経費
- 関連会社や顧問契約先との取引
取組そのものにも線があります。申請者の事業と関連が薄い取組、法令改正に対応するだけの義務的な取組、単なる老朽設備の維持更新は対象外です。競争力や生産性を上げる取組でなければ認められません。
対象になるもの
- 原材料・副資材費、機械装置・工具器具費
- 委託・外注費、産業財産権の出願・導入費、規格等の認証・登録費
- 設備等導入費、システム等導入費
- 専門家指導費、不動産賃借料
- 販売促進費(上限150万円)、その他経費(上限100万円)
市場調査費、専門家指導費、販売促進費、その他経費だけの単独申請はできません。販売促進費は、既存事業の「発展」で生まれる新商品・新サービスの販促に限ります。既存事業の販促は対象外です。
申請の流れ
- GビズIDプライムを取る(事業者→デジタル庁。申請前に済ませる)
- 申請書と賃金引上げ計画書を書く(事業者→公社の公式ページの様式。受付期間の前に)
- Jグランツで申請する(事業者→公社。第3回は11月16日〜12月14日16時)
- 書類審査と面接審査を受ける(事業者→公社。通過した人だけが面接へ)
- 交付決定を受けてから発注する(事業者→取引先)
- 事業を終えたら1か月以内に実績報告する(事業者→公社)
- 完了検査を受け、確定通知のあとに助成金を請求する(事業者→公社。請求書と通帳の写しを出す)
- 賃上げ計画を実施し、実績を報告する(事業者→公社。計画期間が終わってから原則15日以内。達成を確認後に2回目の支払い)
GビズIDは、国の電子申請で共通して使うIDです。申請に使えるのは「プライム」で、「エントリー」では申請できません。公式ページには、審査に1週間程度という記載と、発行に2〜3週間かかるという記載があります。余裕をみて早めに申請してください。
交付決定は、審査の結果、公社が助成する事業者と上限額と対象事業を決めて、契約が成立することです。これより前の発注・契約は対象外になります。面接審査の日程は、第2回では2026年12月7日から16日でした。第3回の日程は公式ページに載っていません。結果の通知は、書類審査が申請から概ね2か月、面接審査の結果は書類審査のあと概ね2か月が目安と、公社のFAQにあります。
実績報告から完了検査までの間に、経営アドバイザーの訪問が1回あります(必須)。助成事業の実施中にも、希望すれば1回受けられます。
必要な書類
準備できた 0 / 10
履歴事項全部証明書は、発行から3か月以内のものです。法人のみ必要です。開業届は個人事業者のみ必要です。
個人事業者は、法人事業税と法人都民税の納税証明書の代わりに、個人事業税納税証明書、住民税納税証明書、所得税確定申告書(第一表と、収支内訳書か青色申告決算書)を出します。非課税の方は、所得税納税証明書(その1)や住民税非課税証明書を出します。
決算書と確定申告書は、直近の決算期と前期の最大2期分です。マイナンバーが載っている部分は墨消しします。賃金台帳は、基準日の前月から遡る12か月分の全従業員分で、最低賃金者を先頭に置きます。最低賃金者の労働日数や所定労働時間が賃金台帳でわからないときは、労働条件通知書か雇用契約書も出します。
申請書(Excel)には、書類以外にも、SWOT分析、取組内容と効果、助成終了後3年間の収益計画、役員・株主名簿などを書きます。
見積書は、1契約あたり税抜30万円以上の経費で必要です。税抜100万円以上は2社以上の見積書(相見積)を出します。このほか、図面や展示会の出展要項など、経費の種類によって追加の書類があります。
もらえなくなるのはどんなとき?
- 交付決定の前に発注した:交付決定より前に発注・契約した経費は対象外です。
- 助成対象期間内に支払いを終えなかった:期間は交付決定日から1年間です。クレジットカードで払っても、口座からの引き落としが期間を超えれば対象外です。
- 賃上げ計画を達成できなかった:助成率は2/3以内になります。特例分が支払い済みなら、期限つきで返すことがあります。
- 実績報告が遅れた:事業が終わってから原則1か月以内の提出が必要です。期限を過ぎると助成金は交付されません。
- 事前の承認なしに内容を変えた:申請書にない物品を買うなど、承認のない変更は対象外です。
- 支払い方法が決まりに合わない:税抜10万円を超える契約を現金や電子マネーで払うと対象外です。原則は事業者名義の口座からの振込です。
取り違えやすいところ
賃上げ重点コースは、同じ事業の別コースと同時には申請できません。業務改善コースや新市場・新分野進出コースとの重複申請は受け付けられません。どちらかに1度でも交付決定を受けているか申請中でも、このコースには申請できません。1事業者につき交付決定を受けられるのは1度だけです。
不採択になった場合は、次回以降の募集で再び申請できます。
いったん申請すると、Jグランツ上で取り下げられません。書類の追加提出も、申請書や添付書類の差し替えもできないため、「申請する」を押す前に内容を確かめてください。添付できるファイルは1件16MBまでです。
申請書の様式は年度ごとに更新されています。令和7年度の「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(賃上げ重点コース)」の様式は使えません。令和8年度版を使ってください。
よくある質問
黒字の会社でも申請できますか?
申請できます。見るのは営業利益で、直近の決算期の営業利益が前期より減っていれば要件を満たします。黒字であることは外れる理由になりません。直近の決算期が2025年なら、2024年の決算期と比べます。反対に、営業利益が前期より減っておらず、営業損失でもない場合は対象外です。決算書の損益計算書で確認してください。
業務改善コースと両方申請できますか?
できません。業務改善コースまたは新市場・新分野進出コースと重複して申請すると、受付されません。どちらかで1度でも交付決定を受けた場合や、申請中の場合も、このコースには申請できません。賃上げ計画を組み込めるかどうかが分かれ目なので、先に自社の賃金台帳で、給与等総額を2.0%以上増やせるかを確かめて選んでください。
賃上げの目標はどのくらいですか?
条件は2つです。計画期間の常時使用する従業員の給与等総額を、基準期間より2.0%以上増やすこと。助成事業を行う場所の最低賃金者を、地域別最低賃金+30円以上にすることです。基準期間は基準日の前月から遡る12か月で、第2回の基準日は2026年9月1日でした。計画期間は事業完了の翌月から最大12か月です。
賃上げを達成できないとどうなりますか?
助成率が2/3以内になります。特例の率で計算した助成金がすでに交付されている場合は、期限を決めて返還を求められることがあります。天災など事業者の責任でない理由がある場合は、返還が免除されることもあります。無理な目標を掲げると返還のリスクを負うので、実行できる範囲で計画を組んでください。
創業して間もない会社も申請できますか?
基準日現在で、事業を続けている期間が1年に満たない場合は申請できません。未決算の法人や個人事業者も同じです。賃金引上げ計画の基準期間が12か月分そろわず、計画を策定できないためです。1年を過ぎるタイミングは、次の募集の基準日と照らして確認してください。
パソコンやタブレットは対象になりますか?
対象外です。テレビ、パソコン、文書作成や表計算のソフトなど、汎用性があって目的外に使えるものは助成対象になりません。システムの導入に伴って買うパソコンも同じ扱いです。取組専用のハードウェアでも、税抜10万円未満のものは対象外なので、見積書の単価を確認してください。
助成金はいつ振り込まれますか?
後払いです。交付決定のあとに自社の資金で事業を行い、実績報告と完了検査を経て、助成金が確定します。確定通知を受けて請求書を出すと、支払いまで請求の到着から1か月程度かかる見込みです。賃上げ計画を掲げた場合は交付が2回に分かれ、1回目は2/3以内で計算した額です。2回目は賃上げの達成確認後に、特例の率で計算した額との差額が支払われます。資金繰りは長めに見てください。
面接審査は必ずありますか?
書類審査で一定の水準に達した事業者だけが面接に進みます。第2回の面接期間は2026年12月7日から16日で、日程の変更はできません。出席できるのは代表者・役員・従業員の最大2名で、顧問やコンサルタントの同席、代理出席は認められません。指定の日時に来ないと辞退とみなされます。
次の募集はいつですか?
公式ページの予定では、第3回が2026年11月16日から12月14日16時まで、追加募集回が2027年1月4日から1月14日16時まで、第4回が2027年2月15日から3月12日16時までです。予算の都合などで、予告なく変更される場合があります。受付期間中の申請はすべて受け付けられ、先着順ではありません。提出前に公式ページで最新の予定を確認してください。
申請を第三者に頼めますか?
Jグランツの代理申請機能を使えば、申請書の作成を第三者に頼めます。ただし申請内容の確認と提出は、申請者本人が行います。事業者は「同意書(代理申請用)」を作成して、Jグランツの指定箇所にアップロードします。助成対象経費に関わる外注先の事業者は、代理申請を請け負えません。
小規模企業者だと何が変わりますか?
助成率が4/5以内になります。小規模企業者は、常時使用する従業員が製造業・その他で20人以下、商業(卸売・小売)とサービス業で5人以下の事業者です。協同組合などの中小企業団体は、構成員の内訳にかかわらず小規模企業者とはみなされません。上限は中小企業者と同じ600万円です。
問い合わせ先はどこですか?
経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業事務局(電話03-4405-0707)です。平日の9時から16時30分まで受け付けていて、年末年始(12月29日から1月3日)は休みです。問い合わせは申請事業者本人から行う決まりです。審査の内容や結果についての個別の問い合わせには答えてもらえません。
